未来の民俗音楽
Title:Wicked Leaders
Musician:King Ayisoba
2014年も終わり、年末に各種メディアやネット媒体で「年間ベストアルバム」が発表されましたが、毎年恒例、昨年聴きもれた「名盤」のうち気になる作品を少しづつチェックしています。今回紹介するのは「ミュージック・マガジン誌」のワールドミュージック部門で年間1位を獲得したガーナ出身のミュージシャン、キング・アイソバのアルバムです。
キング・アイソバはガーナ北部のボロガタンガ出身1975年生まれのミュージシャン。ガーナのハイライフという音楽とヒップホップを融合させたヒップライフというジャンルのミュージシャンで、このアルバムが4枚目の作品となるそうです。
そんなハイライフとヒップホップを融合させた音楽・・・ということでしたが、正直言ってしまうと、ヒップホップ的なイメージはあまり強くありません。基本的に現地の様々なパーカッションの複雑なリズムをベースとしながら、彼の出身地であるフラフラと呼ばれる人たちの伝統的な弦楽器、コロゴやザイロフォンという木琴が奏でられ楽曲が展開していく構成になっています。
そのパーカッションのリズムと、コールアンドレスポンスの合唱というスタイルが基本となっているため、パッと聴いたイメージとしてはむしろアフリカの民俗音楽的な要素をかなり強く感じます。今回、このアルバムを聴くにあたって「未来の民俗音楽」という表現をみかけましたが、ちょっと乱暴なくくりになるかもしれませんが、この「民俗音楽」というイメージはとてもピッタリ来るような内容だったと思います。
また印象的だったのがドゥーと呼ばれるホーンの音色。この音がところどころに入ってくるのですが、この音がいい意味で乱暴的であり強烈。さらに強いインパクトだったのがキング・アイゾバのボーカル。非常に強いダミ声の持ち主である彼ですが、そのパワフルでソウルフルなボーカルがとても印象に残り、楽曲に大きなインパクトを与えています。
ただこうやって書くと、全体として荒々しい音楽で、少々取っつきにくいというイメージを抱かれるかもしれません。ただ実際は逆。1曲あたり平均5分という楽曲の構成といい、意外とポップで聴きやすいメロディーラインといい、間違いなく「ポピュラーミュージック」というフィルターを一度通った音楽であるため、アフリカ音楽になじみがなくてもいい意味での耳障りの良さを持った楽曲になっています。そういう意味でも単なる「民俗音楽」ではなく「未来の民俗音楽」という表現がつかわれるのかもしれません。
また、「Yele Mengire Nbo Se'ena」や「Song For Peace」のように、コロゴと呼ばれる弦楽器のみで聴かせる曲もあるのですが、このコロゴの演奏が実に繊細で聴かせてくれます。ここらへん、音楽的な幅広さも強く感じることが出来ました。
アフリカ音楽の魅力に存分に触れることが出来る、満足度の高い素晴らしいアルバムだったと思います。お勧めの傑作です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Live at the Rome Olympic Stadium/MUSE
イギリスのロックバンドMUSEが、ローマのオリンピックスタジアムで行ったライブの模様を収録したライブ盤。ライブの模様を収録したDVD(またはブルーレイ)との2枚組になっています。やはりこの作品の醍醐味は映像作品の方。満員の巨大なスタジアムに工場をイメージしたかのような巨大なセット。彼らのダイナミックな演奏も、まさに「ザ・スタジアムバンド」といったスケール感。もともとスタジアムバンドらしいスケール感の大きな曲風が特徴的な彼らですが、そんな彼らにとってスタジアムはまさにうってつけの会場でしょう。観客の要素も随時映像におさめられており、スタジアムの雰囲気がよくわかる作品でした。
評価:★★★★
MUSE 過去の作品
The Resistance
The 2nd Law(邦題 ザ・セカンド・ロウ~熱力学第二法則)
Black Panties/R.Kelly
R.Kellyといえば、ソウルマナーに沿ったルーツ志向の作品と「エロ」路線の作品を交互にリリースすることで知られています。前々作「Love Letter」も前作「WRITE ME BACK」もソウル路線の真面目な作品が続いていましたが、本作はタイトルからしてストレートなエロ路線。ただし、英語がわからない日本人にとっては、基本的にメロウなR.Kellyというスタイルは変わりません(^^;;ただサウンドについてはルーツ志向の作品と比べると、今風にアレンジされているのは特徴的。とはいえ、基本的にR.Kellyの魅力たっぷりのメロディアスな曲が並んだ作品でした。
評価:★★★★★
R.Kelly 過去の作品
Double Up
Untitled
Love Letter
EPIC
WRITE ME BACK
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