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2015年3月17日 (火)

各々が個性を発揮

Title:Why not clammbon!?~クラムボン・トリビュート~

結成20年目を迎えるクラムボン。え?もうそんなになるのか・・・と思ったのですがあくまでも結成20年。デビューはインディーズが98年、メジャーが99年。とはいえ、メジャーデビューからも、もう16年もたつのか・・・と思ってしまいます。今年はそんな20年目を迎えた記念すべき年ということで、今月25日には久々のニューアルバムをリリース。そして、その待望のニューアルバムに先立ち、トリビュートアルバムがリリースされました。

参加しているのは、ハナレグミやGREAT 3、TOKYO No.1 SOUL SETなどクラムボンのファンにはおなじみの面々。海外からも、アメリカのポストロックバンド、Mice Paradeが参加しています。そんな中、唯一異色なのが、なんと小室哲哉!正直、クラムボンと小室哲哉っていまひとつ接点がみつからない感じなのですが・・・。比較的、「さもありなん」な面子が揃っている中、一人だけ、あきらかにタイプの違うミュージシャンが混ざっている感じになっています。

そんな小室哲哉が手掛けているのは「バイタルサイン」のリミックス。トランス調のアレンジになっているのですが、小室哲哉らしい、ある種の「ベタ」さを感じるアレンジ。正直、このアルバムの中ではちょっと浮いている印象も受けるのですが、一方では他のミュージシャンとはちょっと違う方向性がひとつのインパクトになっているように感じます。

他の参加ミュージシャンについては、概ねどのミュージシャンも、それぞれの個性をしっかりと発揮したカバーに仕上げていたように感じます。「Folklore」をギターロック風にまとめてきたストレイテナー、ファンキーな要素を加えた「大貧民」は、そのままレキシっぽい作品になっていましたし、Nona Reevesの「SUPER☆STAR」は、彼ららしいディスコチューン。HUSKING BEEの「海の風景」はそのまんまメロコアの曲に仕上げていましたし、青葉市子の「雨」はいつもの彼女らしい、アコギ一本と歌だけで聴かせる静かなアレンジに仕上がっています。

そんな中、一番バンドの色が出ているように感じたのがdownyの「5716」。ダークでダウナーな作品に仕上がっており、どんよりしたバンドサウンドで装飾された楽曲は、そのまんまdownyの曲と言われても違和感がないほどの出来になっていました。

これだけ多くのミュージシャンが、クラムボンの楽曲をカバーしつつ、自分たちの色をきちんと出せるというのは、おそらくそれぞれのミュージシャンの実力もさることながら、それ以上にクラムボンの楽曲が、足腰しっかりした作品が多いからなんでしょう。ここでいう「足腰がしっかりとした」というのはつまり、しっかりとしたメロディーラインを書いているから、という意味。勢いとか奇抜な構成とかで楽曲を装飾するのではなく、ちゃんと一本筋の通ったメロディーを書いているからこそ、その楽曲の上で、様々なミュージシャンが自分たちの個性を発揮できるのではないでしょうか。クラムボンの実力をあらためて感じたトリビュートアルバムでした。

ただ一方ちょっと残念に感じた点が2点ほど。まず一点は、誰も「サラウンド」はカバーしないんですね・・・。確かに明らかに「売り」にいった作品(で、失敗した作品)で、ベタな作風なだけに忌避したのかもしれませんが・・・個人的には好きなんだけどなぁ。まあ、「サラウンド」に限らず、「パンと蜜をめしあがれ」もカバーされていませんが・・・。

もうひとつは、参加しているミュージシャンたち、小室哲哉を除いてちょっと意外性がなさすぎたかなぁ。例えばクラムボンのミトはアニソン好きで知られているだけに、アニソン系のミュージシャンか声優あたりが参加していてもおもしろかったかも、と思ってしまうのですが。それもちょっと残念です。

そんなマイナスポイントもありつつ、ただ内容的には最初から最後まで各々のミュージシャンの実力を感じつつ、同時にクラムボンの魅力もしっかり詰め込んだ名カバーだったと思います。まもなくリリースされるクラムボンのニューアルバムも楽しみです!

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

silver lining/LAMP IN TERREN

これがメジャーデビュー作となるスリーピースロックバンド。「RO69JACK 13/14」でグランプリを獲得するなど、一部では話題となっているバンドです。そんなバンドなのですが、アルバムがはじまった瞬間、「あ、これはいかにもROCKIN'ON JAPANが好きそうな音だな」と感じるバンド(笑)。良くも悪くもBUMP OF CHICKENあたりの亜流のオルタナ系ロックを奏でています。歌詞はちょっとシニカルに現実を切り取った世界観が印象的。こちらもほどほどのわかりやすさとほどほど解釈をリスナーにゆだねる内容が好印象なものの、この手のバンドはちょっと飽和状況かも。全体的には「ロケノン系」という括りで語られそうな感じなのですが、決して悪いバンドだとは思いません。ただ、もうちょっとLAMP IN TERRENのみが持っているような独特の個性が欲しいかも。

評価:★★★★

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コメント

ゆういちさん、こんばんは。
確かに今回のトリビュートでは、初期のシングル曲があまりカバーされてなかったのが僕的にも少し残念だったです。でも参加アーティスト達のクラムボンに対する愛情はめっちゃ感じられたのでそこは素晴らしかったです。
P.S“はなればなれ”はSOUL SETがカバーしてましたよ。

投稿: 通りすがりの読者 | 2015年3月17日 (火) 23時40分

まさかゆういちさんがLAMP IN TERRENを取り上げてくれるとは!!
最近RO69JACKはレベルが上がってきており、このバンドはそのコンテスト出身組の中では一番ポテンシャルがあると思います
インディーズ時代から最近のバンドとは決定的に違うこれだ!というものがありました
確かにバンプのような感じはしますが(笑)

既に彼らを2度ライブで見てますが、成長速度が格段に速いです(特にドラム)
今1番期待しているバンドなので、早くブレイクしてほしいです
ちなみに彼らはMASH A&Rが主催するコンテストにも優勝しており、ロッキンオンよりもMUSICAの方がプッシュは強いです

投稿: softman | 2015年3月29日 (日) 23時33分

>通りすがりの読者さん
あ、すいません、「はなればなれ」はカバーされていましたね。ご指摘ありがとうございました。修正しておきました。
そう、クラムボンに対する愛情はとても感じました。そういう意味では本当にトリビュートされているアルバムですよね!

>softmanさん
いえいえ、LAMP IN TERREN、最近、いろいろと取り上げられていますよね。
正直アルバムを聴く限りだと、物足りなさを感じたのですが、ライブで見るとそれだけ素晴らしく成長しているんですね!そういう意味では次のニューアルバムに期待ですね!

投稿: ゆういち | 2015年3月31日 (火) 00時32分

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