手作り感が気持ち良い
Title:明るい幻
Musician:キセル
最近はコンスタントにライブ活動を行っていたようですが、音源リリースからすっかり遠のいていた兄弟バンドキセル。久々になるニューアルバムはなんと4年半ぶり!最近は、辻村豪文は斉藤和義のライブサポートメンバーでの活動も目立っていましたが、キセルとしてはすっかり久しぶりの新譜となってしまいました。
そんな久しぶりのニューアルバムとなった新作ですが、シンプルでフォーキー、暖かい雰囲気のポップソングというキセルらしい曲が並んでいます。ただ、ひとつ異なるのは以前のキセルのような浮遊感が薄いこと。1曲目の「時をはなれて」こそ、ギターにどこか浮遊感がありましたが、全体的には輪郭がはっきりしたシンプルなメロディーのポップソングがメインとなっていました。
4年半前のアルバム「凪」も、輪郭のはっきりしたメロディーが特徴的でしたが、そういう意味では基本的に、前作に続く形でのアルバムといった印象を受けました。ただおもしろいのは、「浮遊感」が大きな特徴的だったキセルですが、その浮遊感をとっても、ちゃんとキセルの曲になっている点。浮遊感という楽曲の雰囲気のみならずメロディーラインもしっかりキセルとしての個性が色濃く染み込んでいるんだなぁ、ということを実感しました。
特に「君をみた」など、決して派手なフックがあるわけではないのにちゃんと心に残るようなメロディーを書いていたり、「声だけ聴こえる」ような爽やかなメロディーを書いていたり、メロディーメイカーとしての実力も再認識できたりして。シンプルだからこそあらためて彼らが優れたミュージシャンであることを実感できました。
またもうひとつキセルらしさを強く感じることが出来たのはそのサウンド。今回のアルバムのサウンド、一言でいえばチープです(笑)。ここ最近行っていないので最近のライブはわからないのですが、昔のキセルのライブといえば、2人が奏でるギター以外の音はカセットテープに録音し、流していたのですが、今回のアルバムは、そんな彼らのライブを思い出しました。
ただ、このチープさが逆に手作り感を覚えて暖かみを感じます。またチープといっても録音状態だけであって、アレンジそのものが単純、というわけではありません。「そこにいる」のようなちょっとゆがんだ、サイケっぽい雰囲気の曲もあったり、「ミナスの夢」のようなピアノとホーンでのんびりとした雰囲気を醸し出している曲もあったり、バラエティー富んだ作風も印象に残りました。
4年半ぶり久々のアルバムながらも、ちゃんとキセルを聴いたと満足できる傑作に仕上がっていました。久しぶりに聴いた彼らの新曲なだけに、あらためてキセルっていいミュージシャンだなぁ、と実感できたアルバムでした。そろそろ久しぶりにライブも見てみたいなぁ。
評価:★★★★★
キセル 過去の作品
magic hour
凪
SUKIMA MUSICS
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