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2015年2月10日 (火)

吹っ切れた?

Title:QUIT30
Musician:TM NETWORK

昨年、デビュー30周年を記念してリリースされたTM NETWORKのニューアルバム。純然たるオリジナルアルバムとしては前作「SPEEDWAY」から7年ぶりとなる新作となりました。

この久々の新作を聴いてまず感じたのは、小室先生、吹っ切れたなぁ、ということでした。TM NETWORKが再結成した後の2000年代の小室先生は、あきらかに迷走しているように感じました。主にトランスを取り入れた曲を作成していたのですが、時代の先端を行くような音楽を書こうとしながらも、いまひとつ時代にのりきれない作品が続いており、そんなどこか自信のなさが楽曲にもあらわれていました。

実際、前作「SPEEDWAY」ではそんな小室先生のスランプが如実に表れた作品になっていました。全11曲中5曲が木根尚登作曲という構成がそれを物語っています。そしてそんなスランプの状況の中、彼を襲ったのが、あの5億円詐欺事件。これが彼にとっての大きな区切りになりました。

その後、主にavex系のミュージシャンへの楽曲提供から活動を再開させた彼ですが、その頃の楽曲は、逮捕以前の楽曲とあきらかに異なります。その違いを簡単に言うと、「時代の先端を追わなくなった」という点。ここ最近では流行のEDMを取り入れたりして、それなりに時代にアップデートさせながらも、以前の彼のように、無理に新しい音を追わず、インパクトあるメロディーラインを重視した、素直なポップソングを聴かせてくれるようになりました。

この7年ぶりとなるニューアルバムも、まさにそんなここ最近の小室先生の傾向を強く反映した内容になっています。小室哲哉のメロディーメイカーとしてのセンスが目立つ素直なポップソングが並んでいます。ファンにはおなじみ小室みつ子とのコンビとなる「Alive」ではどこか切なさを感じさせるメロディーラインが大きなインパクトを持ったポップソングになっていますし、「I am」もバンドサウンドにエレクトロサウンドを加えたダイナミックなサウンドの中に、爽やかなメロディーが強く耳を惹きつけられます。

今回、残念ながら唯一の木根尚登作曲の「STORY」も実に彼らしい期待通りのキネバラに仕上がっていますし、ファンにとっては素直にTM NETWORKの楽曲を楽しめる満足度の高いアルバムになったのではないでしょうか。また、今回のアルバムでもうひとつ特徴的だったのがアルバムの中盤にトータル22分を超える「QUIT30」と名付けられた組曲が含まれている点。楽曲的にはいまどきのエレクトロというよりも完全にプログレなのですが、このアルバムの中のひとつの核となっています。

こういうコンセプチュアルなプログレテイストの楽曲を組み込んでいるのは、おそらく昨年末にデラックスエディションがリリースされた1988年にリリースされたアルバム「Carol」を意識しているのではないでしょうか。実際、今回のアルバムのDisc2には、その「Carol」に収録された楽曲が再録されています。

ただ残念なことにこの「Carol」の再録が、今回のアルバムの評価をちょっと下げてしまう結果になりました。というのもあきらかに「Carol」からの楽曲の出来の方が優れているから。確かに彼らの最高傑作ともいえるこのアルバムからの曲と比べるのも少々酷なのかもしれませんが、やはりかつての比べるとその勢いは比べようもありません。

アルバムとしては十分良い内容だったと思います。ファンなら満足いく内容だったのではないでしょうか。ただ、傑作というには昔の彼らと比べてしまうと物足りなさも感じてしまう内容だったのは事実。もしはじめてTM NETWORKというミュージシャンに触れるのなら、活動再開前のアルバムの方がやはりいいんだろうなぁ。ただ、昔からのファンなら、とりあえずはお勧めできる作品だと思います。

評価:★★★★

TM NETWORK 過去の作品
SPEEDWAY
TM NETWORK THE SINGLES 1
TM NETWORK THE SINGLES 2
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
DRESS2


ほかに聴いたアルバム

くるりとチオビタ/くるり

チオビタ・ドリンクのCMソングに使われたくるりの曲を集めた企画盤。CMソングを集めた企画盤なだけに、くるりのポップミュージシャンとしての側面のみクローズアップされており、一面的である反面、くるりの持つ優れたポップスセンスをこれでもかというほど感じることが出来ます。ただ、ベスト盤としては選曲が物足りなく、ファンにとっては目新しい収録曲もなく(リマスターされていますが)、いまひとつどの層に向けられたのかわからない企画盤なのですが・・・。

評価:★★★★

くるり 過去の作品
Philharmonic or die
魂のゆくえ
僕の住んでいた街
言葉にならない、笑顔を見せてくれよ
ベスト オブ くるり TOWER OF MUSIC LOVER 2
奇跡 オリジナルサウンドトラック
坩堝の電圧
くるりの一回転
THE PIER

After Tone VI/岡村孝子

恒例のセレクションアルバム第6弾。本作はあみんとしてリリースした「In the prime」から2013年にリリースした「NO RAIN,NO RAINBOW」までの作品を収録。透き通るような歌声は今も健在。岡村孝子節ともいえるメロディーもあいかわらず。もっともはっきりいってしまえば大いなるマンネリといった感じで、メロにしろ歌詞にしろ昔ほどの勢いはないのも事実。「ずっと」のようにちょっとラテン風味を加えた曲や、「NO RAIN,NO RAINBOW」のようにアレンジにリバーブをかけて幻想的な雰囲気を出した曲のようなそれなりの新しさもあるものの、良くも悪くも似たりよったりな曲が並んでいます。アレンジがどうもチープなのも気になるところ・・・。

評価:★★★

岡村孝子 過去の作品
勇気

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アルバムレビュー(邦楽)2015年」カテゴリの記事

コメント

ついにTMの久方ぶりのオリジナルアルバムのレビューが当ブログにて掲載されたのを初めて見た時には心躍る物がありました。

昨年2014年はTMにとっては記念すべきデビュー30周年というメモリアルイヤーだけあって、本アルバムのリリースはもとよりもTM30年の活動を総括したライブツアーの展開(こちらに関しては前年の2013年の終わり頃からスタートしていたようですが)などFANKSには目の離せない1年だったとも言えます。個人的にもFANKS、つまるところTMのファンになって20数年になりますが、生まれて初めてTMのライブを2月上旬のさいたまスーパーアリーナにてこの目で見る事が出来たのは喜ばしい限りだったりします。ライブについての詳しい詳細に関しては音楽情報サイト「バークス」のライブレポート

http://www.barks.jp/news/?id=1000112726

とYahoo!ニュースのふくりゅう氏の記事

http://bylines.news.yahoo.co.jp/fukuryu/20150208-00042891

をご参考頂きたい所ですが、個人的にも近年の活動における「宇宙から地球への潜伏者」というSF的なコンセプトには私自身がTMに望む姿というものが感じられ(確かデビュー当時は宇宙人のような設定だったような&SF的なものとの相性が高いと思える点で)、ライブの中で一つの物語を展開する所にも大いに魅了されました。本アルバムのDisc2に収録されている「CAROL」組曲もライブの中で披露されましたが、「CAROL」関係の楽曲を生で聴けただけでも感慨無量と言えるものでした(1989年の「CAROL TOUR」におけるライブパフォーマンスも映像にて流されました)。上のライブレポートにもある「CAROL TOUR」にてキャロル役を演じた外国人パフォーマーの方が映像出演されていましたし。他にも小室先生のシンセサイザープレイは大いに惹きつけられるものがあり、木根さんがアコースティックギターの弾き語りで歌う曲(アルバム「RHYTHM RED」収録曲の「LOOKING AT YOU」)もあったり等々で初TMライブ参加としては大いに満喫出来たと言ってもいいでしょう。もしかしたら1999年の復活後の活動の中では一番質の高いものとも言えるのかもしれません。後当日のライブに来ていたファン層についてですが、見た限りでは私のような30代半ばから40代くらいの人が結構いたような印象があり(中には50代初め頃らしき人も)、10代や20代の若い層はあまり見かけませんでした(自分より上の世代らしき人が子供連れで鑑賞しているのは見かけましたが)。考えてみたら自分ももう20年前に「TMN終了宣言」をした頃のお三方と同世代になっていたのですね・・・・・。

さてライブ参加の話が長くなってしまいましたが、本アルバムに関しては2014年にリリースされた作品としては唯一と言ってもいいくらいCDショップで購入したアルバムであったりします(レンタルではいくつか聴いてはいますが)。近年のTMの活動の集大成的な意味合いでのニューアルバムともいえる本作リリースのニュースを聞いた時に「これは絶対に聴かねば」と心に決めたくらいに意識を持たされたアルバムだったりもします。
1曲目の「Alive」や2曲目の「I am」、或いは8曲目の「LOUD」に関しても、いわば「TMらしい」楽曲とも言ってもいいくらいでゆういち様がおっしゃられている小室先生が吹っ切れたというのにも納得出来るものがあります。特に「I am」に関してはこの曲は「LOUD」と共にこの前のライブでも披露されたナンバーですけれども、もしかしたら2010年代のTMを代表する曲とも言ってもいいのではと思えるくらいでした。それとも復活後の楽曲としてはトップクラスとも言ってもいいというくらいでしょうか?アルバムそのものを通しても久方ぶりの会心作と言えるのかもしれません。本アルバムの核ともいえる「QUIT30」組曲に関しては、これはライブを前提に制作されたものだったのではというのをライブの鑑賞後に認識しましたが、前述の「宇宙から地球への潜伏者」というコンセプトを表現したものとしてSF的な雰囲気が感じられました。これも前述したものと重なりますがSF的なものが感じられる事もTMらしさと個人的に考えているからかもしれません。

復活後の活動では、デビュー20周年時にリリースされた前々作も迷走感が強く表れ、前作「SPEEDWAY」の時はゆういち様もおっしゃられているように小室先生が完全なスランプ状態に(そして翌年秋には件の事件で逮捕になり25周年記念はお流れ・・・)とFANKSにとっては「これじゃない感」が漂い期待を悪い意味で裏切られる事ばかりでしたが、ここ数年の活動では小室先生の音楽に対する情熱や本気度が強くなっているという事も本アルバムを含めても感じられました。


TMに関しては強いこだわりがあるだけに長文となってしまいましたが、ご了承願います。

投稿: MoTo | 2015年2月22日 (日) 19時44分

>MoToさん
(おそらく)同世代としてTMについてついつい語ってしまう気持ちは私もよくわかります(笑)
やはり長らくTMや小室先生の活動をリアルタイムで見てきた身としては、いろいろ語りたくもなりますよね。
ライブツアーへの参加、私は日程的都合で出来なかったのでうらやましい限りです。「CAROL」からの曲も聴けたということも非常にうらやましいです。
SF的という部分も、昔のTMらしさと共通する部分でしょうね。そういう意味でも、昔からのファンにとっては壺をつきまくる作品だったと思います。
ここ最近、小室先生は本気で音楽に取り組んでいるみたいなので、これからのTMの活動にも期待できそうですね!

投稿: ゆういち | 2015年3月 8日 (日) 23時02分

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