70年代の日本でのライブをおさめた名盤
Title:LIVE!
Musician:OTIS CLAY
今回も、2014年に聴き逃した「ベストアルバム」の聴きなおしシリーズ。本作は、「BLUES&SOUL RECORDS」誌のベストアルバムの中に選ばれていた1枚(順位はなし)。OTIS CLAYは70年代に一世を風靡したディープソウルの代表的なシンガー。本作は1978年4月に東京・虎の門ホールで行われたライブの模様を収録したライブアルバムで、もともと同年にLP盤としてリリースされたもの。その後、80年代にCD化されたそうなのですが、その時は一部曲を削られてしまったそうで、完全版としては初となるCD化だそうです。
楽曲的には王道ともいえるようなソウルナンバー。ファンキーな演奏にのった力強いボーカルが印象的なのですが、基本的にはメロウで聴かせるメロディーラインを主軸としたポップソングのため、いい意味での聴きやすさを感じます。「LET ME IN」のような泣きメロでしんみり聴かせる曲もあれば、「TURN BACK THE HANDS OF TIME」のような軽快なポップチューンもあったり。ライブ的にはアンコール前ラストソングの「TRYING TO LIVE MY LIFE WITHOUT YOU」はファンキーなリズムが心地よく、会場の高いテンションがこちらにも伝わってきそうですし、「I CAN'T TAKE IT」のようにメロウな歌とシャウトを交互に聴かせつつ、最後はボーカルのみの独唱になるあたり、OTIS CLAYのボーカリストとしての実力をきちんと伝えてくる作品も含まれていたりします。
そんな楽曲自体の良さも印象的だった一方、このアルバムでやはり注目したいのは、70年代後半という時代の日本でのライブの雰囲気。まず総じて感じたのは、意外とここ最近のライブの雰囲気と変わらないなぁ、という印象でした。
全体的にはおとなしめという印象は否めないものの、熱狂する場面では熱狂的な観客の歓声も聴こえますし、OTISの呼びかけには観客としてちゃんと応えており、ライブの盛り上がりは十分感じます。逆に聴くべきところではシーンとした雰囲気でOTISの歌声に耳を傾けていて、「盛り上がるべきところで盛り上がり、聴くべきところで聴いている真面目な観客」という印象を受けました。
そんな会場の空気に呼応するかのようにOTISも終始ご機嫌だった模様。ライブ的にはどこか「よそ行き」といった雰囲気もするのですが、それでも迫力のある演奏と歌声を最後まで聴かせてくれているのは、会場の空気の良さがあるからでしょうか。OTISの笑い声なんかも収録されていて、会場の雰囲気の良さもうかがわせます。
ライブ盤ではMCなども収録されていてそんな会場の雰囲気もバッチリ収録。さらにはリハーサル音源なんかも収録されており、70年代の日本でのソウルのライブを記録した貴重な音源、といった位置づけになっていました。
70年代の空気がこちらにも伝わってきそうな、とても楽しめたライブアルバム。「名盤」と言われるのも納得の内容だったと思います。ソウルミュージック好きには文句なしにお勧めいたいアルバムです。
評価:★★★★★
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