アングラだけど聴きやすい?
Title:Run the Jewels 2
Musician:Run the Jewels
前回に引き続き今回も、2014年に話題になったアルバムをあらためて聴いてみた1枚。90年代後半からアンダーグラウンドシーンで活躍を続けるラッパーEl-Pと、同じく2000年代初頭から活動を続けるラッパーKiller Mikeによるユニットの、タイトル通り2作目。このアルバムは、WebサイトPitchforkで2014年年間1位を獲得したことでも話題となっています。
他のメディアでも軒並み年間ベストに選ばれるなど評判は高く、他には・・・
米Spin誌 3位/米Rolling Stone誌 8位/英NME誌 14位/米STEREOGUM 年間1位/MUSIC MAGAZINE誌 ラップ/ヒップホップ部門2位
絶賛しているところは絶賛している一方、ベスト50にもランクインさせていないメディアもあるなど、少々評価はわかれている部分も・・・。
さてこのアルバム、ラッパー2人ともアンダーグラウンドシーンを中心に活動を続けるラッパーなだけにアンダーグラウンドというイメージで強く語られているようです。確かに「Jeopardy」もシンセが不気味に鳴り響くトラックからスタートしますし、「Oh My Darling Don't Cry」もダークな雰囲気の作風となっており、まさに「アンダーグラウンド」というイメージにもピッタリ来るような展開になっています。
しかし私は今回のアルバム、むしろかなりポップで聴きやすいなぁ、という印象を受けました。基本的に軽快なエレクトロビートがリズミカルに展開されている曲が多く、そのトラックにしても、へヴィーな音を思いっきり鳴り響かせるというよりは、音数が少ない・・・というほどではないものの、必要最小限の音が鳴り響く構成。ただダークさをイメージした作風というよりも、かなりすっきりとした印象を受けるトラックになっており、それが聴きやすいという印象につながっていたと思います。
そんな中おもしろいのは、様々な曲に隠し味のような音がそっと入り込んでいる構成でした。例えば「Jeopardy」にはフリーキーなサックスが途中で入って来たり、「Lie,Cheat,Steal」ではデジタル処理された、コミカルなボーカルが入って来たり、「All Due Respect」ではトライバルなパーカッションが聴けたり、こういう音のバリエーションがサウンドに奥行を与えているように感じました。
年間ベストクラスと言われて納得がいく名盤。ただ一方でPitchforkやSTEREOGUMみたいにこれが今年を代表するアルバムか、と言われると「う~ん」と思ってしまうのも事実。非常に良く出来たアルバムなのは間違いない反面、「シーンに衝撃を与える」というタイプの作品ではなかったような。とはいえ、2014年を代表する重要盤なのは間違いないと思います。「アングラ」というイメージとは反面、聴きやすい内容なので文句なしにお勧めできる作品です。
評価:★★★★★
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