伝説のロックバンドの名盤
Title:Doolittle25
Musician:PIXIES
80年代後半から90年代初頭にかけて活躍し、その後のギターロックバンドに絶大なる影響を与えたインディーロックバンドPIXIES。かのカート・コバーンもファンだったということでも知られていますが、日本でも、例えば初期NUMBER GIRLはかなり明確に(露骨に?)PIXESからの影響を感じる曲を書いていますし、the pillowsも、メンバーのキム・ディールの名前をそのまま冠した曲をつくるなど、大きな影響を与えています。
そんな彼らの最高傑作と目されているのが1989年にリリースされた3rdアルバム「Doolittle」。そのアルバムリリースから25年を記念したデラックス盤がリリースされました。3枚組となった今回のアルバムではDisc2にはイギリスBBCの著名なDJ、John Peelが放送していたラジオ番組「Peel Sessions」の模様を収録した音源とシングルのBサイド曲を収録。さらにDisc3にはこのアルバムのデモ音源が収録されています。
個人的にPIXIESは、oasisやblurなどと並んで、もっとも好きなバンドのひとつ。その最大の魅力はパンキッシュなサウンドを奏で、激しいシャウトなど取り入れつつ、メロディーは至って人懐っこいポップという、ロッキンな面とポップな面を両立させている点でしょう。この名作「Doolittle」は、そんな彼らの魅力が最もよくあらわれているアルバムと言えます。
例えば彼らの代表曲でもある「Debaser」。ブラック・フランシスのシャウトがさく裂し、非常にパンキッシュな内容である一方、ギターフレーズは非常にポップで人懐っこさを感じます。個人的に彼らのナンバーの中で最も好きな「Here Comes Your Man」などは、とても切ないメロディーラインは、おそらく一度聴いたら忘れられないのではないでしょうか。
インディーロックバンドというと、ともすれば内向きの、わかりやすい、という観点からもっとも遠いメロディーを奏でがち。そんな中、PIXIESのメロディーは実にポップで、かついい意味で万人受けするインパクトあるメロディーを書いてきています。このメロディーの良さと、ロックでパンキッシュという彼らのバンドとしてのスタンスが見事に両立。このアルバムでは他にも「Wave of Mutilation」や「Monkey Gone To Heaven」など、彼らの魅力をよく伝える、ポップで、そして同時にパンキッシュな曲が並んでいます。
さて、今回の25周年記念盤でおもしろかったのは、オリジナルアルバムは言うまでもなく、Disc2のセッションやB面曲もさることながらも、やはりDisc3のデモ音源。彼らの数々の名曲が出来上がる過程を垣間見れて、非常に興味深かったです。例えば「Debaser」はサビの部分が大きく異なる一方、どこか荒さを感じられ、完成形になるにつれてサビの歌い方が洗練されることがわかりますし、「Tame」も、完成形に比べてメタリックなサウンドになっているのがおもしろいところ。「Wave of Mutilation (First Demo) 」ではサビ以外は歌詞すら出来上がっていない、まさにこの曲の最初の姿を知ることが出来ます。
そんな訳で全3枚組でボリューム感満点。まさにファンとしてはうれしい記念盤でした。ちょっと残念だったのはオリジナルアルバムがリマスターではなく、基本的に過去の音源と同一だった点。一方、3枚組というボリュームながら、国内盤でも値段が3千円程度とCD1枚のアルバムと同水準だったという点は、懐にもうれしい価格設定。ここはやはりいまだインディーバンドとしてのスタンスを貫いているということでしょうか。
3枚組というフルボリュームは、PIXIESがはじめてという方にはちょっと手を出しずらいかもしれません。ただ、そこを差し引いても、全ギターロックファン必聴の名盤なのは間違いなし。25年前のアルバムながらも、内容には全く古さを感じさせません。まだ聴いたことない、という方は、これを機に、是非。
評価:★★★★★
PIXIES 過去の作品
EP1
EP2
Indy Cindy
ほかに聴いたアルバム
Lightning Bolt/Pearl Jam
グランジロックの大御所的バンド、Pearl Jamの最新作。「王道」ともいえるようなシンプルなギターロックがメイン。正直、目新しい印象はないものの、素直な楽曲を難しいことぬきで楽しめるといったアルバム。シンプルなサウンドに不必要に「凝った」部分がないという意味ではベテランバンドらしい余裕も感じられる作品。
評価:★★★★
Pearl Jam 過去の作品
Backspacer
Someday World/Eno・Hyde
アンビエントミュージックの先駆者として知られるブライアン・イーノとUNDERWORLDとして活動を続けるカール・ハイドによるコラボ作。イーノらしいアンビエントな雰囲気を基調にしつつ、カール・ハイドからの影響を感じられるリズムが鳴り響く、まさにイーノとハイドのコラボといった雰囲気がストレートに反映されたアルバム。その割には、新たな音楽というような化学反応はちょっと薄めなのが残念なのですが、凝ったリズムとサウンドが展開しつつもポップなメロディーを楽しめるアルバムになっており、両者の才能はしっかりと反映されたアルバムになっていました。
評価:★★★★★
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