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2015年3月23日 (月)

エレクトロ路線の新作

Title:Girls in Peacetime Want To Dance
Musician:Belle and Sebastian

「ベルセバ」の略称でも親しまれるイギリスはグラスゴー出身のギターポップバンドの新作。約5年ぶりとなる久々の新作で、ナールズ・バークレイやアニマル・コレクティヴで知られるベン・アレンをプロデューサーとして迎えた作品となっています。

そんな久々となる今回の作品で特徴的なのはエレクトロサウンドを大幅に取り入れている点。「Enter Sylvia Plath」のような打ち込みを前面に押し出したダンスナンバーには、いままでのベルセバのイメージとは異なり驚かされます。他にも「Nobody's Empire」「Play For Today」など、アルバム全体的にエレクトロサウンドを取り入れた作品に仕上げていました。

ただ、そんなエレクトロサウンドを全面的に取り入れたからといってベルセバらしさが大きく変化した訳ではありません。暖かみを感じる美メロは本作でも健在。むしろ、久々の新作となったからこそ、メロディーの良さは際立っていたように感じます。

「Allie」のように、いかにもな掛け声でのイントロは、美メロファンにはちょっとベタながらもうれしくなってきそうですし、「The Cat With the Cream」はゆっくりと美しいメロディーラインを堪能できる傑作に仕上がっています。エレクトロサウンドメインの中にも「Ever Had a Little Faith?」のようなアコースティックサウンドで聴かせてくれる美メロの傑作もちゃんと収録されています。

そんな感じで、エレクトロ路線を主軸としながらもベルセバとして抑えるべき部分はちゃんと抑えた作品になっていた今回のアルバム。そういう意味ではファンとしては安心して聴ける内容だったと思います。しかしその一方で、個人的にアルバムを聴き終わった後、どうしても物足りなさも感じてしまいました。

その物足りなさの最大の理由が、そのエレクトロのサウンドがどうしてもチープに感じてしまった点でした。エレクトロサウンドはいまどき流行の、バリバリとビートを効かせたようなEDM、といった感じではなく、一昔前、80年代っぽさを彷彿とさせるようなサウンドになっています。

それはそれで悪くないのですが、サウンド的にはスカスカな感じで、その音がどうしても古臭いというか安っぽさを感じてしまい、この違和感が最後の最後までぬぐえませんでした。

メロディーは決して悪くありません。むしろベルセバらしい傑作ともいえる内容だったと思います。ただそのメロディーの良さに反してサウンドに安っぽさを感じてしまい、非常に残念な出来になっているように思います。あまりこのエレクトロ路線は彼らの楽曲にも合っていないような・・・。いいアルバムだとは思うのですが、一方で非常に惜しさも感じてしまう作品でした。

評価:★★★★

Belle and Sebastian 過去の作品
Write About Love(ライト・アバウト・ラヴ~愛の手紙~)


ほかに聴いたアルバム

Goldrushed/The Royal Concept

2013年にサマソニに出演。そのパフォーマンスが大きな話題となったスウェーデン出身の5人組バンド。分厚いエレクトロサウンドに、キュートで人懐っこいメロディーライン、そしてダンサナブルなリズムが特徴的。この、妙に日本人好みしそうなインパクトあるメロディーといい、どこか丸みを帯びたサウンドといい、いかにもスウェーデン出身といった印象。スウェディッシュ・ポップという言葉にピンと来たような方には、無条件でお勧めできそうな1枚です。

評価:★★★★★

Life, Love & Hope/BOSTON

アメリカン・プログレ・ハートの代表格的バンドによる約11年ぶりとなるニューアルバム。相変わらず分厚い凝ったサウンドにポップなメロディーラインが特徴的。これといって目新しさは感じられず、良くも悪くも昔ながらもバンドといった印象が。ファンならそれなりに満足できそうな内容ではありますが。

評価:★★★

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コメント

ゆういち様 こんばんは

自分は彼らを熱心に追いかけていたわけではないのですが、久しぶりの新作はとても良かったです。おっしゃる通り、メロディメイカーとしての優秀さを改めて見直したという感じ。アレンジはまさしく80年代のチープなところを狙っているので、自分は気になりませんでしたが、ずっとアルバムを追っているファンの方々には好みが分かれるところかもしれませんね。

ボストン、ジャケット通り(宇宙パトロール異常なし)の内容ということですね。

投稿: GAOHEWGII | 2015年3月25日 (水) 23時25分

>GAOHEWGIIさん
ベルセバのニューアルバム、メロディーは相変わらず、素晴らしくいいんですよ!
それだけにアレンジのチープさが気になりました。うーん、確かに80年代的な部分で狙っているのはわかるのですが、それにしても・・・と思ってしまいました(^^;;
ボストンは相変わらずです。良くも悪くも。あのスケール感は実は嫌いじゃないのですが(^^;;

投稿: ゆういち | 2015年3月31日 (火) 00時34分

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