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2015年2月

2015年2月28日 (土)

和とメタルの融合

Title:現世は夢(うつしよはゆめ)~25周年記念ベストアルバム~
Musician:人間椅子

1987年に結成。89年に「イカ天」に出演し話題を集めメジャーデビュー。「イカ天」出身バンドということでデビュー当初はそこそこのスマッシュヒットを記録したものの、すぐに人気も落ち着いたようです。ただしその後もコンスタントな活動を続け、今年でメジャーデビュー25年。その節目の年にベストアルバムがリリースされました。

「人間椅子」というバンドについては、私自身、名前は以前から知っていたのですが、ちゃんと音源は聴いたことがありませんでした。今回のベストアルバムを見かけて、良い機会だから、ということではじめて聴いてみたのが本作です。

音楽のジャンルはハードロック、あるいはハードロックでももっとへヴィーメタル寄りのサウンド。そしてユニークなのが、本格的なハードロックである一方に、そこに乗っているメロや歌詞が非常に和風である、という点でした。例えば「賽の河原」ではタイトル通り、あの世の情景を描いた歌詞が実に日本的ですし、メロディーも和の要素が漂っています。「品川心中」も和風なメロが印象的。琴に音色も使われたりしています。

さらにユニークだったのが、その和風なイメージに、「津軽」のイメージが重なる点。オリジナルメンバーの和嶋慎治、鈴木研一がいずれも青森出身という理由なのでしょうが、例えば「りんごの泪」などはタイトル通り、青森名物のりんごを題材に、イントネーションにも津軽なまりが入るユニークなナンバーになっています。

また、サウンドも、初期の王道ハードロック路線から、「ダイナマイト」あたりはドゥームメタルっぽい感じといっていいのでしょうか?かと思えば「神経症I Love You」は80年代の産業ロックを彷彿とさせるサウンドと、ハードロックとへヴィーメタルの近辺で変動していきます。

歌詞も基本的に日本語のみを重視した歌詞になっていますし、デビュー以来、常に「和風」な要素と西洋的なハードロック、へヴィーメタルの融合を意識した楽曲作りが大きな特徴となっています。ただ、日本的を意識した歌詞にしても、どこかコミカルでユーモアセンスあふれる内容。そのため、ここ最近感じてしまうような、「日本的なものの押し付け」は感じられず、そういう意味では自然な形での和とハードロック、メタルの融合に成功しているように感じました。

ただ非常に残念だったのが、ここ最近の作品になるとマンネリ化してしまっていることでした。歌詞は地獄をテーマとした内容か、日本の東北のテーマとした内容の2パターン。サウンドも比較的様式化されてしまったようなメタル。この傾向がDISC2以降顕著になってしまっており、DISC1からDISC2の最初までくらいは文句なしに楽しめた内容だったのですが、正直DISC2の中盤くらいからダレてしまいました。

和風メタルとして一定以上の成功をおさめているバンドなだけに、後半のマンネリ路線はちょっと残念。ただハードロック、へヴィーメタルというジャンル自体がマンネリ傾向にあるだけに仕方ない部分もあるのかなぁ。とはいえ、演奏面での実力は言うまでもありませんし、ユニークで独特な和のテイストをかもしだした名曲も数多く収録されています。私のように「名前だけは・・・」程度の方もチェックしてみて損のないベスト盤だと思います。

評価:★★★★

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2015年2月27日 (金)

ライブ盤の方がよかったけど

Title:シングルコレクション1976-1982
Musician:やしきたかじん

今回もちょっと毛色の違うアルバム。昨年1月、64歳という若さで亡くなったシンガーソングライターやしきたかじんの初期のシングルを収録したベストアルバム。全国的知名度はともかくとして大阪では絶大な人気を誇っていた彼。正直個人的には、ミュージシャンというよりもテレビ番組のパーソナリティー的なイメージが強いのですが・・・今回のベストアルバム発売を機に、はじめて彼の楽曲を聴いてみました。

アルバムは2枚組で、Disc1がシングル集、Disc2が1980年7月に大阪・梅田バーボンハウスで行われたライブの模様を収録したライブアルバムに、その過激な歌詞内容から発売直後に発売禁止となってしまった幻のデビューシングル「娼婦和子」が収録されています。

すいません、正直に言わせてください。Disc1のシングル集の方、ぶっちゃけて言うとつまんなかったです。楽曲的にはフォークの流れを組む歌謡曲といった印象。タイプ的には谷村新司や松山千春と同じベクトルといった感じでしょうか。ただ、いかにも80年代的なベタで様式化された歌謡曲といった感じ。これといって突出したようなグッと来るようなメロディーもなく、最後まで全くはまれませんでした。

ただその一方、Disc2のライブ盤の方は、シングル集の方のイメージが一変、十分楽しめた内容になっていました。合間合間のMCも含めてライブ会場の模様がそのままパッケージされたようなアルバムになっていて、小さなライブハウスだったようですが、会場全体、アットホームな暖かい雰囲気を感じられる素晴らしいライブに感じられました。

特に、Disc1で全く楽しめなかった楽曲もライブではほれぼれ聴き入る内容に。なんでだろうと思ったのですが、ライブの方は比較的最小限な楽器でシンプルな演奏になっている反面、シングルは歌謡曲らしいムダに分厚い演奏になっている違うがあったからだと気が付きました。ライブはシンプルなだけに、楽曲のメロと歌詞、そしてやしきたかじんの歌だけを集中して楽しむことが出来ました。

また、合間合間のMCもほどよい笑いと暖かい雰囲気のトークが魅力的で、ライブ盤の中で重要な要素として織り込まれています。このトークを挟みつつ歌を聴かせるというライブのスタイルをそのままアルバムでも楽しめるのが実に魅力的でした。

個人的にDisc1が3つ、Disc2が4つという印象。正直、ライブ盤を聴いてもなお、音楽的にはちょっと好みとは違うなぁ、と思ったのも事実なのですが・・・それでもライブ盤の方は、きちんとミュージシャンやしきたかじんの魅力がしっかりと伝わってくる内容になっていました。

評価:★★★

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2015年2月26日 (木)

EXILE系が1位2位

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週のアルバムチャートは、EXILE関連のグループが1位2位を獲得しました。

1位はGENERATIONS from EXILE TRIBEの2ndアルバム「GENERATION EX」が2作連続1位を獲得。初動売上6万4千枚は前作「GENERATIONS」の4万8千枚(1位)からアップしています。また2位には先週2位の三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「PLANET SEVEN」が同順位をキープ。ロングヒットの兆しをみせています。

3位初登場は女性アイドルグループでんぱ組,inc「WWDD」がランクイン。アルバムでは2作目のベスト10ヒットで、初のベスト3入り。初動売上3万2千枚は前作「WORLD WIDE DEMPA」の1万4千枚からアップ。

続いて4位以下の初登場ですが、まずは4位。Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅのプロデューサー、中田ヤスタカによるユニット、CAPSULE「WAVE RUNNER」がこの位置。約2年8ヶ月ぶりのニューアルバム。前々作「STEREO WORXXX」以来、2作ぶりのベスト10ヒット。ただし、初動売上1万1千枚は、前作「CAPS LOCK」(13位)から横バイとなっています。

7位には女性シンガーソングライター阿部真央「おっぱじめ!」が入ってきました。初動売上は9千枚。前作はベストアルバム「シングルコレクション19-24」で、こちらの初動売上8千枚(7位)からは若干アップ。ただし、オリジナルアルバムとしての前作「貴方を好きな私」の1万1千枚(7位)からはダウンしています。なにげに3作連続7位という結果に。

8位9位には2枚同時発売となったLOVE PSYCHEDELICOのベストアルバムがランクインしています。2枚同時ですが、収録曲はランダムな模様。「Free World」や「裸の王様」が収録された「LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I」が8位、デビューシングル「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」などが収録された「LOVE PSYCHEDELICO THE BEST II」が9位となっています。彼女たち、いままでベスト盤は「Early Times」と「This is LOVE PSYCHEDELICO」がリリースされていますが、前者は初期ベスト、後者はアメリカ進出を意識した企画盤的ベスト盤。そういう意味では本格的なオールタイムベストはこれがはじめてとなります。初動売上は両者ともに9千枚。直近のオリジナルアルバム「IN THIS BEAUTIFUL WORLD」の1万1千枚(5位)からはダウン。ベスト盤としては前作「This is LOVE PSYCHEDELICO」の1万1千枚(16位)よりもダウン。公式のオールタイムベストとしては浮動層があまり取り込めていない、厳しい結果となっています。

最後10位には、シンガーソングライターYUIが組んだバンドFLOWER FLOWERの2枚目にして初のミニアルバム「色」がランクインしています。初動売上8千枚は、前作「実」の2万3千枚より大きくダウン。売上的には落ち込むミニアルバムという形態ながらも、かなり厳しい結果となっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年2月25日 (水)

ベスト10総入れ替え

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

新譜ラッシュでまたベスト10総入れ替えとなった今週のチャート。1位を獲得したのはSMAPのニューアルバム「華麗なる逆襲」。フジテレビ系ドラマ「銭の戦争」主題歌。作詞作曲を手掛けているのはあの椎名林檎。ただ、作風的には椎名林檎っぽさはあまりなく、「椎名林檎っぽさ」の中で彼女のボーカルが占める割合が多いんだなぁ、ということを実感します。初動売上16万枚は前作「Top Of The World」の12万2千枚(1位)よりアップしています。

2位は韓流の女性アイドルグループApink「Mr.Chu」がランクイン。これが2作目となるシングルで初動売上5万4千枚は前作「NoNoNo」の3万3千枚(4位)からアップし、初のベスト3入り。ただ楽曲は、前作同様、KARAの亜流のようなガールズポップで新鮮味はありません。

3位には女性アイドルグループSUPER☆GiRLS「ギラギラRevolution」が入ってきました。初動売上5万枚は前作「アッハッハ!~超絶爆笑音頭~」の4万1千枚(4位)からアップ。前作はMUSIC CARD70種という、強烈な仕様をかましてきましたが、本作はMUSIC CARD10種発売となっています。

さて4位以下の初登場曲ですが、今週はアニソンが4位以下にズラリと並んでいます。

まず4位にCINDERELLA PROJECT「Star!!」。こちらはアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ」オープニング・テーマ。アニメの中で結成された架空のアイドルグループによるキャラソンです。

5位6位はいずれもアニメ「艦隊これくしょん -艦これ-」関連。オープニングAKINO from bless4「海色」が5位、エンディング西沢幸奏「吹雪」が6位にそれぞれランクインしています。

AKINO from bless4はその名の通り、音楽グループbless4のメンバーの1人によるソロシングル。叙情的でダイナミックないかにもアニソンらしいポップスロックのナンバー。初動3万1千枚。前作はAKINO with bless4名義「エクストラ・マジック・アワー」の4千枚(20位)でこちらからは大きくアップ。なお、前々作「君の神話~アクエリオン第二章」はアニメ「アクエリオンEVOL」のテーマ曲として初登場3位を記録しており、タイアップによって売上にバラつきがある模様。西沢幸奏はこれがデビューとなる現役女子高生らしいです。こちらもアップテンポでマイナーコード主体、仰々しく盛り上がるアレンジの様式化されたアニソンといった感じ。歌は確かに安定していてうまいけど、アニソン系によくありがちな歌い方で個性は薄い感じが・・・。

アニメタイアップはもう1曲。8位に中川翔子「トリドリ」がランクイン。テレビ東京系アニメ「ポケットモンスターXY」エンディング・テーマ。明るくポップなポップスロックなナンバーで、こちらもいかにも「ポケモン」みたいなタイプの番組にピッタリはまりそうなナンバー。初動1万6千枚は前作「さかさまの世界」の1万枚(10位)よりアップ。こちらはタイアップ効果でしょうね。

残りのベスト10ヒットは・・・7位にはFlower「さよなら、アリス」がランクイン。E-girlsとしても活動しているEXILEの妹分的なアイドルグループ。初動売上2万4千枚は前作「秋風のアンサー」の4万1千枚よりダウン。

9位にはアルスマグナ「ミロク乃ハナ」が初登場。「ニコニコ動画」で活躍するコスプレダンスグループだそうです。ただ基本的には男性アイドルグループの延長線上なイメージが。

最後10位には山内惠介「スポットライト」が入ってきました。若手演歌歌手の一人で、前作「恋の手本」に続く2作目のベスト10ヒット。前作に引き続き、ど演歌というよりはムード歌謡曲に近い路線。初動1万2千枚は前作の初動1万枚(9位)を上回っており、ジワリと人気をあげてきています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2015年2月24日 (火)

ソロになって初のアルバム

Title:1
Musician:ドレスコーズ

アルバム制作中、バンドが空中分裂を起こし、志磨遼平のソロプロジェクトとなってしまったドレスコーズ。前作のミニアルバム「Hippies E.P.」からわずか3ヶ月弱。志磨遼平一人となってはじめてとなるニューアルバムがリリースされました。これはあくまでも推測ですが、ニューアルバムを作る途中でバンドが分裂し、バンドで制作できたものが「Hippies E.P.」になり、バンドで制作できなかったものが本作になったんじゃないかなぁ・・・なんて思ったりもします。

さて前作「Hippies E.P.」はバンドとしてリリースした作品ながらも志磨遼平のソロという色合いが強いアルバムになりました。当然、続くこの作品はバンド色がさらに薄れて志磨遼平のソロとしての色合いが濃くなる作品・・・と思っていたのですが、妙なバンド幻想のある彼だからこそ、逆にソロになったにも関わらず、バンド色が強くなってしまうんではないか・・・なんてことも思いつつ、このアルバムを聴いてみました。

で、その結果ですが、このアルバム、前作以上にバンド色は薄く、志磨遼平のソロアルバムと言える作品にちゃんとなっていました。まあ、さすがにメンバー全員脱退の直後にバンド色が強いアルバムはつくらないですよね。

そんな今回のアルバムは、志磨遼平のポップスセンスがさく裂した作品、と言えるかもしれません。「スーパー、スーパーサッド」「Lily」のようなちょっと切なさを感じる正統派のギターポップや、「みずいろ」のようなちょっとレトロな歌謡曲調の曲、「才能なんかいらない」のような分厚いサウンドでちょっとオールディーズのようなキュートなポップスなどなど。そしてどの楽曲にも共通するのは、よどみなく美しくポップな志磨遼平のメロディーセンス。まず難しいこと抜きにして、純粋にワクワクするようなポップの楽しさを体現化したような曲が繰り広げられています。

ただそんなポップなメロディーと裏腹に、歌詞は妙なまでに「一人」を強調したような歌詞が目立ちました。

「ハローアローン」と歌う「スーパー、スーパーサッド」に、「Lily」では

「神様 彼はうそつきだから
友達ってのが いまだにできなくて
本当のこと 伝えたいのに
傷つけるのが おそろしくて」

(「Lily」より 作詞 志磨遼平)

なんて歌詞が登場しますし、

「二・度・と!
          もう誰かと恋に落ちんな!
          二度と約束して未来みんな!」

(「この悪魔め」より 作詞 志磨遼平)

「ひとり同士でいようね ぼくらは」
(「みずいろ」より 作詞 志磨遼平)

などなど、「一人」を彷彿とさせる歌詞が並んでいます。ただ、これだけ「一人」であることを強調されると、逆にやはり彼はバンドをやりたがっているのではないか、一人が嫌なのではないかと推測してしまいます。他のメンバーが脱退しても志磨遼平ソロとならずにドレスコーズという形を残した理由もそのあたりにあるかもしれないなぁ。次のアルバムあたりで、また新しいメンバーを加えてバンド形態に戻った、なんて言われても驚かないでしょうね、このアルバムを聴く限りは。なんだかんだいってもバンドスタイルの曲もチラホラ収録されているし。

そういう推測もいろいろできてしまうアルバム。ただ、そんな邪推なんか関係なく、志磨遼平のポピュラーセンスを存分に楽しむことが出来る傑作だったと思います。次回作はどんなアルバムをリリースしてくるのか・・・いろいろな意味で楽しみです。

評価:★★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

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2015年2月23日 (月)

藤子Fアニメソングを網羅的に収録

Title:藤子・F・不二雄 大全集

今回紹介するアルバムは、ちょっと毛色の違う作品。うーん、どちらかというと「音楽ファン」的な観点で聴いてみたというよりも、「藤子不二雄ファン」として聴いてみた、あるいは昔の藤子アニメの主題歌に懐かしさ感じて聴いてみたアルバムです。

サブタイトル通り、2013年に生誕80年を迎えた藤子・F・不二雄先生。それを記念して彼の作品をすべて収録した漫画本「藤子・F・不二雄大全集」も発売されましたが、本作はそれとは直接はリンクされていない模様。F先生の漫画原作によるアニメ作品に使われた主題歌や挿入歌などをまとめたアルバムです。

「大全集」というタイトルの通り、収録されている曲は過去の曲から比較的最近の曲まで収録されています。それがほぼ発表順に並んでいるのですが、そのためDISC1に多く収録されているのが、昭和30年代のオバケのQ太郎などの主題歌や挿入歌。正直かなり時代を感じる昭和の歌謡曲といった感じで、これはこれである意味貴重な音源のように思います。

個人的にやはり一番壺にはまったのは、80年代の藤子不二雄ブームの頃に放送されたアニメの主題歌や挿入歌。この作品でいえばDISC1の後半からDISC3あたりにかけてなのですが、リアルタイムで見ていた身としては素直にノスタルジックな気分にも浸れる曲ばかり。半分忘れかけている曲を久しぶりに聴いて、思い出がよみがえってくるような曲もあったりして、軽く感涙モノ(笑)。

また一方で、60年代から最近までのF作品のアニメソングを通して聴くことによって、その時代時代のアニメソングに求められた要素も、図らずも明確になっているようにも感じました。60年代は至ってコミカルなポップソング。ギャグの要素も曲の中に取り込まれていて、今聴くと、正直ちょっと「寒い」部分もあったりして(笑)。80年代になると、アニメソングらしさが確立され、子供向けの「童謡」のような曲が目立ちます。F作品のアニメソングで有名なのはここらへんでしょうか。

その後時代が下ると、なぜかアイドルソングが増えてきます。これはアニメ主題歌も徐々に「タイアップ」の波が押し寄せてきたのでしょうか。ただ、ジャンル問わず様々なミュージシャンが楽曲を提供している今の時代と異なり、妙にアイドルソング、それもB級アイドルの曲が目立ちます。これはやはり「アニメ=子供向け=アイドル」という、ある種の「偏見」に基づくのでしょうか。やはり時代を感じました。

今回、「大全集」というタイトルながら、残念ながら網羅的な内容ではないようで、特にちょっと残念なのは、ドラえもんの映画主題歌がほとんど収録されていなかった点でした。武田鉄矢の「少年期」のように、映画主題歌には名曲が多いだけにちょっと残念。ただ、ここらへんを含めて網羅的に収録しようとすると、CD10枚組くらいになってしまいそうなので、あえて省いたのかもしれませんが。

全5枚組のCD-BOX仕様というボリュームいっぱいの作品なだけに、どちらかというと熱心なファン向けアイテム。そういう意味では広くはお勧めできない作品かもしれません。ただ、藤子F先生のファン、特にアニメが好き、リアルタイムにアニメを見ていたという方は、チェックしてみて損はないかも。懐かしい作品がたくさん収録されています。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

明治大正はやりうた 其の二/うめ吉

俗曲師うめ吉が、明治・大正時代に流行した歌をカバーした企画盤。彼女の歌い方は全く癖がなく、無色透明なカバーになっている反面、癖がないゆえに、原曲のメロディーラインや歌詞がよりくっきりと浮かび上がるようなカバーになっています。長唄や民謡など、日本古風の楽曲の中に、西洋風なポップスが混じっているあたりが、戦前の日本ならではといった感じでしょうか。

評価:★★★★

うめ吉 過去の作品
お国めぐり 其の二
うめ吉玉手箱~寄席うた俗曲集
ALL ABOUT UMEKICHI
うめ吉の唄う 童謡・唱歌 其の二

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2015年2月22日 (日)

70年代80年代サウンドの影響も

Title:Lost in the Dream
Musician:The War on Drugs

こちらも2014年話題のアルバム聴きなおしシリーズ。アメリカ・フィラデルフィア出身のインディーロックバンド。このアルバムは各種メディアで絶賛されました。具体的には・・・

米Spin誌 1位/米ローリング・ストーン誌 23位/英NME誌 3位/英MOJO誌 2位/米STEREOGUM 2位/米Pitchfork 3位

とまあ、軒並み上位にランクインされる大絶賛ぶり。なぜか日本のメディアでは完全無視に近い状態なのですが・・・遅ればせながら、この作品を聴いてみました。で、感想なのですが・・・うん、これは確かに絶賛も納得の傑作だわ。自分もいまさらながら、この作品にはまってしまいました。

楽曲としては、基本的にシューゲイザーからの影響を感じる、サイケロックの匂いが漂っています。1曲目の「UNDER THE PRESSURE」のピアノの美しい音色にわずかに流れるノイジーなギターという美しいサウンドの組み合わせは、まさにシューゲイザーからの影響を強くイメージさせます。その後もそんな幻想的なサイケ風のサウンドが続いていきます。

でも、そこに加えてこのアルバムがとてもおもしろかったのは、そんなサイケな作風に加えて、様々な音楽の影が見え隠れしている点でした。例えば「SUFFERING」はブルースロックの味付けがしてありますし、「EYES TO THE WIND」はボブ・ディラン調。さらに「BURNING」ではブルース・スプリングスティーンの影響を感じさせる楽曲でありながらも、同時に幻想的なサウンドにどこかシューゲイザーからの影響も感じられるという、実にこのアルバムを象徴するような楽曲に仕上がっていました。

また、メロディーも実にいいですね。タイトル曲「LOST IN THE DREAM」などはフォーキーな作風で、まさに美メロというにふさわしいメロディーが心に響きます。ともすれば、ちょっと通向けというか、地味なメロディー展開が多いインディーポップの中で、いい意味でわかりやすい、心に残るメロディーをちゃんと聴かせてくれています。

70年代や80年代の楽曲の影響を楽曲に反映させつつ、2010年代の今に通用するインディーポップをきちんと展開してくれる、彼らの音楽的特徴を一言で言えばそんなところでしょうか。そして本作では、そんな彼らの試みが大成功していたように感じました。各種メディア大絶賛が納得の傑作。なんで日本ではそれほど注目されていないのかなぁ~それがとても残念です。

評価:★★★★★

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2015年2月21日 (土)

サッチモを大胆に解釈

Title:Ska-Dat-De-Dat:Spirit of Satch
Musician:Dr.John

ニューオリンズの音楽を今に伝えるDr.Johnの、前作「Locked Down」以来、約2年ぶりとなるニューアルバムは、サッチモこと、20世紀を代表するジャズミュージシャン、ルイ・アームストロングの曲をカバーしたトリビュートアルバム。もともと「サッチもの魂が下りてきて何をすべきかを伝えられたんだ。お前流にやってみろって」なんて怪しげ(?)なことを言いつつ、2012年から2013年にかけてサッチモのトリビュートアルバムを企画していたそうで、本作はいわばその延長線上にあるアルバムとなるそうです。

ただ、そんなサッチモのトリビュートアルバムなのですが、アルバムを聴きはじめると、そのあまりにぶっ飛んだ独自の解釈に驚かされてしまいます。1曲目は、おそらく彼の作品の中で最も有名と思われる「What A Wonderful World」のカバーなのですが、サッチモのしゃがれ声のボーカルとペットで感情たっぷり聴かせる原曲から一転。ピアノとホーンセッションが軽快に鳴り響く、ニューオリンズ風のアレンジに。イメージをまさに180度転換させた内容になっているだけに、その変わり様に驚かされます。

ただ、この「What A Wonderful World」は、聴いていて一応、「あ、『What A~』だな」とわかっただけまし(笑)。続く「Mack The Knife」については、原曲が影も形もありません(笑)。こちらもおそらく、曲名こそ知らなくても楽曲を聴けば誰もが一度は聴いたことあるようなナンバー。軽快ながらもどこか切ないメロが印象的な原曲に対して、カバーではファンキーな演奏をガンガン聴かせる内容に。途中、ラップまで飛び出してくるなど、かなり大胆なカバーになっています。

その後もニューオリンズ風だったりブルージーだったりラテン調だったりゴスペルの要素を入れたりと、多彩なジャンルを取り込みつつ、ある意味、とてもDr.Johnらしい作品に仕上がっていました。ルイ・アームストロングのカバーアルバムというよりも、サッチモの曲を素材にして仕上げたDr.Johnのオリジナルアルバムのような印象すら受ける作品でした。

また、今回のアルバムでユニークなのは、様々なゲストがアルバムに参加している点でしょう。「I've Got The World On A String」ではアメリカのロックギタリスト、ボニー・レイットが参加。「Sometimes I Feel Like A Motherless Child」ではアメリカの正統派ソウルシンガー、アンソニー・ハミルトンがその歌声を聴かせてくれています。他にもゴスペルグループのレジェンドともいえるブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマも参加していますし、豪華なメンバーがズラリと顔をそろえています。

そんな多くの仲間たちと手掛けた今回のアルバム。仲間たちとワイワイやりつつ、サッチモの曲を現代に甦らせ、現在からの視点でも十分に通用するということを示したという点では、まさにサッチモへのトリビュートと言えるのかもしれません。そんなサッチモへの愛情を感じつつも、アルバム全体としてはしっかりとDr.Johnのアルバムとなっていた今回の作品。パッと聴いただけではサッチモのカバーと気が付かないかもしれませんが・・・(^^;;Dr.Johnらしさが間違いなく押し出された最高のアルバムなのは間違いないと思います。

評価:★★★★★

Dr.John 過去の作品
Locked Down

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2015年2月20日 (金)

一皮むけた彼ら

Title:FUN! FUN! FANFARE!
Musician:いきものがかり

いきものがかりの前作「I」は間違いなく傑作でした。いきものがかりというと、良くも悪くも売れ線のJ-POPバンドというイメージが強かった中、前作「I」では「歌謡曲」らしさを上手く取り込み、ミュージシャンとして一皮むけたような作品になっていました。

ただ、前作が、彼らにとって本当に一皮むけた作品だったのか、それとも例外的に生み出された奇跡の1枚だったのか、いまひとつはかりかねる部分がありました。それだけに約1年半ぶりの新譜となった本作は注目の1枚だったのですが・・・間違いなく彼らはミュージシャンとして一皮むけたということを聴いてみて実感しました。

前作を傑作と感じたのは、彼らの音楽の中に感じた「歌謡曲」的な部分が、実にうまく機能していた点。そして本作も、そんな「歌謡曲」的な部分が楽曲にうまく反映されていました。「ラブソングはとまらないよ」のちょっと切ないメロディーライン、「春」で聴かせる胸にせまるようなメロディーなど、歌謡曲的要素を取り入れつつ、しっかり聴かせるメロディーラインを書いてきています。

一方でちょっと80年代的な雰囲気を彷彿とさせる「キラリ」やラテンフレーバーな「陽炎」など、雑多な音楽的要素を取り入れているのも歌謡曲風。ここらへんの狙いがピッタリはまっている点も、前作同様であり、ミュージシャンとして一皮むけた証拠のように思います。

ただ、前作に引き続き傑作だったかと言われると、ちょっと気になる点が2点ほどありました。

まず1点目はちょっとアレンジが過剰気味ではなかったか、という点。今回は「FUN!FUN!FANFARE」というタイトル通り、ホーンセッションも取り入れて、全体的ににぎやかなアレンジが目立つ内容になっています。ただ結果として全体的に大味になってしまっており、もうちょっと控えめのアレンジの方がよかったのではないかと思ってしまいました。「SNOW AGAIN」のようなピアノを聴かせた、耳を惹くサウンドを聴かせてくれる曲もあったのですが・・・。

もうひとつは、これは本作に限らないのですが、そろそろ歌詞についても、もうちょっと大人な歌詞を聴かせてほしいかも、という点でした。メンバー全員が30歳を超えた彼らですが、歌詞については、いつまでも大学生あたり向けの若々しさが残る内容。ここらへんも悪い意味でのJ-POP的と言えなくもないのですが、もうちょっと30代が聴いても共感できるような歌詞を書いてくれれば、もう一皮むけるように思うのですが。彼らにとって次の課題のようにも感じました。

そんな点が気になりつつ聴いていただけに、前作ほどのもろ手をあげての傑作!・・・といった感じではなかったのもも、それでも十分に楽しめた作品になっていたと思います。売上的には一時期ほどではなくなってしまったものの、まだまだ勢いを感じられる彼ら。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★

いきものがかり 過去の作品
ライフアルバム
My Song Your Song
ハジマリノウタ
いきものばかり
NEWTRAL
バラー丼
I

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2015年2月19日 (木)

こちらも男性陣が上位を占める

今週のアルバムチャート

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初の1位獲得です。

今週のアルバムチャート1位はロックバンドONE OK ROCK「35xxxv」が獲得です。アルバムでは前作、前々作と2位に甘んじてきましたが、本作ではついに、シングル、アルバム通じての初のベスト10ヒットとなりました。初動売上16万4千枚は前作「人生×僕=」の11万8千枚からアップ。前々作は初動6万6千枚で、ここ数作、大きく人気を伸ばしています。

2位は先週1位三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「PLANET SEVEN」がワンランクダウンながらもこの位置をキープ。3位には、韓国の男性アイドルグループSS501のメンバー、キム・ヒョンジュン「今でも」がランクイン。初動売上2万8千枚は前作「UNLIMITED」の7万1千枚(3位)から大幅ダウンしています。

続いて3位以下の初登場ですが、4位には槇原敬之「Lovable People」が入ってきました。初動売上は1万9千枚。直近作はカバーアルバム「Listen To The Music 3」で、こちらの初動1万2千枚(7位)よりはアップ。オリジナルとしての前作「Dawn Over the Clover Field」の1万9千枚(6位)よりも若干アップしており、根強い人気を感じさせる結果となりました。

で、これに続く5位がSEKAI NO OWARI「Tree」と、シングルチャートに引き続き上位を男性ボーカルの曲が占めた結果となりました。

続く初登場は6位にオーストラリア出身、ロサンゼルスに拠点を置きながらも実質上は日本国内だけで活動している女性シンガーChe'Nelleのニューアルバム「シェネル・ワールド」がランクイン。オリジナルアルバムとしては「アイシテル」以来、1年4ヶ月ぶりの新作。初動売上は1万5千枚。直近はベストアルバム「Best Songs」で、こちらの初動1万2千枚(10位)よりはアップ。また前作のオリジナルアルバム「アイシテル」は初動1万7千枚(2位)で、こちらよりは若干のダウンとなっています。

7位には、シングルチャートでもベスト10入りしてきた女性声優によるユニット、スフィアのベストアルバム「sphere」がランクイン。初動売上1万1千枚。前作は、アニメ「夏色キセキ」の挿入歌やキャラソンを集めた「夏色キセキ Complete Songs ~あの夏のカケラ~」で初動2千枚(33位)だったので、これよりは大きくアップ。オリジナルとしての前作「4 colors for you」の1万3千枚(7位)よりダウンしています。

8位初登場は、NHK教育テレビの番組から結成され、「妖怪ウォッチ」のエンディングテーマでもおなじみの男女5人組ダンスユニットDream5のベストアルバム「Dream5~5th Anniversary~シングルコレクション」がランクイン。シングルでは何度かベスト10入りを記録していますが、アルバムでは初のベスト10ヒット。初動売上1万枚は、直近のオリジナルアルバム「まごころ to you」の6千枚(15位)よりアップ。

最後10位にはSTAR☆ANIS「TVアニメ/データカードダス アイカツ! 2ndシーズンベストアルバム SHINING STAR*」が入ってきました。タイトル通り、アニメ「アイカツ!」の2ndシーズンで使用された曲を集めたベスト盤。初動売上8千枚。昨年リリースされたベストアルバムの第1弾は初動1万2千枚(4位)だったので、そちらよりはダウンしています。

今週のチャート評は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年2月18日 (水)

女性アイドルだらけの中、上位は男性陣

今週のシングルチャート

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まず今週のシングルチャート1位。関ジャニ∞渋谷すばるのソロシングル「記録」が獲得しています。映画「味園ユニバース」主題歌。楽曲はアイドルソングっぽくない、ちょっとフォーキーなバラードナンバー。ただ、今回、渋谷すばるで調べたら「歌が上手い」という評され方をしていたのですが、この曲を聴く限り、ボーカリストとしては線が細いし、歌唱力も安定していないし、正直、上手いかぁ???とかなり疑問符がつくのですが。

2位はご存じ、狼の頭に人間の身体というスタイルの5人組ロックバンドMAN WITH A MISSION「Seven Deadly Sins」。TBS系アニメ「七つの大罪」オープニング・テーマ。シングルとしては1年4ヶ月ぶり。初動売上4万枚は、前作「database feat. TAKUMA(10-FEET)」の3万4千枚(4位)からアップし、2位は自己最高位。まだまだ順調に人気を伸ばしています。

そんな男性陣が上位に並ぶ中、4位から6位には女性アイドルグループがズラリと並びました。

3位はE-GirlsのメンバーでもあるDream「こんなにも」、4位に志倉千代丸と桃井はるこの共同プロデュースのアイドルグループアフィリア・サーガ「Never say Never」、5位にPaniCrewのYOHEYのプロデュースのアイドルグループChu-Z「花のアーチ」、6位にもAnge☆Reve「Kiss me Happy」と並びました。

この中ではDreamだけがちょっと大人の雰囲気のメロウな曲調の作品だったのですが、それ以外は相変わらず似たり寄ったりの大勢が寄ってかかったようなユニゾンの軽快なポップス。Dreamは、3位は自己最高位ながらも初動売上1万8千枚は前作「ダーリン」の2万4千枚(4位)からダウン。MUSIC CARD5種のドーピング付。アフィリア・サーガは初動1万8千枚で前作「ジャポネスク×ロマネスク」(9位)から横バイ。MUSIC CARD12種のドーピング付。Chu-Zは初のベスト10ヒット。初動1万3千枚は、前作「ボンバスティック!」の5千枚(16位)よりアップ。MUSIC CARD6種のドーピング付。Ange☆Reveも初のベスト10ヒット。初動1万枚は前作「勇敢な恋のセレナーデ」の6千枚(19位)よりアップ。

さて、初登場曲の紹介を続けます。7位初登場はangela「イグジスト」。男女2人組のユニットで、アニメソングを中心に活動を続けています。本作もアニメ「蒼穹のファフナーEXODUS」オープニング・テーマとなっています。デビューから12年がたつベテランなのですが、アルバムでのベスト10入りはあったもののシングルでは初のベスト10ヒット。ただ楽曲は、かなり仰々しいアレンジにマイナーコードという、「いかにも」なアニソン。初動売上9千枚は前作「Different colors」の2千枚(22位)より大きくアップしています。

8位はビジュアル系バンドR指定「サドマゾ」がランクイン。端整なボーカルのポップスロック路線ながらSMをテーマとした歌詞がなにげにへヴィー。初動売上9千枚は、初のベスト10ヒットとなった前作「包帯男」の7千枚(6位)より若干のアップ。

初登場9位は人気女性声優4人組によるユニットスフィア「情熱CONTINUE」。アニメ「夜ノヤッターマン」エンディング・テーマ。曲よりタイアップになっているアニメの内容が気になります・・・。初動売上8千枚は前作「微かな密かな確かなミライ」(15位)と同水準。ベスト10入りは前々作「Eternal Tours」以来。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2015年2月17日 (火)

ポップスシンガーへの脱却

Title:1989
Musician:Taylor Swift

おそらく、現在、最も「売れている」ミュージシャンの一人であると思われるアメリカのシンガーソングライター、テイラー・スウィフトの新譜。本作も本国アメリカでは初動128万枚という驚異的なセールスを記録。日本でもオリコン初登場3位という好セールスを記録しており、その人気は確実に海を越えて日本へも波及しています。

そんなテイラー・スウィフトの新譜、大きな話題を呼んだのは彼女のいままでの音楽の方向性を大きく変える作品になっていた点でした。いままでの彼女の曲は、基本的にカントリーとしてカテゴライズされるような作品。生音主体の楽曲がメインとなっていました。ところが今回の作品は1曲目「Welcome To New York」からいきなりシンセをバリバリ聴かせる曲からスタート。いままでのカントリーシンガーというイメージを大きく塗り替えるようなアレンジを展開しています。

その後も「Blank Space」も、エレクトロの単音のリズムが強調される、いかにも「今風」のリズムトラックが展開されていますし、「Out Of The Woods」「All You Had To Do Was Stay」なども非常に分厚い、エレクトロサウンドが耳を惹くような作品に仕上がっています。

簡単に言ってしまえば、カントリーシンガーという枠組みを超えて、いまどきのエレクトロトラックを大胆に使うことによって、「ポップスシンガー」というより広い世界に飛び出してきたようなアルバム。「Shake It Off」のような、ちょっとガーリーな雰囲気のかわいらしいポップソングあきらかにカントリーとは方向性が異なりますし、「This Love」では幻想的なアレンジを展開し、サウンドの面でもより楽曲の広がりを感じさせます。

ただ一方では確かにポップシンガーへの脱却を図ったアルバムと言えるものの、根本的な部分はさほど大きな変化はないのではないか、という印象も受けました。というのも彼女、いままでのアルバムに関しても、ジャンル的にはカントリーにカテゴライズされているものの、その実はオーソドックスなポップス色の強い作品が多く、それがまた彼女の人気の要因にもなっていました。そういう意味でも今回、エレクトロサウンドを大胆に取り入れたものの、ポップという観点では彼女は以前から十分「ポップスミュージシャン」として通用するポピュラリティーを持っており、そういう意味では今回のアルバムも根本の部分では言われるほどの大きな変化はなかったようにも感じます。

またそんなポップスの楽曲も、良くも悪くも優等生的。エレクトロサウンドも、今風にアップデートされた音ではあるものの、新鮮味といわれれば、よくありがちな音。そういう意味では安心して聴けるポップスであり、万人受けしそうなポップスという印象を受けます。だからこそ、今、もっとも売れているシンガーなのでしょう。ただこの万人受け志向のポップスという路線も、いままでの彼女と同様の路線に感じられます。

ただ、とはいうものの良質のポップスアルバムという点では間違いありません。上にも書いた通り、多くの方が楽しめるポップスのアルバムと言えるでしょう。日本でいえば、いきものがかりとか、コブクロとかにも近い印象??(楽曲のタイプは全然違いますが)話題のアルバムですし、洋楽を普段聴かない方でも楽しめるアルバムだと思うので、興味ある方は聴いて損のない1枚です。

評価:★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED


ほかに聴いたアルバム

My Everything/Ariana Grande

アメリカのシンガーソングライターによる2作目。日本ではアイドルテイストな取り上げられ方が多く、楽曲的には「ガールズポップ」というイメージもあったのですが、意外や意外、今風のエレクトロサウンドを積極的に取り入れつつ、曲によってはハードコアやらトライバルやらのテイストも取り入れており、本格的なサウンドが楽しめます。彼女に対するイメージが変わったアルバムでした。

評価:★★★★★

V/Maroon5

Maroon5の約2年3ヶ月ぶりの新作。エレクトロ主体のアレンジにあいかわらずポップやロック、ソウルなどの要素をごちゃまぜにしたポップスを聴かせてくれ、難しいこと抜きに気軽に楽しめる内容が魅力的なのですが、どうもこれといったキラーチューンに乏しいのが気にかかります。前作もそうなのですが、無難にまとめてきてしまっている印象が。

評価:★★★

Maroon5 過去の作品
OVEREXPOSED

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2015年2月16日 (月)

異色のデゥオ

Title:Cheek to Cheek
Musician:Tony Bennett & Lady Gaga

異色のデゥエットとして、昨年、大きな話題を呼んだ1枚。片や、アメリカポピュラーミュージック界の大御所中の大御所、トニーベネット。片や、今のミュージックシーンの中でもっとも話題のミュージシャン、Lady Gaga。まさに異色ともいえる組み合わせ。日本で言えば・・・うーん、ここ最近、Lady Gaga的な位置にいるような大物シンガーっていないんですが・・・宇多田ヒカルが北島三郎とデゥエットアルバムを作るようなもの???ちょっと違うか・・・。

もともとはトニー・ベネットの2012年のアルバム「Duet II」の中での共演が話題となり、その延長として作成されたアルバムだそうです。アメリカジャズ界のスタンダードナンバーをトニーとガガ、2人のデゥオをメインに、時にはそれぞれのソロとしてカバーしています。トニー・ベネットはいままでも積極的に若手シンガーとのコラボを行っており、今回のガガとのコラボも、そういう意味では意外性は思っているほどではないのかもしれません。

楽曲は、基本的には「古き良きアメリカ」といった雰囲気のジャズナンバーがメイン。主にビックバンドやスウィングの楽曲が並んでいて、いかにも昔のアメリカンポップスといった感じのナンバーが並んでいます。どこかで聴いたことあるような・・・という曲もあるかも?そういう意味では非常に聴きやすい選曲のように感じました。

さて肝心のガガ様のボーカルですが、声量はあるし、安定しているし、文句なしに上手いという印象を受けます。日本ではそのエキセントリックな衣装などに話題が行きがちなのですが、そういう「外見」抜きでもボーカリストとしても十分勝負できるミュージシャンなんだ、ということをアピールできる内容ではないでしょうか。

ただ一方、ジャズボーカリストとして魅力的か、と言われると少々微妙な部分も。確かにボーカリストとして上手いことは間違いないのですが、全体的に卒なくこなしているという印象も。正確には「上手い」というよりも「巧い」という言い方の方が合っているのかもしれません。そういう意味ではボーカリストとしてだけで勝負できるようなプラスアルファには乏しかったように思います。

一方でトニー・ベネットについては文句なしでしょう。つーか、御年88歳なんだよねぇ。にも関わらずボーカリストとして衰えもなく、色つやさえ感じられます。もちろん、往年に比べれば衰えもあるのかもしれませんが、このアルバム単独で聴けば、ボーカリストとしてまだまだ第一線級の力があることを感じられます。

そんな2人のボーカリストによるカバーは、原曲を聴いたことあるわけではないので憶測の面が多いのですが、シンプルで、比較的そのままな雰囲気のカバーに。目新しさみたいなものや斬新な解釈のようなものはありませんし、この手の昔のスタンダードをカバーする時にありがちな「現代からの視点」みたいなものもあまり感じません。

そのため、卒ないカバーといった印象があり、安心して聴けますし、なにより原曲の良さや2人のボーカリストとしての魅力をちゃんと押し出したアルバムになっています。そういうこともあり、評価が高い作品という理由も納得の作品。ただ一方、このカバーだけの解釈や、挑戦的なおもしろさみたいな部分は乏しく、そういう面ではちょっと物足りなさを覚えた部分もありました。

とはいえ、幅広い層にアピールできる佳作なのは間違いないと思います。素直なポピュラーミュージックのアルバムとして、ガガのファンの若い世代から、トニー・ベネットのファンのような、ともすればおじいちゃんおばあちゃん世代まで楽しめそうなアルバムです。

評価;★★★★

LADY GAGA 過去の作品
The Fame
BORN THIS WAY
ARTPOP


ほかに聴いたアルバム

Music for Robots/Squarepusher x Z-Machines

Suarepusherの最新作は、企画盤的な要素が強い作品。アルコール飲料ブランド「ZIMA」が、東京大学の河口洋一郎教授などに依頼して製作されたロボットによるバンド、Z-Machinesを用いて作成されたアルバム。78本の指を持つギタリスト「Mach」(マッハ)、22本の腕を持つドラマー「Ashura」(アシュラ)、レーザーでキーボードを演奏する「Cosmo」(コスモ)という3体のロボットからなるバンドだそうで、普段の楽器で、人力では不可能な演奏をすることができるそうです。

ただ、一部ハイスピードなギターやドラムスの演奏はあるものの、基本的に「超絶なテクニックを押し出す」という感じではなく、いつものSquarepusherらしいシンプルな音を複雑に構成させた内容になっています。ただ、おそらくその演奏は人力では不可能なコード展開になっているんでしょうね・・・。ちなみに音楽的には企画先行なだけに特に斬新さはないのですが、Squarepusherの新譜として満足はできる水準にはきちんと仕上げてきています。

評価:★★★★

SQUAREPUSHER 過去の作品
Just a Souvenir
SHOBALEADER ONE-d'DEMONSTRATOR
UFABULUM

Me. I Am Mariah.../Mariah Carey

オリジナルアルバムとしては約5年ぶりとなるニューアルバム。一時期に比べると、特に日本では人気的には下火になってしまいましたが、楽曲的にはさすがに全盛期ほどではないものの一定以上に水準を保っているのはさすが。特にミディアムテンポのナンバーが本作では多く収録されており、ボーカリストとしての実力を前に押し出した作品になっています。いい意味でも悪い意味でも「いつものマライア」といった感じ。それなりに今風の音にはアップデートしているものの、古くからのファンも安心して聴けそうなアルバムです。

評価:★★★★

Mariah Carey 過去の作品
Memories Of An Imperfect Angel
Merry Christmas II You

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2015年2月15日 (日)

フランスとアルジェリアの融合

Title:HK presente LES DESERTEURS
Musician:HK

2014年話題のアルバムの聴きなおしシリーズ(?)。今回は、MUSIC MAGAZINE誌ワールド・ミュージック部門で2位となった本作。このHKというミュージシャンはアルジェリア系フランス人。もともとはM.A.P.というHIP HOPユニットで活動した後、サルタンバンクというロックバンドでボーカリストとして活動。このバンドの曲「On Lache Rien」(和訳すると「あきらめない」)がフランスではデモの際に良く歌われる歌として知られるそうです。

今回のアルバムは、そんな彼がフランスシャンソンの名曲を、彼のルーツであるアルジェリアの大衆音楽シャアビ仕様にカバーしたアルバム。もともと、「On Lache Rien」といい、マイノリティーの視点からのメッセージ性強い曲を歌っているシンガーのようで、今回のシャンソンの選曲も、そんなマイノリティー視点からの選曲が多いようです。

このおもしろいのは、フランスの伝統的な音楽シャンソンを、アルジェリアのシャアビ風にカバーしているという点。日本でいえば在日のブラジル人が、日本民謡をブラジル音楽風にカバーするようなイメージでしょうか?そんな例を出してしまうと、妙にチグハグな音楽が出来上がりそうなのですが、これが意外とマッチしているから不思議。1曲目「VESOUL」もシャンソン歌手ジャック・ブレルの68年のナンバーだそうですが、アラブ風のギターの音色が曲にピッタリとマッチして、エスニックムードあふれる曲風に仕上がっています。

もともとシャンソン自体、歌謡曲に通じる哀愁漂うメロディーラインが魅力的。アラブや北アフリカの音楽にも、そんな歌謡曲っぽい哀愁たっぷりのメロディーがよくみられる印象があるのですが、それだけにもともと親和性が強かったのでしょう。さらに名曲のカバーということもあって、そのメロディーラインの良さは当たり前ですが絶品。ちょっと妖艶なギターが印象的な「P'tits papiers」のメロディーは泣きメロといっていいほどの哀愁感が漂っていますし(ちなみにこの曲は、レジーヌという女性歌手の97年のナンバーですが、現在はフランスの移民政策への抗議の歌としてよく歌われているそうです)、エディット・ピアフの「Padam Padam」なんかも歌謡曲テイストを感じます(というよりも、こういうシャンソンの曲が歌謡曲へ影響を与えているのか・・・)。

ただ、メロディーももちろんながらも、アレンジがまた絶品。北アフリカやアラブのテイストが感じられる、ちょっと乾いた雰囲気のサウンドがメロディーの哀しみを増幅させていますし、特に終盤、「Ne quelque part」はピアノとギターとアコーディオンの絡みが絶妙にマッチ。最後を飾る「L'affiche rouge」もピアノやアコギの音色が実に美しく聴かせてくれています。

残念ながら今回、ダウンロードでの購入だったので歌詞は詳しくわかりませんでしたし、選曲の意味するところもおそらく日本人だとピンと来ない部分もあるのかもしれません。ただ、そこらへんを差し引いても、シャンソンとシャアビという2つの異なる文化の融合がとても魅力的に楽しめるアルバムだったと思います。そしてこういう異なる文化が融合することによって、新たな魅力あふれる文化が産みだされるんだよなぁ、ということをこのアルバムを聴いて、強く感じることが出来ました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

2014 Grammy Nominees

毎年恒例、グラミー賞のノミネート作品を収録したオムニバス盤。洋楽シーンの動向をつかむにはもってこいの1枚なのですが、2014年版は当たりが多かった!LordeやDaftpunk、James BlakeにKendrick Lamarと、個性的かつインパクトのある曲がズラリ。全体的にはメロディアスでポップな曲が多かった印象ですが、2013年版に引き続き、シーンの充実ぶりを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

Grammy Nominees 過去の作品
2011 GRAMMY NOMINEES
2012 GRAMMY NOMINEES
2013 GRAMMY NOMINEES

Loopified/Dirty Loops

You Tubeにアップした動画が話題となりデビューを果たしたスウェーデン出身の3人組バンドのデビュー作。80年代あたりのフュージョンのサウンドを彷彿とさせる爽やかなシンセのサウンドにポップなメロディーが載るスタイル。感覚的にはちょっと懐かしさも感じさせつつ、ある種の「わかりやすさ」があり、垢抜けたサウンドもあり、「洋楽を聴いた」という満足感を覚えそうな作品。そういう意味で、普段洋楽を聴かないような方が最初に聴く作品としてピッタリ来るかも。

評価:★★★★

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2015年2月14日 (土)

奇妙だけどもコミカル

Title:Boy
Musician:neco眠る

大阪出身の6人組インストバンド。以前は「大阪発盆踊り系インストダブバンド」なんて呼ばれ方をして話題になったものの2010年にドラマーが脱退し活動休止。その後、新メンバーにより活動を再開し、このたび約6年ぶりとなるニューアルバムのリリースとなりました。

あらたな活動でのキャッチフレーズは「青春ビザールディスコバンド」。この聴きなれない「ビザール」という言葉、英語で「怪奇なもの」「一風かわったもの」という意味があるそうです。

「一風変わった」という表現を自称するように、今回の彼らの音楽、一言で説明するにはちょっと難しいものがあります。例えば「お茶」ではスティールギターなどをつかいつつ、ラテンフレーバーを醸し出したインストになっているかと思えば、「ハワイで正月過ごす奴」はタイトル通りハワイアンな雰囲気が漂っていますし、「すごく安い肉」ではお祭りのように軽快なエレクトロのリズムが前面に押し出されていたり、チップチューン風の「毎日寿司」なんてナンバーもあったり・・・。

ただ、どの曲にも共通するのは、様々な音の使い方が非常にコミカルという点。上にも並んだ曲のタイトルもユニークなのですが、いろいろな音を自在につかいながらもどこなユーモラスあふれる曲になっているのがおもしろいところ。例えばギターがどこか脱力している「三連休」や、エフェクトをかけたボーカルの歌詞がタイトル通りコミカルな「KANIMISO」などなど、このユーモラスさが楽曲のインパクトとなって、ポップで聴きやすいという印象を受けました。

もうひとつ特徴的に感じたのは、彼らのサウンドはどこかチープさがあるという点。これは決してマイナスポイントではなく、また「安いっぽい」という意味でもなく、この「チープである」がゆえに、どこか音楽から手作り感を覚え、それがある種の暖かさすら感じます。そしてこれがまた彼らの大きな魅力になっているように感じました。

そんなコミカルで暖かさを感じる反面、バラエティー富んだ作風に「ビザール」と自称するようにどこか奇妙で一風かわった部分を同居させている彼ら。久々に聴いた彼らのアルバムでしたが、そんな魅力が今回のアルバムではより表に出てきているように感じました。ライブにも定評があるらしいので、彼らのライブも一度見てみたいなぁ。完全に活動を再開した彼らですが、これからの活動も楽しみです。

評価:★★★★★

neco眠る 過去の作品
EVEN KICK SOYSAUCE


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -/矢野顕子

1976年にリリースされた彼女のデビュー作で、今なお邦楽史に残る名盤として語り継がれる「JAPANESE GIRL」。本作は2008年にすみだトリフォニーホールで行われた、「JAPANESE GIRL」の曲を曲順に演奏したライブの模様を収録したアルバム。2008年にiTunes StoreのみでリリースされたものがこのほどCD化されました。この「JAPANESE GIRL」の曲をピアノ1本の弾き語りで披露。デビューから32年を経た彼女だからこそできる自由な解釈でのボーカルが実に魅力的。また楽曲も、30年以上を経た今でも全く色あせていないことが再確認できます。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ

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2015年2月13日 (金)

2014年、最も話題となった作品

Title:LP1
Musician:FKA Twigs

また今回も、2014年話題のアルバム聴きなおしシリーズ。本作はひょっとしたら2014年にもっとも話題にのぼったアルバムかもしれません。イギリス出身の女性シンガーソングライターの彼女。2013年にリリースした「EP2」も大きな評判を呼び、数多くの有望新人を紹介してきたBBCの「Sound of 2014」にもノミネートされ話題となりました。

そんな彼女のデビューフルアルバムである本作。主な雑誌やWebサイトの年間ベスト10では、米Spin誌 30位/米ローリング・ストーン誌 16位/米TIME誌 1位/英NME誌 21位/英MOJO誌 9位/米STEREOGUM 9位/米Pitchfork 2位/ROCKIN'ON 32位・・・となっています。一部で絶賛しているメディアがある一方、全体的には「良いアルバムだとは思うけど・・・」といった感触でしょうか。話題性の割には、順位は低めのような印象も受けます。

楽曲としては静かで音数を最小限まで絞ったエレクトロのトラックに、ファルセットも多様したハイトーンボイスが印象的。音楽プロデューサーとして、このサイトでも何度か紹介したArcaを起用しており、そのためか、彼らしい、シンプルながらも奥行のある、かつ音を聴いていて情景が浮かんでくるサウンドが特徴となっています。

ただ、それ以上にこのアルバムは彼女のボーカルと歌自体に主軸が置かれているように感じます。「Two Weeks」なども複雑なリズム構成のサウンドを聴かせつつ、音のバランスとしてはあくまでも彼女の歌声とメロデイーに重点が置かれていますし、「Closer」などもちょっとリバースをかけたエフェクト処理された、幻想的なボーカルが印象的な曲に仕上げています。

この彼女の歌うメロディーが、サウンドとは対照的にメロウでポップなインパクトあるもの。そのため、いまどきのエレクトロサウンドがつまったインディーポップというイメージとは裏腹に、アルバム全体としてはポップで聴きやすい内容に仕上がっていたと思います。

それだけの作品なだけに、話題性と一致するだけの十分な名盤だったと思います。ただその反面、一部で絶賛されつつ、全体的には「良いアルバムだけど」レベルの評価というのもなんとなく納得。確かに素晴らしい傑作だと思う反面、パッと聴いた感じだとアルバムの雰囲気としては「女版James blake」という印象がついてまわります。いままでに聴いたことないような目新しいタイプの楽曲か、と言われると少し「?」がついてしまいます。

また、ポストビョークと言われ方もしているのですが、ボーカルも、うーん、それだけ取って大きくアピールできるレベルか、といわれると微妙な感じが・・・。楽曲の中では非常に曲を生かしているボーカルだとは思うのですが、後に残るほどのインパクトがあるか、と言われるとちょっと微妙な感じはします。

そんな訳で、傑作だとは思うけど、年間ベストレベルだと、ベスト20、30に入るレベルかなぁ・・・って、これってArcaの評価となんとなく似ているような・・・(^^;;ただ、これからの期待の新人なのは間違いないと思います。要注目。

評価:★★★★★

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2015年2月12日 (木)

根強い人気の上位勢

今週のアルバムチャート

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今週は7枚が新作という新譜ラッシュとなりました。

ただし、1位は三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「PLANET SEVEN」が先週に引き続き1位獲得。2位も先週3位のSEKAI NO OWARI「Tree」がワンランクアップという結果に。上位には根強い人気のアルバムが並びました。

初登場最高位は3位「THE BLUE HEARTS 30th ANNIVERSARY ALL TIME MEMORIALS ~SUPER SELECTED SONGS~」。ご存じ80年代後半から90年代にかけて絶大な人気を誇り、今なお多くのミュージシャンへ影響を与えつづける伝説のパンクロックバンド、ブルーハーツの結成30周年を記念してリリースされたアルバム。彼らの代表曲を収録した2枚組+トリビュートアルバム1枚、さらには初回盤にはPV集のDVDもつくという内容。ただし、ベスト盤はシングル集が5年前に出たばかりで、そろそろ「何枚目?」なレベルになってきていますい、トリビュートアルバムもこれで6枚目。いい加減にネタ切れな印象も。ちないに初動売上1万8千枚は、その前作のベスト盤「ALL TIME SINGLES~SUPER PREMIUM BEST~」の3万9千枚(3位)から半減以下。やはり厳しい結果となっています。

続いて4位以下初登場ですが、4位にはニコニコ動画の「歌ってみた」企画で人気を博したシンガーりぶ「singing Rib」がランクイン。これが3rdアルバムでベスト10入りは前作「Riboot」に続き2作目。初動売上1万8千枚はその前作(2位)から横バイ。

6位にはドラマやアニメへの楽曲提供で話題を集める作曲家澤野弘之のボーカル曲を集めたベスト盤「澤野弘之 BEST OF VOCAL WORKS[nZk]」が入ってきました。初動売上は1万1千枚。前作はSawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義でリリースされた「Unchild」で初動売上9千枚(10位)なので、若干のアップとなります。

7位はindigo la End「幸せが溢れたら」がランクイン。ゲスの極み乙女。でも活躍している川谷絵音率いる別バンドで、これが初のベスト10ヒットとなります。

8位にはfhana「Outside of Melancholy」が入ってきました。FLEETの佐藤純一らによって結成された4人組バンドで、主にアニメソングなどを手掛けています。これがメジャーデビューアルバムでシングルも含めて初のベスト10ヒットとなりました。

9位初登場はsukekiyo「VITIUM」。DIR EN GREYの京によるソロプロジェクト。これが2枚目となるアルバム。ただし初動売上7千枚は、前作「IMMORTALIS」の1万2千枚(5位)から大きくダウンしてしまいました。

最後10位にはロックバンドNICO Touches the Walls「Howdy!! We are ACO Touches the Walls」が入ってきています。こちらはNICO Touches the Wallsが自身の曲をアコースティックアレンジでセルフカバーしたアルバム。初動売上は6千枚。前作はベスト盤「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」で、初動売上1万2千枚(5位)からは半減という結果。ただ、アコースティックアルバムという企画盤なので、まあ、こんなところか、といった感じでしょうか。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年2月11日 (水)

ベスト10総入れ替え

今週のシングルチャート

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今週のシングルチャートは見事ベスト10総入れ替えのチャートとなっています。

まず1位はジャニーズWEST「ズンドコ パラダイス」。1位獲得は前々作「ええじゃないか」以来2作ぶり。初動売上9万7千枚は前作「ジパング・おおきに大作戦」の11万枚(2位)からダウンで10万枚切りと苦戦しています。

2位は女性アイドルグループアンジュルム「大器晩成」がランクイン。いままでスマイレージとして活動を続けていたハロプロ系女性アイドルグループが、このたびメンバーチェンジと共にアンジュルムと改名。その改名後、第1弾シングルとなります。初動売上4万3千枚は、スマイレージとしての前作「嗚呼 すすきの」の2万8千枚(5位)からアップ。

3位初登場はEXILE ATSUSHI「桜の季節」。もう桜ソングですか。卒業をテーマとしたピアノバラード。初動売上1万7千枚は前作「Precious Love」の4万2千枚(3位)から大幅減の厳しい結果になりました。

さて、今週ベスト10総入れ替えになった最大の理由が、4位から7位。ソーシャルゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」の登場キャラによるキャラソンがズラリと並んでいます。4位鷺沢文香「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 031 鷺沢文香(Bright Blue)」、5位姫川友紀「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 032 姫川友紀(気持ちいいよね 一等賞!)」、6位速水奏「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 034 速水奏(Hotel Moonside)」、7位市原仁奈「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 035 市原仁奈(みんなのきもち)」がそれぞれランクインしています。ちなみにもう1枚、宮本フレデリカ「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 033 宮本フレデリカ(き・ま・ぐ・れ☆Cafe au lait!)」も同時リリースされていますが、こちらは初登場11位とベスト10入りを逃しています。

ちなみに初動売上は鷺沢文香が1万4千枚で、残りはすべて1万3千枚。このキャラソンシリーズはこれが第7弾。昨年4月にリリースした第6弾では5枚中3枚がベスト10入りし、初動は1万7千枚、1万6千枚、1万5千枚だったので、今回はそれより若干ダウンしています。

8位初登場はカスタマイZ「一筋の光明」。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループで、バンド形態をとっています。TBSテレビ系アニメ「シドニアの騎士 第九惑星戦役」先行上映版主題歌。楽曲はいかにも90年代のビートロックで新鮮味がなく、悪い意味で様式化されたアニソンといった感じ。初動売上1万2千枚は前作「Life and death」の8千枚(17位)を上回り、初のベスト10ヒット。

9位には、男性3人のMC+プロデューサーの4人組ユニット、シクラメン「キミノナミダ」がランクイン。シングルアルバム通して初のベスト10ヒットで、初動売上1万1千枚は前作「どんなに どんなに」の3千枚(23位)から大きくアップ。MUSIC CARD3種のドーピング効果もあったみたいですが、ボーカルのDEppaと浅田舞の交際が話題になったり、全米感涙協会より「涙活公認アーティスト第1号」に任命されたりと徐々に話題を集め・・・って、「涙活公認アーティスト」って何?最初から「泣かせる」ことだけに焦点をあてた歌って、例外なく気持ち悪いんですが・・・。

最後10位初登場はお笑いコンビクマムシ「あったかいんだからぁ♪」。コミックソングかと思ったら、真面目な曲なんですね。ネタを全く見たことないのですが、これのどこが良いのか正直、全くの不明なのですが・・・。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日。

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2015年2月10日 (火)

吹っ切れた?

Title:QUIT30
Musician:TM NETWORK

昨年、デビュー30周年を記念してリリースされたTM NETWORKのニューアルバム。純然たるオリジナルアルバムとしては前作「SPEEDWAY」から7年ぶりとなる新作となりました。

この久々の新作を聴いてまず感じたのは、小室先生、吹っ切れたなぁ、ということでした。TM NETWORKが再結成した後の2000年代の小室先生は、あきらかに迷走しているように感じました。主にトランスを取り入れた曲を作成していたのですが、時代の先端を行くような音楽を書こうとしながらも、いまひとつ時代にのりきれない作品が続いており、そんなどこか自信のなさが楽曲にもあらわれていました。

実際、前作「SPEEDWAY」ではそんな小室先生のスランプが如実に表れた作品になっていました。全11曲中5曲が木根尚登作曲という構成がそれを物語っています。そしてそんなスランプの状況の中、彼を襲ったのが、あの5億円詐欺事件。これが彼にとっての大きな区切りになりました。

その後、主にavex系のミュージシャンへの楽曲提供から活動を再開させた彼ですが、その頃の楽曲は、逮捕以前の楽曲とあきらかに異なります。その違いを簡単に言うと、「時代の先端を追わなくなった」という点。ここ最近では流行のEDMを取り入れたりして、それなりに時代にアップデートさせながらも、以前の彼のように、無理に新しい音を追わず、インパクトあるメロディーラインを重視した、素直なポップソングを聴かせてくれるようになりました。

この7年ぶりとなるニューアルバムも、まさにそんなここ最近の小室先生の傾向を強く反映した内容になっています。小室哲哉のメロディーメイカーとしてのセンスが目立つ素直なポップソングが並んでいます。ファンにはおなじみ小室みつ子とのコンビとなる「Alive」ではどこか切なさを感じさせるメロディーラインが大きなインパクトを持ったポップソングになっていますし、「I am」もバンドサウンドにエレクトロサウンドを加えたダイナミックなサウンドの中に、爽やかなメロディーが強く耳を惹きつけられます。

今回、残念ながら唯一の木根尚登作曲の「STORY」も実に彼らしい期待通りのキネバラに仕上がっていますし、ファンにとっては素直にTM NETWORKの楽曲を楽しめる満足度の高いアルバムになったのではないでしょうか。また、今回のアルバムでもうひとつ特徴的だったのがアルバムの中盤にトータル22分を超える「QUIT30」と名付けられた組曲が含まれている点。楽曲的にはいまどきのエレクトロというよりも完全にプログレなのですが、このアルバムの中のひとつの核となっています。

こういうコンセプチュアルなプログレテイストの楽曲を組み込んでいるのは、おそらく昨年末にデラックスエディションがリリースされた1988年にリリースされたアルバム「Carol」を意識しているのではないでしょうか。実際、今回のアルバムのDisc2には、その「Carol」に収録された楽曲が再録されています。

ただ残念なことにこの「Carol」の再録が、今回のアルバムの評価をちょっと下げてしまう結果になりました。というのもあきらかに「Carol」からの楽曲の出来の方が優れているから。確かに彼らの最高傑作ともいえるこのアルバムからの曲と比べるのも少々酷なのかもしれませんが、やはりかつての比べるとその勢いは比べようもありません。

アルバムとしては十分良い内容だったと思います。ファンなら満足いく内容だったのではないでしょうか。ただ、傑作というには昔の彼らと比べてしまうと物足りなさも感じてしまう内容だったのは事実。もしはじめてTM NETWORKというミュージシャンに触れるのなら、活動再開前のアルバムの方がやはりいいんだろうなぁ。ただ、昔からのファンなら、とりあえずはお勧めできる作品だと思います。

評価:★★★★

TM NETWORK 過去の作品
SPEEDWAY
TM NETWORK THE SINGLES 1
TM NETWORK THE SINGLES 2
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
DRESS2


ほかに聴いたアルバム

くるりとチオビタ/くるり

チオビタ・ドリンクのCMソングに使われたくるりの曲を集めた企画盤。CMソングを集めた企画盤なだけに、くるりのポップミュージシャンとしての側面のみクローズアップされており、一面的である反面、くるりの持つ優れたポップスセンスをこれでもかというほど感じることが出来ます。ただ、ベスト盤としては選曲が物足りなく、ファンにとっては目新しい収録曲もなく(リマスターされていますが)、いまひとつどの層に向けられたのかわからない企画盤なのですが・・・。

評価:★★★★

くるり 過去の作品
Philharmonic or die
魂のゆくえ
僕の住んでいた街
言葉にならない、笑顔を見せてくれよ
ベスト オブ くるり TOWER OF MUSIC LOVER 2
奇跡 オリジナルサウンドトラック
坩堝の電圧
くるりの一回転
THE PIER

After Tone VI/岡村孝子

恒例のセレクションアルバム第6弾。本作はあみんとしてリリースした「In the prime」から2013年にリリースした「NO RAIN,NO RAINBOW」までの作品を収録。透き通るような歌声は今も健在。岡村孝子節ともいえるメロディーもあいかわらず。もっともはっきりいってしまえば大いなるマンネリといった感じで、メロにしろ歌詞にしろ昔ほどの勢いはないのも事実。「ずっと」のようにちょっとラテン風味を加えた曲や、「NO RAIN,NO RAINBOW」のようにアレンジにリバーブをかけて幻想的な雰囲気を出した曲のようなそれなりの新しさもあるものの、良くも悪くも似たりよったりな曲が並んでいます。アレンジがどうもチープなのも気になるところ・・・。

評価:★★★

岡村孝子 過去の作品
勇気

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2015年2月 9日 (月)

伝説のロックバンドの名盤

Title:Doolittle25
Musician:PIXIES

80年代後半から90年代初頭にかけて活躍し、その後のギターロックバンドに絶大なる影響を与えたインディーロックバンドPIXIES。かのカート・コバーンもファンだったということでも知られていますが、日本でも、例えば初期NUMBER GIRLはかなり明確に(露骨に?)PIXESからの影響を感じる曲を書いていますし、the pillowsも、メンバーのキム・ディールの名前をそのまま冠した曲をつくるなど、大きな影響を与えています。

そんな彼らの最高傑作と目されているのが1989年にリリースされた3rdアルバム「Doolittle」。そのアルバムリリースから25年を記念したデラックス盤がリリースされました。3枚組となった今回のアルバムではDisc2にはイギリスBBCの著名なDJ、John Peelが放送していたラジオ番組「Peel Sessions」の模様を収録した音源とシングルのBサイド曲を収録。さらにDisc3にはこのアルバムのデモ音源が収録されています。

個人的にPIXIESは、oasisやblurなどと並んで、もっとも好きなバンドのひとつ。その最大の魅力はパンキッシュなサウンドを奏で、激しいシャウトなど取り入れつつ、メロディーは至って人懐っこいポップという、ロッキンな面とポップな面を両立させている点でしょう。この名作「Doolittle」は、そんな彼らの魅力が最もよくあらわれているアルバムと言えます。

例えば彼らの代表曲でもある「Debaser」。ブラック・フランシスのシャウトがさく裂し、非常にパンキッシュな内容である一方、ギターフレーズは非常にポップで人懐っこさを感じます。個人的に彼らのナンバーの中で最も好きな「Here Comes Your Man」などは、とても切ないメロディーラインは、おそらく一度聴いたら忘れられないのではないでしょうか。

インディーロックバンドというと、ともすれば内向きの、わかりやすい、という観点からもっとも遠いメロディーを奏でがち。そんな中、PIXIESのメロディーは実にポップで、かついい意味で万人受けするインパクトあるメロディーを書いてきています。このメロディーの良さと、ロックでパンキッシュという彼らのバンドとしてのスタンスが見事に両立。このアルバムでは他にも「Wave of Mutilation」や「Monkey Gone To Heaven」など、彼らの魅力をよく伝える、ポップで、そして同時にパンキッシュな曲が並んでいます。

さて、今回の25周年記念盤でおもしろかったのは、オリジナルアルバムは言うまでもなく、Disc2のセッションやB面曲もさることながらも、やはりDisc3のデモ音源。彼らの数々の名曲が出来上がる過程を垣間見れて、非常に興味深かったです。例えば「Debaser」はサビの部分が大きく異なる一方、どこか荒さを感じられ、完成形になるにつれてサビの歌い方が洗練されることがわかりますし、「Tame」も、完成形に比べてメタリックなサウンドになっているのがおもしろいところ。「Wave of Mutilation (First Demo) 」ではサビ以外は歌詞すら出来上がっていない、まさにこの曲の最初の姿を知ることが出来ます。

そんな訳で全3枚組でボリューム感満点。まさにファンとしてはうれしい記念盤でした。ちょっと残念だったのはオリジナルアルバムがリマスターではなく、基本的に過去の音源と同一だった点。一方、3枚組というボリュームながら、国内盤でも値段が3千円程度とCD1枚のアルバムと同水準だったという点は、懐にもうれしい価格設定。ここはやはりいまだインディーバンドとしてのスタンスを貫いているということでしょうか。

3枚組というフルボリュームは、PIXIESがはじめてという方にはちょっと手を出しずらいかもしれません。ただ、そこを差し引いても、全ギターロックファン必聴の名盤なのは間違いなし。25年前のアルバムながらも、内容には全く古さを感じさせません。まだ聴いたことない、という方は、これを機に、是非。

評価:★★★★★

PIXIES 過去の作品
EP1
EP2

Indy Cindy


ほかに聴いたアルバム

Lightning Bolt/Pearl Jam

グランジロックの大御所的バンド、Pearl Jamの最新作。「王道」ともいえるようなシンプルなギターロックがメイン。正直、目新しい印象はないものの、素直な楽曲を難しいことぬきで楽しめるといったアルバム。シンプルなサウンドに不必要に「凝った」部分がないという意味ではベテランバンドらしい余裕も感じられる作品。

評価:★★★★

Pearl Jam 過去の作品
Backspacer

Someday World/Eno・Hyde

アンビエントミュージックの先駆者として知られるブライアン・イーノとUNDERWORLDとして活動を続けるカール・ハイドによるコラボ作。イーノらしいアンビエントな雰囲気を基調にしつつ、カール・ハイドからの影響を感じられるリズムが鳴り響く、まさにイーノとハイドのコラボといった雰囲気がストレートに反映されたアルバム。その割には、新たな音楽というような化学反応はちょっと薄めなのが残念なのですが、凝ったリズムとサウンドが展開しつつもポップなメロディーを楽しめるアルバムになっており、両者の才能はしっかりと反映されたアルバムになっていました。

評価:★★★★★

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2015年2月 8日 (日)

4年ぶりの復帰作

Title:一輪の花と二つの三日月
Musician:tobaccojuice

個人的にこのミュージシャン、もっと売れてもいいのになぁ、もしくはもっと評価されてもいいのになぁ、と思うミュージシャンはいろいろいます。このサイトでも、「もっと売れてもいいミュージシャン」みたいな形で紹介することは少なくありません。そして今回紹介するtobaccojuiceも、そんなもっと売れてもいいのに、あるいはもっと評価されてもいいのに、と思うバンドの一組です。

デビューが2003年なので、なにげに12年目となるベテランバンド。2011年にベースの岡田圭市が脱退したため活動休止状態になっていましたが、2013年になんと岡田圭市がバンドに復帰し活動再開。そして待望となるニューアルバムがリリースとなりました。

レゲエやスカ、あるいはカリプソといったラテン系の音楽とギターロックを上手く組み合わせたサウンドが特徴的な彼ら。以前までのアルバムはアコースティックな色合いが濃く、「オーガニック」という表現を使っていたのですが、今回のアルバムはむしろバンドサウンドが前に出たようなアルバムになっています。

1曲目を飾る「びっくりブルース」からノイジーなギターサウンドが鳴り響きますし、「地獄音頭」はダビーなサウンドを展開させつつも、ギターリフが主導の楽曲が特徴的です。「スケープゴート」もレゲエのリズムを奏でつつ、サイケな強いインパクトになっています。

ただ、このラテン系のサウンドを楽曲に取り入れつつも、ベースとなっているのはあくまでもギターロックという彼らのスタイルが、ひとつ大きなインパクトになっているように感じます。このスタイルがゆえに、ロックリスナーにとっても楽しめる作品になっていますし、平凡なギターロックとも、レゲエバンドとも違う個性を産みだすことに成功しています。今回の作品ではダイナミックなサウンドをより押し進めることによって、彼らのこの「個性」がより強調されているように感じました。

もうひとつ今回のアルバムで特徴的に感じたのは、社会に対する皮肉な視点。タイトルそのまま「アメリカ」では、アメリカに対する憧憬と、同じくアメリカに対する批判的な視点の同居という微妙な感情を描いていますし、「スケープゴート」も同じくアメリカ帝国主義に対する皮肉がチラリと顔をのぞかせています。このアメリカに対してある種のあこがれを描きつつ、同時に批判的な視点を描くというスタイルは、どこかBlankey Jet City的な雰囲気も感じました。

久々の新譜だったのですが、やはりtobaccojuiceは素晴らしいバンドだなぁ、という認識をあらたにさせてくれた傑作。もっともっと売れてもいいバンドだと思うんだけどなぁ。復帰後も是非是非どんどん名曲を聴かせてください!

評価:★★★★★

tobaccojuice 過去の作品
ゆめのうた
どこまでも行けるさ


ほかに聴いたアルバム

私重奏/一青窈

約2年半ぶりとなる一青窈のニューアルバム。楽曲的には「無難」な印象のポップが多かったのですが、一方で歌謡曲テイストの強い曲からラテン、アカペラに挑戦した曲、ロッキンなギターが入ったナンバー、ホーンも入れて軽快に楽しめる楽曲などバラエティー豊富な作品が並んでいます。楽曲にも十分インパクトもあり、正直言って予想以上に楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★

一青窈 過去の作品
key
花蓮街
歌窈曲
一青十色

G20/ゴスペラーズ

デビュー20周年を記念してリリースされたオールタイムベスト。エレクトロアレンジ、アーバンソウルなナンバー、ファンキーな曲など、バリエーションに富んだ作風に挑戦しており、かつどの曲もちゃんとポップに聴かせる曲に仕上げているのはさすがだし、いい意味での安定感も感じられます。ただ、やはり一番聴かせて彼らの魅力が発揮されていると思うのはアカペラのナンバー。「アカペラグループ」としての実力を感じさせてくれました。

評価:★★★★★

ゴスペラーズ 過去の作品
The Gospellers Works
Hurray!
Love Notes II
STEP FOR FIVE
ハモ騒動~The Gospellers Covers~
The Gospellers Now

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2015年2月 7日 (土)

70年代の日本でのライブをおさめた名盤

Title:LIVE!
Musician:OTIS CLAY

今回も、2014年に聴き逃した「ベストアルバム」の聴きなおしシリーズ。本作は、「BLUES&SOUL RECORDS」誌のベストアルバムの中に選ばれていた1枚(順位はなし)。OTIS CLAYは70年代に一世を風靡したディープソウルの代表的なシンガー。本作は1978年4月に東京・虎の門ホールで行われたライブの模様を収録したライブアルバムで、もともと同年にLP盤としてリリースされたもの。その後、80年代にCD化されたそうなのですが、その時は一部曲を削られてしまったそうで、完全版としては初となるCD化だそうです。

楽曲的には王道ともいえるようなソウルナンバー。ファンキーな演奏にのった力強いボーカルが印象的なのですが、基本的にはメロウで聴かせるメロディーラインを主軸としたポップソングのため、いい意味での聴きやすさを感じます。「LET ME IN」のような泣きメロでしんみり聴かせる曲もあれば、「TURN BACK THE HANDS OF TIME」のような軽快なポップチューンもあったり。ライブ的にはアンコール前ラストソングの「TRYING TO LIVE MY LIFE WITHOUT YOU」はファンキーなリズムが心地よく、会場の高いテンションがこちらにも伝わってきそうですし、「I CAN'T TAKE IT」のようにメロウな歌とシャウトを交互に聴かせつつ、最後はボーカルのみの独唱になるあたり、OTIS CLAYのボーカリストとしての実力をきちんと伝えてくる作品も含まれていたりします。

そんな楽曲自体の良さも印象的だった一方、このアルバムでやはり注目したいのは、70年代後半という時代の日本でのライブの雰囲気。まず総じて感じたのは、意外とここ最近のライブの雰囲気と変わらないなぁ、という印象でした。

全体的にはおとなしめという印象は否めないものの、熱狂する場面では熱狂的な観客の歓声も聴こえますし、OTISの呼びかけには観客としてちゃんと応えており、ライブの盛り上がりは十分感じます。逆に聴くべきところではシーンとした雰囲気でOTISの歌声に耳を傾けていて、「盛り上がるべきところで盛り上がり、聴くべきところで聴いている真面目な観客」という印象を受けました。

そんな会場の空気に呼応するかのようにOTISも終始ご機嫌だった模様。ライブ的にはどこか「よそ行き」といった雰囲気もするのですが、それでも迫力のある演奏と歌声を最後まで聴かせてくれているのは、会場の空気の良さがあるからでしょうか。OTISの笑い声なんかも収録されていて、会場の雰囲気の良さもうかがわせます。

ライブ盤ではMCなども収録されていてそんな会場の雰囲気もバッチリ収録。さらにはリハーサル音源なんかも収録されており、70年代の日本でのソウルのライブを記録した貴重な音源、といった位置づけになっていました。

70年代の空気がこちらにも伝わってきそうな、とても楽しめたライブアルバム。「名盤」と言われるのも納得の内容だったと思います。ソウルミュージック好きには文句なしにお勧めいたいアルバムです。

評価:★★★★★

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2015年2月 6日 (金)

最高にスウィートなポップス

Title:Destiny
Musician:Jintana&Emeralds

こちらの作品もノーチェックだった2014年に評判になったアルバムの聴きなおしシリーズ。こちらはMUSIC MAGAZINE誌のJ-POP/歌謡曲部門で1位になった作品。実は今回この作品、雑誌で紹介されるまで名前も全く知らず、前情報何もなしで聴いてみたアルバムでした。

彼ら、Jintata&Emeraldsは初耳のバンドながらも、実はかなりの豪華なメンバーから成るバンドだそうで、バンドを率いるJintataは横浜を拠点に活動をする音楽集団Pan Pacific Playa所属のスティール・ギタリスト。同じくPan Pacific Playa所属のギタリストKashifに、ソロシンガーとしても活躍中の一十三十一、(((さらうんど)))等でも活躍するCRYSTAL、少女時代や三浦大知の楽曲も手掛けるカミカオルに、阿部真美の名前で女優としても活動をしているMAMIといった、それぞれ個人でも活躍を続けるメンバーが顔をそろえたスーパーユニットとなっています。

さて、ポップな音楽を表現する時、よく「甘い」という表現を使います。耳に心地よい、ポップなメロディーラインが奏でられていたり、分厚いホワイトノイズが楽曲全体に流れている時に、よくこの表現が使われます。でも今回のこのアルバムほど「甘い」という表現がピッタリ来るようなアルバムはないのではないでしょうか。逆に、このアルバムを聴いてしまうと、そんじょそこらの楽曲では「甘い」なんて感じなくなるほど(笑)。

彼らの楽曲は、「ネオ・ドゥーワップ」とジャンル付されていることが多いようです。基本的に60年代70年代あたりのポップソングをそのまま今の時代に甦らせたようなポップソング。これがまた、「甘い」としか表現できないような心地よいメロディーやサウンドを奏でています。そこに加えられているのが、モータウン風の味付けだったり、ハワイアン風の味付けだったり、ウォールオブサウンドの影響を受けたようなサウンドだったり・・・要するに、古今東西の音楽シーンの中で、「甘い」と評されるようなジャンルの音を、これでもかというほど1枚のアルバムに投入しています。

例えれば甘いアイスクリームの上にいちごをのせて、さらにチョコレートソースをかけてさらには蜂蜜までかけたパフェのようなアルバム・・・と、こんなたとえをすると、甘党ではない私にとっては胸やけがしてきそう。確かに彼らの楽曲はこんな例えがピッタリな音楽かもしれません。でも、聴いていても不思議と胸やけはしてきません。それはそれだけ甘い楽曲に仕上げていながらも、過剰なサウンドを投入することなく、サウンドのボリューム自体は意外とさっぱりしているからように思います。ここらへんのサウンドのバランスも実に絶妙でした。

そんな訳で、この作品、2014年を代表する名盤に間違いないと思います。ただ、あえて苦言を言ってしまえば、「年間1位」ということに対してはもう一歩の物足りなさも。一言で言えばちょっとパンチが足らないように感じました。実力派ミュージシャンが揃った作品であるがために、全体的にはよく出来すぎてしまっていて、広く一般受けするようなポップミュージックに必要な、猥雑さというかベタさがちょっと不足していたような。そういう意味ではこれだけ甘いポップのアルバムでありながらも、一部のマニア受けにとどまってしまいそうな感じもして、この「マニア受けにとどめる」という点はポップソングとして残念ながら欠点になってしまうのかなぁ、という印象を受けました。

そんな気になる部分もあるのですが、アルバム全体としては名盤といって間違いない作品。いまさら知った私が言うのも何なのですが・・・いまからでも要チェックです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ガガガを聴いたらサヨウナラ/ガガガSP

もてない連中の鬱屈した心の叫びをパンクにのせて歌い上げるガガガSPのニューアルバム。基本的に「いつも通り」のスタイル。大きなるマンネリとも言っていいような、パンクロックにフォークソングの要素を加味したようなスタイル。ただそんな中でもハードロック寄りの曲があったり、リズミカルなサウンドを取り入れた曲があったりと、以前よりもバリエーションが増えた印象が。鬱屈した心の叫びを歌に込めた歌詞はあいかわらずなのですが、素直な気持ちをストレートに綴る歌詞は、惹かれるものがあります。

評価:★★★★

ガガガSP 過去の作品
くだまき男の飽き足らん生活
自信満々良曲集

21st CENTURY DREAMS/NAMBA69

Hi-STANDARDの難波章浩率いる3ピースパンクロックバンドのデビューアルバム。分厚いギターサウンドとポップなメロディーラインが特徴的で、ジャンル的にはメロディアスパンク、あるいは、オルタナ系ギターロックバンドに近いものを感じました。勢いのあるパンクロック、という以上にメロディアスなポップスが楽しめるような1枚でした。

評価:★★★★

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2015年2月 5日 (木)

手作り感が気持ち良い

Title:明るい幻
Musician:キセル

最近はコンスタントにライブ活動を行っていたようですが、音源リリースからすっかり遠のいていた兄弟バンドキセル。久々になるニューアルバムはなんと4年半ぶり!最近は、辻村豪文は斉藤和義のライブサポートメンバーでの活動も目立っていましたが、キセルとしてはすっかり久しぶりの新譜となってしまいました。

そんな久しぶりのニューアルバムとなった新作ですが、シンプルでフォーキー、暖かい雰囲気のポップソングというキセルらしい曲が並んでいます。ただ、ひとつ異なるのは以前のキセルのような浮遊感が薄いこと。1曲目の「時をはなれて」こそ、ギターにどこか浮遊感がありましたが、全体的には輪郭がはっきりしたシンプルなメロディーのポップソングがメインとなっていました。

4年半前のアルバム「凪」も、輪郭のはっきりしたメロディーが特徴的でしたが、そういう意味では基本的に、前作に続く形でのアルバムといった印象を受けました。ただおもしろいのは、「浮遊感」が大きな特徴的だったキセルですが、その浮遊感をとっても、ちゃんとキセルの曲になっている点。浮遊感という楽曲の雰囲気のみならずメロディーラインもしっかりキセルとしての個性が色濃く染み込んでいるんだなぁ、ということを実感しました。

特に「君をみた」など、決して派手なフックがあるわけではないのにちゃんと心に残るようなメロディーを書いていたり、「声だけ聴こえる」ような爽やかなメロディーを書いていたり、メロディーメイカーとしての実力も再認識できたりして。シンプルだからこそあらためて彼らが優れたミュージシャンであることを実感できました。

またもうひとつキセルらしさを強く感じることが出来たのはそのサウンド。今回のアルバムのサウンド、一言でいえばチープです(笑)。ここ最近行っていないので最近のライブはわからないのですが、昔のキセルのライブといえば、2人が奏でるギター以外の音はカセットテープに録音し、流していたのですが、今回のアルバムは、そんな彼らのライブを思い出しました。

ただ、このチープさが逆に手作り感を覚えて暖かみを感じます。またチープといっても録音状態だけであって、アレンジそのものが単純、というわけではありません。「そこにいる」のようなちょっとゆがんだ、サイケっぽい雰囲気の曲もあったり、「ミナスの夢」のようなピアノとホーンでのんびりとした雰囲気を醸し出している曲もあったり、バラエティー富んだ作風も印象に残りました。

4年半ぶり久々のアルバムながらも、ちゃんとキセルを聴いたと満足できる傑作に仕上がっていました。久しぶりに聴いた彼らの新曲なだけに、あらためてキセルっていいミュージシャンだなぁ、と実感できたアルバムでした。そろそろ久しぶりにライブも見てみたいなぁ。

評価:★★★★★

キセル 過去の作品
magic hour

SUKIMA MUSICS

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2015年2月 4日 (水)

1位はどちらも男性ボーカルグループ

今週はアルバムチャートの新譜が少な目なので、シングル、アルバム同時更新です。

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

まずシングルチャート1位は韓流。2PM「Guilty Love」が獲得。

軽快でファンキー風味のダンスポップ。1位獲得は前々作「Winter Games」以来2作ぶり2作目。初動9万8千枚は前作「ミダレテミナ」の9万5千枚(2位)より若干のアップ。

2位はももいろクローバーZ vs KISS「夢の浮世に咲いてみな」。ももクロと大物ハードロックバンドKISSとのコラボということで大きな話題を呼んだ作品。初動売上は5万8千枚。前作「一粒の笑顔で...」の2万3千枚(7位)より大幅増ですが、こちらは前作がクリスマスライブの限定シングルだった影響。前々作「MOON PRIDE」の初動5万枚(3位)よりは若干アップ。ももクロに限らず、スターダスト系の女性アイドルグループって、なんでもうも「私たちこんなすごいミュージシャンとコラボしているのよ、すごいでしょ」的なアピールを前面に押し出すんでしょうか。正直、ちょっと・・・。

3位はEXILEの弟分のボーカルユニット、GENERATIONS from EXILE TRIBE「Sing it Loud」が初登場。 TBSテレビ系ドラマ「警部補・杉山真太郎~吉祥寺署事件ファイル」主題歌。流行のEDMチューンで、アイドル色もかなり強いナンバー。初動売上5万6千枚は「Always with you」の4万4千枚(3位)からアップ。

続いて4位以下の初登場ですが、4位にはAAA「I'll be there」がランクイン。7月まで毎月連続でシングルをリリースする予定だそうで、本作はその第一弾。初動売上4万6千枚は前作「さよならの前に」の2万5千枚(5位)からアップ。ただし、こちらはアルバムの先行シングルだった影響。前々作「Wake Up!」は初動売上4万枚(3位)。こちらよりもアップしています。

5位には女性シンガーソングライターmiwa「fighting-Φ-girls」がランクイン。ちょっと奇妙なタイトルですが「ファイティング・ファイ・ガールズ」と読むらしいです。爽やかなアップテンポチューンはmiwaらしいといえる感じ。TBSテレビ系ドラマ「まっしろ」主題歌。初動売上1万8千枚は前作「希望の環(WA)」(10位)から横バイ。

6位初登場は男性ロックシンガー、吉井和哉「クリア」。かつて彼が所属していたバンドTHE YELLOW MONKEYが1996年まで籍を置いていたTRIADへ移籍し、その第1弾となるシングル。大勢で盛り上がれそうなハッピーなナンバー。ベスト10入りは前々作「LOVE&PEACE」以来2作ぶり。初動売上1万6千枚は、前作「点描のしくみ」の1万3千枚(15位)からアップ。

8位は人気声優谷山紀章とミュージシャン飯塚昌明によるユニットGRANRODEO「Punky Funky Love」が入ってきました。J-POPの王道を行くような軽快なポップスロックのナンバー。アニメ「黒子のバスケ」オープニング・テーマ。初動売上1万1千枚。前作はFLOW×GRANRODEO名義での「7-seven-」で初動1万5千枚(10位)なのでこちらよりダウン。また、GRANRODEO単独名義での前作「変幻自在のマジカルスター」も初動1万5千枚(10位)だったのでこちらからもダウンしています。

9位には人気女性声優坂本真綾「幸せについて私が知っている5つの方法」が入ってきています。TBSテレビ系アニメ「幸腹グラフィティ」オープニング・テーマ。メロディーは彼女の澄んだボーカルにマッチしていてとてもいいのですが、EDMのアレンジがチープでちょっと残念な感じ。ベスト10入りは前々作「SAVED.」以来2作ぶり。初動売上1万枚は、前作「レプリカ」の7千枚(17位)よりアップ。

初登場は以上ですが、今週はベスト10返り咲き組が1枚。7位にNMB48「らしくない」が先週のベスト50圏外からランクアップ。通販販売分がまとめて計上された模様。昨年11月17日付チャートから12週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。


今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

アルバムチャートも男性ボーカルグループが1位獲得。

1位は三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「PLANET SEVEN」。昨年末のレコ大授賞ミュージシャンのニューアルバムが見事1位獲得。初動売上は50万8千枚で、前作「THE BEST/BLUE IMPACT」の14万6千枚(1位)を大きく上回っています。

2位はスターダストプロモーション所属の女性アイドルグループ私立恵比寿中学「金八」がランクイン。奇しくも今週はシングルアルバムチャートともに2位がスターダスト系の女性アイドルグループに。初動売上3万7千枚は前作「中人」の2万枚(7位)よりアップで、2位はアルバムシングル通じて自己最高位。

3位は先週2位のSEKAI NO OWARI「Tree」がワンランクでベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場ですが、まず5位に中森明菜「歌姫4 -My Eggs Benedict-」が入ってきています。年末の紅白で復活、さらに先週はシングルチャートでのベスト10入りを果たした彼女ですが、続いてリリースしたのは、カバーアルバム「歌姫」シリーズの第4弾。ちなみに今週は4位に徳永英明「VOCALST6」がランクインしており、カバーアルバムが2枚並んでいます。初動売上1万5千枚は、昨年8月にリリースされたベスト盤「オールタイム・ベスト -オリジナル-」の2万7千枚(3位)よりはダウンしていますが、同時リリースされたカバーベスト「オールタイム・ベスト -歌姫(カヴァー)-」の1万3千枚(7位)よりはアップしています。

6位には動画サイトニコニコ動画の「歌ってみた」コーナーで人気となったボーカリスト、ナノ「Rock on.」がランクイン。初動1万3千枚は前作「N」の1万5千枚(8位)から若干のダウン。

最後、9位10位にはGREEのゲーム「アイドルマスター ミリオンライブ!」のキャラクターソングのアルバムが2枚ランクイン。BIRTH名義の「『アイドルマスター ミリオンライブ!』THE IDOLM@STER LIVE THE@TER HARMONY 07」が9位、ミックスナッツ名義「『アイドルマスター ミリオンライブ!』THE IDOLM@STER LIVE THE@TER HARMONY 08」が10位にランクイン。初動売上はそれぞれ1万枚と9千枚。同シリーズの「06」は初動7千枚(13位)だったのでこちらよりはアップ。同シリーズのベスト10入りは、昨年7月にリリースされた「02」以来、3作、4作目となっています。

今週のチャート評は以上。また来週の水曜日に!

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2015年2月 3日 (火)

2014年ベストアルバム(邦楽編) その2

昨日は10位から6位まで紹介しました2014年のベストアルバム。今日は5位から1位の紹介です。

5位 ぞめき伍 個性派 徳島 高円寺 阿波おどり個性派

聴いた当時の感想はこちら

5位は他の作品と比べるとちょっと異色。どちらかというとワールドミュージックに属しそうな作品。音楽プロデューサーの久保田麻琴が、徳島の阿波踊りと、そこから派生した高円寺阿波踊りを録音したシリーズの第5弾。今回は「連」と呼ばれる踊りのグループの中でも、特に個性的なグルーヴを奏でる連を録音したとか。このシリーズ、以前から話題になっていたもののちゃんと聴くのは今回はじめて・・・で、すっかりはまってしまいました。日本にもこんなどす太いグルーヴが存在したんだ、ということを驚かさせる作品。日本人の持つリズム感について、認識をあらためさせられるアルバムです。

4位 死んだらどうなる/stillichimiya

聴いた当時の感想はこちら

今年、もっともはまったアルバムという意味ではこのアルバムが一番だったかもしれません。TOYOTA ROCK FESTIVALでステージを見て、思わずアルバムまで購入したのですが、特に「ズンドコ節」「HELL TRAIN」のユーモアあふれるPVにはまってしまいました。キャラが立った5人のメンバーによる、終始、仲の良い5人で楽しんでいるというスタイルがアルバムを貫いており、聴いていても楽しくなってくるような作品でした。

3位 Page 2:Mind Over Matter/SIMI LAB

聴いた当時の感想はこちら

神奈川の相模原を中心に活動を続ける話題のラップクルーの2作目。音数を絞ってタイトに聴かせるトラックがとにかくカッコいい作品。女性ラッパーMARIAのラップが特に印象に残ります。また、メンバーの多くが外国人とのハーフというスタイルが、いかにも今の時代らしいユニット。そんなメンバーだからこそ綴れる、ちょっと醒めた視点からのリリックも印象的でした。

2位 ナマで踊ろう/坂本慎太郎

聴いた当時の感想はこちら

どこかきな臭い方向性が続いている昨今の日本の状況ですが、そんな中、明確に全体主義にノーを突きつけ、強烈な皮肉をユーモアたっぷりに曲の中に織り込んだ坂本慎太郎の傑作アルバム。楽曲自体も音楽を通じての連帯感を一切拒否するような内容で、歌詞のみならず音楽全体を使ってメッセージを伝えようとするスタイルも強いインパクト。今の時代にこそ聴いてほしい傑作アルバムです。

そして・・・

1位 ペーパークラフト/OGRE YOU ASSHOLE

聴いた当時の感想はこちら

もう文句なしの年間1位!いままでも非常にクオリティーの高い作品を作り続けてきた彼らですが、さらに今回、もう一皮むけた印象のある傑作アルバムをつくってきました。最小限まで音数を絞ったムダのない作風をつくりあげつつ、その音の向うに無限の空間を作り出したような作品。シニカルながらもどこかユーモラスを感じさせる世界観も特徴的。文句なしの2014年を代表する傑作です。

そんな訳であらためてベスト10を振り返ると・・・

1位 ペーパークラフト/OGRE YOU ASSHOLE
2位 ナマで踊ろう/坂本慎太郎
3位 Page2:Mind Over Matter/SIMI LAB
4位死んだらどうなる/stillichimiya
5位 ぞめき伍 個性派 徳島 高円寺 阿波おどり個性派
6位 Hurt/syrup16g
7位 RAY/BUMP OF CHICKEN
8位 THE PIPER/くるり
9位 Strange Tomorrow/TAMTAM
10位 踊ってばかりの国/踊ってばかりの国

昨年末の暫定版の時は「豊作」と書いたのですが、あらためて10枚を選ぶと、確かに傑作も多かった1年ですが、「豊作」は言い過ぎだったかも(^^;;とはいえ、間違いなく今年も数多くの名盤に出会うことが出来ました。

実は8位まではすんなりと決まったのですが、残り2枚がかなり迷いました。というのは他に次のアルバムも最後までベスト10に入れようか迷ったため。

アンダーグラウンド・レイルロード/ソウル・フラワー・ユニオン
日出処/椎名林檎
ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~/吉井和哉

9位のTAMTAM、10位の踊ってばかりの国を含め、この5枚は事実上横一線といった感じ。これに続くのが

SPICE/ZEPPET STORE
11/KIRINJI
Boys!/THE BAWDIES
路上/小島麻由美
グッド・ナイト/森は生きている
'一輪の花と二つの三日月/tobaccojuice

といった感じでしょうか。今回のベスト10をながめて特徴的だったのが、OGRE YOU ASSHOLEや坂本慎太郎、踊ってばかりの国、さらにはギリギリベスト10落ちとなってしまいましたがソウル・フラワー・ユニオンなど、今の社会を皮肉的に切り取ったような曲が多かった点。それも大上段から権力を批判するわけでなく、どこかユーモラスを含めつつ、シニカルな切り口で表現しているミュージシャンが多く、ここらへんは今の時代を反映したようなアルバムが並んだように思います。

相変わらず「ヒットチャート」では本当にヒットしているかどうだかわからないような曲が並んでいますが、そんな流れとは関係なく、日本の音楽シーンにはちゃんと素晴らしい音楽が発表され続けているということも感じられるベストアルバム。2015年もまた、たくさんの素晴らしい音楽と出会えますように。

2007年 年間1 
2008年 年間1  上半期
2009年 年間1  上半期
2010年 年間1  上半期
2011年 年間1  上半期
2012年 年間1  上半期
2013年 年間1  上半期
2014年 上半期

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2015年2月 2日 (月)

2014年ベストアルバム(邦楽編) その1

毎年恒例の私的ベストアルバム。昨日の洋楽編から引き続き、本日から2日間にわけて邦楽編。こちらは10枚のアルバムを紹介します。

10位 踊ってばかりの国/踊ってばかりの国

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2012年の活動を休止した後、活動再開後初となるフルアルバム。独特の浮遊感そのままにギターロック、レゲエ、ブルース、カントリーなどの要素を入れつつ、メロにはどこか歌謡曲の雰囲気すら感じさせる独特の音楽が実に魅力的。本作は特に社会や政治への皮肉を込めた歌詞が多くみられるのが特徴的で、自らのバンド名をもじった「踊ってはいけない国」では風営法を厳しく批判しています。10月にはこのアルバムの曲を何曲かピックアップし、さらに新曲を入れたミニアルバムもリリース。こちらに収録されている「アンセム」も必聴。今、もっとも勢いにのっているバンドの一組です。

9位 Strange Tomorrow/TAMTAM

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今もっとも注目されているバンドのひとつ、TAMTAM。括りとしてはレゲエバンドになる彼らですが、レゲエのリズムやダブの手法を本格的に取り入れていながらも、メロディーラインは至ってポップ。このダブとポップのバランス感覚が実に見事なアルバムになっています。また、そんな楽曲を支えるバンドサウンドも非常に力強く、バンドの基礎体力の強さを感じます。これがメジャー初となるフルアルバムになりますが、一皮むけた感じのした傑作でした。

8位 THE PIER/くるり

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予想通り(?)メンバーが1人抜け2人抜け、2015年2月現在3人組のバンドとなったくるり。そのメンバー3人で作成されたニューアルバムは、バンド色の強かった「坩堝の電圧」から一変、岸田繁の個人的趣味が押し出された宅録色の強いアルバムになっていました。様々な音楽性をアルバムに加えた実験性を感じつつ、全体的には岸田繁のメロディーセンスの良さが光っているアルバム。個人的には2012年年間1位の「坩堝の電圧」の方がよかったし、くるりの中では上位に来るようなアルバムではないとは思っているのですが、それを差し引いても十分に今年を代表する名盤に仕上がっていました。

7位 RAY/BUMP OF CHICKEN

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約3年ぶりとなるバンプの新作。基本的にはファンタジックな世界観と王道路線のオルタナ系ギターロックといういつものスタイル。ただここ最近、ここにスケール感が加わり、いい意味での大物然とした雰囲気が加わり、バンドとしてのさらなる成長を感じさせる傑作。ファンタジックな世界観の中にも年相応なメッセージも感じさせ、そういう意味でも成長を感じさせてくれた傑作でした。

6位 Hurt/Syrup16g

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2000年代初頭に独特の歌詞の世界で一部から熱狂的な支持を受けたSyrup16g。2008年に惜しまれつつその活動に幕を下ろしたのですが、昨年、まさに復活。そしてこのたび、なんと約6年ぶりとなるニューアルバムがリリースとなりました。そのまさかの復活作は、かつてと同様、現実の厳しさをグサグサとインパクトあるフレーズで突いてくる歌詞に、へヴィーなギターロック路線というのは相変わらず。いい意味でも変わらなさにうれしくなってくる傑作アルバムでした。

5位以降は明日に!

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2015年2月 1日 (日)

2014年ベストアルバム(洋楽編)

毎年恒例の私的ベストアルバム。まずは洋楽編のベスト5から。

5位 You're Dead!/Flying Lotus

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タイトル、ジャケットもかなり衝撃的なFlying Lotusの新作。わずか40分という長さの中に20曲が収録されている密度の濃いアルバム。その中にジャズ、HIP HOP、ロック、エレクトロetcの要素が詰め込まれてダイナミックな展開が繰り広げられます。まさにFlying Lotusのアイディアが詰め込まれたような作品で、彼なりの死後の世界の解釈が非常にユニークに展開していきます。毎度問題作をリリースする彼ですが、本作もまた新たな問題作となりました。

4位 Beware the Fetish/Kasai Allstars
(邦題 コンゴトロニクス 5 〜ビーウェア・ザ・フェティッシュ)

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昨日紹介したばかりのアルバムですが・・・コンゴトロニクスの代表的なミュージシャンによる新作。最初から最後まで繰り広げられるポリリズムが圧巻。複雑なリズム構成に、アフリカ音楽の魅力を存分に感じられます。ある意味「期待どおり」の作品だったのですが、一方で非常に満足度の高い、お腹いっぱいになったアルバムでした。

3位 Days Of Abandon/The Pains of Being Pure at Heart

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上半期1位だった本作。シューゲイザーでカテゴライズされることも多い彼らですが、本作の前半はアコースティック色の強い内容になっています。ただ、このキュートなメロディーラインが実にたまらない作品の連続。一方、後半はシューゲイザーなサウンドが次々と展開。こちらも甘いメロディーが実に心地よい作品が並んでいます。美メロが堪能できる傑作です。

2位 Everything Will Be Alright in the End/WEEZER

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2014年はデビュー20周年を迎えたロックバンドの新作。原点回帰を目指したアルバムだそうで、WEEZERらしい分厚いバンドサウンドにキュートなメロディーラインという、ファンにとってはうれしくなってくるような曲の連続する傑作。また、J-POPからの影響かも?と思われる部分もあり、日本人リスナーにとってはさらに聴きやすいアルバムに?

そして・・・

1位 Black Messiah/D'Angelo And The Vanguard

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まさに真打登場という表現がピッタリ。12月下旬に突如リリースされた本作が、2014年文句なしのベストアルバム。そのファンキーな分厚いサウンドに終始ゾクゾクさせられっぱなしの1枚。そんなサウンドに裏打ちされつつ、ジャズやポップ、ブルースなどの要素も垣間見れる音楽性も魅力的。メッセージ性の強い歌詞も大きな話題となりました。文句なし、2014年を代表する傑作です。

そんな訳でベスト5を振り返ると・・・

1位 Black Messiah/D'Angelo And The Vanguard
2位 Everything Will Be Alright in the End/WEEZER
3位 Days Of Abandon/The Pains of Being Pure at Heart
4位 Beware the Fetish/Kasai Allstars
5位 You're Dead!/Flying Lotus

以上、今年のベストアルバム5枚。これに続くのが・・・

Into The Lime/The New Mendicants
Lazaretto/Jack White
LOST IN ALPHAVILLE/THE RENTALS
Xen/Arca
Run the Jewels 2/Run the Jewels

などなど。ちなみに現在、2014年に話題になったアルバムをあらためて聴いており、今後もそんな作品の紹介が続きますが、基本的にそれらのアルバムを聴いた上でのセレクトです。

暫定版の時、不作気味と書き、確かに豊作だった昨年に比べるとちょっと名盤の数は少な目だったのは間違いないとは思うのですが、ベストアルバム5枚を並べると、なんだかんだいってもいいアルバムが並んだな、という感想。今年もまた、たくさんの名盤が誕生することを願いつつ、明日からは邦楽編!

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