家族や人生を見つめなおして
Title:Carrie&Lowell
Musician:Sufjan Stevens
毎回、出すアルバム出すアルバムが大絶賛を受けるアメリカのシンガーソングライター、Sufjan Stevensの5年ぶりのニューアルバム。今回のアルバム、タイトルとなっているCarrie&Lowellとは、彼の実母、キャリーとスフィアンが5歳の時にキャリーと再婚した義理の父親、ローウェルのことだそうで、ジャケットはその2人の写真を使っています。キャリーは重い精神疾患とアルコール中毒を患っていたらしく、スフィアンと一緒に暮らした日々も短く、再婚も短い期間で終わったそうです。そんな彼女が2012年に胃がんで亡くなったそうですが、それをきっかけにあらためて家族や人生を見つめなおしてつくられたのが今回のアルバムだそうです。
スフィアンのアルバムを聴くのはこれが2作目なのですが、こちらも大絶賛された前作「The Age of Adz」は正直言えばあまりピンと来ない作品でした。確かに複雑なサウンドに美しいメロディーラインは絶賛を受ける理由がわからなくはなかったのですが、個人的には最後まではまれませんでした。
それだけに今回のアルバムも最初は聴こうかどうか迷っていたのですが、おそらく今年の年間ベストなどに多数選出されて、「今年を代表するアルバムだから一応聴いておこうか」みたいな流れになるのが、いまから非常によくわかるだけに(苦笑)、やはり聴いてみよう、そういう感じで聴きはじめたのがきっかけでした。
ただ、今回はアルバムはあまり期待していなかった最初の印象を大きく覆すような内容でした。今回のアルバムの一番の特徴は、そのテーマ性からしても内省的な曲が多かった点。そのため今回は、アコースティックサウンドをメインとしたシンプルで美しいメロディーラインを主軸とした楽曲が並んでいます。
まず1曲目「Death With Dignity」はアコギとピアノのみのシンプルな演奏に静かなボーカルが印象に残ります。なによりもメロディーの美しさが印象に残る作品で、その後の展開に期待が高まりました。
その後もアコースティックなサウンドを主軸に、ちょっと幻想的な雰囲気も感じられる作品が並んでいたのですが、特に印象的だったのが中盤以降。「Fourth of July」は静かな作風ながらもエレピとシンセのサウンドが、なんともいえない幻想的な作風を作り出しており、強い印象の残ります。そんなエレクトロサウンドを効果的に用いたかと思えば、続く「The Only Thing」はアコギのアルペジオが美しいシンプルなナンバーに。その後もタイトルナンバー「Carrie&Lowell」や「No Shade in the Shadow of The Cross」など、アコギのアルペジオを聴かせつつ、メロディーラインの美しさが心をうつ作品が並んでいます。
あくまでも美しいメロディーラインをメインに構えつつ、アコースティックなサウンドにほんのりエレクトロの要素を加えた作品が楽曲に奥行をあたえている文句なしの傑作アルバム。前作ではいまひとつはまれなかった私も、今回のアルバムははまってしまいましたし、間違いなく今年のベスト盤候補の1枚、と言える傑作だったと思います・・・って最近、傑作が続いているような気がしますが(笑)、それだけここ最近、リリースされているアルバムが充実しているということでしょう。今回は高い評価も納得の1枚でした。
評価:★★★★★
Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2015年」カテゴリの記事
- 話題の女性3人組(2016.04.30)
- 中毒性の強いチープなサウンド(2016.04.26)
- また新たな変化(2015.12.27)
- これぞArcaサウンド(2015.12.25)
- メロディーラインがより前面に(2015.12.19)
コメント