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2015年4月24日 (金)

日本人の持つ多様性

Title:クレオール・ニッポン うたの記憶を旅する
Musician:松田美緒

ポルトガル語圏やスペイン語圏を旅して、そこの土地土地の歌を歌い、「歌う旅人」と称される女性シンガー松田美緒。そんな彼女が2012年よりスタートさせたプロジェクトが「日本のうた」プロジェクト。いままで世界を旅してきた彼女が、あらためて自分のふるさとである日本では人々がどのような歌を歌ってきたか、フィールドワークとライブなどを通じて、日本人の原風景を追い求めるプロジェクトだそうです。

本作はそんなプロジェクトの集大成ともいえるアルバム。CDブックという形態がとられており、彼女が日本各地の歌を歌ったCDとともに、その歌にまつわり彼女が日本各地を旅してきた模様が綴られた書下ろしのエッセイが収録されています。

この作品、まずなにが素晴らしいかといえば「クレオール」という視点で歌が収録されているという点でしょう。「クレオール」とは多様性をあらわす言葉で、もともとは「アメリカ大陸や西インド諸島、アフリカの旧植民地生まれの人々、混じり合ったブナ、言語のことをあらわす。」(「はじめに」より)だそうで、日本の中にある文化の多様性に焦点があてられています。

これは非常に興味深いことだと思います。とかく日本はみんな同じような生活様式、同じような考え方が求められがちで、求められたレールの上を進むうえでは非常に暮らしやすい反面、そこからはみだしてしまうと、非常に暮らしにくい部分があります。

「日本のうた」に関してもそんな均一性は同様で、「日本のうた」でまずうたわれるのが判を押したかのように「ふるさと」やら「さくらさくら」のような唱歌・童謡。確かにこれらの曲も素晴らしいかもしれませんが、日本文化の「マジョリティー」の部分のみにスポットがあてられているように感じます。

そんな中、このアルバムで彼女が歌う唄は、そんな日本のマジョリティーの枠組みからあふれ出た人たちの歌。例えば隠れキリシタンの里、伊王島では、キリスト教文化が混じった「日本のうた」がうたわれていますし、小笠原諸島で歌われている「レモングラス」には、日本本土よりもむしろ遥かミクロネシアの匂いが漂ってきます。

この作品から浮かび上がってくるのは、日本の文化が本来持っている多様性。日本人と一言でいってもその中には実に様々な文化的背景を持つような人たちがいて、その人たちがそれぞれ自分たちの歌を歌っていたことに気が付かされます。このアルバムで彼女が歌っている歌は、私たちが忘れてはいけない日本の本来の姿のように思いました。

今回、彼女はそんな様々な日本の歌を、ピアノやパーカッションを中心としたシンプルなアレジで、優しく歌い上げています。時には彼女の「本拠地」であるラテン風にアレンジしたり、ジャジーにアレンジしたりしているのですが、あくまでも歌を中心に据えた楽曲であるため、元曲のイメージを大きく損ねることはありません。

ただ一方、今風にサラッと歌い上げるボーカルは、今の人たちの耳によって聴きやすさを感じられる反面、場合によっては「きれいすぎる」と感じてしまう部分もあるかも。その美しい歌声に惹かれた反面、現地で歌い継いでいった人たちが歌った「原曲」も聴いてみたくなりました。

エッセイの方も、歌の背景に軽く触れながら、彼女の行ったフィールドワークにあわせて全国を旅したような気分になれる作風。音楽を聴きながらこのエッセイを読むことにより、より日本の多様な文化性に触れることが出来ます。そういう意味でも、CDのみでは伝えきれなかった部分を補完するにはCDブックという形式が最適だったのでしょう。

そんな訳で、日本という国の持つ多様な文化性を感じることが出来る、非常に意義のある作品だったと思います。お値段が若干高めなのがちょっと残念なのですが、それを差し引いても是非ともチェックしてきたいお勧めの作品です。

評価:★★★★★


Milk/Goose house

このユニットをひとつの「シェアハウス」とみなし、男女7人、それぞれ別々にも活動しているシンガーソングライターが、この「シェアハウス」に集い活動をしている、というスタイルのユニット。アニメソングなどで徐々に人気を集め、メジャーデビュー作となる本作では初のベスト10ヒットを記録。どんなユニットか気になり、今回はじめて聴いてみました。

個人的にはアコースティック主体の聴かせるポップソングを期待していて、実際、そういう曲もあったのですが、基本的には王道のJ-POP的な爽やかなポップソングが主体。いかにも前向き応援歌的な歌詞の曲も多く、良くも悪くも売れ線狙いのポップスといった感じ。決して悪くはないのですが・・・何の毒もひっかかりもない優等生的なポップソングという印象が否めませんでした。

評価:★★★

Stayin' Alive/フラワーカンパニーズ

昨年、結成25周年を迎えた彼らのニューアルバム。今年12月、初となる武道館ワンマンライブも控えており、まだまだ最前線で走り続けています。そんな彼らの新作は、スキマスイッチの常田真太郎や斉藤和義を共同プロデューサーに迎えた曲を収録するなど、新たな風をいれつつも、大人の悲哀を綴ったような歌詞に骨太のロックンロールサウンドはいつものフラカンそのもの。歌詞にしろメロディーにしろ、インパクトあるキラーチューンがちょっとなかったのは残念なのですが、フラカンの魅力はしっかりと伝わってきた作品でした。

ただ・・・このアルバム、最後にボーナストラックとして収録されている「ファンキーヴァイブレーション」はかなりの違和感・・・大阪のFM802とのコラボ企画なのだそうですが、全編おもいっきり大阪賛歌になっている曲なのですが・・・あんたら、名古屋のバンドじゃん(苦笑)。正直言って、なんか変に「媚びている」ように感じてしまって、正直、マイナスポイントだなぁ・・・。

評価:★★★★

フラワーカンパニーズ 過去の作品
フラカン入門
ハッピーエンド
新・フラカン入門

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