更なる深化
Title:グッド・ナイト
Musician:森は生きている
セルフタイトルだった前作も大きな話題となった5人組バンドの最新作。一応、藤子・F・不二雄のファンとしてあらためて記しておきたいのが彼らのバンド名。漫画「ドラえもん」のエピソードのひとつからとられているそうです、はい。
さて、そんな彼らの大きな特徴は雑多な音楽性。前作でもひとつのアルバムで様々な音楽的要素を詰め込んできましたが、本作もその方向性は一致しています。ブルージーな「青磁色の空」や軽快なギターロックの「痕跡地図」など、カントリー、ブルース、ギターロック、ソフトロックなどなど、その雑多な音楽的要素を1曲1曲に感じることが出来ます。
ただ彼らが素晴らしいのは、その様々な音楽的要素をバラバラに楽曲へ取り入れるのではなく、ちゃんと彼らの中で消化した上でひとつの楽曲として構成しています。その結果、彼らにしかできないような楽曲のスタイルを聴くことが出来ます。
例えば今回のアルバムでも「影の問答」ではギターロックの要素を取り入れつつ、幻想的なボーカルを加えることで、不思議な空間を楽曲に作り出していますし、「風の仕業」でもアコースティックな作風をベースとしながらも一方ではエレクトロサウンドをその中にうまく取り入れることによりこちらも爽やかな空気を感じつつ、不思議な雰囲気の楽曲に仕上げています。
そんな方向性は前作から感じられたのですが、この最新アルバムではその方向性がさらに深化を遂げ、さらなる成長を感じさせます。このアルバムのハイライトともいえるのが終盤の17曲からなる「煙夜の夢」と題された、3部から構成される組曲。ちょっとエスニックなテイストのギターが特徴的な序盤、不思議な雰囲気をかもす中盤、そして爽やかなソフトロック路線の終盤と楽曲は変化しつつも、非常に自然にひとつの楽曲を構成しているこの大作に、彼らの自信を感じることが出来ます。
前回のアルバム評で、様々な音楽が組み合わさった彼らの音楽を「雑木林」に例えましたが今回のアルバムもまさにそれ。さらに言えば、ちょっと幻想的な楽曲の雰囲気に、神秘的な雰囲気を感じる「森」を散歩しているような、そんなイメージの浮かぶアルバムでした。まさに彼らの実力を感じさせる傑作。これからも楽しみになってくるバンドです。
評価:★★★★★
森は生きている 過去の作品
森は生きている
ほかに聴いたアルバム
GOLDEN TIME/a flood of circle
a flood of circleは楽曲によって出来不出来の差が大きく、結果、アルバムの出来も安定していない時期が長く続いていました。ただここ最近は、比較的出来のよい作品が続き、特に前作「I'M FREE」は彼らの最高傑作というべき出来でした。それだけに最新作も楽しみにしていたのですが・・・出来としては決して悪くはありません。特にデビュー以来の課題だったボーカルの線の細さはそれなりに克服できてきています。ただ今回のアルバム、楽曲に安定感がある反面、妙に端整なメロディーラインがガレージロックという彼らの音楽と齟齬を起こしており、いまひとつしっくりこない内容に。もちろん、ガレージサウンドがカッコいい楽曲も少なくなく、凡作というほどの内容ではないものの、前作が良かっただけにちょっと残念に感じた新作でした。
評価:★★★★
a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
こわれた箱にりなっくす/後藤まりこ
後藤まりこのソロ3作目となる作品。ミドリ解散後のソロ作はポップな傾向が強くなっていましたが、本作では方向がチェンジ。ポップ、ロック、パンク、ノイズ、ダンスミュージック、さらにはアイドルソングまでかなりアバンギャルドでアグレッシブな作品になっています。その結果、方向性的にはミドリの時代と似た方向になったのですが、やはり後藤まりことしてはこの方向性がしっくり来るということなのでしょうか?ミドリ時代に比べると物足りなさも感じた全2作に比べて、間違いなくソロでの(あくまでも現時点の、ですが)最高傑作と言える出来だったと思います。一方ではバンドサウンドにとらわれない方向性や、もろアイドルソングの「れっつきるみ」などはソロならではの楽曲といったところでしょうか。本当の意味で、ソロミュージシャン後藤まりこの最初の一歩、ともいえるアルバムかもしれません。
評価:★★★★★
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