今、最も注目の若手プロデューサー
Title:Xen
Musician:Arca
ベネズエラ出身で現在はロンドンを中心に活動する若干24歳のプロデューサー、Alejandro Ghersiのソロプロジェクト。2013年にKanye Westのアルバム「Yeezus」にプロデューサーとして参加し話題となり、昨年は、話題となったアルバムFKA twigsの「LP1」にもプロデューサーとして参加したり、さらにはBjorkが次のアルバムをArcaと共につくっている、なんていうニュースも飛び込んできました。また2013年に自主リリースしたミックステープ「&&&&&」も大きな話題となりました。
そんな話題のミュージシャンのデビューアルバムなだけに大きな話題となった作品。2013年のミックステープは未聴なので今回、彼の音を聴くのはこのアルバムがはじめて。一部では「Aphex Twin以来の衝撃」なんていう話もあるだけに、大きな期待をもってアルバムを聴いてみました。
基本的に大きく括ればジャンル的には「エレクトロニカ」といった感じになるのでしょうか。不定形なビートの中、ノイズやメタリックなサウンド、シンフォニックなストリングスやピアノのような音などなど、様々な音が飛び交うような構成。実に様々な音の要素から、幅広い音楽性を感じることが出来ます。「Faild」なんかに至っては、どこか琴のような音が聴こえ、和の要素すら感じてしまいます。
ただそんな中でアルバムを通じて共通的な要素として感じるのが、いずれの曲も基本的には最小限の音のみを綴ったタイトな音の構成。また、空間的な奥行を感じさせる構成にも共通項を感じます。そんな曲を聴きすすめるうちに、ひとつの風景が頭の中に広がってきました。それはだだっぴろい無機質な空間の中、音を奏でる機械が点在する風景。そのひとつひとつの機械から様々な音が広い空間の中に鳴り響いている、そんな風景が広がりました。そんな風景が頭の中に思い描くことが出来る、というのは、それだけ楽曲に表現力があるこいうことなのでしょう。
また、様々な音が自由に飛び交うような楽曲ながらも、楽曲としては実は意外に「メロディアス」に聴こえるという点も特徴的に感じます。様々な音が無機質に、不条理音のように構成されていながらも、その音の根底には間違いなくひとつのメロディーが流れています。結果、決して聴きやすいタイプの音楽ではないはずなのですが、意外と「ポップ」といった印象で聴けてしまいます。
聴いていてポップと感じるもうひとつの大きな原因が楽曲の長さ。15曲入りながらもわずか40分。1曲あたり2分半程度という普通のポップスソング並の長さという点もポップと感じる大きな要素となっています。そのため、1曲あたりがあっという間に終わり、アルバムを聴いていて飽きを感じさせません。これもこのアルバムの聴きやすさの大きな要因でしょう。
そんな話題のアルバムで、確かにその話題性も納得の出来である一方、昨年末に公表された様々なメディアでの年間ランキングでは、ベスト20あたりには入ってくるものの、ベスト10には入ってこない・・・といった評価が目につきました。うーん、ただその理由もなんとなくわかるんですよね。確かにこのアルバム、傑作か凡作か、と問われれば間違いなく傑作だと思います。ただ一方、もろ手を挙げて絶賛するには物足りなさというか、ちょっとおとなしくまとまりすぎちゃっている感がなきにしもあらず・・・。
とはいえ、2014年を代表するアルバムの1枚なのは間違いないですし、Arcaがこれから期待のミュージシャンなのは間違いありません。先物買い的な要素も含めて要チェックの1枚。さて、Bjorkは彼とどんなアルバムをつくってくるんだろう・・・。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
foreverly/BILLIE JOE+NORAH
GREEN DAYのBILLIE JOEと、NORAH JONESによるコラボアルバム。1958年にエヴァリー・ブラザーズが発表した、アメリカントラッドのカバーアルバム「Songs Our Daddy Taught Us」を現代によみがえらせたアルバム。基本的にカントリーな楽曲をアコースティックにカバーしている作品で、イメージ的にはノラ・ジョーンズの延長線上といった感じ。GREEN DAYのBILLIE JOEの・・・というと、ちょっと意外な印象を受けるかも。ただ、シンプルな曲調ゆえに、2人のボーカリストとしての魅力もしっかりあらわれており、また、しんみり聴き入る美しいメロディーや2人のハーモニーの魅力も、より強調されているように感じます。シンプル・イズ・ベストを地で行くような素晴らしい作品でした。
評価:★★★★★
NORAH JONES 過去の作品
THE FALL
...FEATURING NORAH JONES(ノラ・ジョーンズの自由時間)
LITTLE BROKEN HEARTS
COVERS(カヴァーズ~私のお気に入り)
True/AVICII
スウェーデン出身のEDMのミュージシャン。デビューアルバムである本作が世界各国で大ヒットを記録し、大きな話題となりました。「EDMの~」という括りで聴き始めたため、バリバリの打ち込みサウンドが展開されるダンスチューンの連続・・・という予想の下に聴き始めたのですが、これが予想に反してフォーキーな作品やらソウルな作品やらアメリカンロックな作品やら、意外と泥臭く、生音が表に出てくるような楽曲が多く、そういう意味では悪い意味で単調なリズムとサウンドに終始しがちなEDMというイメージを覆すようなバラエティー富んだ作風が楽しめました。一方では後半はバリバリの打ち込みダンスチューンが連続しており、そういう側面で期待して聴いた方も飽きさせない展開に。確かに大ヒットしそうな・・・という印象を受けたアルバムでした。
評価:★★★★
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