恋人との別れを描く
Title:Vulnicura
Musician:bjork
ビョークにとって約3年半ぶりとなるニューアルバム。もともと3月にリリースされる予定だったそうですが、事前に音源がネットに流出され、急きょ1月にダウンロードでのリリースとなりました。ただ、CDの国内盤リリースは当初の予定通り4月リリース。というわけで今回、遅ればせながら彼女のアルバム、ようやく聴くことが出来ました。
本作の特徴としては、その歌詞のパーソナルな内容。彼女のパートナーであったマシュー・バーニーとの別れをテーマとしています。それもユニークなのはただ単に別れの心境を描写するだけではなく、別れる前の破たんの前兆から、別れた後、心がいやされるまでをアルバムの中で時系列に沿って描いてきます。
パーソナルといっても恋人との別れという、ある意味「普遍的」な内容を描いているだけに、アルバムとしても非常にわかりやすさを感じます。別れの9カ月前を描いた「stonemilker」では2人の間のほころびを描き、それが徐々に大きくなることを描き、別れの2ヶ月後の「black lake」ではタイトル通り、恋人とわかれた深い悲しみをこれでもかというほど描いています。
しかしその悲しみは徐々に癒され、11ヵ月後を描いた「notget」では明らかに前向きな表現が見られます。ここらへんの心境も、決してビョークだからといって特別なものではなく、おそらく恋人との出会いと別れを経験した人ならば、誰もが経験しそうな心境。そういう意味でも今回のアルバムはわかりやすさを感じます。
わかりやすさという意味では今回のサウンドもいい意味でのわかりやすさを感じます。本作では、ビョーク本人と、カニエ・ウエストやFKAツイッグスへのプロデュースワークで話題となったアルカやイギリスのプロデューサー、ハクサン・クロークとの共同プロデュース作を収録。アルカもハクサン・クロークも新進気鋭のプロデューサーですが、本作ではストリングスをメインとしたプロダクションにエレクトロサウンドを入れてきたサウンドという構成がメイン。ただ音数は比較的少な目でシンプル。むしろビョークのボーカルをしっかりと生かしたようなアレンジが多く、ビョークの歌をしっかりと楽しめる内容になっていました。そういう意味でも本作は、広いリスナー層に受け入れられやすい内容ではないでしょうか。
前作「biophilia」は気合いが入りすぎていて、ちょっとトゥーマッチな感じになってしまった感じもして、空回りしてしまった部分もあったように感じました。それに比べると本作は、いわば等身大のビョークの姿が歌詞の面でもサウンドの面でも描かれており、ビョークの魅力をしっかりと伝えてくれた傑作でした。なんかここ数日連続しちゃっているのですが・・・この作品も今年を代表する名盤だと思います。せっかくなら、歌詞もわかる国内盤で是非。
評価:★★★★★
Bjrok 過去の作品
biophilia
2012-02-12 NY Hall of Science,Queens,NY
Bastards
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