圧巻な人力テクノ
Title:Beware the Fetish(邦題 コンゴトロニクス 5 〜ビーウェア・ザ・フェティッシュ)
Musician:Kasai Allstars
2000年代後半、電気親指ピアノによる人力テクノで大きな評判を呼んだコンゴトロニクス。そのムーブメントの中心にいたバンド、Kasai Allstarsの新作です。ここ数日続いている、2014年話題のアルバムの聴きなおしシリーズ(?)の一環。MUSIC MAGAZINE誌のワールドミュージック部門の年間3位に入っていたこともあり、あらためて聴いてみました。
「カサイ」というとなんだか日本人の人名みたいですが、もちろん笠井さんのお話じゃなくて、コンゴのカサイ州出身の5つのグループのメンバーからなるバンド。これが2作目となるアルバムで4年という歳月をかけてつくりあげられたアルバムだそうで、全100分以上に及ぶ大作になっています。
冒頭にも書いた通り、コンゴトロニクスというムーブメントは基本的に人力テクノと呼ばれる音楽。個人的にこの「コンゴトロニクス」と呼ばれるアルバムははじめて聴いてみたのですが、正直言ってしまうと、内容に関しては予想していた通り、という印象を受けました。
次から次へとリズムが変容していくパーカッションのポリリズムに、コール&レスポンスの連続。親指ピアノの音色が中心に来たり、ボーカルのみで演奏のないような構成となったり、メロディアスな歌が主軸に来たりとそれなりのバリエーションが構成されつつも、基本的にはパーカッションのリズム+コール&レスポンスというスタイルで100分という長さが構成されています。
そんなアルバムにも関わらず、100分という長さをまったくダレることなく、最後までそのサウンドに聴きいってしまう傑作になっていました。単純に「パーカッションのリズム+コール&レスポンス」と言っていても、そのリズムは実に複雑かつ多様。そのため最後まで全く飽きることありません。単純な言い方になるかもしれませんが、「圧巻」という言葉が実にしっくりとあてはまります。
特に「AS THEY WALKED INTO THE FOREST ON A SUNDAY, THEY ENCOUNTERED APES DRESSED AS HUMANS」の後半、リズムとサウンドが混沌とした雰囲気でうねるように奏でるリズムは迫力満点。「A GOOD HUSBAND」なども複雑なリズムが特に強い印象に残る作品になっています。
もっとも、このリズムのみならず、要所要所で聴かせるポイントを織り交ぜてきているのもおもしろいところ。「YANGYE, THE EVIL LEOPARD」は爽やかな音が、どこかポリネシアンな雰囲気すら感じられましたし、「THE DEAD DON'T DANCE」などもリズム以上にどこか哀愁を感じさせるメロディーラインも聴こえてきます。圧巻なリズムのみならず、そんな中でも感じられるポップなメロディーラインも印象に残りました。
ある意味「コンゴトロニクスを聴いた!」という満足感も覚える、お腹いっぱいになるアルバム。その轟音人力テクノにすっかりはまってしまいました。これは間違いなく2014年のベスト盤候補。これは一度ライブでも聴いてみたいなぁ。
評価:★★★★★
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