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2015年5月

2015年5月31日 (日)

今度はサポートメンバーを加えて

Title:共鳴
Musician:チャットモンチー

2011年の高橋久美子脱退以降、2人組バンドとして活動を続けるチャットモンチー。その後、ボーカル橋本絵莉子の妊娠、出産のため一時期活動を休止していましたが、約2年半ぶりのニューアルバムがリリースされました。

前作「変身」はサポートメンバーを入れず、2ピースバンドとして2人きりで作り上げたアルバムになっていました。それに対して今回のアルバムは逆。サポートメンバーを積極的に入れることにより、2ピースバンドでは作れなかったような幅広い作風の曲をつくっています。そのサポートメンバーもユニークなことに、ハイスタの恒岡章、the chef cooks meのメンバーとして活動している下村亮介によるサポートメンバーを「男陣」、シンガーソングライターの世武裕子、DQSやnelcaのメンバーとして活動している北野愛子のサポートメンバーを「乙女団」とそれぞれ名付けてアルバムを作り上げています。

「男陣」による曲としては「きみがその気なら」「私が証」のような分厚いバンドサウンドやへヴィーなギターを前面に押し出した、2ピースでは表現できないような、よりへヴィーなバンドサウンドを聴かせるような曲が多かったように思います。逆に「乙女団」としては、80年代アイドルの曲を意識したという「最後の果実」やピアノやストリングスを効果的に入れてきた「隣の女」のような、バンドサウンドを聴かせる一方で、世武裕子の爽やかなピアノの音色を効果的に聴かせる作品が並んでいました。

要するに「男陣」はより男らしく、「乙女団」はより女らしい部分を出してきた印象。もっともこれについては、女性陣だけで力強い演奏を聴かせるのならば、チャットモンチーの2人だけで可能、ということが前作「変身」で証明済な訳ですから、それだけ2人だけで出来ないサウンドにこだわった、ということなのかもしれません。

ただ一方で本作でも2人のみでつくられた作品も収録されており、サンプリングを取り入れてチャットモンチー流HIP HOPに挑戦した「ぜんぶカン」は、サポートメンバーによるロックナンバーを多く収録しているからこそ逆に収録できた挑戦的なナンバー。またアルバムは2人のみの演奏によるギターロックナンバー「ドライブ」で締めくくられており、そういう意味でもチャットモンチーは2人組バンドなんだ、という決意は今回のアルバムでも強く感じました。

また、今回のアルバムでもうひとつ、大きな成長を感じたのはその歌詞でした。

いままでのチャットモンチーの楽曲で目立ったのは女の子の素朴な恋心を歌にのせたような曲でした。一方、今回のアルバムでは都会を生きる、心にどこか「孤独さ」を抱えた女性を描いた歌詞が多かったように思います。例えば自分を装いつくっている女性を描いた「隣の女」や東京という大都会の中でのミュージシャンとしての決意を歌った「いたちごっこ」など、いままでのチャットモンチーとは異なる側面を感じる歌詞が多く収録されており、さらに大人の女性へと成長した彼女たちの姿を感じられました。

もっともいろいろとやろうとする音楽が多すぎてちょっとまとまりに欠けるように感じられた点。歌詞もいままでと比べて一度聴いて印象に残るようなインパクトあるセンテンスがない点、マイナスポイントも少なくはありませんでした。ただ、それを補って余りあるチャットモンチーのバンドとしての可能性を感じられたアルバムでした。アルバム毎に進化を続ける彼女たち。次のアルバムも楽しみです。

評価:★★★★★

チャットモンチー 過去の作品
生命力
告白
表情
Awa Come
YOU MORE
チャットモンチーBEST~2005-2011~
変身

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2015年5月30日 (土)

復帰後2作目

Title:ブリトラ道中膝栗毛
Musician:ブリーフ&トランクス

2012年、まさかの再結成を果たした男性2人組デゥオ、ブリーフ&トランクス。「半径5メートル以内の日常生活」をテーマにクスッと笑えるユニークな視点の曲を書いてきた2人ですが、そんな彼らの再結成後2作目となるアルバムがリリースされました。

再結成後初となる前作「グッジョブベイベー」は、13年ぶりとなるアルバムだったのですが、13年のブランクを感じさせないブリトラらしいアルバムに仕上がっていました。続く今回のアルバムも、前作に引き続き、とてもブリトラらしさがあふれるアルバムに仕上がっていました。

ちょっと「S」な彼女との日常をユーモラスに描いた「発砲スチロール」は、発砲スチロールという小ネタを使うスタイルといい、まさに「半径5メートル以内の日常生活」をテーマにした彼ららしい歌詞ですし、微妙な音感の食べ物をネタに、コミカルに描く「ズッキーニ」なんかもいかにも彼ららしい作品と言えるでしょう。また、重厚なストリングスにのせて、どうしようもない歌詞(笑)をのせたスタイルの「下痢気味」は、まさに彼らのデビュー曲「さなだ虫」や「小フーガハゲ短調」を彷彿とした楽曲になっています。

一方で、「禁断の恋唄」は彼らだからこそサラッとコミカルに描いているのですが、そのテーマには、単純に「笑える」というだけとは異なるものも感じますし、「変わりゆく街で」「マザーコンピューター」は毎回彼らのアルバムに収録されている真面目ソングで、こちらもちゃんと聴かせる曲をつくりあげています。

前作では、いつものブリトラ路線の中に、今風にアップデートされた曲もチラホラ収録されていたのですが、今回の作品は楽曲的にも比較的シンプルな曲が多く、前作以上にブリトラの王道を突き進んだ作品という印象を受けました。一方、前作で感じた視点が「大人」目線になったという印象は本作も同様。登場する主人公は、いずれも大人な男女になってきているのも印象的でした。

また、これも前作の感想で書いたのですが、解散前の作品は正直ちょっとネタ切れ?と感じさせる部分があったものの、活動休止中にしっかりとネタをためて、今回の作品では、デビュー当初を彷彿させるような勢いが、前作に引き続き持続していました。

1曲1曲が強烈な個性を放つユニークな曲ばかり。前作に引き続きブリーフ&トランクスというミュージシャンの魅力がさく裂したアルバムだったと思います。まだまだこれからの活動も楽しみになってくるアルバムでした。

評価:★★★★★

ブリーフ&トランクス 過去の作品
グッジョブベイベー

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2015年5月29日 (金)

裏ベスト

Title:残念な夫。サウンドトラック
Musician:UNICORN

今回紹介するアルバムは、今年の1月から3月までフジテレビで放送していたドラマ「残念な夫。」のサウンドトラック。このドラマ、視聴率的には芳しくなかったようで、残念な結果になってしまったようですが、UNICORNの「はいYES!」が主題歌となったほか、彼らの様々な楽曲がドラマの要所要所にそのままつかわれており、UNICORNのファンにとっては話題になったそうです。

このサントラも、ドラマのBGMを収録したアルバムではなく(そういうアルバムも別に発売されているみたいです)ドラマ中につかわれたUNICORNの楽曲をそのまま収録したアルバム。私はこのドラマを見ていないのですが、ドラマを見ていない人にとってもUNICORNの企画盤的な感じで聴くことのできるアルバムでした。

「残念な夫。」というドラマは子供が産まれた後の夫婦の問題をテーマとして描いたドラマ。テレビドラマとしてはちょっとユニークなテーマ選びとなっています。UNICORNの楽曲についても、あまりポピュラーミュージックでは取り上げないような大人の人間関係をテーマとしたような曲が多く、ドラマを見ていないのでなんともいえない部分も大きいのですが、「残念な夫。」の挿入歌にUNICORNの曲というのはピッタリマッチしていたんだろうなぁ、と想像できます。

そしてなかなかユニークなのがこのサントラの選曲。彼らの代表曲である「大迷惑」や「すばらしい日々」のような曲は収録されていません。「人生は上々だ」「服部」などのおなじみの曲も収録されているのですが、DVを彷彿とさせる歌詞の「幸福」や、金持ちのボンボンをテーマとした「パパは金持ち」など、ちょっと毒をはらんだユーモラスなテーマ性のある曲が多く選ばれています。そういう意味では「裏ベスト」ともいうべき内容。UNICORNに関しては、ベスト盤が嫌というほどリリースされていますが、そんな中ではユニークな構成と言えるでしょう。

また今回のアルバムは直近の作品から昔の作品にむかって時系列を逆にして収録されています。そんな中、活動再開後の楽曲がほぼ半数を占めています。ベスト盤の多くは活動再開前の曲を収録されているだけに、そういう点でもユニークと言えるでしょう。

今回のサントラの目玉であり、また賛否がわかれているのが、「はいYES!」が収録されている点。ドラマ主題歌なので、収録されているのは当たり前と言えるかもしれませんが、この音源、最新アルバム「イーガジャケジョロ」のセブン&アイ限定盤のみに収録されていたレア音源。いつかはなんらかの形で手に入りやすいCDに収録されるんだろうなぁ・・・とは思っていたんですが、まさかこんな早くとは(^^;;ちょっと早すぎ、という不満があがるのはわかるそうな気はします・・・。

とはいえ、収録曲は魅力的な名曲ばかりですし、代表曲の多いベスト盤以上に「毒」の要素の強いUNICORNの魅力がよくとらえられている企画盤だと思います。「ドラマを聴いてUNICORNが気になった人の最初の1枚」ならベスト盤の方がお勧めできそうなのですが・・・ベスト盤の次の1枚としては最適なアルバムかもしれません。

評価:★★★★★

ユニコーン 過去の作品
シャンブル
I LOVE UNICORN~FAN BEST
URMX
Z
ZII
Quarter Century Single Best
Quarter Century Live Best

イーガジャケジョロ


ほかに聴いたアルバム

レインボーロード/絢香

オリジナルアルバムとしては3年2ヶ月ぶり。久々となる絢香のニューアルバム。バラエティー富んだポップス路線にキャッチーなメロは良くも悪くもJ-POPの王道的。今回のアルバムでは比較的バラードナンバーが多かったような印象が。ただ、楽曲はどれも安定していて、聴いていて安心できるポップスソングが並んでいます。売上的には一時期に比べると、といった感のある彼女ですが、ミュージシャンとしてはちゃんと実力をつけてきた印象を受けました。

評価:★★★★

絢香 過去の作品
Sing to the Sky
ayaka's History 2006-2009
The Beginning

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2015年5月28日 (木)

男性陣が上位に並ぶ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週のアルバムチャートは7位のサントラ盤をのぞき、1位から8位まで男性陣が占めるチャートとなりました。

まず1位初登場はKinki Kidsの堂本剛によるソロアルバム「TU」がランクイン。ソロプロジェクト「shamanippon」の第3弾アルバムだそうです。初動売上5万8千枚は前作「shamanippon -ロイノチノイ-」の5万1千枚(1位)よりアップ。

2位はMAN WITH A MISSION×ZEBRAHEAD「Out of Control」。ご存じ狼バンドMAN WITH A MISSIONと、アメリカのロックバンドZEBRAHEADによるスピリットEP盤。初動売上は2万5千枚で、MAN WITH A MISSIONの直近作「Seven Deadly Sins」の4万枚(2位)よりはダウン。一方、ZEBRAHEADは直近作が「GREATEST HITS?」(25位)。オリジナルとしての直近「Call Your Friends」の5千枚(16位)よりは大きくアップ。ベスト10入りは2009年にリリースしたカバーアルバム「Panty Raid」以来。ZEBRAHEADにとってはMAN WITH A MISSIONのおかげで、久々のヒットとなりました。

3位には韓流、男性アイドルグループ2PM「2PM OF 2PM」が先週のベスト50圏外からランクアップして、いきなりのベスト3返り咲き。これは今月20日にパッケージを変えたリパッケージ盤がリリースされた影響のようです。

続いて4位以下の初登場ですが、4位にはロックバンドKEYTALK「HOT!」がランクイン。メジャーからは2枚目となるアルバムで、これがアルバムでは初のベスト10入り。シングルでは2014年に「パラレル」がベスト10入りを記録していますが、徐々に人気を集めてきて、4位はアルバムシングル通して自己最高位となります。初動売上1万3千枚は前作「OVERTONE」の9千枚(13位)よりアップ。

6位にはもう1組、韓流男性アイドルグループSHINeeの韓国発売のアルバム「ODD」がランクイン。初動売上は8千枚。ちなみに直近の日本盤のアルバム「I'm Your Boy」は初動4万5千枚(1位)でこちらよりはダウン。韓国盤としては前作「Why So Serious? - The misconceptions of me」が初動8千枚(9位)を記録しており、こちらからは横バイとなりました。

女性陣の初登場最高位は9位今井美樹「Colour」。彼女6年ぶりとなる新作。夫の布袋寅泰作曲によるナンバーはもちろんのこと、「瞳がほほえむから」や「PIECE OF MY WISH」など初期の彼女のヒット曲を書いてきた上田知華が20年ぶりに楽曲提供したことでも話題になっています。初動売上は7千枚。直近作は彼女がユーミンの曲をカバーした「Dialogue -Miki Imai Sings Yuming Classics-」で、こちらの初動2万2千枚(3位)よりダウン。ちょっと意外ですが、オリジナルアルバムとしては2001年にリリースした「AQUA」以来6作ぶり、久々のベスト10ヒットとなりました。

初登場最後、10位には主にアニメソングを中心に活動する男女2人組ユニットangela「ONE WAY」がランクインです。初動売上は6千枚。直近作は「蒼穹のファフナー コンプリートベストアルバム」で、こちらの4千枚(17位)よりはアップ。オリジナルアルバムとしては前作「ZERO」(10位)から横バイの結果となっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年5月27日 (水)

ますます一部のファンに集中

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週は、例の「AKB総選挙」の投票券付CDがランクインしてきました。

AKB48「僕たちは戦わない」が1位獲得。初動売上は167万3千枚。前作「Green Flash」の100万1千枚(1位)から大幅増なのは、もちろん「投票券」目当ての複数枚買いの影響。昨年の「総選挙」がらみのシングル「ラブラドール・レトリバー」の166万2千枚を若干上回りました。

ただ、今回特徴的だったのが発売初日の売上が大きかったこと。発売初日の売上は147万2千枚で、これは1日の売上の歴代最高記録だそうです(参考サイト)。ただ結果としては前作の売上はなんとか上回ったものの、前々作「「さよならクロール」の176万2千枚からはダウン。前作も同じ傾向が見られたのですが、要するに熱心なファンが発売初日に大量買いするけど、その他の浮動層には波及していない傾向がより顕著な結果と言えるでしょう。「1日の売上歴代最高」という結果は、AKB48にとって、決してプラス要素ではなく、むしろ一部の固定ファンに売上が集中しているという意味では、マイナス要素と言える結果だと思われます。

今週は2位も3位も女性アイドルグループ。2位は韓国の女性アイドルグループApink「LUV」がランクイン。初動4万4千枚は前作「Mr.Chu」の5万4千枚(2位)からダウン。3位はEXILEと同じ事務所の女性アイドルグループE-girls「Anniversary!!」が入ってきています。恒例のサマンサタバサCMソング。初動売上4万2千枚は前作「Mr.Snowman」の4万3千枚(2位)からダウン。AKB48シングル発売によるCDショップへの集客効果によりおこぼれを狙った・・・といいたいけど、ファン層的にはかぶらなさそうだよなぁ。ApinkとE-girlsのファン層はなんとなく重なりそうだけど・・・。

続いては4位以下初登場。まず5位にロックバンドUNISON SQUARE GARDEN「シュガーソングとビターステップ」が入ってきています。アニメ「血界戦線」エンディング・テーマ。初動売上3万3千枚は前作「harmonized finale」の1万3千枚(8位)から大幅増で、4位はシングルでは自己最高位。これで4作連続アニメタイアップなのですが、楽曲的にも勢いが出てきている印象。タイアップ効果なのか、純粋にバンドが売れてきているのはまだ未知数な部分はあるのですが・・・。

そんでもって今週も「うたの☆プリンスさまっ♪」がらみがランクイン。黒崎蘭丸(鈴木達央) 「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ アイドルソング 黒崎蘭丸(ONLY ONE)」が6位初登場。アニメ「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ」挿入歌。初動売上1万8千枚は先週のカミュ(前野智昭) 「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ アイドルソング カミュ(Saintly Territory)」の1万6千枚(7位)からアップ。黒崎蘭丸名義では前作「うたの☆プリンスさまっ♪アイドルソング 黒崎蘭丸(Not Bad)」の2万4千枚(7位)からダウン。

7位にはNU'EST「NA.NA.NA.涙」がランクイン。初耳の名前ですが、韓国の男性アイドルグループの日本では2枚目となるシングル。哀愁たっぷりの歌謡曲風のナンバー。初動売上1万6千枚は日本でのデビューシングル「Shalala Ring」の8千枚(16位)を上回り、初のベスト10ヒット。

8位初登場は女性アイドルグループたこやきレインボー「元気売りの少女~浪花名歌五十選~」。スターダストプロモーション所属で、関西を拠点に活動するももクロなどの姉妹グループ。初動売上1万2千枚は前作「絶唱!なにわで生まれた少女たち」(13位)から横バイながらも前々作「なにわのはにわ」以来2作ぶり2作目のベスト10ヒット。

9位にはDAIGO率いる3人組バンドBREAKERZ「WE GO」が入ってきています。日テレ系アニメ「名探偵コナン」オープニング・テーマ。彼ら、ビーイング系ですからね。活動休止期間を挟み、2年4ヶ月ぶりとなるシングル。初動売上は1万1千枚で、前作「RUSTY HEARTS」の1万3千枚(6位)からダウン。ちなみに活動休止中、DAIGOがソロ名義でリリースした「いつも抱きしめて」の1万8千枚(8位)よりもダウンしています。

初登場最後。10位にはSawanoHiroyuki[nZk]「X.U.」がランクイン。作曲家澤野弘之によるソロプロジェクトで、アニメ「終わりのセラフ」オープニング・テーマ。初動売上1万枚は前作「&Z」(12位)より横バイで、ベスト10入りは前々作「A/Z」以来2作ぶり2作目。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2015年5月26日 (火)

いまさらながら、ですが・・・。

Title:はじめまして。+2~入門編~
Musician:羊毛とおはな

今年4月、とても悲しいニュースが飛び込んできました。羊毛とおはなのおはなこと千葉はなが乳がんのため36歳で急逝。そのあまりにも若い最期のニュースは、正直ショックを受けました。

ただ・・・実は正直いってしまうと羊毛とおはなというグループ、名前はもちろん以前から知っていたのですが、ちゃんと音源を聴いたことがありませんでした。で、遅ればせながら聴いてみたのが、おはな逝去の後にリリースされたベスト盤。もともとレンタルオンリーでリリースされていたものに、2曲をプラスして、あらためて販売込みでリリースされたそうです。

そんな訳で、羊毛とおはなの楽曲をちゃんとはじめて聴いてみたわけですが、まず非常に印象に残ったのが、千葉はなのボーカルでした。ちょっと鼻にかかったような独特のボーカルが魅力的。ちょっと癖もあった初期の歌い方に比べて、最近の楽曲になると、癖のあるボーカルに感じられた一種の雑味が消えて、優しく、包容力ある歌声に深化してきていました。その包み込むようなボーカルにすっかり魅了されました。

シンプルなアコースティックメインのアレンジがほどこされた楽曲の数々もとても魅力的。こちらも初期に関してはオーガニック志向の洋楽テイスト強い楽曲は、少々狙いすぎな部分もあったのですが、最近の楽曲になればなるほど、素直にメロディーラインの美しさを聴かせる楽曲が並んでいました。「空が白くてさ」のノスタルジックなメロディーラインや「うたの手紙~ありがとう~」のようなとても大きなやさしさを感じさせる楽曲、さらには「エピソード」のような爽快なポップスまで、メロディーには十分なインパクトもあり、もっともっと注目されてもよかったのに・・・といまさらながら感じてしまいました。

まあ、ちょっと厳しいことを言ってしまうと、「あざとさ」を感じさせる部分もなきにしもあらずで、彼女たち、デビューアルバムはヴィレッジ・ヴァンガード限定でのリリースだったそうですが、このベスト盤にも収録されているJ-POPのオーガニック風カバーは、いかにもヴィレヴァンらしい底の浅いサブカル風のあざとさは感じてしまいます。

ただそんな曲に関してもやはり千葉はなのボーカルが非常に魅力的で、ちゃんと羊毛とおはなとしてのスタイルを確立させたカバーになっているのはさすが。なんだかんだ言いつつも、このJ-POPカバーについても聴き入ってしまいました。

なんか・・・いまさら彼女たちのアルバムを聴いてどうこう言うのは、昔からファンだった方に申し訳ないと思いつつ・・・ただいまさらながら素晴らしいユニットだったんだなぁ、ということに気が付かされました。まさに良質なポップスがつまっているアルバム。あらためて彼女の早すぎる最期を残念に感じるアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Best of 'Playing the Orchestra 2014'/坂本龍一

現在、病気療養中の教授ですが、その彼が、フルオーケストラと共演した「Playing the Orchestra 2014」ツアー演奏からベストな音源をピックアップしたライブアルバム。YMOの代表曲や自身の代表曲などがオーケストラの演奏で楽しめます。ただ単にオーケストラでなぞっただけではなく、きちんとオーケストラアレンジに組みなおされた楽曲を聴かせてくれます。

評価:★★★★

坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014

DAOKO/DAOKO

若干17歳の女子高生ラッパーDAOKOのメジャーデビューアルバム。一部で大絶賛を集めているようですが、エレクトロベースのトラックと、透き通るようなウィスパーボイス気味の歌声が魅力的。「ラップ」といってもラップしている箇所は少なく、全体的に歌モノのポップスがメイン。「女子高生」といううたい文句らしい、17歳らしい歌詞もある一方で、生死をテーマとしたような重いテーマ性を感じる曲もさらりと歌い上げていて、17歳という年齢らしからぬ歌詞も魅力的。ただ、才能の片りんはいろいろと感じられるものの、楽曲的にはインパクトも薄く、歌詞についても一度聴いたら忘れられないようなグッとくるようなフレーズはなく、そういう意味ではまだまだこれからな部分も感じられます。大絶賛という評価は若干ハイプ気味な感じは否めないものの、これからが楽しみという意味ではその通りの、期待の新人ラッパーです。

評価:★★★★

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2015年5月25日 (月)

迷いのない1枚

Title:Rise from HELL
Musician:MO'SOME TONEBENDER

モーサムの新作は、今度は2部構成。今回リリースされた本作は通称「地獄盤」だそうで、一方、8月には、「Rise into HEAVEN」と名付けられた通称「天国盤」がリリースされるとか。タイプの異なる2枚のアルバムがリリースされる予定になっているそうです。

今回のアルバムは「地獄盤」と名乗っているだけに、ストレートにへヴィーなガレージロックが展開されています。「トーキョーロスト」ではいきなりへヴィーなギターリフが全面的に展開。これにからむようにならされる高音が、これからの危険を告げるようなサイレンのように鳴り響きます。続く「メタルボーイ」も分厚いギターサウンドにシャウト気味のボーカルが印象的。このようなへヴィーなガレージロックがアルバム全般に展開されています。

ここ最近のモーサムといえば、アルバム毎にそのスタイルを変えていき、新たなタイプの曲に挑戦しているのが特徴的でした。その結果、傑作となったアルバムもある一方、その挑戦が上手くいかず、凡作に終わってしまった作品もありました。ただ、それだけ彼らにとってはやりたいジャンルが多かった、ということでしょう。

その結果として今回のアルバム、やりたいジャンルがまとまり切らず、2枚のアルバムにわけてリリースという形になったのでしょう。ただ、このアルバムを分けるというやり方が実に功を奏したように思います。その2枚のアルバムのうち今回の「地獄盤」、あくまでもガレージロックに的を絞った結果、アルバム全体としてやりたい音楽に全く迷いを感じさせません。とにかく、このアルバムではへヴィーなロックンロールを奏でる、その決意がアルバム全体に感じられます。ここ最近のアルバムの中で「凡作」と感じられたアルバムの多くは、いろいろなジャンルに手をつけた結果、中途半端、あるいは迷走してしまっているという印象を受けてしまっていました。そういう観点はこのアルバムからは無縁。まさにガレージロックという太い柱がしっかり中心に建っている、そんなアルバムになっていたと思います。

また、そんなガレージロックの中で、なにげにユニークなのが歌詞。「平民貧民大貧民」は一見、トランプの話かと思いきや

「たかがゲームとあなどるなかれ
気がつきゃアンタもすぐ
平民貧民大貧民 平民貧民大貧民」

(「平民貧民大貧民」より 作詞 百々和宏)

なんてのは、現実社会に切り込むような意味深な歌詞になっていますし、「バイオレーターデストラクション」でも

「天国地獄紙一重さ 簡単に裏返る
戦争平和 気を抜いたら一瞬で命取り」

(「バイオレーターデストラクション」より 作詞 百々和宏)

なんて歌詞も今の時代に対する警戒のように読み取れます。いずれにしろユーモラスな歌詞の中に、どこか毒の要素の混じったような歌詞が魅力的でした。

そしてそんなアルバムの最後を飾る「イミテイションシティ」はいままでの曲とは雰囲気がガラッと変わり、エレクトロサウンドのナンバー。この曲で、8月にリリースを控えている天国盤「Rise into HEAVEN」につながっている、ということでしょうか。この構成にもユニークなものを感じます。

ある意味、モーサムの本領発揮ともいえるガレージサウンドがとても心地よい傑作。また、8月にリリースされるアルバムも楽しみになってくる作品でした。さて、へヴィーな地獄盤に対して、天国盤はどんなアプローチで聴かせてくれるのでしょうか。

評価:★★★★★

MO'SOME TONEBENDER 過去の作品
C.O.W.
SING!
youth
STRUGGLE

BEST OF WORST
Strange Utopia Crazy Kitchen
Baseball Bat Tenderness


ほかに聴いたアルバム

A.N.D/tricot

変拍子を多用した独特のサウンドが注目を集める女性3人組バンドの2枚目となるフルアルバム。今回、はじめて聴いてみたのですが、確かに独特の展開のサウンドはなかなかユニーク。ただその反面、肝心のメロディーラインがいまひとつ。インパクト不足でいまひとつ印象に残りません。バンドサウンドもエモを志向している割りにはダイナミックさがいまひとつで中途半端。うーん、確かにおもしろさを感じる反面、いろいろな部分で中途半端さが目立った作品でした。

評価:★★★

L.O.K./久保田利伸

久保田利伸約3年半ぶりのニューアルバム。「L.O.K.」は「Lots of Kisses」の略だそうで、たくさんの感謝という意味が込められているそうです。楽曲的には、いつも通りの久保田利伸。相変わらず勢いすら感じられるファンキーなサウンドは安定感がある一方、それなりに今風にアップデートされているため、古臭さを感じません。それでも若干マンネリっぽい部分を感じたのは否定できないのですが、ファンならずとも安心して聴ける作品になっていました。

評価:★★★★

久保田利伸 過去の作品
Timeless Fly
Gold Skool
THE BADDEST~Hit Parade~

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2015年5月24日 (日)

ロベルト吉野復帰作

Title:コンドル
Musician:サイプレス上野とロベルト吉野

昨年2月、ロベルト吉野の体調不良により活動休止となったHIP HOPユニット、サイプレス上野とロベルト吉野。正直ちょっとその動向を心配していたのですが、無事復活。2年2ヶ月ぶりにニューアルバムの発売となりました。

その復帰後のアルバム、ロベルト吉野の活動休止を「ネタ」とした「イントロ」から彼ららしいと言えるかもしれませんが、全体的にはエンタテイメント寄りやポップ寄りになるではなく、かといって決してマニア向けになるのではなく、全体的にはHIP HOPの王道を行くようなアルバムといった印象を受けました。

サンプリングなどを上手く使いつつ、HIP HOP的なトラックを展開させつつ、前半は「おぎゃあ」「LOVE」などハードコア的な様相が強い作風。一方後半は、明るく爽快なサマーチューン「沖縄」や、途中、武富士のCMソングを取り入れてユーモラスな「2 THE MAX」などこちらはエンタテイメント色の強い作風を展開しています。

リリックの方も、地元横浜への愛情を歌った「ドリームアンセム」や自己紹介的な内容の「やってやるって」など、ここらへんもHIP HOPらしいといえばHIP HOPらしい内容。その側面でもHIP HOPの王道路線を感じさせます。

途中、ベスト盤も挟み、活動休止後初となるアルバムということもあって、サイプレス上野とロベルト吉野の、どこかひとつの特徴に特化した内容、というよりは彼らに出来ることを万遍なく収録したアルバムといった印象を受けました。そしてそれが結果として非常にオーソドックスなHIP HOPのアルバムとして完成した訳です。様々なタイプの楽曲をちゃんとこなすことの出来る彼ららしい作品と言えるでしょう。

もっともとはいえ彼らのアルバムなだけにいい意味で聴きやすくない訳はありません。前半のハードコア路線も含めて、基本的にはポップで聴きやすい内容。HIP HOPをあまり聴かないリスナー層も含めて十分アピールできるポピュラリティーがあります。復帰後第1弾で久々のアルバムでしたが、その魅力はいささかも衰えていないようです。今後はコンスタントに活動を続けてくれるのでしょうか・・・これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

サイプレス上野とロベルト吉野 過去の作品
WONDER WHEEL
YOKOHAMA LAUGHTER
サ上とロ吉のINMIX~non stop rental~
MUSIC EXPRES$
TIC TAC
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(紅)
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(白)


ほかに聴いたアルバム

I Found You/KOKIA

結婚後初となる約2年ぶりのKOKIAのニューアルバム。結婚したから、ということもあるのでしょうか、「Family Tree」をはじめ、「家族の愛」を感じるような、包み込むようなやさしさを感じさせる曲が多かったように思います。

サウンド的にはピアノやストリングスを入れた幻想的なサウンドは相変わらず。正直、ちょっと様式化しちゃっている部分や、過剰な演出でくどさを感じてしまう部分もあって、もうひとひねり欲しいかも、とも思ってしまったのですが。ただ、KOKIAらしいといえばKOKIAらしい音をきちんと聴かせてくれる1枚でした。

評価:★★★★

KOKIA 過去の作品
The VOICE
KOKIA∞AKIKO~balance~
Coquillage~The Best Collection II~
REAL WORLD
Musique a la Carte
moment
pieces
心ばかり
Where to go my love?

ONENESS/miwa

miwaの約2年ぶりのニューアルバム。シングル曲が多く収録されているということもあるのですが、全体的にはインパクトのある爽やかなポップチューンが多く、ミュージシャンとしての勢いを感じさせます。エレクトロアレンジのポップやキュートなアメリカンポップなどバリエーションもあり、いい意味でJ-POP的なバラエティーとインパクトのあるアルバムだったと思います。

評価:★★★★

miwa 過去の作品
guitarium
Delight

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2015年5月23日 (土)

ついに出た!待望の新譜!!

Title:The Magic Whip
Musician:blur

待ちに待ったニューアルバムがついにリリースされました!blur12年ぶりのニューアルバムがついにリリースされました。「12年ぶり」というのもそうなのですが、2009年に再結成してから6年。その間、インタビューなどで「新作はつくらない」とデーモンが語っていたり、あるいは、再結成ライブなどを「これが最後」などと評するようなライターがいたりと、「本当のところはどうなんだ?」とやきもきしていたのですが、なんとか新作リリースまでこぎつけたようです。

もっとも今回の新作、メンバーが「新作をつくろう」と意気込んで制作した結果、ではなく、もともとのきっかけは2013年、彼らがヘッドライナーとしてラインナップされていた「TOKYO ROCKS」が直前で急きょ中止となり、来日のための日程が休暇になったことがきっかけ。時間があいたため、香港のAvon Studioで音源を録りためたとか。もっともその音源は一度ボツとなり、新作発表の話は流れたものの、昨年11月、グレアム・コクソンがその時の音源とあらためて向き合い、ついに完成に至ったそうです。

そんな訳でリリースされた待望の新作。そう考えると国内で散々叩かれた(ネタにされた?)「TOKYO ROCKS」の中止騒動も結果的にはむしろ良かったわけですな(笑)。blurとしても12年ぶりなのですが、グレアム・コクソンが参加したのアルバムという意味では「13」以来、なんと16年ぶりとなるアルバムとなりました。

うれしいのは、このグレアム復帰というポイント。1曲目「LONESOME STREET」の出だしのギターの音。もうこれを聴くだけで「うん、これだよ、これ!」と思ったファンは多かったのではないでしょうか。他にも「GO OUT」だったり「I BROADCAST」だったり、昔のブリットポップ期を彷彿とさせるような、いわゆるblurらしい曲もチラホラ見受けられました。

ただこれが原点回帰のアルバムか、といわれると全くそうではありません。むしろ、デーモンにしろグレアムにしろソロでの活動も反映された結果のアルバム。例えば「ICE CREAM MAN」などはゴリラズの活動を彷彿とさせるような楽曲だったように感じました。

もっともとはいうものの、blurとしての前作「Think Tank」にしろ、グレアムがいた前作「13」にしろ、それ以前のブリットポップ期とは異なり、メンバーの新たな音楽的嗜好が反映されたアルバムでした。そういう意味では12年というインターバルがあいているものの、このアルバム、間違いなく「Think Tank」の次につながるアルバムというように感じました。

しかし、そんな新作の出来がどうだったかというと、決して悪いアルバムではないのですが、残念ながらどうにも煮え切らない作品のように感じました。初期の作風におもいっきり回帰した訳でもなく、また、個人的な趣味を炸裂させたかというと、デーモンにしろグレアムにしろどこかメンバーに遠慮があるような。かといって、明確に「売り」に走ったようなわかりやすいポピュラリティーもありませんし・・・。

メンバー全員で、作るぞ、と意気込んで作った作品ではなく、なんとなく出来てしまった感がアルバム全体に漂ってしまっている、そんなアルバムのように感じました。うーん、blurの新譜が出来たのはやはり素直にうれしいのですが、どうせつくるのなら、もっと本気モードでつくってほしかったなぁ、そんなことも感じてしまった新作。とはいえ、また次回作もつくってほしいなぁ、と期待してしまうのですが。

評価:★★★★

blur 過去の作品
MIDLIFE:A Beginner's Guide to Blur
All the People... Live in Hyde Park: 2nd July 2009
PARKLIVE

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2015年5月22日 (金)

「CAPS LOCK」の次の一歩

Title:WAVE RUNNER
Musician:CAPSULE

前作「CAPS LOCK」は、いままでのCAPSULEの方向性からそのスタイルを変えた、いわば「脱EDM」な作品となっていました。それだけに、その次にどのような曲を聴かせてくれるのか、楽しみにしていた新作。ジャケット写真的にも前作の延長線上にあるような写真になっており、「CAPS LOOK」の次の作品、ということを強く意識した新作と言えるでしょう。

ただその方向性は「CAPS LOCK」と大きく異なります。脱EDMを志向してポップス色の強かった前作と比べ、今回はむしろEDMの王道を行くようなナンバー。中田ヤスタカもインタビューで答えていますが、「CAPS LOCK」が家で聴くようなアルバムだとすると、本作はむしろフェスなどで聴いて踊りまくるような、そんなアルバムになっていました。

もっともEDMの王道といっても、もともと中田ヤスタカやCAPSULEなどがやっていたようなエレクトロポップが、徐々に広がっていきやがて「EDM」と呼ばれ出しただけに、本作はEDMの王道というよりは、CAPSULEがまた「CAPS LOCK」の前のスタイルに戻ってきた、というだけかもしれません。また、そういう意味でも、前作に比べると非常にCAPSULEらしいアルバムだったと思います。

ただ、とはいっても以前のCAPSULEは中田ヤスタカがやりたいことをやっている、実験的なテイストも強いミュージシャンでした。しかし今回のアルバムは、実験的な要素は薄く、良くも悪くも聴きやすいアルバムにしあがっていたと思います。イントロに続く2曲目「Another World」こそ、こしじまとしこのボーカルを入れてバキバキでロッキンなエレクトロサウンドを聴かせてくれますが、続く「Dreamin' Boy」「Hero」はむしろトランスの要素が強いナンバーになっており、思いっきりフロア志向を感じる反面、ある種のベタさも感じました。

そんな傾向はアルバム後半も続き、「Depth」のような強いビートとちょっと和風の哀愁あるメロディーを聴かせる「歌モノ」も入っていたりするのですが、終盤の「White As Snow」「Beyond The Sky」もまた、強いトランス調のナンバー。ライブで聴いたら気持ちいいんだろうなぁ、と思う反面、CDで聴くとちょっと物足りなさも感じてしまう部分もありました。

もともとライブ志向のアルバムということなので、CDで聴くことよりもあくまでも踊らさせることを重視した作品だったのかもしれません。そういう意味ではCD音源での評価は中田ヤスタカの意図する部分ではないのかもしれません。もっとも、聴いていて素直に気持ちよかったのは間違いないのですが。

評価:★★★★

capsule 過去の作品
FLASH BACK
MORE!MORE!MORE!
FLASH BEST
PLAYER
WORLD OF FANTASY
STEREO WORXXX
rewind BEST-1(2012→2006)
rewind BEST-2(2005→2001)

CAPS LOCK


ほかに聴いたアルバム

HEN 愛 LET'S GO!/POLYSICS

POLYSICSの新作はちょっとユーモラスな企画盤的ミニアルバム。ハヤシの偏愛をテーマとした内容で、彼が愛してやまないものたちへの偏愛が歌われています。その「愛してやまないもの」とはDr.Pepperだったり魚肉ソーセージだったりといったB級グルメがメイン。ただそれを「愛してやまない」というのもなんとなく理解できてしまったりして(笑)。

楽曲的にはいつものPOLYSICS。エレクトロパンクな曲の連続。そういう意味では変わり映えはしないのですが、7曲入りでわずか22分という短さなゆえ、ダレることなく最後まで楽しめることが出来ます。勢い重視の彼らの曲にとってはひょっとしたらこのくらいの長さがちょうどいいのか??

評価:★★★★★

POLYSICS 過去の作品
We ate the machine
We ate the show!!
Absolute POLYSICS
BESTOISU!!!
eee-P!!!
Oh!No!It's Heavy Polysick!!!
15th P
Weeeeeeeeee!!!
MEGA OVER DRIVE
ACTION!!!

さとがえるコンサート/矢野顕子+ TIN PAN

矢野顕子が毎年12月に実施している「さとがえるコンサート」。昨年はTIN PAN(細野晴臣/林立夫/鈴木茂)とのコラボライブだったのですが、今回、12月14日に実施した東京・NHKホールの模様を収録したライブアルバムがリリースされました。

2枚組となっている本作。当日も2部構成だったようですが、1枚目はTIN PAN、2枚目は矢野顕子寄りの演奏だったように感じます。気の合ったベテランミュージシャン同士が自由に音を鳴らしている空間といった感じ。ベテランらしい余裕を感じつつも、プロとしてライブにのぞむ緊張感も同時に感じられる、彼らだからこそ出来るライブの模様を垣間見れるアルバムでした。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -

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2015年5月21日 (木)

GW明けの新譜ラッシュ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週はGWということで一気に新譜ラッシュとなっています。そんな中、1位初登場はジャニーズ系。A.B.C-Z「A.B.Sea Market」がランクインです。これがアルバム2作目となる彼ら。前作「from ABC to Z」は4位初登場でしたので、これが初の1位となります。初動売上4万7千枚も、その前作の初動3万9千枚よりアップ。ただジャニーズ系としては若干地味な売上水準となっています。

2位はT.M.Revolution「天」がランクイン。これが10枚目となるアルバムなので、「10=TEN」にかけたタイトルということだそうです。前作「CLOUD NINE」以来4年ぶりの、久々となるオリジナルアルバム。初動売上3万3千枚は、前作の4万8千枚(2位)からダウンしてしまいました。

3位は韓国の5人組バンドFTISLAND「5.....GO」が入ってきています。こちらもメジャー5作目ということでこのタイトル。初動売上2万7千枚は前作「NEW PAGE」の2万2千枚(6位)よりアップ。

続いて4位以下の初登場ですが、まず5位に女性アイドルグループPASSPO☆「Beef or Chicken?」がランクイン。ベスト盤だった前作「TRACKS」以来、アルバムでは2作目のベスト10ヒットで、オリジナルアルバムとしては初のベスト10入り。また、5位というのもアルバムでは最高位となりました。初動売上1万1千枚は、その「TRAKCS」(9位)と同水準。ただオリジナルアルバムの前作「JEJEJEJET!!」の初動6千枚(19位)よりアップしています。

さて今週の8位から10位。オルタナ系ロックバンド・・・いわば「ロケノン系」と言われそうなロックバンド3組のアルバムが並びました。

まず8位にチャットモンチー「共鳴」。2人組となって2枚目となるアルバム。前作「変身」では2人だけで演奏にこだわりましたが、今回は「男陣」と呼ばれる男性ミュージシャンによるサポートメンバー、「乙女団」と呼ばれる女性ミュージシャンによるサポートメンバーによる楽曲が並んでいます。ただ初動売上9千枚は前作「変身」の2万1千枚(2位)から大きくダウンという厳しい結果に。まさかボーカル橋本絵莉子の入籍・妊娠公表という影響・・・じゃないよね??

9位はサンボマスター「サンボマスターとキミ」。ベスト10入りは2011年のベスト盤「サンボマスター 究極ベスト」以来、オリジナルアルバムでは2006年の「僕と君の全てをロックンロールと呼べ」以来という、久々の返り咲きとなりました。また初動売上7千枚も前作「終わらないミラクルの予感アルバム」の5千枚(11位)よりアップしています。もっとも、前作及び前々作ともに最高位11位という惜しい順位であり、ベスト10入りは久々ながら、なにげに根強い固定ファンをしっかり確保していることをうかがわせます。

最後10位にはamazarashi「あまざらし 千分の一夜物語 スターライト」がランクイン。「中2病バンド」といえばSEKAI NO OWARIが有名ですが、彼らも中2病的な歌詞が特徴的なバンド。今回は彼らの代表曲をアコースティックにリアレンジした企画盤だそうです。ベスト10入りは2013年にリリースしたミニアルバム「ねえママ あなたの言うとおり」以来2作目。ただ、初動売上6千枚は前作「夕日信仰ヒガシズム」の9千枚(12位)よりダウンしています。しかし、今週のようなチャートラッシュで10位の売上が6千枚ですか・・・。

そんな訳で今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年5月20日 (水)

ドラマ主題歌で50万超え

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週の1位は嵐「青空の下、キミのとなり」が獲得。フジテレビ系ドラマドラマ「ようこそ、わが家へ」主題歌。初動売上50万1千枚は前作「Sakura」の46万5千枚(1位)よりアップで、初動売上50万枚超えとなりました。ただ楽曲的には印象が薄いポップスで、前作の方がよかったように思うのですが・・・。

2位はEXILEの弟分のボーカルユニット、GENERATIONS from EXILE TRIBE「Evergreen」。ブルボン「フェットチーネグミ」CMソング。初動売上4万4千枚は、前作「Sing it Loud」の5万6千枚(3位)からダウン。前作はMUSIC CARD9種同時発売というドーピングを行っていたのですが、本作からはご存じの通り、MUSIC CARDは売上にカウントされなくなりました。ただ、その割には初動売上の下げ幅は思ったほどじゃなかったかも。

3位はここ何週間か、ずっと1枚はランクインしているキャラクターソング。CINDERELLA PROJECT「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 08 GOIN’!!!」。アニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ」挿入歌。初動売上2万5千枚。アイドルマスターがらみでは3週前のnew generations「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 07 できたてEvo! Revo! Generation!」以来で、その時の初動2万7千枚(6位)よりダウン。また、CINDERELLA PROJECTとしての前作「Star!!」の4万7千枚(4位)から大きくダウンしています。

で、「うたの☆プリンスさまっ♪」がらみは今週もランクイン。カミュ(前野智昭) 「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ アイドルソング カミュ(Saintly Territory)」が7位にランクイン。アニメ「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ」挿入歌。今回はいまさらここまでベタなのも珍しいようなヴィジュアル系王道風ナンバー。初動売上は1万6千枚で、「うたの☆プリンスさまっ♪」がらみでは先週ランクインした神宮寺レン(諏訪部順一)・来栖翔(下野紘)・愛島セシル(鳥海浩輔) 「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ クロスユニットアイドルソング 神宮寺レン・来栖翔・愛島セシル(Code:T.V.U)」の1万5千枚(3位)より若干のアップ。カミュ名義としては、前作「うたの☆プリンスさまっ♪アイドルソング カミュ(純潔なる愛-Aspiration-)」の2万1千枚(9位)からダウン。

続いて4位以下初登場ですが、4位にアイドルグループチームしゃちほこ「天才バカボン」がランクイン。アニメ映画「天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~」オープニング・テーマ。ご存じ、あの超有名なアニメソングのカバーです。初動売上2万5千枚は前作「シャンプーハット」の2万6千枚(4位)から若干の減少。

さて、ここから下位は、今週はロックバンドが目立っています。5位flumpool「FOUR ROOMS」、6位Fear, and Loathing in Las Vegas「Starburst」、9位KANA-BOON「なんでもねだり」と並んでいます。

flumpoolの4曲入りのミニアルバム風なコンセプトシングル。初動1万9千枚は前作「強く儚く」の2万5千枚(6位)からダウン。Fear, and Loathing in Las Vegasは本作もトランシーなエレクトロロックナンバー。初動売上1万7千枚は前作「Let Me Hear」(3位)から横バイ。KANA-BOONは学生時代の恋愛を歌ったようなキュートなポップチューン。初動売上1万4千枚は前作「シルエット」(11位)から横バイで、ベスト10入りは昨年5月にリリースした「フルドライブ」以来3作ぶりとなります。

他には・・・8位にボーカルユニットKalafina「ring your bell」が入ってきています。アニメ「Fate/stay night[Unlimited Blade Works]」エンディング・テーマ。彼女たちらしいコーラスラインをきかせつつ、スケール感ある爽やかなポップソングを聴かせてくれます。初動売上1万5千枚は前作「believe」の1万7千枚(10位)からダウン。

最後、10位にはいきものがかり「あなた」がランクイン。ストリングスを入れた伸びやかな彼女たちらしいミディアムチューン。初動売上1万4千枚は前作「GOLDEN GIRL」の1万2千枚(13位)よりアップで、前々作「熱情のスペクトラム」以来2作ぶりのベスト10入りとなりました。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2015年5月19日 (火)

ワンテイクで録音

Title:Damogen Furies
Musician:Squarepusher

Z-Machinesという自動演奏ロボットとコラボした企画盤的なアルバムのリリースはあったものの、純然たるオリジナルアルバムとしては3年ぶりとなる奇才、Squarepusherの新作。今回のアルバム、ひとつ大きな特徴があって、それはすべてワンテイクで録音されたという点。要するに、一度も楽曲の編集が行われておらず、ありのままの演奏を録音している、という点です。

でも、彼みたいなタイプの曲にワンテイクでの録音ってそこまで意味があるの??というのは当然感じる疑問で、実際、インタビューでもその手の質問に答えていて、その回答は・・・どうもマニアックな違いがあるみたいですが(^^;;しかし最近、彼は「演奏のスタイル」にちょっとひねりを加えたような作品が多い印象があって、上にも書いた前作では自動演奏ロボットとのコラボを行っていたり、その前にはSHOBALEADER ONEというバンドを組んでアルバムをリリースしてみたり・・・普通にエレクトロサウンドを奏でて普通にアルバムをつくる、ということに飽きてきたのでしょうか?

もっともそんな演奏スタイルの一工夫とは異なり、楽曲自体はむしろストレートに、Squarepusherらしさがあらわれている作品になっていたと思います。原点回帰的なものすら感じる今回のアルバム。1曲目「Stor Eiglass」からしてドリルンベースがさく裂しますし、次々と様々な音が展開する変態チックなメロディーラインが楽しめる「Kontenjaz」なんかも彼らしさを非常に強く感じます。

それと同時に、要所要所に意外なポップスさを感じられるのも本作の特徴。「Rayc Fire 2」は軽快なサウンドにポピュラリティーを感じましたし、「Exjag Nives」に至っては、意外と哀愁すら感じられるメロディーラインが流れてきていました。

破天荒でパンキッシュなサウンドを奏でているようで、その一方、実はなにげにそんなサウンドの向こうでしっかりと「メロディー」が流れているような印象を受けた今回のアルバム。Squarepusherのドリルンベースが、すっかり耳なじんできたから、ということもあるのかもしれませんが、全体的にはいい意味で聴きやすさを感じたアルバムでした。

ちなみにワンテイクにした影響は・・・うーん、「サウンドから緊張感が」と言いたいところだけど、正直そんなに違いは感じなかったなぁ(^^;;いや、ある意味リズミカルでライブ向けな曲が多かった、という印象も受けたのですが、それがワンテイクにした効果・・・か?

評価:★★★★★

SQUAREPUSHER 過去の作品
Just a Souvenir
SHOBALEADER ONE-d'DEMONSTRATOR
UFABULUM
Music for Robots(Squarepusher x Z-Machines)

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2015年5月18日 (月)

ひとことで言い表せない音楽性

Title:Sound&Color
Musician:Alabama Shakes

2013年のグラミー賞では最優秀新人賞を受賞するなど、一躍注目を集めたAlabama Shakes。その前作「Boys&Girls」は高い評価を得ましたが、それに続く待望のニューアルバムがリリースされました。

そして、このニューアルバムがはっきり言って、ビックリするほど素晴らしいんです。

Alabama Shakesといえば、ルーツ志向、ソウルテイストの強いロックバンドというイメージが強くあります。もちろん、今回のアルバムについてもそんなルーツ志向の強いサウンドを聴かせてくれています。

タイトルチューンの「Sound&Color」のエレピの音色からまさにソウルテイストが強いのですが、そこにのるブリトニー・ハワードのボーカルもまた、ロックというよりもブラックミュージックテイストの強いもの。このブリトニーの、力強く、時には優しいボーカルが、Alabama Shakesの大きな魅力。今回もソウルフルなボーカルを聴かせてくれる「Gimme All Your Love」や、その逆、とても優しい歌声が胸に響く「This Feeling」など、非常に魅力的な歌声を聴かせてくれています。

ただAlabama Shakesの魅力はブリトニーのボーカルにとどまりません。なんといってもバンドの奏でるグルーヴ感がたまりません!「Don't Wanna Fight」あたりが典型的なのですが、シンプルながらも力強いドラムのリズムに、力強くリズムを刻むギターサウンドが独特のグルーヴ感を奏でています。このサウンドはソウルテイストを強く感じながらも、へヴィーなギターサウンドはむしろロック寄り。このロックとソウルの絶妙なバランスがAlabama Shakesの大きな魅力となっているように感じます。

しかし、今回のアルバム、「ルーツ志向のロックが魅力的」と一言で言ってしまえるようなシンプルなものではありません。むしろルーツ志向という枠組みに留まらない音楽性が今回のアルバムの大きな特徴となっていました。

例えば「Guess Who」はソウルはソウルでもフィリーソウルなナンバーですし、さらに「The Greatest」はガレージロック風、「Shoegaze」などはポップテイストの強いギターロックになっています。さらに「Gemini」に至っては、基本的にはソウル風なのですが、そのサウンドにはどこかポストロックからの影響まで感じられます。

ひとつのジャンルにとらわれない音楽性を垣間見せながらも、アルバム全体としてちゃんとAlabama Shakesの作品として仕上がっています。彼らの音楽にはそれだけ大きな包容力を感じさせると同時に、2作目にしてしっかりと自分たちの音を確立している、そう感じさせるアルバムでした。彼らの音楽の前には「ルーツ志向」なんて単純な言葉でくくるのが陳腐に感じさせるような、そんな作品だったと思います。

さらに今回のアルバム、売上的にもアメリカビルボードチャートで1位を獲得するなど、その人気を確実なものとしています。ただ、このアルバムの内容ならその人気の理由も納得。そして間違いなく今年のベスト盤候補のアルバムだと思います。文句なしの傑作でした。

評価:★★★★★

Alabama Shakes 過去の作品
BOYS&GIRLS


ほかに聴いたアルバム

DEMOLICIOUS/GREEN DAY

GREEN DAYが2012年にリリースした3枚のアルバム「UNO!」「DOS!」「TRE!」のデモ音源を収録したアルバム。デモ音源といっても未完成の形ではなく、ほとんどがほぼ楽曲として完成した形での音源。オリジナルに比べると若干サウンドは荒い感じがするのですが、それだけオリジナル以上にバンドサウンドを前に出した作品が多く、下手したらこちらの音源の方がよかったんじゃない?という曲もあるほど。ともすれば3枚のアルバムの「ベスト盤」的にも楽しめるアルバムになっています。

評価:★★★★★

GREEN DAY 過去の作品
STOP DROP AND FALL!!!(FOXBORO HOTTUBS)
21st Century Breakdown
AWESOME AS F**K(邦題:最強ライヴ!)
UNO!
DOS!

TRE!
爆発ライブ~渋谷編

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2015年5月17日 (日)

歌詞の持つパワーを感じる

Title:URCゴールデンベスト

今回紹介するのは、URCレコードからリリースされた代表曲を収録したベスト盤。「URC」とは、「アングラ・レコード・クラブ」の略で、1969年に設立された、当初は会員制という形で活動を行っていた、日本最初のインディーレーベルとも言われているレコードクラブ。もともと関西フォーク系のミュージシャンが中心に設立されたそうで、60年代から70年代にかけての学生運動を背景としたプロテストソングが多く収録されています。

基本的に左翼的な思想の労働歌や反戦平和をテーマとした曲が多く収録されており、そういう意味では「癖」のあるレコードクラブと言えるかもしれません。ただ、一方でこれらの曲を聴いて感じたのは、彼らの歌う言葉の力の強さでした。

ここ最近の均一的な歌詞は、嘲笑と共に揶揄されることが少なくありません。もちろん、今dも優れた歌詞の曲を歌うミュージシャンはたくさんいます。ただその一方でどうしようもないくらい薄っぺらい歌詞の曲があふれているのも事実です。

一方でこのベスト盤に収録されている曲は、どれも重いテーマ性をリスナーにいかに自分の言葉を届けるか考えつくされた歌詞が並んでいます。基本的にアコースティックギターがメインのフォークソングなだけに、メロディーやアレンジはシンプルなのですが、それだけに歌詞が心にずっしり重く残るような曲が目立ちました。

ただプロテストソングといっても大上段に構えて反戦平和を歌う、というよりもどこかユーモアを交えながら歌っているのが特徴的。例えば加川良の「教訓1」のように

「命をすてて 男になれと
言われた時には ふるえましょうヨネ
そうよ 私しゃ 私しゃ 女で結構
女のくさったので かまいませんよ」

(「教訓1」より 作詞 加川良)

なんて、「国のために命を捨てるな」という重いテーマ性ながらもどこか歌詞にはユーモアセンスが感じられたりします。

もちろんそんなプロテストソングに限らず、早川義夫の「花が咲いて」のようなサイケ、金延幸子の「み空」のような美しい女性ボーカルを聴かせるソフトロック、ザ・ディランⅡ「プカプカ」のようにスモーキーな雰囲気も漂うブルースなどバラエティー富んだ作品も。またなぎら健壱「悲惨な戦い」のような、今聴いても笑えるコミックソングなんかも収録されています。

またその他の歌詞で特に印象に残ったのが中川五郎の「腰まで泥まみれ」。パッと聴くと軍隊が主人公の反戦歌のような内容なのですが、実は「時代が変わったことに気が付かず、自分の経験でしか物事を測れない人たち」を揶揄した曲。今でもこういう上司、普通にいそうだなぁ・・・と感じてしまいます。もっとも、この曲にリアルタイムで喝采を送っていた人たちが、今や、この曲に出てくる「隊長」になってしまっている人も少なくないんだろうなぁ。

そしてそんな曲たちは、どの曲にも、自分たちの曲をリスナーに伝えたいという想いを感じました。また、だからこそ楽曲から強いパワーを感じます。ある意味、このリスナーに伝えたいという楽曲、今のヒット曲からは少なくなってしまったのではないでしょうか。安易な懐古志向は禁物ですが・・・ただこういう伝えたい気持ちを強く持ったミュージシャンが、今の時代にももっともっと出てきてほしいなぁ、と感じてもしまったアルバムでした。

評価:★★★★★

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2015年5月16日 (土)

30周年のライブツアー

30th Anniversary「渡辺美里 日本全国ツアー 30th Revolution」

会場 エレクトリック・レディ・ランド 日時 2015年5月9日(土) 17:30~

Misatolive2015

渡辺美里の30周年記念ライブツアーに足を運んできました。昔は毎年必ず西武スタジアムの夏の恒例ライブに足を運んでいたのですが、その西武スタジアムのライブが終わった後、ちょっと足が遠ざかっていました。で、久々に足を運んだのですが・・・よく考えたら彼女のワンマンに行くのは10年ぶり(!)。うーん、すっかりご無沙汰になってしまっていたなぁ。

今回のライブはライブハウスツアーということで、名古屋では大須のE.L.L.でのライブ。この日は無事ソールドアウトしたみたいで、立錐の余地もないくらいの超満員の中ライブがスタート。最初は彼女がリリースしたオリジナルアルバムを、リリースした年と同時にアナウンス。30周年らしい凝ったスタートとなりました。

そんな1曲目はライブの定番曲「サマータイム・ブルース」からスタート。いきなりテンションがあがりまくりの中、そのまま2曲目は最新アルバムから「青空ハピネス」へと続きます。往年のヒット曲を意識した、いわばセルフパロディー的な曲なのですが、それだけに「サマータイム~」からのつながりもバッチリ。会場も大いに盛り上がります。

その後、短いMC。さらに懐かしい「Long Night」へと続きます。名曲を懐かしく聴きいった後は最新アルバムから「A Reason」「Glory」と続きます。その後のMCではこれらの曲についての簡単な紹介。「A Reason」はジャズピアニストとなった大江千里が久々に挑戦したポップの曲で「ポップだけど変拍子とかが入っていて、手拍子が難しいかと思ったんですが、みんなちゃんとついてきていますね」なんてMCがあったりしました。

この日はその後、懐かしいライブの定番曲と最新アルバムのナンバーが交互に続く構成。昔の曲と似たようなタイプの最新アルバムの曲を続けて聴かせたりするのがユニーク。ライブで披露するのはちょっと珍しい「泣いちゃいそうだよ」から最新アルバム「点と線」と聴かせるナンバーが展開。その後のMCでは、先日の日比谷野音ライブで「点と線」の作者、木根尚登が来ていたエピソードなどを紹介していました。

そこからは「IT'S TOUGH」「今夜がチャンス」「涙を信じない女」と新旧織り交ぜての構成から、「虹をみたかい」へ。個人的にも聴きたいナンバーでしたが、パワフルなボーカルにゾクゾクっとくるものがありました。「涙を信じない女」もそうなのですが、こういうファンキーな曲を易々と歌い上げちゃうあたり、なんだかんだいってもやはり歌は上手いんだよなぁ、ということを感じます。

この「涙を~」「虹を~」という比較的ダークな曲から、一気に「My Revolution」と続く構成は、この日一番胸に来るものがありました。そして会場のテンションも最高潮に達します。

その後、再びMCが入って本編ラストは最新アルバムから「オーディナリー・ライフ」。本人作詞作曲によるアルバムのタイトルナンバーをしんみりと歌い上げ、本編が終了しました。

もちろんその後は盛大なアンコールに。やがてバンドメンバーが出てくると「10years」のイントロがスタート!やがて曲を歌いながら渡辺美里が再びステージに登場します。そしてそのまま最新アルバムから「夢ってどんな色してるの」へと続きました。

アンコールはまだ続きます。MCを挟んで、こちらもライブではおなじみの「恋したっていいじゃない」へ。これまた会場のテンションは最高潮へ。盛り上がったまま、最後のMCを挟んで、ラストは最新アルバムのラストナンバー「ここから」で締めくくり。ジャスト2時間のステージでした。

10年ぶりに足を運んだライブだったのですが、はじまってしまえば10年ぶりというのは全く関係ありませんでしたね。昔の西武スタジアムでのライブと同様に盛り上がりました。ただその時と異なり、間近に彼女の姿が見えたのがよかったのですが。

CDだと最近の彼女のボーカルは、どうにも「ノベっと」した感じというのでしょうか、平坦な感じがしてしまい、いまひとつという印象があったのですが、久々で生で聴くと、全く気になりませんでした。やはりパワフルなそのボーカルは、ライブで聴くとやはり上手いよなぁ、と感心してしまいます。演奏ももちろんベテラン勢をそろえて、彼女のボーカルを含めて非常に安定感あるステージでした。

ただ、この手のベテランのミュージシャンに共通する話なのでしょうが、最新アルバム以外の曲が、一番最近の曲の「泣いちゃうそうだよ」の23年も前の曲というのがちょっと・・・。もっとも、ここ10年の「新曲」を演奏されてもおそらくほとんど盛り上がらなそうなのですが・・・。

そんな訳で久々の美里ワンマン。西武でのライブと比べると2時間という時間は非常に短かったのですが、それでも十分すぎるほど楽しめたステージでした。久しぶりに美里ファンとしての血が燃えたライブ(笑)。とても楽しいひと時でした。

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2015年5月15日 (金)

懐かしさにひたりながら・・・

Title:映画ドラえもん主題歌大全集

以前、藤子Fアニメに使われた曲を網羅的に収録したアルバム「藤子・F・不二雄 大全集」を紹介しました。その時の感想として、ドラえもん映画主題歌がほとんど収録されていないのが残念、ということを書きました。でも、直後にこういうアルバムが企画されていたんですね。ドラえもんの映画主題歌を、同時上映の短編映画の主題歌を含めて網羅的に収録したオムニバスアルバム。初期の作品についてはリアルタイムで夢中で見ていた私にとっては懐かしさも相まって、「藤子・F・不二雄 大全集」に引き続き聴いてみました。

なんかね、想い出補正の部分もあるんでしょうが、全3枚組のアルバムなのですが、DISC1以外はいりません(笑)。いや、まじで。

ある程度ドラえもん映画を知っている方には常識なのですが、初期のドラえもん映画にとって主題歌と言えば武田鉄矢が手掛けているというのが常識でした。それが1996年の藤子F先生の逝去に伴い、武田鉄矢も一度ドラえもん映画を卒業。その後は「普通の」J-POPシンガーによる主題歌が並んでいます。

いまでもこの初期、武田鉄矢期の評価は非常に高いのですが、今回DISC1に収録されている武田鉄矢の作詞による初期の主題歌は、今聴いても神がかったものを感じます。個人的に一番好きなのは「のび太の宇宙小戦争」の主題歌「少年期」。名曲名高いこの曲は、リアルタイムで聴いた時にも強い印象に残った大好きなナンバーだったのですが、30年たった今聴いても、心に染みるものがあります。特にノスタルジーあふれる歌詞については、むしろアラフォーになってしまった今だからこそ、胸に迫るものがありました。

そもそも一番最初のドラえもん映画「のび太の恐竜」主題歌「ポケットの中に」からして見事にドラえもんの世界を1曲の中に表現した傑作。他にも「友達だから」だとか「心をゆらして」だとかドラえもんの世界観に見事マッチした傑作が並んでいます。

それに比べると、その後のJ-POP期の作品は、タイアップによる宣伝効果を狙ったことが垣間見れるような曲が多く、曲自体の出来はともかくとしてドラえもん映画の主題歌としてはちょっと疑問に感じるような曲も少なくありません。特に酷いのが、武田鉄矢卒業直後のナンバー。矢沢永吉の「Love is you」なんて曲自体の出来はもちろん悪くないのですが、ドラえもんの雰囲気に全く合っていません。そもそもドラえもん映画に矢沢永吉って何?当時の会議とかで「ドラえもんと矢沢永吉ってギャップがおもしろくない?」みたいなノリで決まったんでしょうか。全然おもしろくありません。

それでもドラえもんの声優陣が変わりリニューアルしたあたりから、徐々にドラえもんの世界観に沿ったような曲が増えてきています。BUMP OF CHIKEN「友達の唄」やPerfume「未来のミュージアム」なんかはドラえもん映画の世界観にちゃんと沿っていますし、その他の曲に関しても違和感ある曲も少なくなってきています。いかにも流行りどころで選びました、的な人選も目立つのですが、それでもまだマシになってきている感じでしょうか。

ただ一方で、武田鉄矢期についてもあまり神格化しすぎるのは疑問で、正直、彼が作詞を手掛けた後期の作品については、少々ネタ切れ気味、失速気味を感じます。賛否両論あったみたいですが、藤子F先生逝去の段階でドラえもん映画卒業というのは、今から考えるとちょうどよい区切りだったのかもしれません。

そんな訳で、ノスタルジックな気持ちにひかれながら楽しめたオムニバスアルバムでした。DISC1の、特に前半は、まじでサイコー!!DISC2、3のいかにも流行りのミュージシャンに歌わせてみました的な曲に閉口しながらもそれなりに楽しめたアルバム。子供の頃、ドラえもん映画を見ていた方にとっては懐かしさにひたりながら楽しめるアルバムです。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015 開催記念BEST COVERS-

ドリカムのカバーアルバムの、タイトル通り第2弾。第1弾は参加者がいまひとつ魅力的に感じられずスルーしたのですが、この第2弾はNICO Touches the WallsやらMONGOL800やらちょっと意外な人選もユニークで、今回はチェックしてみました。

前半に関しては正直無難なカバー。一応それなりに上手いシンガーをそろえているのですが、原曲そのままのカバーでカラオケの域を出ていません。ユニークだったのは後半。レゲエ風に「決戦は金曜日」をカバーしたNICO Touches the Wallsは予想以上におもしろいカバーでしたし、「a little waltz」を軽快なギターロック風にまとめたMONGOL800もなかなかの出来。最後の徳永英明「LOVE LOVE LOVE」は格の違いをみせつけています。

ただとはいえ全体的には「でもやはり吉田美和のボーカルが一番かなぁ」と感じてしまったのも事実で。逆にあらためて吉田美和のボーカリストとしての実力も感じてしまったカバーアルバム。正直、もうちょっと「大物」もそろえてほしいかも、と思ってしまった部分も。

評価:★★★★

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2015年5月14日 (木)

格の違いを感じる

Title:葡萄
Musician:サザンオールスターズ

前作「キラーストリート」から約9年半。途中、活動休止や桑田佳祐の食道ガンといった今度が不安になるような出来事も挟みつつ、ついにリリースされました。サザンオールスターズのニューアルバム。2013年の活動再開からも2年が経過しており、ファンとしては待ちに待ったアルバムといった感じでしょう。

そんな久々に聴くことがでたサザンの新作ですが、聴いてまず感じたのはその格の違いでした。正直言って、そんじょそこらのバンドじゃあ、まず一生作ることが出来ない水準のアルバム。だっていきなり4つ打ちのダンサナブルな「アロエ」からスタートしたかと思えば、昭和のキャバレーロック風な怪しげな空気がむんむんと立ち込める「青春番外地」への突入し、さらにメロウなシティーポップ「はっぴいえんど」と続くんですが、まずこれだけバリエーションある展開ながらもどの曲もインパクト十分。かつ、ちゃんとサザンらしさが楽曲からは流れていて、バラバラといった印象を受けません。

この音楽性の広さ、そしてその広い音楽性を、上澄みだけ掬い取るのではなくちゃんと自分たちの音楽としているスタンス、さらにはそれにもかかわらずインパクトあるポップにまとめあげているという事実。正直、このアルバムを聴いて、「やはりサザンはすごい・・・」とうなってしまいました。

その後もバラエティー富んだ作風は続きます。ハードロック風の「Missing Persons」、タンゴ風の「天井桟敷の怪人」はどこか漂うエロティシズムな雰囲気も魅力的。「天国オン・ザ・ビーチ」は昭和のコミックバンドが歌っていそうな、コミカルなポップソングに仕上げていて、とてもユニーク。また、個人的に大好きな原坊ボーカルによる昭和歌謡曲路線「ワイングラスに消えた恋」も実に魅力的な名曲。様々なタイプの曲が並んでいながらも、基本的にはサザンらしい王道を行くような楽曲ともいえる訳で、ファンにとっては壺をつきまくられるような展開になっていたかと思います。

また今回、そんなサザンらしさを感じる楽曲が並ぶ中、一方ではかなり明確なメッセージ性を感じさせる作風になっています。昨年の紅白で歌った後、いろいろな意味で話題となった「ピースとハイライト」も今回のアルバムにもちろん収録されていますが、「平和の鐘が鳴る」でも明確に平和にむけてのメッセージを歌い上げています。これらの曲に共通するのは、平和を率直に願い気持ち。不必要に争いを招くような論調が残念ながら目立つ現在だからこそ、復帰後最初のアルバムに強いメッセージ性を込めたように思います。

また同じメッセージ性が強い曲として「Missing Persons」もそうでしょう。北朝鮮の拉致問題を歌ったこの曲は、横田めぐみさんの名前も登場します。ただ、この曲でも北朝鮮と戦争をするのではなく、話し合いと外交技術での解決を求めている歌詞が非常に印象的でした。

こういうメッセージ性の強い曲をポップなメロディーにのせてサラリと歌い上げられるのも彼らの実力でしょう。凡百のミュージシャンが歌えば、単なる説教臭い曲になってしまうような曲も、アルバムの中で違和感ないポップソングとして並んでいます。

そんな訳で、様々な側面からサザンオールスターズというバンドのすごみ、格の違いを感じさせてくれるアルバムでした。う~ん、やはり彼らはすごいミュージシャンだ・・・。文句なしの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Outside of Melancholy/fhana

ポストロックバンドFLEETでも活躍する佐藤純一らによる4人組ユニット。基本的にアニソンを中心に活動をしているバンド。本作では初のベスト10ヒットとなったこともあり、はじめて聴いてみました。

楽曲的には一言で言うとベタなJ-POP。メロディーには懐かしさを感じる反面、売れ線狙いのインパクト重視による単調さを感じてしまいます。ボーカルも高音主体の平坦なボーカルで、こちらは90年代の小室系やavex系そのまま。良くも悪くも90年代を引きずった楽曲といった感じ。

ただ一方、ポストロックバンドとしての活動もしている佐藤純一がサウンドプロデュースを手掛けるだけに、サウンドは要所要所に凝った部分も見受けられるのはユニークなところ。メロディーがはじまると単なる「伴奏」になっている部分もあるものの、ちゃんと聴かせるサウンドになっていました。

全体的にはいかにもイメージ通りの様式化された「アニソン」的な部分はありつつ、そのベタさも含めてそれなりに楽しめることの出来るアルバムにはなっていたと思います。個人的にはサウンド面でもうちょっとぶっとんじゃっても受け入れられるんじゃないかなぁ、と思うのですが。

評価:★★★★

男心DANCIN'/及川光博

しばらくTHE FANTASTIXとの共同名義による企画盤的なアルバムが続いていたため、ミッチー単独名義ではちょっと久々となる新作。本作の特徴は、全編EDMのナンバーが並んでいること。軽快で男性フェロモン出しまくりなダンスナンバーは彼らしいなぁ、と思いつつ、正直、「いまさらEDM?」と思ってしまったのも事実。また、以前のナンバーのリミックスによるセルフカバー曲も多く、純然たる新曲は少な目というのもマイナス要素。ただ楽曲のインパクトは強く、ライブでは盛り上がりそうだなぁと思いつつ、最後まで楽しめるアルバムではあったのですが。

評価:★★★★

及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス

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2015年5月13日 (水)

GW中ゆえに・・・

今週のチャートは対象日がGW中。ということで全体的に低水準のチャートになっています。また、アルバムチャートは新譜が少なかったため、今週はシングルアルバム同時更新です。

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

まず1位はジャニーズ系。V6「Timeless」が獲得。例のごとくテレビ朝日系ドラマ「警視庁捜査一課9係 season10」主題歌。初動売上9万3千枚は前作「Sky's The Limit」の9万5千枚(1位)から若干ダウン。前作は初回盤のCDにMUSIC CARDがついてきて、売上のダブルカウントが行われているのではないか?という疑惑付のシングルでした。ただ、今回はリリース形態全4種を同時に購入すると招待されるイベントが用意されているなど、相変わらずドーピング効果が続いていると思われます。

2位は韓流の女性アイドルグループKARA「サマー☆ッジク」。夏に向けての爽やかなサマーチューン。初動売上5万2千枚は前作「マンマミーア!」の2万6千枚(6位)から大幅増。3作前の「サンキュー サマーラブ」初動6万9千枚の水準に戻ってきています。

3位は神宮寺レン(諏訪部順一)・来栖翔(下野紘)・愛島セシル(鳥海浩輔) 「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ クロスユニットアイドルソング 神宮寺レン・来栖翔・愛島セシル(Code:T.V.U)」。また例のごとくアニメ「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ」挿入歌。楽曲は特に面白味もないトランス調のナンバー。これで「うたの☆プリンスさまっ♪」がらみは5週連続のベスト10入り。初動売上1万5千枚は先週ランクインした美風藍(蒼井翔太) 「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ アイドルソング 美風藍(Innocent Wind)」の2万1千枚(9位)よりダウン。

続いて4位以下の初登場です。4位は女性アイドルグループALLOVER「超えてけエブリシング」がランクイン。こちらもやっつけ感が漂う前向きJ-POP。初動売上1万3千枚は前作「友情エクスプレス」の1万枚(10位)からアップ。

5位にはロックバンドクリープハイプ「愛の点滅」が入ってきました。映画「脳内ポイズンベリー」主題歌。初動売上1万2千枚は、前作「百八円の恋」の初動9千枚(14位)よりアップして、前々作「エロ」以来、2作ぶりのベスト10入り。ただし、前作はアルバム先行シングルで売上を落としていました。前々作「エロ」は初動1万3千枚なので、こちらと比べるとほぼ横ばいという結果。

6位初登場はヴィジュアル系バンドRoyz「THE BEGINNING」。初動売上1万1千枚で、前作「Supernova」(11位)から横バイ。ベスト10ヒットは前々作「LILIA」以来2作ぶり。

最後10位には西内まりや「ありがとうForever...」がランクイン。ファッションモデルなどで活躍し、昨年のレコ大の新人賞を受賞しています。レコ大の新人賞を取った時は正直「誰それ?」って印象だったのですが。本作は初のベスト10ヒット。フライング販売があった影響で、先週の45位からランクアップし、2週目にしてのベスト10入り。売上的にも、先週の3千枚から7千枚にアップ。2週あわせると1万1千枚で、今週の8位相当になります。ちなみに前作「7 WONDERS」は初動9千枚(13位)。


今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

アルバムチャートは先週以上に低水準なチャートとなっています。

そんな中、1位は浜田省吾「Journey of a Songwriter ~旅するソングライター」が2週連続で1位獲得。60代で2週連続1位獲得は、シングルアルバム共にはじめてということです。売上枚数は先週の8万枚から2万4千枚と大きく落としていますが、根強い人気を感じさせます。

参考サイト 浜田省吾、史上初の60代で2週連続アルバム首位

2位は先週3位の「ワイルド・スピード スカイミッション サウンドトラック」がランクアップ。3位には先週2位のサザンオールスターズ「葡萄」。どちらもロングヒットを続けていますが、特に「ワイルド・スピード」は1万5千枚→1万6千枚と今週も売上を伸ばしており、まだまだヒットが続きそう。

続いて4位以下初登場ですが、初登場最高位は「ドラマCD『抱かれたい男1位に脅されています。』」。いわゆる「ボーイズラブ」のドラマCDらしいです。こういうのが上位に入ってくるってのは・・・う~ん・・・。

初登場はもう1枚のみ。人気男性声優入野自由「僕の見つけたもの」が8位にランクインです。ベスト10入りはシングルアルバム通じて初。初動売上5千枚は前作「E=mc2」の3千枚(17位)からアップ。

初登場は以上ですが、今週は1枚返り咲きが。10位にTaylor Swift「1989」が先週の13位から返り咲き。1月12日付チャート以来のベスト10返り咲きとなりました。そもそも本作、発売はおととしの10月。驚異的なロングヒットを記録しています。ちなみに売上枚数は4千枚。こちらの方はベスト10入りの枚数としてはビックリするくらいの低水準。Taylor Swiftの人気には、ここ最近のヒット曲では見られなかったようなリスナー層のすそ野の広さを感じる反面、わずか4千枚でベスト10入りというのはCD販売の厳しい現実を感じさせるという、ある意味相反するランクインとなりました。

今週のチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年5月12日 (火)

Charaらしい傑作

Title:Secret Garden
Musician:Chara

2年半ぶり、ちょっと久々となるCharaのニューアルバム。今回のアルバムタイトルになった「Secret Garden」とは、秘密の花園=女性の子宮をイメージしているそうです。ジャケット写真もやはりそれをイメージしているのでしょうか。

そのタイトルナンバーとなった「Secret Garden」でも、いきなりこんな語りからスタートします。

「ねえ、私のお庭に来て
愛の花をつぶさないで」

(作詞 Chara 「Secret Garden」より)

ある意味、私のお庭=子宮と考えると、どこかエロティシズムを感じてしまいます。ただその一方で、エロティシズムといってもお下劣なイメージは全くありません。むしろその一方で「女性の子宮」から考えられるもう一つのイメージ、大いなる母性も、このアルバムからは感じられます。

エロティシズムという方向からの女性的な部分と、母性という方向からの女性的な部分を共存させた内容・・・ここ最近のCharaの楽曲に共通する部分だと思います。愛すること、恋することのエロティシズムな部分をしっかり読み込みつつも、一方ではピュアな部分を歌い、さらにはその歌声からにはリスナーの心を包み込むようなやさしさがある・・・だからこそ、エロティシズムと母性という、一見相反する「女性」的な部分を見事両立した曲を歌えるのでしょう。

今回のアルバムでは、よりそんなCharaの楽曲の特徴が際立っているように感じました。特に今回のアルバムでは、優しく包み込むような彼女の歌声がより強くなっているようにも感じます。また、ピアノとギターで聴かせる「ひかりの匂い」や静かなアコースティックサウンドを聴かせる「不器用」など、サウンドの作り込み方にもとても優しさを感じます。

楽曲的にはノイジーなギターを押し出したロック色の強い「恋は危険さ」や、打ち込みを導入した「はちみつ」などバリエーションを持たせつつ、基本的にはソウルからの影響の強い彼女のボーカルが柱となっているため、アルバム全体としての統一感もしっかりと出ていました。

そんな訳で、とてもCharaらしいアルバムだったのですが、Charaらしいがゆえに聴いていてその暖かく優しい雰囲気につつまれるような心地よい傑作に仕上がっていたと思います。一方で、そんな中垣間見れるエロティシズムにちょっとドキドキもしちゃったりして。デビューから来年で25年を迎える彼女ですが、まだまだその魅力は全く衰える気配もなさそうです。

評価:★★★★★

CHARA 過去の作品
honey
kiss
CAROL
Very Special
Dark Candy
うたかた
Cocoon
JEWEL


ほかに聴いたアルバム

12/cali≠gari

ドラムスの武井誠脱退のため第8期に突入したcali≠gariの3年2ヶ月ぶりとなるニューアルバム。久々のアルバムの冒頭を飾る「わるいやつら」の過激な歌詞に惹かれるものの、その後に関しては比較的ポップな内容。トランシーなサウンドやロックテイストの強い作品、あるいはアコースティックなサウンドでカントリー風に仕上げた曲など、様々な作風の曲が同居しているあたりは彼ららしいのですが、彼ららしい「変態性」は薄め。それなりに楽しめたアルバムなのですが、どこか物足りなさも感じてしまいました。

評価:★★★★

cali≠gari 過去の作品
10
cali≠gariの世界

11

THE THRONE/AK-69

本作ではそのものズバリ「NGY」なんて曲もあったりする、名古屋を中心に活躍するラッパー、AK-69のニューアルバム。今回はハードコア色の強いアルバムで、いかにも「ワルイ」感じのラッパーという雰囲気を醸し出しています。また、名古屋出身を強調した「NGY」なんて曲を持ってくるあたり、「ストリート出身」ということを強調したかったのでしょう。ただとはいえ、本当の意味での「ヤバさ」は感じられず、基本的にはポップで聴きやすい内容。本気で「ヤバイ」わけではなく「ヤバイ」雰囲気を醸し出しているけど、基本はポップというスタンスが彼の人気の理由なんでしょうが。

評価:★★★★

AK-69 過去の作品
THE CARTEL FROM STREETS
THE RED MAGIC
The Independent King
Road to The Independent King

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2015年5月11日 (月)

無期限活動休止前の集大成

Title:BEST HIT the telephones
Musician:the telephones

5月21日に行われる、初の武道館ライブを最後に活動休止するthe telephones。ちょうど今年は結成10周年の区切りの年、ということもあり突然の「無期限の活動休止」宣言は驚きをもって迎え入れられました。

そして本作はそんな彼らが、10周年という区切りにリリースした初のベストアルバム。タイトルもジャケットも、ダンスミュージックのコンピレーションによくありがちなパターン。ただ一方では実にthe telephonesらしい、ともいえるかもしれません。本作ではそんな彼らの作品が、インディーズ時代の楽曲を含めて時系列順に収録されています。

この時系列順に収録された、という曲順がなかなかユニーク。特に序盤の曲に関しては、徐々にthe telephonesらしさを確立していく過程が聴けるのと同時に、デビュー当初から現在までthe telephonesとして変わらない部分も強く感じます。例えば1曲目「happines,happiness,happiness」では手拍子からスタートするライブで盛り上がりそうなナンバー。あくまでも観客を盛り上がらせるというthe telephonesのすべての楽曲に共通する要素を感じる一方で、後のthe telephonesらしいディスコテイストは薄めになっています。

この序盤は「ディスコ」というよりも「sick rocks」のようなロック寄りの楽曲もあったりして、ボーカル石毛輝の声もまだハイトーンボイスではありません。そのハイトーンボイスが登場するのが「Love&DISCO」。そして6曲目「Urban Disco」あたりから明確にthe telephonesらしさがあらわれてきます。

さてthe telephonesというと打ち込みのディスコナンバーに薄くギターのバンドサウンドが重なるサウンド。そこに石毛輝のハイトーンボイスで「ディスコディスコ!」って言っているイメージ・・・なのですが、このベスト盤であらためて聴くと、意外とバリエーションの多い楽曲を演っているなぁ、という印象を受けました。

例えば「I Hate DISCOOOOOOO!!!」ではタイトル通り、へヴィーなギターサウンドを「アンチディスコ」みたいなイメージで入れてきて、そのギターとディスコサウンドの対比がユニークですし、「D.E.N.W.A」ではパンキッシュな要素も強く感じます。「It's Alright To Dance(Yes!!!Happy Monday!!!)」ではベースラインにファンク的な要素も感じますし、新曲「Say DISCO」ではメロディーにどこか歌謡曲っぽさも感じます。

そんなバリエーションの多い展開だったため、飽きずに最後まで楽しむことが出来ましたし、the telephonesの意外な音楽性の広さも感じることが出来ました。・・・・・・とはいうものの、基本的にはやはり打ち込みメインのディスコサウンド。聴き終わった後は石毛輝がハイトーンボイスで「ディスコディスコ!」言ってたなぁ・・・という印象が残ってしまうことは否めません(^^;;

そういう意味ではやはり良くも悪くも大いなるマンネリな部分は否定できませんし、また今回、無期限の活動休止とするのは、the telephonesとしてやれることをある程度やりつくした、ということも大きいのかもしれません。ただ、このベスト盤に関してはthe telephonesの魅力がしっかりつまっており、聴けば自宅もフロアに早変わり・・・というベタな言い方をしてしまいますが(^^;;十二分に楽しむことが出来る傑作でした。活動休止は残念、というよりもこのベスト盤を聴くと、仕方ない部分も大きいのかなぁ。そうも感じた1枚でした。

評価:★★★★★

the telephones 過去の作品
DANCE FLOOR MONSTER
A.B.C.D.e.p.
Oh My Telephones!!! e.p.

We Love Telephones!!!
100% DISCO HITS! SUMMER PACK
Rock Kingdom
D.E.N.W.A.e.p.
Laugh,Cry,Sing...And Dance!!!
SUPER HIGH TENSION!!!


トカレフ/大森靖子&THEピンクトカレフ

大森靖子が、彼女のライブなどでサポートしているバンド、THEピンクトカレフと組んでリリースしたアルバム。全編ガレージロックサウンドに大森靖子の歌が載るスタイルのロックテイストの強いアルバム。う~ん、悪くはないけど、正直特に目新しくもない、ここ最近よくありがちなガールズロックのスタイルといった感じ。メディアを中心に絶賛されているけど、大森靖子ってハイプ気味だと思うんだよなぁ。

評価:★★★

大森靖子 過去の作品
洗脳

VISION/ねごと

フルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作。シンセや打ち込みのサウンドを主導に、バンドサウンドがそこに絡むというスタイルは相変わらず。良い意味で安定感も出てきてサウンドの方向性にも迷いがなく、ねごとらしさがほぼ確立されたかな?と感じるような内容でした。ただやっぱりサウンドやボーカルのポップスさにも関わらず、メロディーのインパクトがちょっと弱いようにも感じられてしまいます。このインパクトさえつけば、もっとブレイクしそうな感じもするのですが。

評価:★★★★

ねごと 過去の作品
Hello!"Z"
ex Negoto

"Z"OOM

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2015年5月10日 (日)

キャリアを網羅した5枚組のベスト盤

Title:Anthology
Musician:SING LIKE TALKING

おととしデビュー25周年を迎えた彼らが、その25年という一つの区切りを迎えたことによりリリースされた初のオールタイムベスト。なんでおととしリリースされないで今年に延びたのかは謎ですが、そこは大人の事情があったのでしょう。全5枚組というフルボリューム。さらに初回盤にはライブ映像を収録したDVDと、ライブ音源を収録したMUSIC CARDがついてくるという豪華仕様となっています。

SING LIKE TALKINGといえば、私がちょうど高校生の頃が全盛期。高校生の間でも人気があり、彼らのニューアルバムはクラスの中でも話題となったことを記憶しています。ただ、今考えれば、よく彼らのようなタイプの曲が高校生の間でも人気があったよなぁ、と不思議に感じてしまいます。ファンクやAOR、フィリーソウルなどの要素を取り込んだ彼らの曲は、当時人気だったビーイング系をはじめJ-POP全盛期の楽曲とはちょっと異質なもの。にも関わらず決して音楽に対するリテラシーが高いとは思えない高校生の間でも流行した、というのは、それだけ彼らの曲に勢いがあったからなのでしょう。また、流行の曲とはちょっと違う楽曲に「大人な雰囲気」を感じられ、背伸びしたい年頃の高校生にとってはちょうど手を伸ばしやすいタイプの音楽だったのかもしれません。

そして今回のオールタイムベストであらためて彼らの曲を昔の曲から最近の曲まで聴いてみたのですが、やはり私がちょうど高校生の頃、彼らにとってシングルもアルバムももっとも売れていた時代の曲は冗談抜きに「神がかっている」という表現がピッタリ来るような名曲揃いでした。AORやファンクなどの要素と上手く取り入れつつ、わかりやすい派手さはないものの、妙に耳に残るメロディーラインを書いてきた彼ら。このアルバムでいうと、ちょうどDISC2、3のあたりの曲が該当します。この頃の曲は、他の時期の曲と比べると桁違いに楽曲のクオリティーが高く、かつインパクトが強いことに気が付きます。

ただ残念ながらDISC4以降にかつての彼らの勢いは感じられません。確かにDISC4あたりの曲は、いままでの彼らになかった曲の方向性を模索していたことは非常に強く感じられます。特にDISC4の前半はギターサウンドを前に出してきたロックテイストの強い曲調が並んでおり、いままでとは異なる方向性も模索していたことを感じられます。

しかし残念ながらその試みは必ずしも成功せず、その後も一定以上のクオリティーを保った曲は作り続けるものの、残念ながら全盛期に比べると曲のインパクトに欠けると言わざるを得ません。今回のアルバム、DISC1の一番最初は新曲からスタートし、その後91年にリリースした「Steps Of Love」に戻り、そこからはほぼ時系列順に並んでいる構成。最新曲と過去の作品をつなげることにより、過去と今がつながっていることをアピールしたのかもしれません。ただ残念ながら今回収録した新曲もいまひとつインパクト不足。さすがにサウンド自体に時代を感じる「Steps Of Love」近辺の曲に比べると、今風なサウンドでひとつのインパクトとなっているものの、新人らしい勢いのあった過去の作品と比べると物足りなさを感じてしまいました。

そんな時代の移り変わりを感じつつ、ここ最近の彼らにちょっと不安を覚えてしまった内容でしたが、ただそれでもやはりベスト盤というだけあって名曲揃いのアルバムだったと思います。全5枚組はSLT初心者には手が出にくい作品かもしれませんが・・・DISC2、3の頃の曲だけでも是非とも聴いてほしいなぁ。

評価:★★★★★

SING LIKE TALKING 過去の作品
Empowerment
Befriend


ほかに聴いたアルバム

KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12/斉藤和義

正直言うと、若干「また?」感はあるせっちゃんのライブアルバム。今回はアルバムタイトルそのままですが、昨年行ったライブツアー「RUMBLE HORSES」の、12月12日にZepp Tokyoで行われたライブの模様を収録したもの。今回も基本的には原曲に沿ったようなアレンジでのステージである一方、原曲に比べてバンドサウンドの音圧があがり、より「ロック」テイストが強くなったような印象があります。今回は配信のみでリリースされている「ワンダーランド」が収録されているのもうれしいところ。ファンズアイテム的な部分が強いけれどもファンなら十分楽しめそうなアルバムです。

評価:★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25

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2015年5月 9日 (土)

天才ブライアンの新作

Title:No Pier Pressure
Musician:Brian Wilson

ご存じ、THE BEACH BOYSの中心メンバーとして数多くのヒット曲を産みだしたブライアン・ウィルソンのニューアルバム。ガーシュウィンやディズニーの楽曲のカバーアルバムや、THE BEACH BOYSとしてリリースしたアルバムはあったものの、純粋にソロのオリジナルアルバムとしては7年ぶりとなる新作になります。THE BEACH BOYSとしては2012年には現存のメンバーが集結してオリジナルアルバムをリリースしライブツアーも行ったものの、その後なぜかメンバーのうちマイクとブルースがブライアンと袂をわかち、それぞれ別々の活動をスタートさせてしまいました。

そんなブライアンのニューアルバムの大きな特徴は、数多くのゲストが参加しているところ。THE BEACH BOYSのメンバー(だった)、アル・ジャーディン、デヴィッド・マークス、ブロンディ・チャプリンが参加しているほか、SHE&HIM、2012年に「We Are Young」を大ヒットさせたロックバンドFUN.のボーカル、ネイト・ルイスが参加するなど、新旧のミュージシャンが参加しています。

今回のアルバム、評判はかなり高いようで、そうでなくても前作「That Lucky Old Sun」は個人的に大ハマリした傑作だっただけにかなり期待をもって聴いてみました。が、正直言って最初に聴いた時は「あれ?それほどでもないかも・・・」という印象を抱いてしまいました。

おそらくその大きな理由はアレンジ。今回のアルバム、アレンジに関してはパッと聴いた感じでは地味め。一昔前のAORなアレンジといった雰囲気。もちろんブライアンらしい、隙のない楽曲の雰囲気にもピッタリのアレンジを聴けるのですが、比較的シンプルなサウンドでアレンジを聴かせる、という感じでもなく、例えば「Runaway Dancer」みたいな80年代を感じさせるようなダンスアレンジの曲なんかがあったりして、ちょっと古さを感じてしまうような部分も。そこらへんのアレンジが、最初このアルバムを聴いていまひとつかも、と感じてしまった大きな要因でした。

ただその後、2度3度と聴くとその印象が徐々に変わっていきました。やはり素晴らしかったのはブライアンの書くメロディーラインの素晴らしさ。現在72歳の大ベテランである彼ですが、彼の書くメロディーの瑞々しさは全く衰えを知りません。特にアルバム後半に美メロの傑作が並んでおり、コーラスラインが美しい「The Right Time」、女性カントリーミュージシャンのケイシー・マスグレイヴスが参加したカントリーテイストが軽快な「Guess You Had To Be There」、ストリングスとホーンの音色が美しく、どこか懐かしさも感じる「Tell Me Why」あたりが、特に印象的。その他の曲に関しても、もちろんブライアンらしいメロディーを聴かせる傑作アルバムだったと思います。

新たな領域に挑戦した、というよりも彼らしいポップなアルバムを自然体で作り上げたアルバムといった感じの本作。それだけに派手さはありませんし、目新しさもありませんが、ブライアンのメロディーセンスの良さが光りまくっていたアルバムだったように思います。特に彼みたいなメロディーセンスに関しては「天才」としか言いようがないミュージシャンがこういうアルバムをつくると、無敵ですね。さすがの一言しか言いようのない傑作です。

評価:★★★★★

Brian Wilson 過去の作品
That Lucky Old Sun
Reimagines Gershwin
In The Key Of Disney

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2015年5月 8日 (金)

家族や人生を見つめなおして

Title:Carrie&Lowell
Musician:Sufjan Stevens

毎回、出すアルバム出すアルバムが大絶賛を受けるアメリカのシンガーソングライター、Sufjan Stevensの5年ぶりのニューアルバム。今回のアルバム、タイトルとなっているCarrie&Lowellとは、彼の実母、キャリーとスフィアンが5歳の時にキャリーと再婚した義理の父親、ローウェルのことだそうで、ジャケットはその2人の写真を使っています。キャリーは重い精神疾患とアルコール中毒を患っていたらしく、スフィアンと一緒に暮らした日々も短く、再婚も短い期間で終わったそうです。そんな彼女が2012年に胃がんで亡くなったそうですが、それをきっかけにあらためて家族や人生を見つめなおしてつくられたのが今回のアルバムだそうです。

スフィアンのアルバムを聴くのはこれが2作目なのですが、こちらも大絶賛された前作「The Age of Adz」は正直言えばあまりピンと来ない作品でした。確かに複雑なサウンドに美しいメロディーラインは絶賛を受ける理由がわからなくはなかったのですが、個人的には最後まではまれませんでした。

それだけに今回のアルバムも最初は聴こうかどうか迷っていたのですが、おそらく今年の年間ベストなどに多数選出されて、「今年を代表するアルバムだから一応聴いておこうか」みたいな流れになるのが、いまから非常によくわかるだけに(苦笑)、やはり聴いてみよう、そういう感じで聴きはじめたのがきっかけでした。

ただ、今回はアルバムはあまり期待していなかった最初の印象を大きく覆すような内容でした。今回のアルバムの一番の特徴は、そのテーマ性からしても内省的な曲が多かった点。そのため今回は、アコースティックサウンドをメインとしたシンプルで美しいメロディーラインを主軸とした楽曲が並んでいます。

まず1曲目「Death With Dignity」はアコギとピアノのみのシンプルな演奏に静かなボーカルが印象に残ります。なによりもメロディーの美しさが印象に残る作品で、その後の展開に期待が高まりました。

その後もアコースティックなサウンドを主軸に、ちょっと幻想的な雰囲気も感じられる作品が並んでいたのですが、特に印象的だったのが中盤以降。「Fourth of July」は静かな作風ながらもエレピとシンセのサウンドが、なんともいえない幻想的な作風を作り出しており、強い印象の残ります。そんなエレクトロサウンドを効果的に用いたかと思えば、続く「The Only Thing」はアコギのアルペジオが美しいシンプルなナンバーに。その後もタイトルナンバー「Carrie&Lowell」「No Shade in the Shadow of The Cross」など、アコギのアルペジオを聴かせつつ、メロディーラインの美しさが心をうつ作品が並んでいます。

あくまでも美しいメロディーラインをメインに構えつつ、アコースティックなサウンドにほんのりエレクトロの要素を加えた作品が楽曲に奥行をあたえている文句なしの傑作アルバム。前作ではいまひとつはまれなかった私も、今回のアルバムははまってしまいましたし、間違いなく今年のベスト盤候補の1枚、と言える傑作だったと思います・・・って最近、傑作が続いているような気がしますが(笑)、それだけここ最近、リリースされているアルバムが充実しているということでしょう。今回は高い評価も納得の1枚でした。

評価:★★★★★

Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz

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2015年5月 7日 (木)

ベテラン勢大活躍

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

ベテラン勢が目立つ今週のアルバムチャート。ただ全体的に低水準のチャートとなっています。

まず1位には浜田省吾「Journey of a Songwriter ~旅するソングライター」がランクインです。なんとオリジ ナルアルバムでは10年ぶりとなる久々の新作。初動売上8万枚は、1月にリリースされたミニアルバム「Dream Catcher」の3万5千枚(2位)よりアップ。10年前にリリースされたオリジナルアルバム「My First Love」の12万7千枚(2位)からはダウンしているものの、落ち幅としてはさほど大きくなく、10年というブランク、かつここ10年でのCDの状況の 変化から考えれば、驚異的な結果にも思われます。

また今回の1位獲得はオリジナルアルバムとしては1996年にリリースされた「青空の扉」以来だそうで、18年半ぶり。これはオリジナルアルバムの1位獲得インターバルとしては最長記録だそうです。

参考 【オリコン】浜田省吾、14年半ぶり首位 オリジナル盤18年ぶりは歴代1位

CD市場全体の売上減の中、根強い固定ファンがいる彼のCDの売上が相対的に上がってきたということでしょう。ファン層的にもCDのようなアイテム に愛着がありダウンロードに抵抗感のある中高年世代が多いというのも理由のように感じます。もちろん、この96年の「青空の扉」の初動売上は31万1千枚 だったので、絶対値で比べてしまうとかなりダウンしているのは事実ですが・・・。

2位はサザンオールスターズ「葡萄」がなんと先週3位からワンランクアップ。3位には先週8位の「ワイルド・スピード スカイミッション サウンドトラック」がランクアップし、初登場以来3週目でベスト3入りを果たしました。売上的にも先週の1万3千枚から1万5千枚にアップ・・・・・・・なのですが、わずか1万5千枚でベスト3入りとは・・・。

さて1位の浜田省吾は10年ぶりのオリジナルアルバムでしたが、こちらは12年ぶり!イギリスのロックバンドblurのニューアルバム「The Magic Whip」が7位にランクインです。2009年に活動は再開していたものの、その後、散発的なライブは行っていたのですがアルバムリリースはなく、それから6年。ついに待望のニューアルバム完成となりました。

オ リジナルアルバムでのベスト10ヒットは1997年のblur以来、実に18年ぶり。ただ初動売上7千枚はオリジナルアルバムとしての前作「Think Tank」で、国内盤がリリースされた週に記録された1万3千枚(14位)からダウン。もっとも、12年前のCDの販売状況を考えれば、という部分も大きいのですが。

6位には「DJ KAORI’S BEST POP HITS」がランクイン。Taylor SwiftからSam Smith、Pharrell Williamsの「HAPPY」やらMaroon5やら、節操なく最新の洋楽ヒットを収録したDJ Mixアルバム。前作「DJ KAORI’S BEST OF EDM」は最高位26位だったので大幅アップしているのですが、もうDJ KAORIというよりもオムニバスアルバムとしての需要しかないんでしょうね・・・。

最後8位にはイギリスのハードロックバンドWhitesnakeのニューアルバム「The Purple Album」がランクインしてきました。初動売上6千枚は、オリジナルアルバムとしては前作「Forevermore」の5千枚(18位)よりも若干アップ。

今週は低水準のチャートだっただけに返り咲き組も多く、絢香「レインボーロード」が11位から7位、三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「PLANET SEVEN」が16位から10位といずれもベスト10に返り咲いています。ただ売上は絢香が1万枚→7千枚、J Soul~が5,306枚→5,271枚といずれもダウン。しかし、わずか売上5千枚でベスト10入りですか・・・。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年5月 6日 (水)

Perfume vs ももクロ

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

Perfumeとももクロ、ここ最近の女性アイドルの中で妙に「音楽ファン受け」が良い2組のアイドルグループが今週のチャートに並びました。

このうち上位に来たのがPerfume。Perfume「Relax In The City」が2位にランクイン。サッポロビール「サッポロ グリーンアロマ」CMソング。本作ももちろん中田ヤスタカ作詞作曲によるテクノポップチューンなのですが、ミディアムテンポのソフトタッチな雰囲気の曲で、いままでとはちょっと毛色の違った曲になっています。初動売上は6万1千枚。前作「Cling Cling」の7万3千枚(2位)よりダウンしてしまいましたが、前々作「Sweet Refrain」の5万7千枚よりはアップ。雨後の竹の子のようにアイドルが出てくる中、若干埋もれ気味な感はあるものの、一定層の人気は着実なものとしているようです。

一方、ももいろクローバーZ「『Z』の誓い」は4位初登場。COALTAR OF THE DEEPERSや特撮で活躍するNARASAKI作曲・編曲によるハードコア風なナンバー映画「ドラゴンボールZ 復活の「F」」主題歌というタイアップ効果、前々作、前作のシングルと共に購入することによるイベントの応募券効果など期待されたにも関わらず、初動売上は4万8千枚で、前作「青春賦」の6万4千枚(4位)より大きくダウン。アニメタイアップといいかなり「売り」に来た印象があったのですが厳しい結果に。ある意味、両者、対照的な結果となっています。

さて、今週1位を獲得したのはこのどちらもでなくジャニーズ系。Hey!Say!JUMP「Chau#」が獲得。軽快ないかにもアイドルポップといった感じの爽快なナンバーになっています。ブルボン「アーモンドキャラメルポップコーン」CMソング。初動売上14万6千枚は前作「ウィークエンダー」の18万4千枚(1位)からダウン。

3位は韓流。男性アイドルグループINFINITE「24時間」がランクイン。本作は松尾潔プロデュースによるメロウなナンバー。初動売上5万6千枚は前作「Dilemma」の5万1千枚(3位)からアップ。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にavexの男女混合ダンスグループAAA「GAME OVER?」が入ってきました。アップテンポでロック風のEDMナンバー。初動売上4万1千枚は前作「ぼくの憂鬱と不機嫌な彼女」の4万3千枚(4位)から若干のダウン。7ヶ月連続リリースの第4弾で、7作そろえるともれなくライブに招待される企画もあるそうなので、このシリーズ、売上の上下は少なさそう。

6位にはE-girlsとしても活動している女性アイドルグループFlower「Blue Sky Blue」が入ってきています。KOSE「ファシオ」CMソングのミディアムチューン。初動売上3万3千枚は前作「さよなら、アリス」の2万4千枚(7位)からアップ。

7位にはaiko「夢見る隙間」がランクイン。ちょっとジャズ風の要素も入れた軽快なポップス。aikoらしい独特のメロディー展開も癖になりそうなナンバーです。初動売上3万2千枚は前作「あたしの向こう」の4万1千枚(4位)からダウン。

8位初登場は福岡のローカルアイドルグループ、LinQ「ハレハレ☆パレード」。ナオト・インティライミ作曲による爽快なナンバー。初動売上2万8千枚は前作「ウェッサイ!!ガッサイ!!」の1万2千枚(6位)から大幅増。ただこれはライブチケット付CDやらイベント会場限定のCDやらによるドーピング効果が大きい模様。

初登場最後9位には美風藍(蒼井翔太) 「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ アイドルソング 美風藍(Innocent Wind)」がランクイン。アニメ「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ」挿入歌。「うたの☆プリンスさまっ♪」がらみはこれが4週連続のランクインで、「アイドルソング」シリーズは先週から引き続きの2週連続。初動2万1千枚は、先週ランクインした一十木音也(寺島拓篤),四ノ宮那月(谷山紀章) 「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ クロスユニットアイドルソング 一十木音也・四ノ宮那月(EMOTIONAL LIFE)」の1万9千枚(9位)からアップ。なお、美風藍名義のシングルでは前作「うたの☆プリンスさまっ♪アイドルソング 美風藍(A.I)」の2万6千枚(4位)からダウンしています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2015年5月 5日 (火)

懐かしい言葉が各所に登場

Title:1212
Musician:スチャダラパー

途中、ライブ会場限定のアルバムリリースがあったものの、一般販売されるオリジナルアルバムとしてはなんと6年ぶりとなるニューアルバム。スチャダラパーといえば「今夜はブギー・バック」のヒットがあるだけに90年代前半のグループというイメージがどうしても強くなってしまいます。ただ今回のアルバムは、それを否定するわけではなく、むしろ、90年代やむしろその前の80年代あたりの風俗のイメージを強く押し出したようなリリックが印象に残りました。

「毒舌か 恨み節か
説教か 変わらない芸
From昭和」

(「スチャダラメモ」より 作詞 M.KOSHIMA/Y.MATSUMOTO/S.MATSUMOTO)

なんて歌詞からスタートし、懐かしいファミコンの時代から、3DSの時代までのゲームの歴史をつづった「ゲームボーイ2」、さらにストレートだったのは「ザ・ベスト」で、「パイルダーオン」「倍率ドン」「お風呂入れよ ハァ~ビバノンノン」なんていうアラフォー世代以上にとっては懐かしくて感涙モノの単語が続々登場しています。

ただ、こういう懐かしい単語を並べながらも、楽曲としてはあまり「昔はよかった」的なノスタルジックな後ろ向きの志向は感じられません。おそらくそれは、決して単純に昔を賛美するのではなく、どこか斜めから世の中を見たような視点にユーモアのセンスを加えた、スチャダラらしいスタンスが楽曲全体に流れているからでしょう。

またそんな楽曲のほか、今回はゲストを招いたユーモラスな作品も強く印象に残りました。

チャットモンチーとの共演、「スチャットモンチー」なるユニットによる「M4EVER」は、子供に対する母親からの視点で歌われた内容がなかなかユニーク。「母親役」で登場するチャットモンチーのボーカル、橋本絵莉子は、むしろ「幼さ」を感じられる声なのですが、このミスマッチさも狙ったものでしょう。

また「Off The Wall」も清水ミチコをゲストに招いたコントを織り込んだナンバー。こちらもとても楽しいナンバーなのですが、こういうコントもアルバムの中で自然に溶け込んでいるほど、今回のアルバムはスチャダラのユーモアセンスにあふれた作品だった、ということでしょう。

いろいろなところでスチャダラパーのユーモアセンスが顔をのぞかせる、最初から最後までとても楽しいアルバムでした。今年デビューから25年目を迎えるベテランの彼らですが、ベテランらしく、ちゃんとリスナーの壺をついてくるような作品を余裕をもって作り上げているようにも感じました。アラフォー世代必聴の作品(笑)。ただもちろん、もっと下の世代でも十分に楽しめる傑作です。

評価:★★★★★

スチャダラパー 過去の作品
THE BEST OF スチャダラパー 1990~2010
11
CAN YOU COLLABORATE?~best collaboration songs&music clips~

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2015年5月 4日 (月)

30周年の記念アルバム

Title:オーディナリー・ライフ
Musician:渡辺美里

今年、デビュー30周年を迎える渡辺美里。そんな彼女の3年8ヶ月ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。デビュー30周年という記念の年、かつ久々のニューアルバムということもあって、今回のアルバム、正直、ビックリするほど豪華なミュージシャンが参加したアルバムになっています。

作詞作曲に、ご存じ大江千里や伊秩弘将、木根尚登らおなじみのメンバーが参加しているほか真心ブラザーズのYO-KING、サンボマスターの山口隆、THE MODSの森山達也、Great3の片寄明人、森雪之丞という豪華なメンバーが参加。さらにスカパラのメンバーやゴスペラーズ、さらには高橋幸宏(!)といったメンバーもレコーディングに参加。正直、渡辺美里というと「過去の人」みたいなイメージが強いのですが、これだけ豪華なメンバーを集められるくらい力を入れてもらえるというのは、やはりエピックレコードへの過去の貢献や、なんだかんだいって一定層以上存在する根強い固定ファンの存在があるからでしょうか。

また、プロデューサーとしてファンにはおなじみの佐橋佳幸が参加。渡辺美里と長年タッグを組んできた彼が、多彩なゲストによって提供された曲をちゃんと美里カラーに染めて、アルバムに統一感を出しています。今回、歌詞カードには1曲毎に彼のコメントが寄せられているのですが、これもまたこのアルバムへの力の入れ方がわかります。

そして、このアルバム、今回新たに参加したメンバーが楽曲を提供した前半が特に素晴らしい内容に仕上がっていました。YO-KING作詞作曲の「鼓動」は、YO-KINGらしい骨太のポップスに仕上がっていましたし、スカパラのメンバーが演奏に参加した、森山達也作詞作曲の「今夜がチャンス」はちゃんとロックなナンバーに仕上がっていました。森雪之丞作詞、木根尚登作曲による「点と線」は昭和の香りのする歌謡曲になっており、こちらも魅力的。今回、唯一本人作曲によるタイトルチューン「オーディナリー・ライフ」も彼女らしいバラードナンバーなのですが、この豪華なメンバーの中でなにげに健闘していました。

今回のアルバム、特に出来がよかった要因のひとつは、劣化著しかった渡辺美里本人作詞の曲がほとんどないこと(苦笑)。基本的には曲を提供したミュージシャンが作詞も手掛けており、楽曲にもマッチした歌詞が展開されるほか、バラエティーに富んだ歌詞が楽しめます。

「これはビックリするような傑作だ」と前半を聴きすすめるうちは思っていたのですが、後半に関しては残念ながら失速してしまいました。後半は彼女のアルバムではおなじみの大江千里と伊秩弘将、また今回初参加となるCarvanが楽曲を提供しているのですが、伊秩弘将は残念ながらかつてのようなパワーはなく、Carvanはどうにも地味でいまひとつ。また特に大江千里は楽曲のパワー不足がかなり厳しいものがありました。

ただそれでも「恋したっていいじゃない」をはじめ、数多くの美里の懐かしいナンバーのどこかで聴いたことある歌詞を織り込んだ「青空ハピネス」のような、「30周年」という区切りにふさわしいようなユニークなナンバーがあったりして、長年のファンにとってはちょっとにやけてしまうような楽曲も収録されていたりします。

後半はちょっと残念だったものの、30周年にふさわしい充実した内容の作品で、出来としてはここ数作どころか、少なくとも2000年代に入ってからは一番の出来だったように思います。6曲目までなら文句なしに5つ。後半、失速してしまっただけにアルバム全体としては、4つかなぁ・・・とも思うのですが、久々に渡辺美里のファンとして楽しめたオリジナルアルバムだったという点と30周年というご祝儀(?)を兼ねて、評価は下の通りに。ひいき目抜きにしても、久々に良いアルバムでした。

評価:★★★★★

渡辺美里 過去の作品
Dear My Songs
Song is Beautiful
Serendipity
My Favorite Songs~うたの木シネマ~
美里うたGolden BEST
Live Love Life 2013 at 日比谷野音~美里祭り 春のハッピーアワー~

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2015年5月 3日 (日)

クラムボンの行き先

Title:triology
Musician:クラムボン

約5年ぶりとなるクラムボンのニューアルバム。クラムボンといえば、最近、ミトのインタビューがちょっとした話題となりました。

クラムボン・ミトが語る、バンド活動への危機意識「楽曲の強度を上げないと戦えない」

内容については賛否あるようなのですが、個人的に一番驚いたのがこのインタビューが衝撃的だった、という形で話題にあがること。そんなに奇抜なこと言っているか?というのが個人的な素直な感想で、逆にこれで衝撃的というのは、いかに音楽シーンの「今」について深く考えられていないか、ということを感じてしまいます。

確かに「ROCKIN'ON JAPAN」のインタビューとか読むと、馴れ合いの自画自賛的なインタビューばかりだもんなぁ(苦笑)。シーンのど真ん中にいながら、こういう「危機意識」を持っているミュージシャンって驚くほど少ないのかもしれません。

ただ、そんなインタビューを前提に5年ぶりとなる新作を聴くと、言うほど楽曲の強度、強くないじゃん、という身も蓋もないことを感じてしまいました(笑)。楽曲の強度という点を意識したからにはヒットチャートの中心で戦えるようなポップな作品が並ぶ・・・かと思いきや、意外と「実験的」な作品も目立っていました。

例えば「アジテーター」はロックサウンドの中に民謡を入れたようなユニークな作風になっていますし、「agua」はファンタジックな作風、「the 大丈夫」ではへヴィーなノイズが楽曲の中に登場してきたりしており、「楽曲の強度」というよりも、メンバーがやりたい楽曲をやった、という印象すら受けます。

一方でそんな作風の曲がありつつ、確かにポップで、いい意味で広い層の支持を狙ったような作品も目立ったように感じます。例えば「Rough&Laugh」は楽曲の中に大サビも登場してくるインパクトの強い作品になっていますし、「バタフライ」にしても哀愁ある歌詞とメロデイーがどこか歌謡曲のテイストを感じさせるインパクトを持っています。

そういう意味では結果として、クラムボンの持つポピュラリティーの要素と、「実験的」な要素がほどよくバランスされたアルバムになっていたように感じます。上のインタビューの中で、「歌詞」の側面で楽曲の強度を意識したようには語っていましたが、メロディーやサウンドの面では、むしろ逆にクラムボンらしいアルバムになっていたように感じました。

ただ若干気になったのは今回のアルバム、サウンドの手数が妙に多いこと。多くの楽曲でリズムやサウンドを詰め込んでいて、賑やかで楽しさを感じる反面、ちょっとやりすぎでは?と思う部分がありました。これも「歌詞」の話になるのですが、上のインタビューでボカロの歌詞の情報量の多さを評価していましたが、ただ個人的にボカロの歌詞って、情報量が詰め込みすぎていて、聴いていてパッと理解できないような曲も多く、歌詞としてはもう一工夫二工夫欲しいと思っちゃうんですよね。この情報量の多さを良し、とするのなら、今後のクラムボンの方向性がちょっと気になってしまいます。

とはいえ今回のアルバムに関しては、この情報量の多さもポピュラリティーにほどよく中和されていましたし、なによりも原田郁子の歌声もまた、情報量の多さをちょうど中和していたように感じます。上のインタビューもそうですが、ミトの頭でっかちな部分がちょっと気になり、その点に不安は感じてしまうのですが・・・このアルバムに関してはとにかく純粋にクラムボンらしさを楽しめた傑作でした。

評価:★★★★★

クラムボン 過去の作品
Re-clammbon2
JAPANESE MANNER ep
2010

ワーナーベスト
columbia best

3peace2
LOVER ALBUM 2

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2015年5月 2日 (土)

恋人との別れを描く

Title:Vulnicura
Musician:bjork

ビョークにとって約3年半ぶりとなるニューアルバム。もともと3月にリリースされる予定だったそうですが、事前に音源がネットに流出され、急きょ1月にダウンロードでのリリースとなりました。ただ、CDの国内盤リリースは当初の予定通り4月リリース。というわけで今回、遅ればせながら彼女のアルバム、ようやく聴くことが出来ました。

本作の特徴としては、その歌詞のパーソナルな内容。彼女のパートナーであったマシュー・バーニーとの別れをテーマとしています。それもユニークなのはただ単に別れの心境を描写するだけではなく、別れる前の破たんの前兆から、別れた後、心がいやされるまでをアルバムの中で時系列に沿って描いてきます。

パーソナルといっても恋人との別れという、ある意味「普遍的」な内容を描いているだけに、アルバムとしても非常にわかりやすさを感じます。別れの9カ月前を描いた「stonemilker」では2人の間のほころびを描き、それが徐々に大きくなることを描き、別れの2ヶ月後の「black lake」ではタイトル通り、恋人とわかれた深い悲しみをこれでもかというほど描いています。

しかしその悲しみは徐々に癒され、11ヵ月後を描いた「notget」では明らかに前向きな表現が見られます。ここらへんの心境も、決してビョークだからといって特別なものではなく、おそらく恋人との出会いと別れを経験した人ならば、誰もが経験しそうな心境。そういう意味でも今回のアルバムはわかりやすさを感じます。

わかりやすさという意味では今回のサウンドもいい意味でのわかりやすさを感じます。本作では、ビョーク本人と、カニエ・ウエストやFKAツイッグスへのプロデュースワークで話題となったアルカやイギリスのプロデューサー、ハクサン・クロークとの共同プロデュース作を収録。アルカもハクサン・クロークも新進気鋭のプロデューサーですが、本作ではストリングスをメインとしたプロダクションにエレクトロサウンドを入れてきたサウンドという構成がメイン。ただ音数は比較的少な目でシンプル。むしろビョークのボーカルをしっかりと生かしたようなアレンジが多く、ビョークの歌をしっかりと楽しめる内容になっていました。そういう意味でも本作は、広いリスナー層に受け入れられやすい内容ではないでしょうか。

前作「biophilia」は気合いが入りすぎていて、ちょっとトゥーマッチな感じになってしまった感じもして、空回りしてしまった部分もあったように感じました。それに比べると本作は、いわば等身大のビョークの姿が歌詞の面でもサウンドの面でも描かれており、ビョークの魅力をしっかりと伝えてくれた傑作でした。なんかここ数日連続しちゃっているのですが・・・この作品も今年を代表する名盤だと思います。せっかくなら、歌詞もわかる国内盤で是非。

評価:★★★★★

Bjrok 過去の作品
biophilia
2012-02-12 NY Hall of Science,Queens,NY
Bastards

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2015年5月 1日 (金)

怒りの音楽

Title:THE DAY IS MY ENEMY
Musician:THE PRODIGY

赤いキツネのジャケットが妙にインパクトのあるイギリスのデジタルロックバンドTHE PRODIGYの6年ぶりとなるニューアルバム。個人的に前作「Invaders Must Die」は2009年の私的年間アルバムランキング1位の作品だっただけに、当然今回のアルバムも大きな期待をしてのぞみました。

「THE DAY IS MY ENEMY」という挑発的(?)なタイトルがついたこの作品ですが、国内盤の解説によるとメンバーのうちリーダーのリアム・ハウレットは現在のミュージックシーンに対してかなり挑発的な発言を繰り返しているようで、特にここ最近、世界で流行となっているEDMシーンに対しては、かなりの苦言を呈しているよう。今回のアルバムはそんなEDM全盛のミュージックシーンに対するTHE PRODIGYの回答といっていいのかもしれません。

そんなこともあってか、今回もまた強烈なビートとダイナミックなサウンドが展開されるパンキッシュな楽曲が並んでいます。まずへヴィーなドラミングとギターが流れる中、「The Day Is My Enemy,The Night My Friend」とこのアルバムタイトルのフレーズが延々と繰り返されるタイトルチューン「THE DAY IS MY ENEMY」からまず、そのへヴィーなサウンドに耳を惹かれます。

その後も強烈なビートの曲が続き、同じエレクトロサウンドの4つ打ちのサウンドといい、お気軽なダンスチューンであるEDMとは、確かに対極ともいえる作品が続いていきます。「REBEL RADIO」「DESTROY」「WALL OF DEATH」など、タイトルを連ねるだけで彼らのシーンに対する怒りが強烈に伝わってくるようにも思います。

ただ・・・そんな彼らの曲、1曲1曲はインパクトも十分で楽しめたのですが、アルバムを通じて聴くと、最後の方は正直飽きてきてしまいました。というのも、全体的に曲調が似ているイメージを受け、かつ、「押し」一辺倒のサウンドには、聴いていて疲れてきてしまったからです。

特になんで似ていると感じたのかなぁ、と思ったのですが、その大きな要因はドラムの音に感じました。ドラムの音の使い方が、どの曲でも似てしまっているため、楽曲がどれも似たように感じたように思います。もっともドラムの音の使い方なんて、どのバンドでもおおむね似ているのでしょうが、彼らの場合、それに加えて、どの曲もダイナミックでパンキッシュでリズミカルという曲の特徴も似てしまっていただけに、似たような楽曲が並んでいる印象を受けたのかもしれません。

それでも曲によってインパクトのある曲が並んでいたりすれば、そんな「似ている曲が多い」という印象は受けなかったのでしょうが・・・つまり前作に比べてパワー不足を感じてしまった、ということなのかもしれません。1曲1曲だけピックアップすればパワー十分のインパクトある曲だと思うのですが・・・期待していた作品だっただけにちょっと残念に感じてしまいました。

評価:★★★★

THE PRODIGY 過去の作品
INVADERS MUST DIE

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