ポップスシンガーへの脱却
Title:1989
Musician:Taylor Swift
おそらく、現在、最も「売れている」ミュージシャンの一人であると思われるアメリカのシンガーソングライター、テイラー・スウィフトの新譜。本作も本国アメリカでは初動128万枚という驚異的なセールスを記録。日本でもオリコン初登場3位という好セールスを記録しており、その人気は確実に海を越えて日本へも波及しています。
そんなテイラー・スウィフトの新譜、大きな話題を呼んだのは彼女のいままでの音楽の方向性を大きく変える作品になっていた点でした。いままでの彼女の曲は、基本的にカントリーとしてカテゴライズされるような作品。生音主体の楽曲がメインとなっていました。ところが今回の作品は1曲目「Welcome To New York」からいきなりシンセをバリバリ聴かせる曲からスタート。いままでのカントリーシンガーというイメージを大きく塗り替えるようなアレンジを展開しています。
その後も「Blank Space」も、エレクトロの単音のリズムが強調される、いかにも「今風」のリズムトラックが展開されていますし、「Out Of The Woods」や「All You Had To Do Was Stay」なども非常に分厚い、エレクトロサウンドが耳を惹くような作品に仕上がっています。
簡単に言ってしまえば、カントリーシンガーという枠組みを超えて、いまどきのエレクトロトラックを大胆に使うことによって、「ポップスシンガー」というより広い世界に飛び出してきたようなアルバム。「Shake It Off」のような、ちょっとガーリーな雰囲気のかわいらしいポップソングあきらかにカントリーとは方向性が異なりますし、「This Love」では幻想的なアレンジを展開し、サウンドの面でもより楽曲の広がりを感じさせます。
ただ一方では確かにポップシンガーへの脱却を図ったアルバムと言えるものの、根本的な部分はさほど大きな変化はないのではないか、という印象も受けました。というのも彼女、いままでのアルバムに関しても、ジャンル的にはカントリーにカテゴライズされているものの、その実はオーソドックスなポップス色の強い作品が多く、それがまた彼女の人気の要因にもなっていました。そういう意味でも今回、エレクトロサウンドを大胆に取り入れたものの、ポップという観点では彼女は以前から十分「ポップスミュージシャン」として通用するポピュラリティーを持っており、そういう意味では今回のアルバムも根本の部分では言われるほどの大きな変化はなかったようにも感じます。
またそんなポップスの楽曲も、良くも悪くも優等生的。エレクトロサウンドも、今風にアップデートされた音ではあるものの、新鮮味といわれれば、よくありがちな音。そういう意味では安心して聴けるポップスであり、万人受けしそうなポップスという印象を受けます。だからこそ、今、もっとも売れているシンガーなのでしょう。ただこの万人受け志向のポップスという路線も、いままでの彼女と同様の路線に感じられます。
ただ、とはいうものの良質のポップスアルバムという点では間違いありません。上にも書いた通り、多くの方が楽しめるポップスのアルバムと言えるでしょう。日本でいえば、いきものがかりとか、コブクロとかにも近い印象??(楽曲のタイプは全然違いますが)話題のアルバムですし、洋楽を普段聴かない方でも楽しめるアルバムだと思うので、興味ある方は聴いて損のない1枚です。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
My Everything/Ariana Grande
アメリカのシンガーソングライターによる2作目。日本ではアイドルテイストな取り上げられ方が多く、楽曲的には「ガールズポップ」というイメージもあったのですが、意外や意外、今風のエレクトロサウンドを積極的に取り入れつつ、曲によってはハードコアやらトライバルやらのテイストも取り入れており、本格的なサウンドが楽しめます。彼女に対するイメージが変わったアルバムでした。
評価:★★★★★
V/Maroon5
Maroon5の約2年3ヶ月ぶりの新作。エレクトロ主体のアレンジにあいかわらずポップやロック、ソウルなどの要素をごちゃまぜにしたポップスを聴かせてくれ、難しいこと抜きに気軽に楽しめる内容が魅力的なのですが、どうもこれといったキラーチューンに乏しいのが気にかかります。前作もそうなのですが、無難にまとめてきてしまっている印象が。
評価:★★★
Maroon5 過去の作品
OVEREXPOSED
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