謹賀新年
新年、あけましておめでとうございます。
昨年は当「ゆういちの音楽研究所」をご愛顧くださり、まことにありがとうございました。本年も当サイトをよろしくお願いします。
昨日も夜は家でゴロゴロしながら紅白を見ていました。例年、元日の更新は紅白の感想をつらつらと書いているのですが、それは正月一発目から通常営業はなんだかなぁ、という気持ちから紅白の感想を書いているという消極的な理由が大きかったりします。ただ昨日の紅白については見どころが多く、それに伴い「語りどころ」が多く、積極的に感想を述べたくなるような内容だったように思います。
昨日の紅白の見どころ語りどころといえば間違いなくサプライズ出演のサザンであり中森明菜でしょう。中森明菜については、登場した時のあまりにか細い声に、いつもの彼女のスタイルとはいえ不安になったのですが、いざ歌がはじまると見事な明菜節。予想以上に声もしっかり出ていて、ボーカリストとしての格の違いを見せつける素晴らしい歌声を聴くことが出来ました。彼女の直後にAKB48という構成はどう考えても嫌がらせにしか思えません。ひょっとしたら本当にスタッフ側の意図的な並びだったのかもしれませんが(苦笑)。
ただ、そこで歌われた新曲については正直言えば駄作だと思います。特にエレクトロサウンドが前面に出てしまい、せっかくの彼女の声を邪魔していたサウンドのバランスは最悪。浅倉大介作曲ということでしたが、どうせなら「愛撫」の評価が高かった小室哲哉に依頼した方がよかったのでは?その一方、4年ぶりの活動にもかかわらず、今流行のEDMにかかんに取り組むなど、挑戦的なスタイルに彼女の音楽に対するスタンスも強く感じる新曲だったと思います。
サザンに関しては、明確に彼らのメッセージを感じることが出来るステージ。ロックバンドとしての反骨精神を強く感じられたステージでした。もともと活動開始後一発目のシングルが「ピースとハイライト」というわかりやすいメッセージソングだったことからして、サザンとしての今の日本に対する強い懸念を感じたのですが、今回の紅白での「ピースとハイライト」という選曲といい、新年一発目に公表されたニューアルバムリリース告知の際、先行公開として歌詞がアップされた曲が平和に対するメッセージソングである「平和の鐘が鳴る」であったという事実といい、サザンが強く伝えたい内容は明らか。紅白に登場した桑田佳祐がチョビ髭姿だったのはチャップリンの映画「独裁者」の中のヒトラーをイメージして、という指摘があったのですが、確かにそれは事実かもしれないなぁ、ということも感じさせます。
また、中森明菜にしろサザンにしろ共通しているのはヒット曲をたくさん持っているベテランでありながら、どちらもあえて新曲を歌っているという点。これは今年新譜をリリースしていながらも20年近く前の曲を持ち出した松田聖子や、過去のヒット曲のメドレーだったSMAPや嵐とは対照的。ただこれはどちらが良い悪いという問題ではなく、音楽に対するスタンスの違い。あくまでも「アーティスト性」を重視するサザンや中森明菜に対して松田聖子やSMAP、嵐が重視するのは「エンタテイメント性」。そんな両者の違いも強く感じました。
サザンのステージに対して一部で対極的と指摘されているのが椎名林檎ですが、ただ、日の丸をモチーフにしながらも赤と白を反転させた旗だったり、日本を意識しながらも「和風」であることを回避したバックダンサーの服装といい、変なイデオロギーで語られることを意識的に避けたステージのように感じました。普遍的な反戦歌であり、「お隣の国と仲良くしよう」という、ある意味当たり前のメッセージソングを歌うサザンが「左」と言われたり、単なる日本へのエールである椎名林檎が「右」と言われたりするあたり、どちらも今の日本における余裕のなさも感じます。
中島みゆきのステージも素晴らしかったし、「Let It Go」をオリジナル歌手イディナ・メンゼルに歌わせたのも見どころ。ゴールデンボンバーも期待にそぐわないステージで、思いっきり笑えました。本来、それなりの見どころになりそうな薬師丸ひろ子や長渕剛が完全にかすんじゃったなぁ。美輪明宏も今回は単なる声量自慢に終わってしまっていたし。個人的に結構よかったと思ったのがTOKIOで、同じジャニーズ系のSMAPや嵐があくまでも「アイドルのリサイタル」になっていたのに対し、TOKIOは会場を盛り上げ、バンドとしての「ライブ」をちゃんと見せてくれていました。昨年、ジャニーズ系としてはじめて夏フェスに出演して話題となった彼らでしたが、今回の紅白のステージは、アウェイである夏フェスに出演した成果のようにも思えました。
紅白って、毎年いろいろと言われるのですが、ジャニーズ系やAKBがらみ、EXILEがらみを大量に出演させなくてはいけなくて、ろくなヒット曲もないという今の音楽シーンという制約条件の中、確かに「昔のスター」頼みの部分は否定できないとはいえ、これだけ楽しませる内容にもってくるあたり、紅白スタッフの意地を感じましたし、素直に拍手を送りたい内容だったと思います。TOKIOや、なんだかんだいってもSMAPに嵐がそれなりにみせてくれたジャニーズ系はともかく、番組が終わった頃にはAKB関係やEXILE関係のステージは忘却のかなたにいってしまっていました(笑)。いや正直昨日の紅白は全く期待していなかったのですが楽しかったです。ただ来年は、ゴールデンボンバー以外にも素晴らしいステージをみせてくれる若手勢の登場を期待したいところなのですが。
| 固定リンク
「音楽コラム」カテゴリの記事
- 2024年上半期 邦楽ベスト5(2024.08.03)
- 2024年上半期 洋楽ベスト5(2024.08.02)
- 2023年年間ベストアルバム(洋楽編)その2(2024.02.03)
- 2023年年間ベストアルバム(洋楽編)その1(2024.02.02)
- 2023年年間ベストアルバム(邦楽編)その2(2024.02.05)
コメント
遅ればせながら新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
私も昨年末は家で紅白はもとよりもMステのスーパーライブやレコ大にCDTVの年越しライブなどの大型音楽番組を見て過ごすという日常を送っていました。真っ当な音楽ファンであれば、大晦日は今回の紅白に正規で(?)出場した福山雅治氏や晴れて特別枠で出場となったサザンのカウントダウンライブを現地で見るか、次いではしかるべきBS放送と契約してライブ中継を自宅で見るかのどちらかなのでしょうね(笑)。
しかしながらこういった年末の大型音楽番組にて2014年の年間ヒットチャートの上位の曲をきちんと聴くという数少ない機会でもあって、「こんな曲が売れていたのか」みたいな気分にもなったりもします。というかメディアを通してヒット曲をチェックするなんてしなくなって久しくなったような気すらします。
さて記事のメインでもある昨年の紅白の件ですが、出場歌手の発表がされる前後から年が明けて10日近く経過した現在に至るまでこれだけ外野(つまるところスポーツ新聞や週刊誌を含む芸能ニュース関連)が喧しかった紅白というのは久しぶりのように思われます。近年で芸能ニュース関連で紅白が盛んに取り上げられていたのは、2000年代前半の視聴率・内容面で迷走していた時期だったような記憶があるのですが、今回に関してはサプライズ出演となったサザンだったり中森明菜さんの話題が大きかったりするのでしょうか?個人的にはそういった類の芸能ニュースにはあまり惹かれるものがなかったりするのですが。
内容に関しては、サザンはともかくも中島みゆき氏は圧巻といえるくらいでしたし、『アナ雪』の「Let It Go」のオリジナルバージョンに関しても素晴らしかったと思える程でした(但し日本語版を謳ったMay Jは思いっきり空気化していた印象が)。というかサザンやみゆき御大に長渕氏に福山氏に美輪氏・・・・・と改めて思うにこんな豪華な面子というのは年末年始はもとよりも真夏にも放送している大型音楽番組でもなかなかないのではないでしょうか。しかしながら中森さんに関しては、個人的には何故出演させたのかが釈然としないものがあったり(昨年はオールタイムベストが大ヒットしたという事もあったのかもしれませんが)、出場者の何組かは過去曲やら他人のカバーがあったりとかでこちらも不可解過ぎるように感じられました。となると以前コメントしたaikoやドリカムの落選には腑に落ちないものがあります(ちなみにaikoは紅白の後に放送してたCDTVの年越しライブの先の方に出ていました)。理解出来ない歌手や楽曲の選考は紅白の短所といえるかも知れませんが、納得が出来て面白いと思える選考をやって頂きたいというのは毎年思う所だったりします。
紅白はもとよりも年末の大型音楽番組が過去のヒット曲頼みでその年の音楽シーンを振り返る的な意味合いが感じられなくなってしまったのは、年間ヒットチャートが特定のジャンルのアーティスト(というよりもアイドルという方が妥当でしょうか)に独占されてしまい、熱烈なファンでは無い人には興味を持てるものでは無くなったのが大きいのではないかと思われます。ヒットチャートを忠実に反映させれば、ジャニーズ・AKB48関連・EXILE関連という三勢力による独占状態になってしまってそれはそれでゲンナリしてしまうので考えものですが、音楽のヒットシーンの基準というのも違った視点が求められてきたといえるのでしょうか。単純なCDの売上だけでなく配信も取り上げるという型で。
新年初投稿ながら長文になってしまった事ご了承下さい。
投稿: MoTo | 2015年1月12日 (月) 12時44分
>MoToさん
遅くなりましたがあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
なんだかんだいっても豪華な顔ぶれは紅白ならではといった感じなんでしょうね。
確かに選考に不鮮明さは否定できないのですが、おそらく後ろでいろいろな思惑がうごめいている中、それなりに健闘していると思います。
ただ確かに過去のヒット曲頼みなところは最近顕著ですね。もう既にCDの売上=ヒットではないのは間違いないのですが、それにとってかわるような基準がないんですよね。一応ビルボードチャートみたいな総合チャートもあるので、オリコンから徐々にそちらにヒット曲の基準がシフトしていってほしいのですが・・・。
投稿: ゆういち | 2015年1月15日 (木) 23時22分