空気公団らしいアルバムだが・・・
Title:こんにちは、はじまり。
Musician:空気公団
前作「音街巡旅I」は企画盤的内容。その前にリリースされたアルバムはくうきにみつる名義と、オリジナルアルバムとしては「夜はそのまなざしの先に流れる」以来、2年3ヶ月ぶり、ちょっと久々となる空気公団のニューアルバムがリリースされました。
基本的に毎作、シンプルなソフトロックを聴かせてくれる彼女たち。そんな中で少しずつその雰囲気を変えてきています。例えば前々作「春愁秋思」では少々不思議な雰囲気が漂う作品になっていましたし、前作「夜はそのまなざしの先に流れる」は「夜」をテーマとした作品になっていました。
今回の作品はそんな中でも特に空気公団らしさを感じるアルバムになっていました。具体的にいえばシンプルなメロディー、歌詞にサウンド。特にメロディーに関しては、目立ったフックもなく、さらっと流れていくようなメロディーラインにも関わらず、聴き終わった後、心の中にひっかかるものがあります。この「心のひっかかり」がいわば彼女たちの書くメロディーラインの良さなのですが、今回のアルバムでは、シンプルさがここ最近のアルバムに比べて増した反面、メロディーのひっかかりが増えたように感じました。
かと思えば一方で、非常にバラエティー富んだ作風を聴かせてくれるのも今回のアルバムの特徴。まずアルバムの中で大きなインパクトとなっていたのが、「お山参詣 登山囃子」。これはボーカル山崎ゆかりの出身地、青森県にある岩木山の登山囃子を取り入れた民謡風の楽曲。和太鼓のリズムが目立つ作品はあきらかに空気公団の作品の中で異色の作品になっています。
さらに「はじまり」では金沢在住の轟音ロックデゥオ、NINGEN OKが参加。ノイジーなギターサウンドのインストが大きなインパクトとなり、いつもの空気公団とは少々違った雰囲気のスタートに驚いた方も多いのでは?ただ、メロディーはいつもの空気公団なので、楽曲全体としてはちゃんと空気公団の色に染められているのですが。
他にも哀愁のサックスが鳴る間奏が印象に残る「毎日が過ぎても」や、スカ風のリズムが登場する「なくしたものとは」、打ち込みも導入されたインスト曲「手紙が書きたい」など、実にバラエティー豊富な楽曲の展開を聴かせてくれます。
ただ、これだけバリエーションがありつつ、どの曲も基本的にはサウンドはシンプル。暖かみのある優しいメロディーも加わり、ちゃんと空気公団らしい楽曲になっているのが見事。結果、アルバム全体としてもいい意味で空気公団らしいアルバムに仕上がっていました。
ある意味、空気公団のバンドとしての包容力も感じるアルバムで、個人的にはここ数作のオリジナルアルバムの中では一番の出来かも。あらためて空気公団というバンドの魅力を強く感じることが出来た傑作でした。
評価:★★★★★
空気公団 過去の作品
空気公団作品集
メロディ
ぼくらの空気公団
春愁秋思
LIVE春愁秋思
夜はそのまなざしの先に流れる
くうきにみつる(くうきにみつる)
音街巡旅I
ほかに聴いたアルバム
Howdy!! We are ACO Touches the Walls/NICO Touches the Walls
NICO Touches the Wallsの楽曲をアコースティックアレンジでセルフカバーした企画盤。バンドアレンジの曲をアコースティックに演奏することにより、アレンジとしてはかなり変化している反面、基本的には彼ら、バンドサウンドを押し出すというよりもメロディーと歌詞を前に押し出しているバンドなだけに、原曲で気づかなかったものに気が付かされた・・・的要素は少なかったようにも思います。もっとも、基本的には彼らの楽曲のもっとも根本の部分をそのまま外に出したようなアレンジ。素直にNICOの楽曲の良さを感じられる点は大きなプラスだったとは思います。
評価:★★★★
NICO Touches the Walls 過去の作品
Who are you?
オーロラ
PASSENGER
HUMANIA
Shout to the Walls!
ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト
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