真打ち登場(?)
Title:Black Messiah
Musician:D'Angelo And The Vanguard
昨年の年末、突然リリースされ大きな話題となったD'Angeloのニューアルバム。名盤の誉れ高い前作「Voodoo」から14年ぶりとなる新作で、それだけ高い期待をもって迎え入れられた作品だったのですが、その期待にしっかり応えた傑作アルバムをリリースしてきました。
なによりもアルバムの冒頭、そのサウンドのカッコよさにゾクゾクとさせられます。1曲目「Ain't That Easy」はぶっといベースラインとファンキーなリズムのカッコいいこと。さらにそこにエレキギターのファンキーなサウンドが重なり、メロディーや歌詞以上にサウンドのカッコよさにまずはゾクゾクとさせられます。
この重低音を響かたミディアムテンポのグルーヴィーなサウンドはアルバム全体を貫きつつ、その一方では「Really Love」のようなメロウな歌声を聴かせつつ、ジャジーなサウンドを楽しむことが出来る楽曲や、「The Door」ではポップな作風の中にちょっとブルージーなギターが入って来たり、「Another Life」のようなメロディアスな作品をソウルに聴かせたりと、様々な作風に展開。ファンク、ソウル、R&B、ジャズ、ポップスなど様々な要素を取り込んだ楽曲がバラエティーに富んでおもしろい作風になっていました。
ただ、今回のアルバムで一番気持ちよかったのは、そんな様々な作風の曲を下支えしているサウンド。「ぶっといブラックなサウンド」なんて表現になってしまいますがタイトなドラムスのリズムに分厚い低音のベースラインが奏でるファンキーなリズムがアルバム全体に流れていて、それがアルバムにひとつの統一感を与えていました。もちろんその歌声やメロディーにも魅力を感じさせる曲も多かったのですが、なによりもサウンドに聴きほれたアルバムだったと思います。
さて今回のアルバム、「Black Messaiah=黒い救世主」というかなり過激なタイトルになっていますが、それだけ政治的なメッセージの強い作品になっていたよう。このアルバムリリースと共に発表された声明では、黒人少年の銃撃事件があったファーガソンや2011年に「アラブの春」と呼ばれた革命が起きたエジプト、さらにはウォール街のデモなどに言及しつつ、ブラックメサイヤを「これ以上我慢がしがたい状況に対して変化を求めるべく決起している全ての場所の全ての人々についての事」と表現しています。
今回聴いたアルバムは、残念ながら先行リリースとなったiTunes Storeからの先行配信によって聴いたため、歌詞については英語版のみとなってしまうためその内容について詳しくはわかりませんでした。今から聴く方は、2月リリース予定の国内盤を待った方が、よりこのアルバムの魅力に深く触れられるかもしれません。ただもちろん、歌詞について詳しくわからなくても十分すぎるほど魅力的な傑作であることは間違いないと思います。
年末ギリギリに発表されたため、残念ながら各種メディアでは2014年のベストアルバムの対象外とされたようですが、個人的には文句なしに2014年のベストアルバム候補の1枚と言えるだけの傑作だったと思います。とにかく、なによりそのカッコいいサウンドに終始はまりまくってしまった作品でした。
評価:★★★★★
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