2014年、最も話題となった作品
Title:LP1
Musician:FKA Twigs
また今回も、2014年話題のアルバム聴きなおしシリーズ。本作はひょっとしたら2014年にもっとも話題にのぼったアルバムかもしれません。イギリス出身の女性シンガーソングライターの彼女。2013年にリリースした「EP2」も大きな評判を呼び、数多くの有望新人を紹介してきたBBCの「Sound of 2014」にもノミネートされ話題となりました。
そんな彼女のデビューフルアルバムである本作。主な雑誌やWebサイトの年間ベスト10では、米Spin誌 30位/米ローリング・ストーン誌 16位/米TIME誌 1位/英NME誌 21位/英MOJO誌 9位/米STEREOGUM 9位/米Pitchfork 2位/ROCKIN'ON 32位・・・となっています。一部で絶賛しているメディアがある一方、全体的には「良いアルバムだとは思うけど・・・」といった感触でしょうか。話題性の割には、順位は低めのような印象も受けます。
楽曲としては静かで音数を最小限まで絞ったエレクトロのトラックに、ファルセットも多様したハイトーンボイスが印象的。音楽プロデューサーとして、このサイトでも何度か紹介したArcaを起用しており、そのためか、彼らしい、シンプルながらも奥行のある、かつ音を聴いていて情景が浮かんでくるサウンドが特徴となっています。
ただ、それ以上にこのアルバムは彼女のボーカルと歌自体に主軸が置かれているように感じます。「Two Weeks」なども複雑なリズム構成のサウンドを聴かせつつ、音のバランスとしてはあくまでも彼女の歌声とメロデイーに重点が置かれていますし、「Closer」などもちょっとリバースをかけたエフェクト処理された、幻想的なボーカルが印象的な曲に仕上げています。
この彼女の歌うメロディーが、サウンドとは対照的にメロウでポップなインパクトあるもの。そのため、いまどきのエレクトロサウンドがつまったインディーポップというイメージとは裏腹に、アルバム全体としてはポップで聴きやすい内容に仕上がっていたと思います。
それだけの作品なだけに、話題性と一致するだけの十分な名盤だったと思います。ただその反面、一部で絶賛されつつ、全体的には「良いアルバムだけど」レベルの評価というのもなんとなく納得。確かに素晴らしい傑作だと思う反面、パッと聴いた感じだとアルバムの雰囲気としては「女版James blake」という印象がついてまわります。いままでに聴いたことないような目新しいタイプの楽曲か、と言われると少し「?」がついてしまいます。
また、ポストビョークと言われ方もしているのですが、ボーカルも、うーん、それだけ取って大きくアピールできるレベルか、といわれると微妙な感じが・・・。楽曲の中では非常に曲を生かしているボーカルだとは思うのですが、後に残るほどのインパクトがあるか、と言われるとちょっと微妙な感じはします。
そんな訳で、傑作だとは思うけど、年間ベストレベルだと、ベスト20、30に入るレベルかなぁ・・・って、これってArcaの評価となんとなく似ているような・・・(^^;;ただ、これからの期待の新人なのは間違いないと思います。要注目。
評価:★★★★★
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