ロボットによる演奏
Title:Computer Controlled Acoustic Instruments pt2 EP
Musician:Aphex Twin
突然かつ久々のリリースとなったアルバム「Syro」からわずか4ヶ月、Aphex Twinのニューアルバムが早くもリリースとなりました。今回のアルバム、タイトルを直訳すると「コンピュータ制御された生楽器」。これは彼がコレクションしている楽器を演奏するロボットのこと。今回は、そんなロボットたちによる演奏を聴かせてくれる作品になっていました。
ちなみに明確に確認できるロボットは2種類あって、ひとつは「HAT」という打楽器演奏ロボット。「diskhat1」だとか「hat 2b 2012b」などと「HAT」という言葉がタイトルに織り込まれている曲はこのロボットが使われているのでしょう。もう1台は「SNAR」というスネアを演奏する楽器で、こちらも「snar2」なんていうそのままのタイトルの曲があったりします。
アルバムは30分弱。それで13曲収録のアルバムになっているだけに、1曲あたりの長さは短く、曲によっては数秒なんて曲もあったりして。イメージとしては、リチャードが、お気に入りのロボットをいじりながら、気楽な気分でつくってみた曲といったイメージ。そのため、実験性を前に押し出したというよりも、リラックスした空気の中で作り上げた曲が多かったように思います。比較的シンプルな小品が多く収録されたアルバムになっていました。
その結果、個人的には正直、前作「Syro」よりもこちらのアルバムの方が好きかも(^^;;このアルバム、いいアルバムじゃない?と思った最大の理由は、彼の作品としては意外すぎるほどポップでメロディアスだったから。例えば「diskhat ALL prepared1mixed13」では、明確なメロディーラインが楽曲に流れていますし、「piano un10 it happened」などもピアノのみで美しいメロディーを聴かせてくれています。
また、この「生楽器をロボットに演奏させる」というスタイルによって、それだけで独特な雰囲気がアルバムに流れているように感じました。生音であるがゆえに、普段のAphex Twinの作品からすると暖かい音が楽しめるはず・・・なのですが、ロボットによる演奏のため、人による演奏とは異なる無機質さ、一種の冷たさが楽曲から感じられます。エレクトロと生音の中間を行くような不思議な空気・・・これが今回の作品に独特の雰囲気を与えていました。
リラックスして作った作品だからこそ、1曲1曲それぞれに彼のアイディアが反映されており、そのため、おそらく数台のロボットのみによる作成なのですが、1曲1曲が異なるタイプの楽曲になっていました。アルバムを作った直後ながらも、いまだにいろいろなアイディアがあふれている彼。ひょっとしたら次のアルバムも近いかも・・・????
そんな訳で、Aphex Twinのアルバムとしては小品なのですが、個人的には「Syro」以上に気に入った傑作。肩の力が抜けたリチャードの様々なアイディアも楽しめた作品。Aphex Twinが好きなら、このアルバムも間違いなく要チェックです。
評価:★★★★★
Aphex Twin 過去の作品
Syro
ほかに聴いたアルバム
Night Time My Time/Sky Ferreira
アメリカの女性シンガーソングライターのデビュー作。この作品は2013年に各種メディアで高い評価を得て話題となりました。今回、遅ればせながら聴いたのですが、これがすごく気持ちよかった!前半は、ノイジーでパンキッシュなギターサウンドにシンセのメロが分厚くのっかかり、ポップなメロとあわさって、非常に気持ち良いサウンドを作り上げています。かと思えば、そんなサウンドに飽きがきはじめた中盤以降は一転シンプルなサウンドに。エレクトロテイストの強いポップや、正統派のギターロックなどバラエティー富んだ内容が楽しめます。これは高評価も納得の傑作。もっと早く聴けばよかったなぁ、といまさらながら後悔しました。
評価:★★★★★
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