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2015年1月22日 (木)

宇多田ヒカルの新曲を待つ間に

Title:宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-

現在、音楽活動を休止している宇多田ヒカル。新曲の発表も待たれるところですが、そんなファンにとっての隙間を埋めるがごとくリリースされたのが今回のアルバム。タイトル通り、13組のミュージシャンたちが宇多田ヒカルの曲をそれぞれの解釈によりカバーしたカバーアルバム。その企画自体もさることながら、参加しているミュージシャンが、椎名林檎や浜崎あゆみといった宇多田ヒカルと同時期にデビューし、よく比較されるミュージシャンたちや、井上陽水といった大御所まで参加しているということでも話題となりました。

そんなカバーアルバムなのですが、おそらく1曲目、井上陽水の「SAKURAドロップス」のカバーにあっという間に持っていかれてしまうのではないでしょうか。大胆にラテン調にカバーされたこの楽曲は、原曲のイメージをガラッと変えるカバー。ただ、これが意外と楽曲の雰囲気にもマッチしており、「こんな解釈があったのか」と驚かされる作品になっています。

その他のカバーについても、さすがにミュージックシーンの第一線で活躍している方によるカバーばかりなだけに、ちゃんと聴かせるカバーが並んでいます。基本的には宇多田ヒカルの曲を自分たちの土俵にのせて歌い上げたようなカバーが大半。どこか怪しげでジャジーな椎名林檎の「Letters」。岡村ちゃんらしいファンクさを加えた「Automatic」、歌謡曲テイストを強めた吉井和哉の「Be My Last」、アコースティックに聴かせるハナレグミの「Flavor Of Life」など、それぞれが自分たちの個性を楽曲に加えるようなカバーに仕上げています。

こうやって自分たちの土俵にのせても楽曲が破たんせず、ちゃんと聴かせる曲に仕上がってくる、というのは楽曲自体がしっかりとした強度を持っているから、のように感じます。要するにメロディーラインという骨格がしっかりしているため、そこに各々のミュージシャンがどんな味付けをしても、楽曲としてきちんと「聴ける」ものに仕上がってくるのでしょう。それはひとえに宇多田ヒカルがしっかりとした実力に裏付けされたミュージシャンであるという証拠。各々のミュージシャン以上に、宇多田ヒカルの実力を再認識できたアルバムだったと思います。

ただその一方でちょっと残念だったのが、井上陽水を除くとどのミュージシャンも、あくまでも自分たちのテリトリーにおさめたようなカバーで、良くも悪くも「予想の範囲内」におさまったカバーであったという点。「SAKURAドロップス」を除くと「え?こんな解釈もあったんだ」という驚きは残念ながらほとんどありませんでした。また、骨格がしっかりしている楽曲なだけに、骨格自体を破壊してやろう、というような賛否わかれるようなカバーもありません。そういう意味ではファンにとって安心して聴けるカバーではあるものの、おとなしくまとまっちゃっているかなぁ、という印象も受けました。

まあ、そんなアルバムなだけに宇多田ヒカルのファン、あるいは参加ミュージシャンのファンにとっては安心して楽しめるカバーアルバムだったと思います。またあらためて宇多田ヒカルというミュージシャンの魅力にも触れることが出来るアルバムでした。次は久々に宇多田ヒカルの新作を聴きたいんですが・・・活動再開はいつ??

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

MIETA/木村カエラ

歌手活動10周年を記念してリリースされたニューアルバム。一言で言うととにかく陽気なアルバムで、聴いていて無条件で楽しくなってくるようなポップソングが収録されています。いままでの彼女の楽曲も、基本楽しいポップソングがメインだったのですが、本作はそれを上回る、とにかく「爽やかで楽しくポップ」という方向性が貫かれた内容に。ギターロックなバンド風の楽曲とエレクトロサウンドを取り入れたポップソングが交互に展開する構成もおもしろくバラエティー色豊富。木村カエラのポップミュージシャンとしての意気込みを感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

木村カエラ 過去の作品
+1
HOCUS POCUS
5years
8EIGHT8
Sync
ROCK
10years

洗脳/大森靖子

最近、メディアで妙に評価の高い女性SSWのメジャーデビュー作。その破天荒なライブパフォーマンスも話題だそうです。正直、ポップソングとしてはインパクトもあり、良く出来ていると思います。ただ、大絶賛されるほど良いかぁ??という疑問は最後までつきまといました。楽曲のタイプは最近多いタイプの、とにかく情報量の多いポップス。この手の情報量の多さを売りにするミュージシャンが最近妙に評価が高いのが個人的にはかなり疑問に思っているのですが、彼女もまさにそのタイプといった感じ。一方で奇抜そうな楽曲と相反するようにメロディーは意外とシンプルで優等生タイプ。そんな優等生っぽいメロディーラインとあわると、なんとなく無理して破天荒を演じているという見方もできそうな・・・。

評価:★★★★

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アルバムレビュー(邦楽)2015年」カテゴリの記事

コメント

宇多田さんデビューがちょうど思春期の頃だったのでデビュー15年には色々感慨深いものがあります。
それだけに今回のアルバムも非常に楽しみでした。

感想は大凡ゆういちさんと同意見で、最初の陽水さんのラテンアレンジには本当に度肝抜かれましたよね。ビックリしました。本当は陽水さん違う曲を歌いたかったそうですが(他のアーティストが既に選んでいたそうです。)、何を歌いたくてどのようにカバーするつもりだったのかすごく気になりました。機会があればカバーしていただきたいです。

宇多田さんって結構多様なジャンルの曲を出してますが、どんなタイプの曲であろうと自らの色・軸がしっかりしてるんだなとこのカバーで気付かされました。この辺りは本当に彼女の器用さというか、実力の高さを再認識しました。

ちなみに彼女、新年のメッセージで新曲制作の真っ最中と言っていたので、近いうちに新曲を聴くことができそうです。そちらも楽しみですね。

投稿: 亮 | 2015年1月23日 (金) 23時18分

>亮さん
そうなんですか。井上陽水は他の曲をカバーしたかったんですか~そちらも気にかかります。自分のアルバムとかでカバーしてくれないかなぁ。
こうやってカバーされている曲を聴くと、彼女の実力があらためて浮かんできますよね。新曲制作真っ最中なんですか。それは楽しみです!!

投稿: ゆういち | 2015年1月29日 (木) 00時03分

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