攻めの姿勢を感じる最高傑作
Title:UTUTU
Musician:東京カランコロン
メジャー3枚目となる東京カランコロンのニューアルバム。前作「5人はエンターテイナー」ではセルフプロデュースとなる作品でしたが、今回は積極的に外部から人を招集したアルバム。「恋のマシンガン」では蔦屋好位置を、「笑うドッペルゲンガー」ではAxSxEを、そして「ヒールに願いを」では亀田誠治を、それぞれプロデューサーとして迎えています。
数々のヒット曲を手掛けたプロデューサーを迎えた点、ミュージシャンとして非常に攻めの姿勢を感じます。そんな攻めの姿勢がアルバムに反映されたかのように今回の作品、いままでの作品以上に彼らのエンタテイメント精神がつまった楽しいアルバムになっていました。
アルバムタイトルが曲のタイトルにも取り入れられている「夢かウツツか」ではダイナミックなサウンドに、明るく爽やかなメロがとても心地よいナンバー。続く、蔦屋好位置プロデュースによる「恋のマシンガン」も曲中に流れるシンセのサウンドがとにかく明るいナンバー。メロディーラインにはちょっとベタさも感じるのですが、そのベタさが聴いていて楽しくなる大きな要素になっているような曲に仕上がっています。
そんな「恋のマシンガン」もそうですが、彼らの楽曲に大きな特徴的なのは、いい意味でJ-POP的である、ということ。前作で「J-POPって素敵ね」なんていう曲も歌っている彼女たちですが、ちょっとベタだけどインパクトのあるメロディーライン、様々なジャンルを薄く広く取り込んだ楽曲、さらにちょっと過剰気味ともいえるにぎやかなサウンドなど、J-POPと言われるような楽曲にありがちな特徴を彼女たちの楽曲からは見て取れます。
今回のアルバムでもメタリックなサウンドを取り入れた「ビバ・ラ・ジャパニーズ」、80年代を感じる歌謡ディスコチューン「ネオンサインは独りきり」、ハードロックなギターが特徴的な「笑うドッペルゲンガー」など、様々なジャンルを薄く広く取り込んでいます。結果、ルーツレスな印象を受けてしまう反面、それぞれのジャンルのおいしいところを上手く取り込んでいて、ベタなメロディーラインやにぎやかなサウンドも含めて、J-POP的と感じられる要素が、彼女たちの音楽のエンターテイメント性を強く高める結果になっています。
これらの要素はいままでの東京カランコロンのアルバムでも大きな特徴となっていたのですが、今回のアルバムでは、そんな東京カランコロンらしさが、外部のプロデューサーを導入した結果、より強くなっていたように感じられます。おそらく、彼女たちの最高傑作といっても過言ではない内容ではないでしょうか。
また今回のアルバムでもうひとつ大きな魅力になっていたのが歌詞。「うつつ=現実」と題されたアルバムタイトルに沿って、今まで以上にテーマ性を感じます。妄想の世界から現実に飛び出そうと歌う「夢かウツツか」、現実世界でもがく一人の男性を描いた「笑うドッペルゲンガー」など、現実世界の中での出来事をどこかコミカルさを交えて描きつつ、その中で前向きに生きていこうとする姿勢を歌っています。
そしてアルバム最後を飾る「終点から始発へ」はまさにアルバム全体のテーマ性を集結させたような歌詞が印象的。
「生きてる意味を探すため、
見つけるために前に進め
それが僕の足跡になって、
それがきっと生きる意味になる」
(「終点から始発へ」より 作詞 いちろー)
という歌詞は、まさに現実世界の中でもがきつつ進んでいる人たちへの強いメッセージを込めた歌詞が特徴的。上で彼らの曲を「J-POP的」と表現しましたが、こと歌詞に関しては薄っぺらさを感じるJ-POP的な部分は感じず、コミカルなエンタテイメント性をちゃんと兼ね備えつつも、骨太なメッセージ性を感じる歌詞が、今回のアルバムでは特に大きな魅力となっていました。
そんな部分を含めて、とにかく最初から最後まで聴いていて楽しくなってくるようなエンターテイメント性あふれるアルバム。個人的には、今年はじめてのベスト盤候補かも。デビュー以来毎作傑作アルバムを届けてくれる彼女たちですが、今回もその期待にちゃんと答えてくれた傑作でした。
評価:★★★★★
東京カランコロン 過去の作品
We are 東京カランコロン
5人のエンターテイナー
ほかに聴いたアルバム
Arcadia Blues/DON Matsuo
今年、活動再開を宣言したズボンズのボーカリスト、ドン・マツオのソロ4作目。本作はHIP HOP的なアプローチが特徴的。ただ一方ではドン・マツオらしいファンキーなリズムも飛び出したりしており、HIP HOPといえどもファンならすんなり受け入れられそう。ソロらしい自由な作風が強く感じられた作品でした。
評価:★★★★
ドン・マツオ 過去の作品
NEW STONE AGE
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