一皮むけた彼ら
Title:FUN! FUN! FANFARE!
Musician:いきものがかり
いきものがかりの前作「I」は間違いなく傑作でした。いきものがかりというと、良くも悪くも売れ線のJ-POPバンドというイメージが強かった中、前作「I」では「歌謡曲」らしさを上手く取り込み、ミュージシャンとして一皮むけたような作品になっていました。
ただ、前作が、彼らにとって本当に一皮むけた作品だったのか、それとも例外的に生み出された奇跡の1枚だったのか、いまひとつはかりかねる部分がありました。それだけに約1年半ぶりの新譜となった本作は注目の1枚だったのですが・・・間違いなく彼らはミュージシャンとして一皮むけたということを聴いてみて実感しました。
前作を傑作と感じたのは、彼らの音楽の中に感じた「歌謡曲」的な部分が、実にうまく機能していた点。そして本作も、そんな「歌謡曲」的な部分が楽曲にうまく反映されていました。「ラブソングはとまらないよ」のちょっと切ないメロディーライン、「春」で聴かせる胸にせまるようなメロディーなど、歌謡曲的要素を取り入れつつ、しっかり聴かせるメロディーラインを書いてきています。
一方でちょっと80年代的な雰囲気を彷彿とさせる「キラリ」やラテンフレーバーな「陽炎」など、雑多な音楽的要素を取り入れているのも歌謡曲風。ここらへんの狙いがピッタリはまっている点も、前作同様であり、ミュージシャンとして一皮むけた証拠のように思います。
ただ、前作に引き続き傑作だったかと言われると、ちょっと気になる点が2点ほどありました。
まず1点目はちょっとアレンジが過剰気味ではなかったか、という点。今回は「FUN!FUN!FANFARE」というタイトル通り、ホーンセッションも取り入れて、全体的ににぎやかなアレンジが目立つ内容になっています。ただ結果として全体的に大味になってしまっており、もうちょっと控えめのアレンジの方がよかったのではないかと思ってしまいました。「SNOW AGAIN」のようなピアノを聴かせた、耳を惹くサウンドを聴かせてくれる曲もあったのですが・・・。
もうひとつは、これは本作に限らないのですが、そろそろ歌詞についても、もうちょっと大人な歌詞を聴かせてほしいかも、という点でした。メンバー全員が30歳を超えた彼らですが、歌詞については、いつまでも大学生あたり向けの若々しさが残る内容。ここらへんも悪い意味でのJ-POP的と言えなくもないのですが、もうちょっと30代が聴いても共感できるような歌詞を書いてくれれば、もう一皮むけるように思うのですが。彼らにとって次の課題のようにも感じました。
そんな点が気になりつつ聴いていただけに、前作ほどのもろ手をあげての傑作!・・・といった感じではなかったのもも、それでも十分に楽しめた作品になっていたと思います。売上的には一時期ほどではなくなってしまったものの、まだまだ勢いを感じられる彼ら。これからの活躍も楽しみです。
評価:★★★★
いきものがかり 過去の作品
ライフアルバム
My Song Your Song
ハジマリノウタ
いきものばかり
NEWTRAL
バラー丼
I
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