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2015年1月 9日 (金)

吉井和哉の原点

Title:ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~
Musician:吉井和哉

吉井和哉が彼の音楽的ルーツといえる曲をカバーしたベストアルバム。吉井和哉が率いていたTHE YELLOW MONKEYといえばその音楽性から強く歌謡曲の影響を感じられたのですが、今回のカバーアルバムではタイトル通り音楽性の原点ともいえる歌謡曲を収録しています。

ただ正直なところ、最初はこのアルバムに関して少々いぶかしい感情を抱いていました。最近、歌謡曲を「自分の原点」としてカバーするミュージシャンは多く、この手の企画が珍しくなくなっており、かつ、「此レガ原点」という副題もあまりにそのまんま。ちょっと狙いすぎでは?といった印象を抱いており、それほどの期待はしていませんでした。

しかしこれが期待をいい意味で大きく裏切る素晴らしいカバーアルバムに仕上がっていました。このカバーアルバムが素晴らしいと感じるまずひとつめの大きな要因はその演奏。「ヨシー・ファンク」というタイトルにそぐわない図太い、どす黒い演奏が実に魅力的。例えば「真赤な太陽」ではドラムの入りからゾクゾクっとするものがありますし、さらに曲にかぶさるエレピの演奏も実にグルーヴィー。「ウォンテッド(指名手配)」もへヴィーなギターリフが実にカッコいいロッキンなカバーに仕上げています。

そんなどす黒い部分ソウルな部分を押し出したり、ロッキンなアレンジに仕上げている今回の曲は、歌謡曲というジャンルが持っている黒い部分を前面に押し出したようなアレンジに仕上げています。それは洋楽から影響を受けた歌謡曲が隠し持っているブラックミュージックの部分だったり、例えば阿波踊りや河内音頭などから感じられる、日本の大衆音楽がもともと持っていたグルーヴィーな部分だったりするのかもしれません。その方向性は歌謡曲を無理にロックアレンジする、というスタイルではなく、その音楽が本来持っている要素を引き出したようなアレンジ。「此レガ原点」という副題が実にマッチする、その後のTHE YELLOW MONKEYの音楽と歌謡曲とをつなぐようなカバーになっています。

もうひとつ素晴らしかったのは吉井和哉のボーカル。彼の持つ中性的なボーカルが曲とピッタリマッチしています。例えば「人形の家」のカバーなどは彼のその妖艶で中性的なボーカルがあればこそのカバー。「百合コレクション」も幻想的なアレンジとあわせて、彼のボーカルが実に生かされたカバーになっているように感じます。

他にも「夢の途中」「襟裳岬」などはなによりも純粋にメロディーの良さを生かしたような楽曲が楽しめますし、「噂の女」もムード歌謡曲そのまんまなのですが、こちらも力強いバンドサウンドとむせび泣くサックスの音色がとても印象に残ります。

歌謡曲の良さをキッチリと活かし、かつ、新たな魅力すら吹き込んでいる実に素晴らしいカバーアルバムに仕上がっています。正直、2014年の年間ベスト級の名作。ここにカバーされた曲の良さを再認識するとともに、吉井和哉というミュージシャンの実力も再認識できる傑作でした。

評価:★★★★★

吉井和哉 過去の作品
Hummingbird in Forest of Space
Dragon head Miracle
VOLT
The Apples
After The Apples
18
AT THE SWEET BASIL

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