ボーカロイド技術でよみがえる新曲
Title:子 ギャル
Musician:hide
1998年にわずか33歳でこの世を去ったX JAPANのギタリストhide。今なお一部で熱烈な支持を受けつづける彼ですが、それから16年、なんと彼の「新曲」が発表されました。それがこのアルバムのタイトルにもなっている「子 ギャル」という曲だそうです。
もともとは、アルバム「Ja.Zoo」制作時にデモ音源のみ作成していた作品。ライブでも披露されたことあるそうですが、結局、未完成のデモのみが残された状況で彼が急逝してしまったため、いままで「幻の曲」と言われていたそうです。
そんな未完成のデモ音源が今回、ヤマハのボーカロイド技術を用いてhideの声を再現し、完成。彼の生後50年を迎えた昨年12月にニューアルバムとしてリリースされました。ボーカロイド技術といえば、「初音ミク」などで用いられており、ここ最近の音楽シーンをにぎわせている技術。サンプリングした人の声に歌を歌わせることが出来る技術なのですが、まさに最先端の技術でhideの声がよみがえった訳です。
その話題の「子 ギャル」は、どこかユーモラスさも感じられる軽快なギターロック。一言で言えば「hideらしい」と言えるような楽曲になっています。楽曲ももちろん良曲なのですが、おそらくファンとしては、もう聴けないと思われたこの曲でのhideの歌声が聴こえてくるのがたまらなくうれしいのでは?「機械声になるのでは?」という懸念もあったのですが、機械的な部分はほとんど感じられず、純粋にhideが歌っているようにちゃんと聴くことが出来ます。ただ、正直ちょっと滑舌が悪く、聴きにくいのも事実。ここは現在の技術の限界、なのでしょうか?
こういう未完成な曲をボーカロイド技術をつかって蘇らせる手法というのは賛否ありそうか感じもします。まあ、この曲については「途中までつくったけど出来に納得できずボツになった」という曲ではなく、完成が生前に間に合わなかったという曲なので、こういう形で発表してもおそらくhideの遺志に違えることはないのでしょう。なによりも、もし今、hideが生きていたら、ボーカロイドという技術に彼自身が興味を抱きそう・・・。そういう意味でも今回の試みは、ファンとしても納得できる企画だったのではないでしょうか。
ただこの技術が進むと、既発表の曲から歌声を抽出して、全く別の曲を歌わせて「新曲」として発表できちゃいそう・・・。そうすると、本人の遺志にそぐわない形で、無理やり「新曲」とかがリリースされちゃいそうでちょっと心配になります。特に尾崎豊あたりがそれをやられる可能性が高いなぁ(苦笑)。
ちなみに2曲目以降は彼の代表曲が並ぶベスト盤的内容。ただ、2002年にリリースされたベスト盤「hide SINGLES ~Junk Story~」とほぼ同内容になっており、そういう意味では過去のアルバムをすべて持っているようなファンにとっては不満が残りそうな感じ。「子 ギャル」だけシングルで出せばいいのにね。まあ、これをきっかけにhideを知った、あらためて聴いてみようと思ったような方にとってはうってつけの1枚なんでしょうが。
もちろん2曲目以降のhideの代表曲に関しても名曲揃い。軽快なオルタナ系のギターロックは明確にX JAPANと音楽的な方向性が違うのがおもしろいところ。パンキッシュでポップ、楽曲によってはどこかユーモラスさも感じられる曲は今聴いても非常に新鮮さを感じさせます。
そんな訳でベスト盤としての内容は文句なしの傑作。ただ、事実上、新曲が1曲のみでそれ以外は以前リリースされたベスト盤とほぼ同内容ということで下のような評価。iTunes Storeでは「子 ギャル」のみ250円で購入できるみたいなので、それで十分かも。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
BACK TO MELLOW/中田裕二
元椿屋四重奏のボーカリストによるソロ4枚目のオリジナルアルバム。直近作は彼が影響を受けたJ-POPや歌謡曲をカバーしたアルバムだったのですが、今回のアルバムは基本的にその延長線上のようなアルバム。70年代あたりの歌謡曲テイストのメロウな雰囲気のナンバーをしんみりと聴かせてくれます。女性視点の曲なんかもいかにも歌謡曲っぽい雰囲気。しんみり聴き入る佳作が並んでいますが、もう一歩、終わった後、メロが頭からはなれないようなインパクトも欲しい感じもしますが。
評価:★★★★
中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~/土岐麻子
彼女の父親であり日本を代表するサックスプレイヤーでもある土岐英史プロデュースによるジャズスタンダードアルバム。基本的にジャズボーカルの王道を行くようなカバーアルバムなのですが、そんな中にレッチリの「Californication」のジャズカバーなどという意外なセレクトがあったり細野晴臣とのデゥオがあったりと要所要所に聴きどころがあるのが楽しいところ。
評価:★★★★
土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
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