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2015年2月21日 (土)

サッチモを大胆に解釈

Title:Ska-Dat-De-Dat:Spirit of Satch
Musician:Dr.John

ニューオリンズの音楽を今に伝えるDr.Johnの、前作「Locked Down」以来、約2年ぶりとなるニューアルバムは、サッチモこと、20世紀を代表するジャズミュージシャン、ルイ・アームストロングの曲をカバーしたトリビュートアルバム。もともと「サッチもの魂が下りてきて何をすべきかを伝えられたんだ。お前流にやってみろって」なんて怪しげ(?)なことを言いつつ、2012年から2013年にかけてサッチモのトリビュートアルバムを企画していたそうで、本作はいわばその延長線上にあるアルバムとなるそうです。

ただ、そんなサッチモのトリビュートアルバムなのですが、アルバムを聴きはじめると、そのあまりにぶっ飛んだ独自の解釈に驚かされてしまいます。1曲目は、おそらく彼の作品の中で最も有名と思われる「What A Wonderful World」のカバーなのですが、サッチモのしゃがれ声のボーカルとペットで感情たっぷり聴かせる原曲から一転。ピアノとホーンセッションが軽快に鳴り響く、ニューオリンズ風のアレンジに。イメージをまさに180度転換させた内容になっているだけに、その変わり様に驚かされます。

ただ、この「What A Wonderful World」は、聴いていて一応、「あ、『What A~』だな」とわかっただけまし(笑)。続く「Mack The Knife」については、原曲が影も形もありません(笑)。こちらもおそらく、曲名こそ知らなくても楽曲を聴けば誰もが一度は聴いたことあるようなナンバー。軽快ながらもどこか切ないメロが印象的な原曲に対して、カバーではファンキーな演奏をガンガン聴かせる内容に。途中、ラップまで飛び出してくるなど、かなり大胆なカバーになっています。

その後もニューオリンズ風だったりブルージーだったりラテン調だったりゴスペルの要素を入れたりと、多彩なジャンルを取り込みつつ、ある意味、とてもDr.Johnらしい作品に仕上がっていました。ルイ・アームストロングのカバーアルバムというよりも、サッチモの曲を素材にして仕上げたDr.Johnのオリジナルアルバムのような印象すら受ける作品でした。

また、今回のアルバムでユニークなのは、様々なゲストがアルバムに参加している点でしょう。「I've Got The World On A String」ではアメリカのロックギタリスト、ボニー・レイットが参加。「Sometimes I Feel Like A Motherless Child」ではアメリカの正統派ソウルシンガー、アンソニー・ハミルトンがその歌声を聴かせてくれています。他にもゴスペルグループのレジェンドともいえるブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマも参加していますし、豪華なメンバーがズラリと顔をそろえています。

そんな多くの仲間たちと手掛けた今回のアルバム。仲間たちとワイワイやりつつ、サッチモの曲を現代に甦らせ、現在からの視点でも十分に通用するということを示したという点では、まさにサッチモへのトリビュートと言えるのかもしれません。そんなサッチモへの愛情を感じつつも、アルバム全体としてはしっかりとDr.Johnのアルバムとなっていた今回の作品。パッと聴いただけではサッチモのカバーと気が付かないかもしれませんが・・・(^^;;Dr.Johnらしさが間違いなく押し出された最高のアルバムなのは間違いないと思います。

評価:★★★★★

Dr.John 過去の作品
Locked Down

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