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2015年2月16日 (月)

異色のデゥオ

Title:Cheek to Cheek
Musician:Tony Bennett & Lady Gaga

異色のデゥエットとして、昨年、大きな話題を呼んだ1枚。片や、アメリカポピュラーミュージック界の大御所中の大御所、トニーベネット。片や、今のミュージックシーンの中でもっとも話題のミュージシャン、Lady Gaga。まさに異色ともいえる組み合わせ。日本で言えば・・・うーん、ここ最近、Lady Gaga的な位置にいるような大物シンガーっていないんですが・・・宇多田ヒカルが北島三郎とデゥエットアルバムを作るようなもの???ちょっと違うか・・・。

もともとはトニー・ベネットの2012年のアルバム「Duet II」の中での共演が話題となり、その延長として作成されたアルバムだそうです。アメリカジャズ界のスタンダードナンバーをトニーとガガ、2人のデゥオをメインに、時にはそれぞれのソロとしてカバーしています。トニー・ベネットはいままでも積極的に若手シンガーとのコラボを行っており、今回のガガとのコラボも、そういう意味では意外性は思っているほどではないのかもしれません。

楽曲は、基本的には「古き良きアメリカ」といった雰囲気のジャズナンバーがメイン。主にビックバンドやスウィングの楽曲が並んでいて、いかにも昔のアメリカンポップスといった感じのナンバーが並んでいます。どこかで聴いたことあるような・・・という曲もあるかも?そういう意味では非常に聴きやすい選曲のように感じました。

さて肝心のガガ様のボーカルですが、声量はあるし、安定しているし、文句なしに上手いという印象を受けます。日本ではそのエキセントリックな衣装などに話題が行きがちなのですが、そういう「外見」抜きでもボーカリストとしても十分勝負できるミュージシャンなんだ、ということをアピールできる内容ではないでしょうか。

ただ一方、ジャズボーカリストとして魅力的か、と言われると少々微妙な部分も。確かにボーカリストとして上手いことは間違いないのですが、全体的に卒なくこなしているという印象も。正確には「上手い」というよりも「巧い」という言い方の方が合っているのかもしれません。そういう意味ではボーカリストとしてだけで勝負できるようなプラスアルファには乏しかったように思います。

一方でトニー・ベネットについては文句なしでしょう。つーか、御年88歳なんだよねぇ。にも関わらずボーカリストとして衰えもなく、色つやさえ感じられます。もちろん、往年に比べれば衰えもあるのかもしれませんが、このアルバム単独で聴けば、ボーカリストとしてまだまだ第一線級の力があることを感じられます。

そんな2人のボーカリストによるカバーは、原曲を聴いたことあるわけではないので憶測の面が多いのですが、シンプルで、比較的そのままな雰囲気のカバーに。目新しさみたいなものや斬新な解釈のようなものはありませんし、この手の昔のスタンダードをカバーする時にありがちな「現代からの視点」みたいなものもあまり感じません。

そのため、卒ないカバーといった印象があり、安心して聴けますし、なにより原曲の良さや2人のボーカリストとしての魅力をちゃんと押し出したアルバムになっています。そういうこともあり、評価が高い作品という理由も納得の作品。ただ一方、このカバーだけの解釈や、挑戦的なおもしろさみたいな部分は乏しく、そういう面ではちょっと物足りなさを覚えた部分もありました。

とはいえ、幅広い層にアピールできる佳作なのは間違いないと思います。素直なポピュラーミュージックのアルバムとして、ガガのファンの若い世代から、トニー・ベネットのファンのような、ともすればおじいちゃんおばあちゃん世代まで楽しめそうなアルバムです。

評価;★★★★

LADY GAGA 過去の作品
The Fame
BORN THIS WAY
ARTPOP


ほかに聴いたアルバム

Music for Robots/Squarepusher x Z-Machines

Suarepusherの最新作は、企画盤的な要素が強い作品。アルコール飲料ブランド「ZIMA」が、東京大学の河口洋一郎教授などに依頼して製作されたロボットによるバンド、Z-Machinesを用いて作成されたアルバム。78本の指を持つギタリスト「Mach」(マッハ)、22本の腕を持つドラマー「Ashura」(アシュラ)、レーザーでキーボードを演奏する「Cosmo」(コスモ)という3体のロボットからなるバンドだそうで、普段の楽器で、人力では不可能な演奏をすることができるそうです。

ただ、一部ハイスピードなギターやドラムスの演奏はあるものの、基本的に「超絶なテクニックを押し出す」という感じではなく、いつものSquarepusherらしいシンプルな音を複雑に構成させた内容になっています。ただ、おそらくその演奏は人力では不可能なコード展開になっているんでしょうね・・・。ちなみに音楽的には企画先行なだけに特に斬新さはないのですが、Squarepusherの新譜として満足はできる水準にはきちんと仕上げてきています。

評価:★★★★

SQUAREPUSHER 過去の作品
Just a Souvenir
SHOBALEADER ONE-d'DEMONSTRATOR
UFABULUM

Me. I Am Mariah.../Mariah Carey

オリジナルアルバムとしては約5年ぶりとなるニューアルバム。一時期に比べると、特に日本では人気的には下火になってしまいましたが、楽曲的にはさすがに全盛期ほどではないものの一定以上に水準を保っているのはさすが。特にミディアムテンポのナンバーが本作では多く収録されており、ボーカリストとしての実力を前に押し出した作品になっています。いい意味でも悪い意味でも「いつものマライア」といった感じ。それなりに今風の音にはアップデートしているものの、古くからのファンも安心して聴けそうなアルバムです。

評価:★★★★

Mariah Carey 過去の作品
Memories Of An Imperfect Angel
Merry Christmas II You

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