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2015年1月

2015年1月31日 (土)

圧巻な人力テクノ

Title:Beware the Fetish(邦題 コンゴトロニクス 5 〜ビーウェア・ザ・フェティッシュ)
Musician:Kasai Allstars

2000年代後半、電気親指ピアノによる人力テクノで大きな評判を呼んだコンゴトロニクス。そのムーブメントの中心にいたバンド、Kasai Allstarsの新作です。ここ数日続いている、2014年話題のアルバムの聴きなおしシリーズ(?)の一環。MUSIC MAGAZINE誌のワールドミュージック部門の年間3位に入っていたこともあり、あらためて聴いてみました。

「カサイ」というとなんだか日本人の人名みたいですが、もちろん笠井さんのお話じゃなくて、コンゴのカサイ州出身の5つのグループのメンバーからなるバンド。これが2作目となるアルバムで4年という歳月をかけてつくりあげられたアルバムだそうで、全100分以上に及ぶ大作になっています。

冒頭にも書いた通り、コンゴトロニクスというムーブメントは基本的に人力テクノと呼ばれる音楽。個人的にこの「コンゴトロニクス」と呼ばれるアルバムははじめて聴いてみたのですが、正直言ってしまうと、内容に関しては予想していた通り、という印象を受けました。

次から次へとリズムが変容していくパーカッションのポリリズムに、コール&レスポンスの連続。親指ピアノの音色が中心に来たり、ボーカルのみで演奏のないような構成となったり、メロディアスな歌が主軸に来たりとそれなりのバリエーションが構成されつつも、基本的にはパーカッションのリズム+コール&レスポンスというスタイルで100分という長さが構成されています。

そんなアルバムにも関わらず、100分という長さをまったくダレることなく、最後までそのサウンドに聴きいってしまう傑作になっていました。単純に「パーカッションのリズム+コール&レスポンス」と言っていても、そのリズムは実に複雑かつ多様。そのため最後まで全く飽きることありません。単純な言い方になるかもしれませんが、「圧巻」という言葉が実にしっくりとあてはまります。

特に「AS THEY WALKED INTO THE FOREST ON A SUNDAY, THEY ENCOUNTERED APES DRESSED AS HUMANS」の後半、リズムとサウンドが混沌とした雰囲気でうねるように奏でるリズムは迫力満点。「A GOOD HUSBAND」なども複雑なリズムが特に強い印象に残る作品になっています。

もっとも、このリズムのみならず、要所要所で聴かせるポイントを織り交ぜてきているのもおもしろいところ。「YANGYE, THE EVIL LEOPARD」は爽やかな音が、どこかポリネシアンな雰囲気すら感じられましたし、「THE DEAD DON'T DANCE」などもリズム以上にどこか哀愁を感じさせるメロディーラインも聴こえてきます。圧巻なリズムのみならず、そんな中でも感じられるポップなメロディーラインも印象に残りました。

ある意味「コンゴトロニクスを聴いた!」という満足感も覚える、お腹いっぱいになるアルバム。その轟音人力テクノにすっかりはまってしまいました。これは間違いなく2014年のベスト盤候補。これは一度ライブでも聴いてみたいなぁ。

評価:★★★★★

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2015年1月30日 (金)

アングラだけど聴きやすい?

Title:Run the Jewels 2
Musician:Run the Jewels

前回に引き続き今回も、2014年に話題になったアルバムをあらためて聴いてみた1枚。90年代後半からアンダーグラウンドシーンで活躍を続けるラッパーEl-Pと、同じく2000年代初頭から活動を続けるラッパーKiller Mikeによるユニットの、タイトル通り2作目。このアルバムは、WebサイトPitchforkで2014年年間1位を獲得したことでも話題となっています。

他のメディアでも軒並み年間ベストに選ばれるなど評判は高く、他には・・・

米Spin誌 3位/米Rolling Stone誌 8位/英NME誌 14位/米STEREOGUM 年間1位/MUSIC MAGAZINE誌 ラップ/ヒップホップ部門2位

絶賛しているところは絶賛している一方、ベスト50にもランクインさせていないメディアもあるなど、少々評価はわかれている部分も・・・。

さてこのアルバム、ラッパー2人ともアンダーグラウンドシーンを中心に活動を続けるラッパーなだけにアンダーグラウンドというイメージで強く語られているようです。確かに「Jeopardy」もシンセが不気味に鳴り響くトラックからスタートしますし、「Oh My Darling Don't Cry」もダークな雰囲気の作風となっており、まさに「アンダーグラウンド」というイメージにもピッタリ来るような展開になっています。

しかし私は今回のアルバム、むしろかなりポップで聴きやすいなぁ、という印象を受けました。基本的に軽快なエレクトロビートがリズミカルに展開されている曲が多く、そのトラックにしても、へヴィーな音を思いっきり鳴り響かせるというよりは、音数が少ない・・・というほどではないものの、必要最小限の音が鳴り響く構成。ただダークさをイメージした作風というよりも、かなりすっきりとした印象を受けるトラックになっており、それが聴きやすいという印象につながっていたと思います。

そんな中おもしろいのは、様々な曲に隠し味のような音がそっと入り込んでいる構成でした。例えば「Jeopardy」にはフリーキーなサックスが途中で入って来たり、「Lie,Cheat,Steal」ではデジタル処理された、コミカルなボーカルが入って来たり、「All Due Respect」ではトライバルなパーカッションが聴けたり、こういう音のバリエーションがサウンドに奥行を与えているように感じました。

年間ベストクラスと言われて納得がいく名盤。ただ一方でPitchforkやSTEREOGUMみたいにこれが今年を代表するアルバムか、と言われると「う~ん」と思ってしまうのも事実。非常に良く出来たアルバムなのは間違いない反面、「シーンに衝撃を与える」というタイプの作品ではなかったような。とはいえ、2014年を代表する重要盤なのは間違いないと思います。「アングラ」というイメージとは反面、聴きやすい内容なので文句なしにお勧めできる作品です。

評価:★★★★★

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2015年1月29日 (木)

お正月気分も終了

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

正月休みの影響で新譜の数が少ない週が続いていましたが、今週は久々に新譜が目立つチャートとなりました。

まず1位はAKB48のニューアルバム。「ここがロドスだ、ここで跳べ!」がランクイン。前作同様、収録曲の異なる2種類のCDをリリースするという戦略に出ましたが、初動売上は74万6千枚と前作「次の足跡」の96万1千枚より大幅ダウンという厳しい結果となりました。

2位は先週1位SEKAI NO OWARI「Tree」がワンランクダウンでこの位置をキープ。3位には徳永英明のカバーアルバム「VOCALIST6」が入ってきました。女性シンガーの曲をカバーし、大ヒットを記録。その後のカバーアルバムブームの火付け役となった作品。本作ではドリカムの「サンキュ」、trf「寒い夜だから・・・」や山口百恵「さよならの向う側」、さらには昨年の大ヒット曲「Let It Go~ありのままで~」までカバー。ただし彼自身はこの作品でカバーは一時封印を宣言しており、とりあえずはこのシリーズ、本作が最後となりそう。初動売上5万枚は、同シリーズの前作「VOCALIST VINTAGE」の4万1千枚(3位)より若干アップとはいえ、一時期の人気と比べると少々さびしい感じで、ちょうど潮時といった印象も。ただオリジナルとしての前作「STATEMENT」の2万枚(4位)の倍以上の売上を記録しており、今後の動向が気になるところです。

続いて4位以下の初登場ですが、まず4位には話題の若手バンドの新作がランクイン。KANA-BOON「TIME」。前作「DOPPEL」以来2作目のベスト10ヒット。順位は前作の3位からダウンしたものの、初動売上は1万5千枚から3万4千枚に倍増以上。まだまだ人気は上昇傾向が続いているようです。

5位は3月の武道館公演を最後に無期限の活動休止が決定したBerryz工房のラストにリリースされたベスト盤「完熟Berryz工房 The Final Completion Box」。シングルではベスト10の常連の彼女たちですが、アルバムのベスト10入りは2011年にリリースされた「7 Berryz タイムス」以来2作目で5位は自己最高位。初動売上1万9千枚も前作で同じくベストアルバム「Berryz工房 スッペシャル ベスト Vol.2」の5千枚(26位)から大幅増で有終の美を飾りました。

8位初登場はCINDERELLA PROJECT「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 00 ST@RTER BEST」がランクイン。ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」のアニメ化を記念してリリースされた、キャラクターソングのベストアルバム。初動売上1万1千枚。アイドルマスターシリーズでは直近作「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Passion jewelries! 002」の9千枚(9位)から若干のアップ。

そして初登場最後は9位。アメリカのロックバンドFALL OUT BOY「American Beauty/American Psycho」がランクイン。初動売上8千枚は、前作「Save Rock And Roll」の7千枚(9位)から若干のアップです。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に。

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2015年1月28日 (水)

いまさらながら紅白効果?

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週のチャート上位には男性アイドル勢がズラリと並びました。

まず1位はジャニーズ系。KAT-TUN「Dead or Alive」がランクイン。映画「ジョーカー・ゲーム」主題歌。ちょっと妖艶な雰囲気のナンバー。初動売上は19万1千枚で、前作「In Fact」の14万5千枚(1位)からアップ。

そんなジャニーズ系に対して善戦したのが2位初登場JYJ「WAKE ME TONIGHT」。元東方神起のメンバー3人によるユニット。初動売上13万5千枚とはじめてのシングルながらもジャニーズ相手に健闘しました。ただし、MUSIC CARD10種同時発売というドーピング効果も大きいのですが・・・。

上位にはさらに韓流の男性アイドルが。3位にB1A4「白いキセキ」、5位にBlock B「Very Good(Japanese Version)」がそれぞれランクイン。B1A4は初動6万8千枚で前作「SOLO DAY-Japanese ver.-」の4万7千枚(3位)からアップ。Block Bはこれが日本デビュー。MUSIC CARD7種発売などの施策効果(?)もあり、ベスト10入りしてきました。相変わらず韓流は一定層の根強いファンがいる模様。

一方、日本勢も負けていません。4位にw-inds.「FANTASY」がランクイン。軽快でファンキーなナンバー。初動3万4千枚は前作「夢で逢えるのに~Sometimes I Cry~」の2万9千枚(7位)よりアップ。

1位から5位までズラリと男性アイドル勢が並び、6位初登場はようやくロックバンド。back number「ヒロイン」がランクイン。かつではZooの「Choo Choo Train」やglobe「DEPARTURES」、昨年はセカオワの「スノーマジックファンタジー」などヒット曲を多く生み出したJR東日本SKI SKIキャンペーンCMソング。初動売上2万8千枚は前作「繋いだ手から」の8千枚(9位)から大きくアップ。タイアップ効果が如実にあらわれた感じ。

そして8位には話題の新曲が。中森明菜「Rojo -Tierra-」がランクイン。ご存じ紅白歌合戦で披露したあのナンバーです。シングルでは約6年ぶりとなる作品。初動売上1万3千枚は、その6年前のシングル「DIVA Single Version」の1千枚(50位)から大きくアップ。シングルのベスト10入りは1994年の「月華」より21年ぶり(!)という快挙となりました。やはり紅白出演で話題を集めたのも大きかったかと。遅ればせながら、今年、もっとも紅白効果のあったシングルと言えるかもしれません。

ちなみに今週は返り咲きも1枚。9位に乃木坂46「何度目の青空か?」が先週の15位からランクアップし、11月17日付チャートから10週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に。

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2015年1月27日 (火)

ギターの音がとても心地よい

Title:St.Vincent
Musician:St.Vincent

2014年の年間ベストで軒並み上位にランクインしたSt.Vincentのニューアルバム。St.Vincentはニューヨーク・ブルックリンを拠点として活動している女性シンガーソングライター。前作「Strange Mercy」も高い評価を得ましたが、本作もまた、各種メディアの年間ベストにランクインしています。主なところでは・・・

米ローリング・ストーン誌 4位/米TIME誌 2位/英NME誌 1位/英MOJO誌 5位/米STEREOGUM 49位/米Pitchfork 16位/ROCKIN'ON 36位/MUSIC MAGAZINE ロック[アメリカ/カナダ] 3位

となっています。ウェブ系メディアの評価が若干低い反面、雑誌系は軒並み大絶賛という結果になっているようです。

私個人は、前作「Strange Mercy」はノーチェック。今回、このアルバムで彼女の曲をはじめて聴いてみました。基本的に軽快でポップなメロが基軸になりつつ、大きな特徴だったのがノイジーなギターサウンド。軽快なギターリフがメロディーに寄り添う形で流れており、アルバムの中で大きなインパクトとなっています。

そんなギターサウンドがメインし、またドラムスのビートを強調したような曲が多いもののバンド色は強くなく、打ち込みを取り入れつつ、全体的には「宅録」的なイメージを抱くようなポップソング。楽曲によって様々な「音」を楽しむことが出来るポップソングになっています。

彼女のハイトーンボイスも相まって、ポップな楽曲はどこかユーモラスにも聴こえてきます。それぞれの曲が異なる「顔」を持った曲ばかりだったので、最後までダレることなく楽しむことが出来たアルバムでした。

・・・・・・・が、正直言うと、いいアルバムだと思う反面、年間ベストクラスか、と言われると少々疑問も。そのポップセンスは素晴らしくとも、2014年指折りの美メロ、といった感じでもなく、サウンドも斬新で聴いたことないような・・・というほどでもなく、ボーカルも美しいものの、それだけで売りに出来るほどではない・・・ひとつ突き抜けたようなものは感じられず、いいアルバムだとは思うものの、米英の音楽誌の評価は少々ハイプ気味では?とも思ってしまいました。

とはいうものの、いいアルバムには間違いなく、まだチェックしていない方は2014年の話題のアルバムとしてチェックして損はない作品だと思います。素直にギターのノイジーな音が心地よいアルバムでした。

評価:★★★★★

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2015年1月26日 (月)

話題のプロデューサーが早くも新作

Title:Sheep(Hood By Air FW15)
Musician:Arca

Sheep_arca

昨年リリースされ、話題になったアルバム「Xen」の記憶も新しいベネズエラ出身の音楽プロデューサー、Arca。というか、つい先日、このサイトでも紹介したばかりなのですが、その彼が早くも新作をリリース。それも無料ダウンロードでのリリースということで話題となっています。

参考サイト:アルカ、新作『Sheep (Hood By Air FW15)』をフリー・ダウンロードで公開

全11曲からなる今回の作品は、デビュー前から交友のあるアパレルブランド「HOOD BY AIR」のファッションショーのために作成された作品。ただ全11曲・・・といっても、作品の長さはわずか16分程度の短い作品。アルバムはアルバムでもミニアルバム的な作品となっています。

ただそんな作品ながらも内容的には直近のアルバムと比べても全く遜色ない内容。基本的なイメージはその直近作に通じるものがあるでしょうか。空間を感じさせる作風の中に、様々なサウンドが展開していくイメージになっています。

わずか16分の作品ながらも、11曲も詰め込まれているからでしょうか、次々と展開していく音世界が実に魅力的。最初はダークな雰囲気の中、動物の鳴き声らしき音が聴こえる少々不思議な作風の曲からスタート。その後、強烈なノイズの作品やあるいは金属的なリズムが鳴り響くような曲が次々と展開。最後は讃美歌的なコーラスの入る壮大な雰囲気の作品で締めくくられています。

正直言って、この作品で行われるファッションショーというスタイルが全く想像できません(^^;;ただ、そんな作品の中にどこか流れるように感じられるメロディーといい、アルバム「Xen」で感じたArcaの魅力は、しっかりわずか16分というこの作品からも感じることが出来ました。

そんな訳で、無料ダウンロードという内容も含めて、「Xen」をまだ聴いていない方に、Arcaのお試しとして強く勧められる作品。逆に「Xen」を聴いて気に入った方なら間違いなく要チェックでしょう。短くてもちゃんと刺激的で魅力的な作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

ダウンロードは↓から

Arca 過去の作品
Xen

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2015年1月25日 (日)

真打ち登場(?)

Title:Black Messiah
Musician:D'Angelo And The Vanguard

昨年の年末、突然リリースされ大きな話題となったD'Angeloのニューアルバム。名盤の誉れ高い前作「Voodoo」から14年ぶりとなる新作で、それだけ高い期待をもって迎え入れられた作品だったのですが、その期待にしっかり応えた傑作アルバムをリリースしてきました。

なによりもアルバムの冒頭、そのサウンドのカッコよさにゾクゾクとさせられます。1曲目「Ain't That Easy」はぶっといベースラインとファンキーなリズムのカッコいいこと。さらにそこにエレキギターのファンキーなサウンドが重なり、メロディーや歌詞以上にサウンドのカッコよさにまずはゾクゾクとさせられます。

この重低音を響かたミディアムテンポのグルーヴィーなサウンドはアルバム全体を貫きつつ、その一方では「Really Love」のようなメロウな歌声を聴かせつつ、ジャジーなサウンドを楽しむことが出来る楽曲や、「The Door」ではポップな作風の中にちょっとブルージーなギターが入って来たり、「Another Life」のようなメロディアスな作品をソウルに聴かせたりと、様々な作風に展開。ファンク、ソウル、R&B、ジャズ、ポップスなど様々な要素を取り込んだ楽曲がバラエティーに富んでおもしろい作風になっていました。

ただ、今回のアルバムで一番気持ちよかったのは、そんな様々な作風の曲を下支えしているサウンド。「ぶっといブラックなサウンド」なんて表現になってしまいますがタイトなドラムスのリズムに分厚い低音のベースラインが奏でるファンキーなリズムがアルバム全体に流れていて、それがアルバムにひとつの統一感を与えていました。もちろんその歌声やメロディーにも魅力を感じさせる曲も多かったのですが、なによりもサウンドに聴きほれたアルバムだったと思います。

さて今回のアルバム、「Black Messaiah=黒い救世主」というかなり過激なタイトルになっていますが、それだけ政治的なメッセージの強い作品になっていたよう。このアルバムリリースと共に発表された声明では、黒人少年の銃撃事件があったファーガソンや2011年に「アラブの春」と呼ばれた革命が起きたエジプト、さらにはウォール街のデモなどに言及しつつ、ブラックメサイヤを「これ以上我慢がしがたい状況に対して変化を求めるべく決起している全ての場所の全ての人々についての事」と表現しています。

今回聴いたアルバムは、残念ながら先行リリースとなったiTunes Storeからの先行配信によって聴いたため、歌詞については英語版のみとなってしまうためその内容について詳しくはわかりませんでした。今から聴く方は、2月リリース予定の国内盤を待った方が、よりこのアルバムの魅力に深く触れられるかもしれません。ただもちろん、歌詞について詳しくわからなくても十分すぎるほど魅力的な傑作であることは間違いないと思います。

年末ギリギリに発表されたため、残念ながら各種メディアでは2014年のベストアルバムの対象外とされたようですが、個人的には文句なしに2014年のベストアルバム候補の1枚と言えるだけの傑作だったと思います。とにかく、なによりそのカッコいいサウンドに終始はまりまくってしまった作品でした。

評価:★★★★★

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2015年1月24日 (土)

CD音源とは異なり・・・

OGRE YOU ASSHOLE ニューアルバム・リリースツアー"ペーパークラフト"

会場 名古屋CLUB QUATTRO 日時 2015年1月16日(金)19:30~

Ogre_paper_live

昨年、傑作アルバム「ペーパークラフト」をリリースしたOGRE YOU ASSHOLE。今年最初のライブは、彼らのワンマンライブに足を運んできました。彼らのライブは2012年の「森、道、市場」で見ていますがワンマンライブははじめて。OGREのライブといえば、CD音源とは大きく異なるアレンジをライブで聴かせてくれるのが特徴的で、今回のライブでは、あの傑作「ペーパークラフト」の曲がどのように演奏されるのか、非常に楽しみにしながら会場を訪れました。

会場のクラブクワトロは、後方スペースが物販ブースになっていて、その分、観客スペースが狭くなっていたのですが、それを除いてほぼ満員に近い入り。キャパからすると8割程度といった感じでしょうか。また、比較的最近のバンドにも関わらず(・・・といってもデビューアルバムから既に10年がたつのですが・・・)客層が比較的高めだったのも特徴的でした。

さて、待望のライブ。ワンマンライブでは珍しいケースなのですが、開始時間からわずか2分程度が経過した段階でメンバーがステージに登場。まずおもむろにギターの馬渕啓がステージ上のリズムマシーンのスイッチを入れ、四つ打ちのリズムが鳴り響く中、最初は延々とジャム演奏からスタート。そしてそのまま「ロープ」になだれこみます。

その後は最近アルバム「ペーパークラフト」から「見えないルール」「ムダがないって素晴らしい」と続くのですが、ここは原曲からガラリと変わった演奏に。シンプルでタイトル通り無駄を省いたようなCD音源に比べて、こちらは分厚いバンドサウンドを前面に押し出したサイケデリックな演奏に。ガラリとイメージを変えたステージでしたが、それはそれで音で埋め尽くされたバンドサウンドに圧巻されたステージでした。

ただ、その後演奏された「いつかの旅行」は、逆にCD音源のイメージに近い演奏。これはこれで「ペーパークラフト」の雰囲気が再現されており、とても魅力的なステージを聴かせてくれました。

その後は過去の楽曲が続きます。「すべて大丈夫」「素敵な予感」「フラッグ」「ひとり乗り」などなど。ダイナミックなバンドサウンドで、即興の演奏などを加えつつ展開していく内容。基本的にMCはなしで、曲の合間は切れ目なく展開していくので、様々な楽曲がひとつの流れで楽しむことが出来ます。

終盤はふたたび最新アルバム「ペーパークラフト」から「ちょっとの後悔」。こちらも比較的CD音源に近いアレンジになっていたのですが、ガラリと変わったのが次の「ペーパークラフト」。もともと、バンドサウンドの合間に軽く「語り」が入るインスト的な様相の強い曲でしたが、ライブでは雰囲気がガラリと変わり、轟音のバンドサウンドに打ち込みのリズムが鳴り響くようなアレンジに。まさに音の洪水といった感じのステージ。そんなサウンドの向うに聴こえてくる「歌詞」に気づかないと、おそらくこれが「ペーパークラフト」だと気が付かないかも、と思うほど、全く雰囲気の違う演奏を聴かせてくれました。

そしてそんな演奏の余韻をかかえつつ、本編ラストは「ペーパークラフト」から「他人の夢」で締めくくり。メンバーは一度ステージを去り、その後はもちろん盛大なアンコールが起こります。

やがてメンバーは再びステージ上へ。アンコール1曲目は再び「ロープ」!ただ、最初に演奏されたアレンジとは大きくことなり、今度はバンドサウンドのダイナミックな演奏を聴かせるサイケ色のより強いアレンジへ。演奏も延々10分近くに及びます。同じ曲を演奏スタイルを変えて2度演奏するあたり、彼らのライブに対するスタンスがわかる構成になっていました。

そして最後を飾るのはこれも最新アルバムから「誰もいない」。こちらも前の曲から引き続くような感じで、原曲に比べるとサイケな雰囲気が増したアレンジに。最新アルバムのラストを締めくくる曲で、おなじくライブも締めくくりとなりました。

ライブはアンコールを含めて1時間50分程度と比較的短め。MCは本編ラスト曲の前とアンコールの最初、そして最後に「ありがとう」と言っただけで基本的になし。ひたすらバンド演奏を轟音で聴かせるステージになっていました。

最新アルバム「ペーパークラフト」からの曲を含め、アレンジはよりバンドサウンドを前に押し出して分厚いアレンジになっていた感じ。よりライブの醍醐味を感じられるステージで、彼らがあくまでもCD音源とライブは別物、と考えているスタンスを強く感じます。ライブでは彼らのロックバンドとしての実力をより強く感じられ、そういう意味でもCD音源とライブを変えてくるという彼らの方向性は効果的に感じられます。また同時に、ライブアルバムもぜひとも作ってほしいところなのですが・・・。

CD音源とは異なりつつ圧巻のステージングで満足度も非常に高いライブを楽しむことが出来ました。ただ年間ベストクラスの完成度を誇るCD音源と比べると、衝撃度はライブの方が若干劣る感じがします。いや、もっとも凡百のロックバンドに比べて素晴らしい演奏なのは間違いないんですけどね。逆に言えばそれだけまだまだ成長ののびしろも感じられたステージ。もっともっとこれからすごいライブを聴かせてくれるかも。そんな予感もするライブでした。

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2015年1月23日 (金)

ボーカロイド技術でよみがえる新曲

Title:子 ギャル
Musician:hide

1998年にわずか33歳でこの世を去ったX JAPANのギタリストhide。今なお一部で熱烈な支持を受けつづける彼ですが、それから16年、なんと彼の「新曲」が発表されました。それがこのアルバムのタイトルにもなっている「子 ギャル」という曲だそうです。

もともとは、アルバム「Ja.Zoo」制作時にデモ音源のみ作成していた作品。ライブでも披露されたことあるそうですが、結局、未完成のデモのみが残された状況で彼が急逝してしまったため、いままで「幻の曲」と言われていたそうです。

そんな未完成のデモ音源が今回、ヤマハのボーカロイド技術を用いてhideの声を再現し、完成。彼の生後50年を迎えた昨年12月にニューアルバムとしてリリースされました。ボーカロイド技術といえば、「初音ミク」などで用いられており、ここ最近の音楽シーンをにぎわせている技術。サンプリングした人の声に歌を歌わせることが出来る技術なのですが、まさに最先端の技術でhideの声がよみがえった訳です。

その話題の「子 ギャル」は、どこかユーモラスさも感じられる軽快なギターロック。一言で言えば「hideらしい」と言えるような楽曲になっています。楽曲ももちろん良曲なのですが、おそらくファンとしては、もう聴けないと思われたこの曲でのhideの歌声が聴こえてくるのがたまらなくうれしいのでは?「機械声になるのでは?」という懸念もあったのですが、機械的な部分はほとんど感じられず、純粋にhideが歌っているようにちゃんと聴くことが出来ます。ただ、正直ちょっと滑舌が悪く、聴きにくいのも事実。ここは現在の技術の限界、なのでしょうか?

こういう未完成な曲をボーカロイド技術をつかって蘇らせる手法というのは賛否ありそうか感じもします。まあ、この曲については「途中までつくったけど出来に納得できずボツになった」という曲ではなく、完成が生前に間に合わなかったという曲なので、こういう形で発表してもおそらくhideの遺志に違えることはないのでしょう。なによりも、もし今、hideが生きていたら、ボーカロイドという技術に彼自身が興味を抱きそう・・・。そういう意味でも今回の試みは、ファンとしても納得できる企画だったのではないでしょうか。

ただこの技術が進むと、既発表の曲から歌声を抽出して、全く別の曲を歌わせて「新曲」として発表できちゃいそう・・・。そうすると、本人の遺志にそぐわない形で、無理やり「新曲」とかがリリースされちゃいそうでちょっと心配になります。特に尾崎豊あたりがそれをやられる可能性が高いなぁ(苦笑)。

ちなみに2曲目以降は彼の代表曲が並ぶベスト盤的内容。ただ、2002年にリリースされたベスト盤「hide SINGLES ~Junk Story~」とほぼ同内容になっており、そういう意味では過去のアルバムをすべて持っているようなファンにとっては不満が残りそうな感じ。「子 ギャル」だけシングルで出せばいいのにね。まあ、これをきっかけにhideを知った、あらためて聴いてみようと思ったような方にとってはうってつけの1枚なんでしょうが。

もちろん2曲目以降のhideの代表曲に関しても名曲揃い。軽快なオルタナ系のギターロックは明確にX JAPANと音楽的な方向性が違うのがおもしろいところ。パンキッシュでポップ、楽曲によってはどこかユーモラスさも感じられる曲は今聴いても非常に新鮮さを感じさせます。

そんな訳でベスト盤としての内容は文句なしの傑作。ただ、事実上、新曲が1曲のみでそれ以外は以前リリースされたベスト盤とほぼ同内容ということで下のような評価。iTunes Storeでは「子 ギャル」のみ250円で購入できるみたいなので、それで十分かも。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

BACK TO MELLOW/中田裕二

元椿屋四重奏のボーカリストによるソロ4枚目のオリジナルアルバム。直近作は彼が影響を受けたJ-POPや歌謡曲をカバーしたアルバムだったのですが、今回のアルバムは基本的にその延長線上のようなアルバム。70年代あたりの歌謡曲テイストのメロウな雰囲気のナンバーをしんみりと聴かせてくれます。女性視点の曲なんかもいかにも歌謡曲っぽい雰囲気。しんみり聴き入る佳作が並んでいますが、もう一歩、終わった後、メロが頭からはなれないようなインパクトも欲しい感じもしますが。

評価:★★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE

STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~/土岐麻子

彼女の父親であり日本を代表するサックスプレイヤーでもある土岐英史プロデュースによるジャズスタンダードアルバム。基本的にジャズボーカルの王道を行くようなカバーアルバムなのですが、そんな中にレッチリの「Californication」のジャズカバーなどという意外なセレクトがあったり細野晴臣とのデゥオがあったりと要所要所に聴きどころがあるのが楽しいところ。

評価:★★★★

土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'

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2015年1月22日 (木)

宇多田ヒカルの新曲を待つ間に

Title:宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-

現在、音楽活動を休止している宇多田ヒカル。新曲の発表も待たれるところですが、そんなファンにとっての隙間を埋めるがごとくリリースされたのが今回のアルバム。タイトル通り、13組のミュージシャンたちが宇多田ヒカルの曲をそれぞれの解釈によりカバーしたカバーアルバム。その企画自体もさることながら、参加しているミュージシャンが、椎名林檎や浜崎あゆみといった宇多田ヒカルと同時期にデビューし、よく比較されるミュージシャンたちや、井上陽水といった大御所まで参加しているということでも話題となりました。

そんなカバーアルバムなのですが、おそらく1曲目、井上陽水の「SAKURAドロップス」のカバーにあっという間に持っていかれてしまうのではないでしょうか。大胆にラテン調にカバーされたこの楽曲は、原曲のイメージをガラッと変えるカバー。ただ、これが意外と楽曲の雰囲気にもマッチしており、「こんな解釈があったのか」と驚かされる作品になっています。

その他のカバーについても、さすがにミュージックシーンの第一線で活躍している方によるカバーばかりなだけに、ちゃんと聴かせるカバーが並んでいます。基本的には宇多田ヒカルの曲を自分たちの土俵にのせて歌い上げたようなカバーが大半。どこか怪しげでジャジーな椎名林檎の「Letters」。岡村ちゃんらしいファンクさを加えた「Automatic」、歌謡曲テイストを強めた吉井和哉の「Be My Last」、アコースティックに聴かせるハナレグミの「Flavor Of Life」など、それぞれが自分たちの個性を楽曲に加えるようなカバーに仕上げています。

こうやって自分たちの土俵にのせても楽曲が破たんせず、ちゃんと聴かせる曲に仕上がってくる、というのは楽曲自体がしっかりとした強度を持っているから、のように感じます。要するにメロディーラインという骨格がしっかりしているため、そこに各々のミュージシャンがどんな味付けをしても、楽曲としてきちんと「聴ける」ものに仕上がってくるのでしょう。それはひとえに宇多田ヒカルがしっかりとした実力に裏付けされたミュージシャンであるという証拠。各々のミュージシャン以上に、宇多田ヒカルの実力を再認識できたアルバムだったと思います。

ただその一方でちょっと残念だったのが、井上陽水を除くとどのミュージシャンも、あくまでも自分たちのテリトリーにおさめたようなカバーで、良くも悪くも「予想の範囲内」におさまったカバーであったという点。「SAKURAドロップス」を除くと「え?こんな解釈もあったんだ」という驚きは残念ながらほとんどありませんでした。また、骨格がしっかりしている楽曲なだけに、骨格自体を破壊してやろう、というような賛否わかれるようなカバーもありません。そういう意味ではファンにとって安心して聴けるカバーではあるものの、おとなしくまとまっちゃっているかなぁ、という印象も受けました。

まあ、そんなアルバムなだけに宇多田ヒカルのファン、あるいは参加ミュージシャンのファンにとっては安心して楽しめるカバーアルバムだったと思います。またあらためて宇多田ヒカルというミュージシャンの魅力にも触れることが出来るアルバムでした。次は久々に宇多田ヒカルの新作を聴きたいんですが・・・活動再開はいつ??

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

MIETA/木村カエラ

歌手活動10周年を記念してリリースされたニューアルバム。一言で言うととにかく陽気なアルバムで、聴いていて無条件で楽しくなってくるようなポップソングが収録されています。いままでの彼女の楽曲も、基本楽しいポップソングがメインだったのですが、本作はそれを上回る、とにかく「爽やかで楽しくポップ」という方向性が貫かれた内容に。ギターロックなバンド風の楽曲とエレクトロサウンドを取り入れたポップソングが交互に展開する構成もおもしろくバラエティー色豊富。木村カエラのポップミュージシャンとしての意気込みを感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

木村カエラ 過去の作品
+1
HOCUS POCUS
5years
8EIGHT8
Sync
ROCK
10years

洗脳/大森靖子

最近、メディアで妙に評価の高い女性SSWのメジャーデビュー作。その破天荒なライブパフォーマンスも話題だそうです。正直、ポップソングとしてはインパクトもあり、良く出来ていると思います。ただ、大絶賛されるほど良いかぁ??という疑問は最後までつきまといました。楽曲のタイプは最近多いタイプの、とにかく情報量の多いポップス。この手の情報量の多さを売りにするミュージシャンが最近妙に評価が高いのが個人的にはかなり疑問に思っているのですが、彼女もまさにそのタイプといった感じ。一方で奇抜そうな楽曲と相反するようにメロディーは意外とシンプルで優等生タイプ。そんな優等生っぽいメロディーラインとあわると、なんとなく無理して破天荒を演じているという見方もできそうな・・・。

評価:★★★★

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2015年1月21日 (水)

新旧の人気バンドが1位

今週もまたアルバムの初登場が少な目のため、シングル、アルバム同時更新。今週はどちらもバンドが1位を獲得した、ここ最近ではちょっと珍しい結果になっています。

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

シングルではB'zの久々のニューアルバム「有頂天」が1位獲得です。

日テレ系ドラマ「学校のカイダン」主題歌。ギターリフ主導に展開するルーツ志向のロックがなかなかかっこいい作品。本作で1位獲得の連続記録を47作に伸ばしています。初動売上13万3千枚は前作「GO FOR IT,BABY -キオクの山脈-」の14万3千枚(1位)よりダウン。根強い人気は感じるものの、さすがに売上枚数は全盛期から見る影もありません。

2位は人気女性声優水樹奈々「エデン」がランクイン。相変わらずマイナーコードでダイナミックに歌い上げるスタイル。初動売上4万3千枚は前作「禁断のレジスタンス」の4万枚(5位)よりアップ。ここ最近、初動売上が右肩下がりだったのですが、なんとか下げ止まった模様。

3位には米津玄師「Flowerwall」が初登場でランクイン。もともとボカロ系プロデューサーとして人気を博していた彼が、自らボーカルを取りデビューし、これがシングルでは3作目となる作品。アルバムではいままでリリースした2作ともベスト10入りしていましたが、シングルでは初のベスト10ヒット。初動売上1万9千枚はベスト3の売上としては寂しいのですが、ただ前作「MAD HEAD LOVE」の6千枚(11位)からは大きくアップ。

続いて4位以下の初登場ですが、まずは4位にavex傘下の芸能事務所エイベックス・ヴァンガード所属の男性アイドルグループSOLIDEMO「Rafflesia」がランクイン。前作同様、これといって特色のない平凡なEDM。これが2作目のベスト10ヒットで、初動1万8千枚は前作「Heroine」の1万枚(9位)よりアップ。

5位初登場も男性アイドルグループCROSS GENE「Future」。日本人、韓国人、中国人からなるクロスボーダーのユニット。別に男性アイドルグループに興味はないし、曲も正直そこそこなのですが、今の時代、こういう国境を超えたグループにはがんばってほしいなぁ。初動売上1万4千枚は前作「Shooting Star」の6千枚(19位)よりアップし、初のベスト10入り。

6位にはロックバンド凛として時雨「Who What Who What」がランクイン。映画「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス」主題歌。ハイトーンボイスの感情をかきむしるような楽曲はいつもの彼らのスタイル。初動売上1万2千枚は前作「Enigmatic Feeling」(8位)と同水準。

8位初登場はガールズポップスロックバンドSilent Siren「KAKUMEI」。アイドルテイストが強いギターポップ。初動6千枚は前作「恋い雪」の1万3千枚(10位)から大幅ダウン。2月にアルバムリリースが予定されており、その影響が強い模様。

初登場は以上ですが、今週は返り咲きが1枚。9位にBiBi「冬がくれた予感」が先週の15位からランクアップ。ベスト10に返り咲いています。


今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

アルバムチャート1位を獲得したのは、今、若い世代で人気のあのバンド。

今週1位はSEKAI NO OWARI「Tree」が獲得。昨年の紅白にも出演し、小中学生あたりを中心に絶大な支持を得ているバンド。アルバムでは初の1位獲得。初動売上も24万7千枚と前作「ENTERTAINMENT」の6万枚(2位)から大幅アップ。まさにその人気を見せつけた結果となりました。

続く2位初登場は浜田省吾「Dream Catcher」。映画「アゲイン 28年目の甲子園」の主題歌と、その映画でつかわれた曲などを収録した6曲入りのEP盤。新作としては2005年以来、なんと10年ぶりの作品だそうです。初動売上は3万5千枚。オリジナルアルバムとしては前作「My First Love」の12万7千枚(2位)からはさすがにダウン。

3位はE-girls「E.G.TIME」がワンランクダウンでベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場ですが、5位にスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループDISH//のデビューアルバム「MAIN DISH」が入ってきました。初動売上は1万8千枚。直近のシングル「変顔でバイバイ」の3万1千枚(2位)よりダウンしています。

6位には、シングルチャートにも今週ランクインしている凛として時雨のベスト盤「Best of Tornado」がランクインしています。初動売上1万7千枚はアルバムとしては前作「i'mperfect」の1万9千枚(4位)からダウン。あまり浮動層は確保できなかった模様。

そして、7位は正直ビックリしてしまいました。キュウソネコカミ「ハッピーポンコツランド」がランクイン!これが3枚目のミニアルバムとなる5人組パンクロックバンド。ここまで人気のあるバンドだとは知りませんでした・・・。ちなみに初動売上9千枚は前作「チェンジ ザ ワールド」とほぼ同水準(15位)で低水準のチャートに助けられてのベスト10入りという側面が強いのですが、それを差し引いても、もっと「知る人ぞ知る」的なバンドだと思っていただけに、これだけのヒットは意外でした。

そんな訳で今週のヒットチャートは以上!チャート評はまた来週水曜日に。

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2015年1月20日 (火)

素直で心地よい作品ですが

Title:Monuments to an Elegy
Musician:The Smashing Pumpkins

スマパン約2年半ぶりとなるニューアルバム。このアルバムは2009年にスタートした「Teargarden by Kaleidyscope」というプロジェクトの一部ということ。もともと、1曲毎に無料で公式サイトにアップロードされ、最終的には44曲がリリースされる予定だったのですが、結局10数曲をリリースした段階で、1曲毎に無料公開というスタンスは途中頓挫。ただしプロジェクトはその後も続いていたようで、前作「Oceania」はそのプロジェクトの一環としてリリースされたようです。

さらに2015年中に「Day For Night」というアルバムがリリースされることが既にアナウンスされており、このアルバムは、「Teargarden~」プロジェクトの一環であり、かつ「Day For Night」と2部作という立てつけになるということ。近いうちにさらなる新曲がリリースというニュースは、やはりファンとしてはうれしい話でしょう。

さてそんなニューアルバムですが、非常にポップで聴きやすいアルバムに仕上がっていました。いや、もともとスマパンといえばメランコリックなメロディーラインが大きなインパクトであるバンド。そういう意味ではいままでもその美しいメロディーラインを聴かせてくれており、今回のアルバムもスマパンらしいアルバムということになるかもしれません。

また、そんなメロディーを彩るようなサウンドが、これまた非常に心地よい音を鳴らしています。基本的に分厚く甘い雰囲気のノイジーギターが楽曲全体をコーティングしています。それに加えて今回のアルバムではシンセの音をかなり大幅に取り入れているのが特徴的。結果、メランコリックなメロディーラインともピッタリマッチした、とても心地よいサウンドの洪水を楽しむことが出来ます。

メロにしてもサウンドにしても下手な癖のない素直で聴きやすい作品。また、その方向性的にもいかにもスマパン、といったイメージそのままな感じではないでしょうか。そういう意味ではスマパンの新譜を聴いたなぁ・・・という満足感は得られました。

ただ、一方で・・・ちょっとサウンドがチープじゃないですか??ノイジーなギターサウンドも、どこか軽さを感じてしまいますし、特にシンセの音がどこかチープな印象が否めません。もちろん、上で書いた通り、心地よいサウンドであることは否定しがたい事実ですが、その一方でそのサウンドにはどこか物足りなさも感じてしまいました。

ポップで聴きやすくいいアルバムだと思うんですが、悪い意味でも「ポップ」というかちょっと軽すぎるのかなぁ。ポップであるためにあえて軽くしたのかもしれませんが・・・。

評価:★★★★

The Smashing Pumpkins 過去の作品
Teargarden by Kaleidyscope
OCEANIA
(邦題 オセアニア~海洋の彼方)

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2015年1月19日 (月)

更なる深化

Title:グッド・ナイト
Musician:森は生きている

セルフタイトルだった前作も大きな話題となった5人組バンドの最新作。一応、藤子・F・不二雄のファンとしてあらためて記しておきたいのが彼らのバンド名。漫画「ドラえもん」のエピソードのひとつからとられているそうです、はい。

さて、そんな彼らの大きな特徴は雑多な音楽性。前作でもひとつのアルバムで様々な音楽的要素を詰め込んできましたが、本作もその方向性は一致しています。ブルージーな「青磁色の空」や軽快なギターロックの「痕跡地図」など、カントリー、ブルース、ギターロック、ソフトロックなどなど、その雑多な音楽的要素を1曲1曲に感じることが出来ます。

ただ彼らが素晴らしいのは、その様々な音楽的要素をバラバラに楽曲へ取り入れるのではなく、ちゃんと彼らの中で消化した上でひとつの楽曲として構成しています。その結果、彼らにしかできないような楽曲のスタイルを聴くことが出来ます。

例えば今回のアルバムでも「影の問答」ではギターロックの要素を取り入れつつ、幻想的なボーカルを加えることで、不思議な空間を楽曲に作り出していますし、「風の仕業」でもアコースティックな作風をベースとしながらも一方ではエレクトロサウンドをその中にうまく取り入れることによりこちらも爽やかな空気を感じつつ、不思議な雰囲気の楽曲に仕上げています。

そんな方向性は前作から感じられたのですが、この最新アルバムではその方向性がさらに深化を遂げ、さらなる成長を感じさせます。このアルバムのハイライトともいえるのが終盤の17曲からなる「煙夜の夢」と題された、3部から構成される組曲。ちょっとエスニックなテイストのギターが特徴的な序盤、不思議な雰囲気をかもす中盤、そして爽やかなソフトロック路線の終盤と楽曲は変化しつつも、非常に自然にひとつの楽曲を構成しているこの大作に、彼らの自信を感じることが出来ます。

前回のアルバム評で、様々な音楽が組み合わさった彼らの音楽を「雑木林」に例えましたが今回のアルバムもまさにそれ。さらに言えば、ちょっと幻想的な楽曲の雰囲気に、神秘的な雰囲気を感じる「森」を散歩しているような、そんなイメージの浮かぶアルバムでした。まさに彼らの実力を感じさせる傑作。これからも楽しみになってくるバンドです。

評価:★★★★★

森は生きている 過去の作品
森は生きている


ほかに聴いたアルバム

GOLDEN TIME/a flood of circle

a flood of circleは楽曲によって出来不出来の差が大きく、結果、アルバムの出来も安定していない時期が長く続いていました。ただここ最近は、比較的出来のよい作品が続き、特に前作「I'M FREE」は彼らの最高傑作というべき出来でした。それだけに最新作も楽しみにしていたのですが・・・出来としては決して悪くはありません。特にデビュー以来の課題だったボーカルの線の細さはそれなりに克服できてきています。ただ今回のアルバム、楽曲に安定感がある反面、妙に端整なメロディーラインがガレージロックという彼らの音楽と齟齬を起こしており、いまひとつしっくりこない内容に。もちろん、ガレージサウンドがカッコいい楽曲も少なくなく、凡作というほどの内容ではないものの、前作が良かっただけにちょっと残念に感じた新作でした。

評価:★★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE

こわれた箱にりなっくす/後藤まりこ

後藤まりこのソロ3作目となる作品。ミドリ解散後のソロ作はポップな傾向が強くなっていましたが、本作では方向がチェンジ。ポップ、ロック、パンク、ノイズ、ダンスミュージック、さらにはアイドルソングまでかなりアバンギャルドでアグレッシブな作品になっています。その結果、方向性的にはミドリの時代と似た方向になったのですが、やはり後藤まりことしてはこの方向性がしっくり来るということなのでしょうか?ミドリ時代に比べると物足りなさも感じた全2作に比べて、間違いなくソロでの(あくまでも現時点の、ですが)最高傑作と言える出来だったと思います。一方ではバンドサウンドにとらわれない方向性や、もろアイドルソングの「れっつきるみ」などはソロならではの楽曲といったところでしょうか。本当の意味で、ソロミュージシャン後藤まりこの最初の一歩、ともいえるアルバムかもしれません。

評価:★★★★★

後藤まりこ 過去の作品
299792458
m@u

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2015年1月18日 (日)

未来の民俗音楽

Title:Wicked Leaders
Musician:King Ayisoba

2014年も終わり、年末に各種メディアやネット媒体で「年間ベストアルバム」が発表されましたが、毎年恒例、昨年聴きもれた「名盤」のうち気になる作品を少しづつチェックしています。今回紹介するのは「ミュージック・マガジン誌」のワールドミュージック部門で年間1位を獲得したガーナ出身のミュージシャン、キング・アイソバのアルバムです。

キング・アイソバはガーナ北部のボロガタンガ出身1975年生まれのミュージシャン。ガーナのハイライフという音楽とヒップホップを融合させたヒップライフというジャンルのミュージシャンで、このアルバムが4枚目の作品となるそうです。

そんなハイライフとヒップホップを融合させた音楽・・・ということでしたが、正直言ってしまうと、ヒップホップ的なイメージはあまり強くありません。基本的に現地の様々なパーカッションの複雑なリズムをベースとしながら、彼の出身地であるフラフラと呼ばれる人たちの伝統的な弦楽器、コロゴやザイロフォンという木琴が奏でられ楽曲が展開していく構成になっています。

そのパーカッションのリズムと、コールアンドレスポンスの合唱というスタイルが基本となっているため、パッと聴いたイメージとしてはむしろアフリカの民俗音楽的な要素をかなり強く感じます。今回、このアルバムを聴くにあたって「未来の民俗音楽」という表現をみかけましたが、ちょっと乱暴なくくりになるかもしれませんが、この「民俗音楽」というイメージはとてもピッタリ来るような内容だったと思います。

また印象的だったのがドゥーと呼ばれるホーンの音色。この音がところどころに入ってくるのですが、この音がいい意味で乱暴的であり強烈。さらに強いインパクトだったのがキング・アイゾバのボーカル。非常に強いダミ声の持ち主である彼ですが、そのパワフルでソウルフルなボーカルがとても印象に残り、楽曲に大きなインパクトを与えています。

ただこうやって書くと、全体として荒々しい音楽で、少々取っつきにくいというイメージを抱かれるかもしれません。ただ実際は逆。1曲あたり平均5分という楽曲の構成といい、意外とポップで聴きやすいメロディーラインといい、間違いなく「ポピュラーミュージック」というフィルターを一度通った音楽であるため、アフリカ音楽になじみがなくてもいい意味での耳障りの良さを持った楽曲になっています。そういう意味でも単なる「民俗音楽」ではなく「未来の民俗音楽」という表現がつかわれるのかもしれません。

また、「Yele Mengire Nbo Se'ena」「Song For Peace」のように、コロゴと呼ばれる弦楽器のみで聴かせる曲もあるのですが、このコロゴの演奏が実に繊細で聴かせてくれます。ここらへん、音楽的な幅広さも強く感じることが出来ました。

アフリカ音楽の魅力に存分に触れることが出来る、満足度の高い素晴らしいアルバムだったと思います。お勧めの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Live at the Rome Olympic Stadium/MUSE

イギリスのロックバンドMUSEが、ローマのオリンピックスタジアムで行ったライブの模様を収録したライブ盤。ライブの模様を収録したDVD(またはブルーレイ)との2枚組になっています。やはりこの作品の醍醐味は映像作品の方。満員の巨大なスタジアムに工場をイメージしたかのような巨大なセット。彼らのダイナミックな演奏も、まさに「ザ・スタジアムバンド」といったスケール感。もともとスタジアムバンドらしいスケール感の大きな曲風が特徴的な彼らですが、そんな彼らにとってスタジアムはまさにうってつけの会場でしょう。観客の要素も随時映像におさめられており、スタジアムの雰囲気がよくわかる作品でした。

評価:★★★★

MUSE 過去の作品
The Resistance
The 2nd Law(邦題 ザ・セカンド・ロウ~熱力学第二法則)

Black Panties/R.Kelly

R.Kellyといえば、ソウルマナーに沿ったルーツ志向の作品と「エロ」路線の作品を交互にリリースすることで知られています。前々作「Love Letter」も前作「WRITE ME BACK」もソウル路線の真面目な作品が続いていましたが、本作はタイトルからしてストレートなエロ路線。ただし、英語がわからない日本人にとっては、基本的にメロウなR.Kellyというスタイルは変わりません(^^;;ただサウンドについてはルーツ志向の作品と比べると、今風にアレンジされているのは特徴的。とはいえ、基本的にR.Kellyの魅力たっぷりのメロディアスな曲が並んだ作品でした。

評価:★★★★★

R.Kelly 過去の作品
Double Up
Untitled
Love Letter

EPIC
WRITE ME BACK

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2015年1月17日 (土)

今、最も注目の若手プロデューサー

Title:Xen
Musician:Arca

ベネズエラ出身で現在はロンドンを中心に活動する若干24歳のプロデューサー、Alejandro Ghersiのソロプロジェクト。2013年にKanye Westのアルバム「Yeezus」にプロデューサーとして参加し話題となり、昨年は、話題となったアルバムFKA twigsの「LP1」にもプロデューサーとして参加したり、さらにはBjorkが次のアルバムをArcaと共につくっている、なんていうニュースも飛び込んできました。また2013年に自主リリースしたミックステープ「&&&&&」も大きな話題となりました。

そんな話題のミュージシャンのデビューアルバムなだけに大きな話題となった作品。2013年のミックステープは未聴なので今回、彼の音を聴くのはこのアルバムがはじめて。一部では「Aphex Twin以来の衝撃」なんていう話もあるだけに、大きな期待をもってアルバムを聴いてみました。

基本的に大きく括ればジャンル的には「エレクトロニカ」といった感じになるのでしょうか。不定形なビートの中、ノイズやメタリックなサウンド、シンフォニックなストリングスやピアノのような音などなど、様々な音が飛び交うような構成。実に様々な音の要素から、幅広い音楽性を感じることが出来ます。「Faild」なんかに至っては、どこか琴のような音が聴こえ、和の要素すら感じてしまいます。

ただそんな中でアルバムを通じて共通的な要素として感じるのが、いずれの曲も基本的には最小限の音のみを綴ったタイトな音の構成。また、空間的な奥行を感じさせる構成にも共通項を感じます。そんな曲を聴きすすめるうちに、ひとつの風景が頭の中に広がってきました。それはだだっぴろい無機質な空間の中、音を奏でる機械が点在する風景。そのひとつひとつの機械から様々な音が広い空間の中に鳴り響いている、そんな風景が広がりました。そんな風景が頭の中に思い描くことが出来る、というのは、それだけ楽曲に表現力があるこいうことなのでしょう。

また、様々な音が自由に飛び交うような楽曲ながらも、楽曲としては実は意外に「メロディアス」に聴こえるという点も特徴的に感じます。様々な音が無機質に、不条理音のように構成されていながらも、その音の根底には間違いなくひとつのメロディーが流れています。結果、決して聴きやすいタイプの音楽ではないはずなのですが、意外と「ポップ」といった印象で聴けてしまいます。

聴いていてポップと感じるもうひとつの大きな原因が楽曲の長さ。15曲入りながらもわずか40分。1曲あたり2分半程度という普通のポップスソング並の長さという点もポップと感じる大きな要素となっています。そのため、1曲あたりがあっという間に終わり、アルバムを聴いていて飽きを感じさせません。これもこのアルバムの聴きやすさの大きな要因でしょう。

そんな話題のアルバムで、確かにその話題性も納得の出来である一方、昨年末に公表された様々なメディアでの年間ランキングでは、ベスト20あたりには入ってくるものの、ベスト10には入ってこない・・・といった評価が目につきました。うーん、ただその理由もなんとなくわかるんですよね。確かにこのアルバム、傑作か凡作か、と問われれば間違いなく傑作だと思います。ただ一方、もろ手を挙げて絶賛するには物足りなさというか、ちょっとおとなしくまとまりすぎちゃっている感がなきにしもあらず・・・。

とはいえ、2014年を代表するアルバムの1枚なのは間違いないですし、Arcaがこれから期待のミュージシャンなのは間違いありません。先物買い的な要素も含めて要チェックの1枚。さて、Bjorkは彼とどんなアルバムをつくってくるんだろう・・・。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

foreverly/BILLIE JOE+NORAH

GREEN DAYのBILLIE JOEと、NORAH JONESによるコラボアルバム。1958年にエヴァリー・ブラザーズが発表した、アメリカントラッドのカバーアルバム「Songs Our Daddy Taught Us」を現代によみがえらせたアルバム。基本的にカントリーな楽曲をアコースティックにカバーしている作品で、イメージ的にはノラ・ジョーンズの延長線上といった感じ。GREEN DAYのBILLIE JOEの・・・というと、ちょっと意外な印象を受けるかも。ただ、シンプルな曲調ゆえに、2人のボーカリストとしての魅力もしっかりあらわれており、また、しんみり聴き入る美しいメロディーや2人のハーモニーの魅力も、より強調されているように感じます。シンプル・イズ・ベストを地で行くような素晴らしい作品でした。

評価:★★★★★

NORAH JONES 過去の作品
THE FALL

...FEATURING NORAH JONES(ノラ・ジョーンズの自由時間)
LITTLE BROKEN HEARTS
COVERS(カヴァーズ~私のお気に入り)

True/AVICII

スウェーデン出身のEDMのミュージシャン。デビューアルバムである本作が世界各国で大ヒットを記録し、大きな話題となりました。「EDMの~」という括りで聴き始めたため、バリバリの打ち込みサウンドが展開されるダンスチューンの連続・・・という予想の下に聴き始めたのですが、これが予想に反してフォーキーな作品やらソウルな作品やらアメリカンロックな作品やら、意外と泥臭く、生音が表に出てくるような楽曲が多く、そういう意味では悪い意味で単調なリズムとサウンドに終始しがちなEDMというイメージを覆すようなバラエティー富んだ作風が楽しめました。一方では後半はバリバリの打ち込みダンスチューンが連続しており、そういう側面で期待して聴いた方も飽きさせない展開に。確かに大ヒットしそうな・・・という印象を受けたアルバムでした。

評価:★★★★

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2015年1月16日 (金)

どちらから聴く?

Title:The Last Dawn
Musician:MONO

Title:Rays of Darkness
Musician:MONO

日本のみならず海外でも活躍しているポストロックバンドMONOが、2枚同時にリリースしたアルバム。対照的な内容になっており、非常に暗い雰囲気のある「Rays of Darkness」に比べて「The Last Dawn」は比較的明るい作風となっています。

・・・というのがこの2枚のアルバムに対する一般的な説明になっているのですが、もちろん両者でガラリと作風が変わって・・・というのほどの差はありません。いずれも静かな雰囲気からスタートし、徐々に盛り上がり、最後はダイナミックな音の世界を展開する・・・という曲の構成は共通。いずれもメロディーにはどこか哀愁を感じさせ、耳を惹くものがある点も共通しています。

ただ、もちろんそんな中でも両者の方向性が異なるのは明確。「The Last Dawn」については「明るい」というよりも「美しい」という印象を受けました。ピアノの音色とギターのトレモロ奏法が実に美しく、さらにメロディーもそんな作風に沿った狂おしいほど美しいメロディーラインを聴かせてくれます。そんな中、楽曲の後半から徐々に入り込んでくるギターノイズも実に甘美。「夜明け」というタイトルにふさわしい楽曲が印象に残るアルバムになっています。

一方「Rays of Darkness」は、序盤から暗い作風が特徴的なのですが、その方向がさらに強化されるのが後半。「The Hand That Holds The Truth」は後半、デス声まで登場するハードコアな作風になっていますし、最後を締めくくる「The Last Rays」は完全にノイズミュージック。例えるならばアルバムの中で徐々に世界が崩壊していく、そんな印象すら感じる作品になっています。

そんな対照的なアルバムなだけに、どちらから聴くかによって、聴き終わった後の印象が変わりそう。「Rays of Darkness」⇒「The Last Dawn」と聴けば、崩壊した世界の後に、希望の光が差し込むように感じますし、逆の場合は、2枚のアルバムを通じて、世界が徐々に崩壊していくような感覚になるかも。

ただ、どちらも圧巻なMONOの音世界を楽しめる点では共通。ダイナミックなギターノイズは、耳を強く惹きつけられます。美しい世界か崩壊していく世界か・・・どちらの世界から浸るかは、あなた次第。

評価:どちらも★★★★★

MONO 過去の作品
Hymn To The Immortal Wind
For My Parents


ほかに聴いたアルバム

LOVER/HY

HYのニューアルバムはタイトル通り、ラブソングを集めた作品。沖縄民謡を取り入れて、おもしろさを感じさせる部分はあるものの、アルバム全体としては平平凡凡な内容。悪くはないけど何らひねりもない優等生的な楽曲といった感じ。昔はもうちょっといい曲を書いていたんだけどなぁ。

評価:★★★

HY 過去の作品
Whistle
PARADE
Route29
HY SUPER BEST
GLOCAL

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2015年1月15日 (木)

ポップソングのおもちゃ箱

Title:Pom Pom
Musician:Ariel Pink

いままで主にソロプロジェクトAriel Pink's Haunted Graffiti名義でリリースしてきたアメリカ出身のSSWによる、「Ariel Pink」名義によるニューアルバム。Ariel Pink's Haunted Graffitiとしてリリースされた前作「Mature Themes」はメディアでも高く評価され、私も聴いてみて、その美メロ・・・ながらもどこかひねくれたメロディーラインが妙に癖になり気に入りました。

今回のアルバム、一言で言ってしまうと「ポップソングのおもちゃ箱」。こんな表現がこれほどピッタリくるアルバムも少ないかもしれません。エレピがチャイルディッシュな雰囲気の「Plastic Raincoats In the Pig Parade」からはじまり、ユーモラスでコミカルな「Black Ballerina」に、タイトルからしてコミカルな「Exile On Frog Street」など、「稚気」という形容詞がいい意味であてはまりそうな、コミカルなポップソングが並んでいます。

このバラエティー豊かな構成は、これらの曲だけではなく、他にも80年代っぽい「White Freckles」、ドリーミーなれとろっぷの「One Summer Night」、パンキッシュな「Negativ Ed」、ハードロック的な要素も感じられる「Goth Bomb」などなど、1曲1曲がバラバラの様々なタイプの曲が次から次へと展開していきます。このアルバム、全17曲67分というボリュームのある作品なのですが、これだけバリエーションの富んだ内容のため、最後まで飽きることはありません。

ある意味このバリエーションの多さといい、かなり自由度の高いアルバム。Ariel Pinkはもともと宅録のミュージシャンとして出てきたのですが、そんな彼の本領発揮ともいうべき、いかにも宅録らしい内容。今回、ソロプロジェクトではなく、ソロ名義でリリースされたのも納得です。

もっともバリエーションある構成とはいえ、Ariel Pinkらしい暖かみの感じる美メロ路線というのは共通。アコースティックなサウンドが心地よい「Put Your Number In My Phone」などはまさに美メロミュージシャンとしての本領発揮といった感じですし、「Dayed Inn Daydreams」なども美しいメロディーラインながらもどこかひねくれたポップソングに仕上がっているあたり、前作「Mature Themes」と同じ路線を感じます。

そんな前作「Mature Themes」が気に入った方ならこちらもお勧めできそうな極上のポップが聴けるアルバム・・・なのですが、ちょっと気になった点も。いろいろな音を楽曲に取り入れているのですが、それがちょっとゴチャゴチャになっていてちょっと耳障りだった部分も・・・それが彼の狙いなのかもしれませんが、個人的にはあまり好きではないなぁ・・・。

そんな気になった点はあったものの、アルバム全体としてはポップな美メロが楽しめる傑作。まさに「ポップソングのおもちゃ箱」としてワクワクしながら楽しめた1枚でした。

評価:★★★★★

Ariel Pink's Haunted Graffiti 過去の作品
Mature Themes


ほかに聴いたアルバム

地元名古屋の人気FM局、ZIP FM。2013年に開局20周年を迎えたのですが、それを機に2枚のオムニバスアルバムがリリースされました。

ZIP HOT 100 1993-2013 ALL TIME NO.1 HITS

まずは看板番組であるカウントダウン番組「ZIP HOT 100」で1位を獲得した曲を収録したアルバム。20年間のおなじみのヒット曲がズラリと並んでおり、懐かしさも相まって楽しむことの出来るオムニバスアルバムでした。ただ、ここ20年間のヒット曲を聴くと、どうも打ち込みのアレンジが主導の曲が多く、アレンジ的にはちょっと薄っぺらさも感じてしまった点も・・・。個人的に打ち込みのアレンジの曲は嫌いじゃないんですが、それでも途中、ちょっとダレてしまった部分も。ここ最近、昔と比べて日本で洋楽が聴かれなくなったとはよく聴く話なのですが、その理由がなんとなく垣間見れたような気もします。

また曲の途中には番組パーソナリティーの鉄平のトークも入っているのですが、個人的には開局当初のパーソナリティーの小林克也のトークがよかった・・・(^^;;あと、そのトークも妙にかしこまった感じで、こちらも普段の番組のノリの方がよかったかも。

とはいえ全体的には名曲も多く、その時々のヒット曲がはやっていた時代を思い出しつつ、楽しめるアルバムですし、ここ20年間のヒットシーンを網羅的に把握するにも最適のオムニバスだと思います。名古屋以外の方でも楽しめそうなアルバムです。

評価:★★★★

ZIP MANIA ALL BEST MIX

で、こちらはダンスミュージックのヒット曲を紹介する「ZIP DANCE HITS」の1位獲得曲を収録してノンストップ形式にリミックスしたアルバム。正直単調な4つ打ちの連続は、それなりに楽しめても飽きも早そうだなぁ、とあまり期待せずに聴いたのですが、ソウルやトライバルな曲も間に挟まりつつ、それなりにバラエティーのある曲も少なくなく、個人的には思ったよりは楽しめたアルバムになっていました。なによりも、1曲あたりが2分くらいで次々と展開していく構成だったのが飽きがこなった要因かも。

評価:★★★★

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2015年1月14日 (水)

あいかわらずアイドル勢ばかりだが・・・

新年3発目のチャート。今週もアルバムチャートは新譜少な目、ということでシングルアルバム同時更新です。

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

まず1位はジャニーズ系。NEWSのニューシングル「KAGUYA」がランクイン。タイトル通り、ちょっと和風な仕上がりのナンバー。初動売上14万枚は前作「ONE -for the win-」の18万2千枚から大きくダウン。

続く2位も男性アイドルグループDa-iCE「もう一度だけ」。今回もK-POP風な仕上がりながらも、メロウなバラードナンバーになっています。2位は自身最高位で初のベスト3ヒットでしたが、初動売上2万1千枚は前作「ハッシュ ハッシュ」の2万3千枚(8位)よりダウン。

そんな今週もアイドル勢が目立つ中、3位にはトランシーなエレクトロロックが特徴的なFear,and Loathing in Las Vegas「Let Me Hear」がランクインです。日テレ系アニメ「寄生獣 セイの格率」オープニング。初動売上1万7千枚は「Rave-up tonight」の1万9千枚(3位)よりダウンしてしまいましたが、2作続けてのベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下の初登場ですが、こちらもアイドル勢が目立ちます。4位ClariS「border」、7位Doll☆Elements「君に桜ヒラリと舞う」、9位青山☆聖ハチャメチャハイスクール「メチャハイの逆襲~BEYOND THE DARKNESS~」とそれぞれランクイン。ClariSは顔だししないアニメキャラでのアイドルユニット。初動1万5千枚は前作「STEP」(3位)から横バイ。Doll☆Elementsはドリーミュージック所属のアイドルグループ。桜ソングにはちょっと早すぎるような気もするんですが、正直、どうだっていいんでしょうね。初動売上8千枚は前作「君のネガイ叶えたい!」の6千枚(8位)から若干のアップ。青山☆聖ハチャメチャハイスクールはニコニコ動画の公式チャンネルから誕生したアイドルグループ。初動売上8千枚は、前作「STARTING OVER」の1万2千枚(7位)よりダウンです。

さらに5位には大原櫻子「瞳」がランクイン。こちらも一応アイドルの枠組み??大原櫻子名義では初となるベスト10入り。ただし、初動9千枚は前作「サンキュー。」の1万2千枚(12位)よりダウンしています。

そんな中、割り込んできたのがビジュアル系バンドNIGHTMARE「blur」。8位初登場です。アレンジは四つ打ちのダンスチューンなのですが、メロとボーカルはいかにもビジュアル系っぽい雰囲気。初動売上8千枚は前作「TABOO」の1万枚(6位)よりダウンしています。


今週のアルバムチャート

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先週のアルバムチャートは新譜ゼロという結果でしたが、今週は少ないながらも4枚の新譜がランクイン。

1位はAKB系。乃木坂46「透明な色」がランクイン。こちらが初のアルバム。初動売上22万2千枚は直近のシングル「何度目の青空か?」の47万8千枚の半減以下ですが、まあアイドルグループのアルバムはこんなもんでしょうか。

2位は先週1位E-girls「E.G.TIME」がワンランクダウンながらも2位をキープ。

3位にはアイドルとメタルを融合させたことで話題のBABYMETALのライブアルバム「LIVE AT BUDOKAN ~RED NIGHT~」がランクイン。初動売上2万3千枚は前作「BABYMETAL」の3万7千枚(4位)よりダウン。前作でも感じたのですが、ライブ盤とはいえ、話題性の割には売上が伸びていない印象も。

続いて4位以下の初登場ですが、まずは5位に人気女性声優堀江由衣「ワールドエンドの庭」がランクイン。約2年11ヵ月ぶりの久々となるアルバム。初動売上1万3千枚は、前作「秘密」の1万8千枚(3位)からダウン。

もう1枚初登場は8位のいかさん「ボクらの最終定理」。ニコニコ動画の歌ってみたコーナーで人気を博した女子高生のシンガーだそうです。これがメジャーデビューアルバム。

今週のチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に。

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2015年1月13日 (火)

シングル曲から未発表曲まで

2013年5月にギターボーカルの吉村秀樹が急逝。その後、事実上の活動休止状態となっているbloodthirsty butchers。昨年は異例ともいえるトリビュートアルバム4枚リリースなど、様々なバンドに絶大な影響力を有する彼ら。今回、そんな彼らのアルバム未収録曲を集めたアルバムが2枚同時にリリースされました。

Title:血に飢えたnon-album songs ≪Universal Recordings≫
Musician:bloodthirsty butchers

まずは1999年から2002年、主にメジャーデビュー後の作品についてアルバム未収録曲をあつめたアルバムです。

Title:血に飢えたnon-album songs≪Independent Recordings≫
Musician:bloodthirsty butchers

で、こちらは1991年から1996年及び2007年から2010年にかけての、主にインディーズでの音源を収録したアルバムです。

アルバム未収録曲をあつめた企画盤といっても、浅野忠信とコラボした「ファウスト」や、EL-MALOとコラボした「DRIWING」のような限定発売されたレア音源や「ヨモヤマ」のような未発表曲もある一方で、「『△』サンカク」「nagisanite」のような、アルバムバージョンが収録されていたり、ベスト盤に収録されていたシングル曲でも、このアルバムにあらためて収録されているようです。

そんなこともあって、「アルバム未収録曲だからコアなファン向け」といった様相はほとんどなく、1枚のオリジナルアルバム感覚で聴ける作品。シングル曲も収録されているだけに、「Universal Recordings」に関してはむしろ「ポップ」という印象すら抱くほどで、このアルバムがはじめてのブッチャーズ、という方でも全く問題ないと思います。

メジャー期の作品とインディーズ期の作品を比べると、やはり断然、メジャー期の作品の方が聴きやすいのは間違いありません。「Independent Recordings」に収録されている作品はかなり荒々しく、迫力ある音源になっていてそれが魅力的。一方「Universal Recordings」に関しては荒々しさよりも分厚いバンドサウンドの音の洪水をまず楽しめるような作品になっていて、なにより音がインディーズ期に比べて録音状況がよい分、彼らのバンドサウンドの奥行の深さが、より味わえる作品になっています。

また、田渕ひさ子を加えた2007年以降の作品に関しては、ギターに刺々しさよりもむしろある種の優しさと包容力みたいなものを感じ、田渕ひさ子嬢のギターがバンドに新たなケミストリーを加えていることを強く感じます。それがバンドにとってあらたな可能性を広げる結果になっていることが、今回、オールタイムの作品をあらためて2枚のアルバムで聴くことにより、実感することが出来ました。

bloodthristy butchersというバンドの魅力を再認識できる2枚のアルバム。それぞれもちろん魅力的ですが、個人的にはどちらかというと「Independent Recordings」の方が好きかなぁもちろん、どちらもお勧めなのは間違いありませんが。

評価:どちらも★★★★★

bloodthirsty butchers 過去の作品
NO ALBUM 無題
youth(青春)


ほかに聴いたアルバム

一つになれないなら、せめて二つだけでいよう/クリープハイプ

クリープハイプのニューアルバムは、あいかわらずのちょっとネチッとした歌謡曲の世界を彷彿とさせるラブソングや、メタ的な視点の歌詞が特徴的。ただ、アルバムタイトルといい、ちょっとこねくりまわしすぎでは?と感じてしまった部分も。また、尾崎世界観のハイトーンボイスは大きなインパクトである反面、曲によっては聴きずらさも感じました。結果、同じ歌詞を何度も繰り返してインパクトを持たせようとする構成が多いのも気にかかるところ。アルバムの出来としては悪くはないのですが、基本的に「吹き零れる程のI、哀、愛」と同じ路線なだけに、もう一歩、プラスアルファが欲しいのですが。

評価:★★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選

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2015年1月12日 (月)

セルフタイトルは自信作?

Title:スキマスイッチ
Musician:スキマスイッチ

オリジナルアルバムとしては2011年の「musium」以来、約3年ぶりとなるニューアルバムは、セルフタイトルとなる作品。セルフタイトルといえば基本的に、ミュージシャンとしての自信作だったり、そのミュージシャンらしさが強く出ているようなアルバムにつけられるのですが、スキマスイッチについても他の例と同様、実にスキマスイッチらしい自信作に仕上がっていたように感じます。

冒頭を飾る「ゲノム」ではサビでシャウトが入るちょっとロックっぽい作風で、まずはリスナーの耳をグッと惹きつけ、2曲目のシングルにもなった「パラボラヴァ」ではピアノとストリングスでスケール感を持たせつつ、シンプルで暖かいラブソングにスキマスイッチらしさを感じる曲になっています。

シングル曲らしいスケール感がインパクトとなっている「Ah Yeah!!」や、こちらもスキマスイッチの路線のひとつといえる歌謡ファンクな「蝶々ノコナ」などインパクトある曲が並んでいます。そんな中、一番気に入った曲が「思い出クロール」。同窓会での久々の再会をテーマとした楽曲は、切なく、そして暖かい気分になるノスタルジックな雰囲気あふれる作品。ただ、曲の舞台は彼らのふるさと名古屋・・・のはずですが、残念ながらそれを強くイメージさせる部分はなく・・・「いつものライオンの前」という歌詞は名古屋栄三越のライオン像かもしれないけど、名古屋だけの専売特許じゃないし・・・。

さて今回のアルバム、もうひとつ耳を惹いたのがアレンジ。彼らの持ち味といえばやはり第一にメロと歌詞なのでしょうが、今回のアルバムはそれに加えて耳を惹くサウンドを聴かせてくれました。

例えば「僕と傘と日曜日」のピアノの音色は耳を惹きつけるインパクトがありましたし、「lifexlifexlife」もアコースティックなサウンドだけで十分魅力的。特に印象に残ったのが最後を飾る「SF」で、ピアノとドラムのリズムだけのシンプルなアレンジが、シンプルなだけに奥行を感じさせる反面、後半では一気にダイナミックなバンドサウンドを入れてきており、おもしろさを感じさせます。

正直、勢いという面では昔に比べて衰えている部分は否めず、「最高傑作」というには厳しい作品かもしれません。ただ、前作「musium」が、安定感があり、良くも悪くも「大いなるマンネリ」路線にすすみかけていた中、スキマスイッチらしさはそのままに、このままでは終わらないという気概も感じさせてくれる自信作になっていたと思います。スキマスイッチ、これからもまだまだ名曲を届けてくれそうです。

評価:★★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"

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2015年1月11日 (日)

珠玉の名曲たち

Title:Best Always
Musician:大滝詠一

もう1年以上前の話になってしまったのですね・・・2013年の12月30日、わずか65歳という若さで急逝したシンガーソングライター大滝詠一。それから約1年。彼の楽曲をキャリア横断的に収録した初のベスト盤がリリースされました。

いままで何枚か「ベスト盤的」な作品はリリースしていたものの、いずれも企画盤的な要素が強い変則的な内容。純粋に過去のオフィシャル音源を網羅的に収録したアルバムとしてはこれがはじめてになるそうです。そんなベスト盤では大滝詠一として発表した曲のみならず、彼がかつて所属していたバンド、はっぴいえんどの「12月の雨の日」が収録されているほか、「NIAGARA TRIANGLE」で発表した「幸せにさよなら」「A面で恋をして」や、結果として最後の公式レコーディング作品となった竹内まりやとのデゥエット曲「恋のひとこと~Something Stupid~」も収録されています。

さらにこのベスト盤の目玉として、森進一へ提供した「冬のリビエラ」の英語詞カバーであり、現在入手困難となっていた「夏のリビエラ ~Summer Night in Riviera~」や、生前、幻の音源と言われ、葬儀の時にはじめての披露となった「夢で逢えたら」のセルフカバーバージョンなどのレア音源も収録され、大きな話題となっています。

ただ今回収録された楽曲の多くは、誰もが知っているようなおなじみの名曲も多く、このベスト盤を聴く前から何度も聴いた曲も少なくありません。あらためて彼の名曲をこうやって網羅的に聴いてみると、まさに「珠玉の名曲」という表現がこれほどピッタリ来るような楽曲も珍しいかもしれません。ドゥーワップやソウル、ビートルズや歌謡曲など数々のポップソングのおいしくて甘~い部分を見事掬い取ったともいえる理想的なポップソングに連続に聴きほれるベスト盤でした。

いまさら私が言うまでもないのでしょうが、大滝詠一の曲を聴くと、どれも非常に情報量の多い楽曲に仕上がっています。この楽曲の情報量の多さという側面、ある意味ここ最近のミュージシャンに通じるものを感じます。ただ、単純にいろいろなタイプの曲を複雑に1曲に詰め込んだだけの「現在のミュージシャン」たちに比べて、彼の場合、深いポピュラーミュージックに対する知識を前提として、決して複雑さを前に押し出すことなく、ひとつのポップスとして非常に自然につくりあげています。情報量の多さとことさら誇示する最近のミュージシャンと、情報量の多さを見事捌いている大滝詠一。その差は歴然と言えるでしょう。

ここ最近はすっかり寡作の状態だったとはいえ、まだ60代での急逝は、あまりに残念。このベスト盤であらためて大滝詠一というミュージシャンの偉大さに触れて、それを強く感じました。全ポップスファン必聴のベスト盤です。

評価:★★★★★

大滝詠一 過去の作品
EACH TIME 30th Anniversary Edition


ほかに聴いた作品

有と無/ACIDMAN

いつものACIDMAN節が展開するニューアルバム。複雑な構成のダイナミックなサウンドは、聴いていてやはり惹きつけられる部分はあるものの、アルバム1枚聴きとおすには体力がいる感じ。良く出来たアルバムとは思うのですが、もうちょっと「これ」といったひっかかりが欲しいような印象も。

評価:★★★★

ACIDMAN 過去の作品
LIFE
A beautiful greed
ALMA
Second line&Acoustic collection
ACIDMAN THE BEST 2002-2012
新世界

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2015年1月10日 (土)

また恒例のブルースカレンダー

Title:2015-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar

毎年恒例。アメリカのブルース・イメージ社という会社が毎年リリースしているブルースカレンダー。今年もまた2015年版を購入し、新年より私の部屋の壁に飾られています。

Bluescalender2015

1月はメンフィス・ミニーとカンザス・ジョーのコンビによる楽曲で、それにちなんだ写真が飾られています。ちなみにカンザス・ジョーはジョー・マッコイの名前でも活動しており、どちらかというとメンフィス・ミニーの2番目の旦那、ということで有名らしいですね。

で、こちらも毎年恒例の付録CD(といっても、どちらかというとこちらが目当てなのですが)には、豪華なレア音源が収録されているのですが、今年は2013年にほぼ無傷の状態でみつかったトミー・ジョンスンのパラマウント盤。このブルース・イメージ社の主催、ジョン・テフテラー氏が約400万円で購入したそうですが、今回、惜しげもなく収録されています。ありがたや・・・。

ただそのレア音源、確かに貴重な演奏を聴くことが出来るのですが楽曲の状況はかなり悪く、正直やはりマニア向けというのは否めません。その他の曲に関しても、基本的に戦前の録音である以上、音質は悪い楽曲が多く、そういう意味では例年同様、万人向けか、といわれると微妙な状況です。

ただ、とはいうものの今年も戦前のブルースらしい、シンプルな演奏とポップな作風の曲が多く、完成しており聴きやすいものの、ともすれば様式化がスタートしてしまった戦前のブルースに比べて自由な作風な曲が非常に魅力的。特に序盤はポップで軽快な曲調の楽曲が並んでおり、ウキウキしながら楽しめるようなナンバーが並んでいます。

そんな訳でアートワークも魅力的ですし、お部屋のインテリアにもピッタリ。ブルース好きには見逃せないアイテムなのは間違いないでしょう。Amazonでは現時点で在庫なしになっていて若干品薄状態なのが気にかかりますが・・・あなたの部屋の壁にも、このカレンダーを、是非。

評価:★★★★

2013-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2014-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar


ほかに聴いたアルバム

Avril Lavigne/Avril Lavigne

アヴィリルのニューアルバムはかなりバラエティーに富んだ作品。軽快なギターロックがメインながらも、マイナーコードでしんみり聴かせる楽曲や、「Bad Reputation」みたいなパンクロック、さらには「Hello Kitty」というエレクトロチューンまで。どれもアヴィリルらしいポップなナンバーが並んでいるものの、全体的には統一感がないという印象が強く感じられてしまいます。元気印のガールズロック路線からの次の一歩に迷いを見せているような印象も・・・。

評価:★★★

Avril Lavigne 過去の作品
Goodbye Lullaby

Black Radio 2/Robert Glasper Experiment

2012年にリリースされ、グラミー賞も受賞し大きな話題となった「Black Radio」の第2弾。基本的には前作と同様、ジャズのアルバムというよりもジャジーな雰囲気を加えたコンテンポラリーなR&Bといった雰囲気で聴きやすい内容に。比較的重低音を強調した音づくりに今風なものを感じます。

評価:★★★★

Robert Glasper 過去の作品
Black Radio

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2015年1月 9日 (金)

吉井和哉の原点

Title:ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~
Musician:吉井和哉

吉井和哉が彼の音楽的ルーツといえる曲をカバーしたベストアルバム。吉井和哉が率いていたTHE YELLOW MONKEYといえばその音楽性から強く歌謡曲の影響を感じられたのですが、今回のカバーアルバムではタイトル通り音楽性の原点ともいえる歌謡曲を収録しています。

ただ正直なところ、最初はこのアルバムに関して少々いぶかしい感情を抱いていました。最近、歌謡曲を「自分の原点」としてカバーするミュージシャンは多く、この手の企画が珍しくなくなっており、かつ、「此レガ原点」という副題もあまりにそのまんま。ちょっと狙いすぎでは?といった印象を抱いており、それほどの期待はしていませんでした。

しかしこれが期待をいい意味で大きく裏切る素晴らしいカバーアルバムに仕上がっていました。このカバーアルバムが素晴らしいと感じるまずひとつめの大きな要因はその演奏。「ヨシー・ファンク」というタイトルにそぐわない図太い、どす黒い演奏が実に魅力的。例えば「真赤な太陽」ではドラムの入りからゾクゾクっとするものがありますし、さらに曲にかぶさるエレピの演奏も実にグルーヴィー。「ウォンテッド(指名手配)」もへヴィーなギターリフが実にカッコいいロッキンなカバーに仕上げています。

そんなどす黒い部分ソウルな部分を押し出したり、ロッキンなアレンジに仕上げている今回の曲は、歌謡曲というジャンルが持っている黒い部分を前面に押し出したようなアレンジに仕上げています。それは洋楽から影響を受けた歌謡曲が隠し持っているブラックミュージックの部分だったり、例えば阿波踊りや河内音頭などから感じられる、日本の大衆音楽がもともと持っていたグルーヴィーな部分だったりするのかもしれません。その方向性は歌謡曲を無理にロックアレンジする、というスタイルではなく、その音楽が本来持っている要素を引き出したようなアレンジ。「此レガ原点」という副題が実にマッチする、その後のTHE YELLOW MONKEYの音楽と歌謡曲とをつなぐようなカバーになっています。

もうひとつ素晴らしかったのは吉井和哉のボーカル。彼の持つ中性的なボーカルが曲とピッタリマッチしています。例えば「人形の家」のカバーなどは彼のその妖艶で中性的なボーカルがあればこそのカバー。「百合コレクション」も幻想的なアレンジとあわせて、彼のボーカルが実に生かされたカバーになっているように感じます。

他にも「夢の途中」「襟裳岬」などはなによりも純粋にメロディーの良さを生かしたような楽曲が楽しめますし、「噂の女」もムード歌謡曲そのまんまなのですが、こちらも力強いバンドサウンドとむせび泣くサックスの音色がとても印象に残ります。

歌謡曲の良さをキッチリと活かし、かつ、新たな魅力すら吹き込んでいる実に素晴らしいカバーアルバムに仕上がっています。正直、2014年の年間ベスト級の名作。ここにカバーされた曲の良さを再認識するとともに、吉井和哉というミュージシャンの実力も再認識できる傑作でした。

評価:★★★★★

吉井和哉 過去の作品
Hummingbird in Forest of Space
Dragon head Miracle
VOLT
The Apples
After The Apples
18
AT THE SWEET BASIL

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2015年1月 8日 (木)

またベスト盤

2015年にメジャーデビュー20周年を迎えたロックバンドSOPHIA。その彼らが3枚同時リリースのベストアルバムをリリースしました。

Title:20th ANNIVERSARY BESTI YOUNG <1995-2000>
Musician:SOPHIA

Title:20th ANNIVERSARY BESTII YOUNG ADULT <2001-2007>
Musician:SOPHIA

Title:20th ANNIVERSARY BESTIII ADULT <2008-2013>
Musician:SOPHIA

リリース時期によって「YOUNG」「YOUNG ADULT」「ADULT」と名付けられた3枚のベストアルバム。正直なところ「またベストアルバム??」といった印象。確かにここ数年、2011年にシングル集をリリースし、その1年前にはセルフカバーアルバムをリリース。その間、オリジナルアルバムのリリースは1枚のみという状況で、ベスト盤としては「また?」という印象は否めません。

ただ今回のアルバムで大きな特徴はベスト盤でありながら彼らの代表曲のいくつかが収録されていない点。彼らの最大のヒット曲である「黒いブーツ」が収録されていませんし、「進化論」「KURU KURU」という代表曲も収録されていません。一方で「in the future」のようなアルバムのみに収録された曲も選曲されており、彼らの意思も感じることが出来ます。

そんなバンドとしての意思もよくわかるのですが・・・正直言うと、今回、収録曲からはずされた曲はバンドとしてもっとも勢いのあった頃の曲。「黒いブーツ」など、文句なしに名曲だと思いますし、そこらへんをあえてはずす必要性はあったのかなぁ、と思います。いわゆる一発屋のヒット曲でそのミュージシャンに対して変な色がついてしまったケースとは異なり、SOPHIAのヒット曲は「黒いブーツ」だけではありません。確かに、SOPHIAの代表曲ではありますが・・・20周年のベスト盤としては、ここらへんの曲をはずしたのはちょっと残念に思います。

ベスト盤としての感想は2011年にリリースされたシングル集とほぼ同じという結論。やはりバンドとしての勢いはこのベスト盤でいえば「YOUNG」から「YOUNG ADULT」に至る時期。「YOUNG」に収録された前半の曲はSOPHIAとしてのスタイルを確立していく過程がわかる曲。また、「ADULT」についてはある意味バンドとして完成されている反面、安定感があり、良くも悪くもマンネリ気味なのものを感じます。

ここ最近の曲調といい、活動休止を挟んだリリースペースといい、またスパンの短いベスト盤のリリースといい、若干今後の活動に不安も感じます。このベスト盤を区切りに新たな活動を本格的にはじめるのでしょうか、それとも・・・?

評価;いずれのアルバムも
★★★★

SOPHIA 過去の作品
2007
BAND AGE
15
ALL SINGLES 「A」
ALL-B SIDE 「B」

未来大人宣言

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2015年1月 7日 (水)

紅白の影響は?

先週のチャートは新年を挟んだため、変則的な日にチャートの公表となりました。今週からは通常の水・木曜日更新に。また、正月を挟んだ週のため、新譜が極端に少なく、そのためシングル、アルバムチャート同時更新となります。

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

シングルチャートも新譜は3枚のみ。

その中で1位獲得となったのは女性アイドルグループ仮面女子「元気種☆」。アリスプロジェクト所属の女性アイドルグループ、アリス十番、スチームガールズ、アーマーガールズという3組のアイドルグループの合体ユニット。インディーズレーベルからのリリースで、「地下アイドル」ということを「売り」にしているようで、インディーズレーベルの女性アイドルグループとしては初の1位ということですが、今の時代にインディーズとメジャーの区分がどれだけ意味があるかはかなり疑問。初動売上13万1千枚は前作、アリス十番×スチームガールズ@仮面女子名義の「妄想日記」の3万7千枚(4位)から大幅アップ。これは1枚あたり500円という価格設定で、最高30枚同時購入までの複数枚購入特典を大幅に導入した結果。

2位は先週1位のKis-My-Ft2「Thank youじゃん!」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。3位はビジュアル系バンドギルド「LOVEマシーン」がランクイン。こちらモーニング娘。の大ヒット曲のカバー。目のつけどころはおもしろいのですが、カバーとしてはかなり無難な感じで、せっかくのセレクトが生かし切れていない感じが。ベスト10ヒットはこれが2作目。初動売上9千枚は、前作「誘惑ラプソディー」の1万1千枚(4位)からは若干のダウン。

4位以下の初登場は1曲のみ。4位に東京赤羽を中心に活動を続ける女性アイドルグループNゼロ「だから Don’t say it!」がランクイン。初動9千枚は前作「Blue Sky Blue」の6千枚(12位)よりアップし、前々作「ドギマギFirst Love」以来2作ぶり2作目のベスト10ヒット。

さて今週は正月を挟んでのチャート。ということで年末の風物詩、レコード大賞や紅白出場組の影響が気にかかるところ・・・なのですが、今年もまた、ベスト10返り咲きはなし。紅白やレコ大の影響力低下もあるかもしれませんが、それ以上にあらためて買いなおしたいと思うようなヒット曲が不在だった、という影響が大きいのでしょう。

わずかに影響があったのは、レコード大賞受賞曲の三代目J Soul Brothers「R.Y.U.S.E.I.」が39位1千枚から、12位3千枚と順位をあげたあたりでしょうか。他にもこのオリコンニュースによるとサプライズ出演と、その歌詞の内容が話題を呼んだサザンオールスターズ「ピースとハイライト」が200位圏外から69位にアップ。「東京VICTORY」も84位から30位にアップとさすがサザンと言いたいところなのですが、それでもちょっと紅白の影響というには物足りない感じもします・・・。


今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週のアルバムチャートは、なんと新譜ゼロ、という結果になっています。

1位は先週2位だったE-girls「E.G.TIME」がワンランクアップで2週目にして1位獲得。先週はフライング販売分のみでのランクインだった影響でしょう。売上も6万4千枚から7万5千枚にアップしています。

2位は先週1位のいきものがかり「FUN!FUN!FANFARE!」がワンランクダウン。3位には、こちらも先週はフライング販売分のみでのランクインだったMAN WITH A MISSIONのベスト盤「5 Years 5 Wolves 5 Souls」が4位からランクアップで2週目にしてベスト3入り。売上も1万4千枚から1万9千枚にアップしています。

また、ベスト10返り咲き組も2組。EXILE ATSUSHI「Love Ballade」が11位から9位、ONE DIRECTION「FOUR」が16位から10位にランクアップ。EXILE ATSUSHIは2週ぶり、ONE DIRECTIONは5週ぶりの返り咲きとなりました。ただし、売上的には前者が7千枚から5千枚、後者も6千枚から5千枚といずれもダウンしています。

さてこちらも紅白、レコ大からのベスト10返り咲きはなし。椎名林檎「日出処」が42位2千枚から18位3千枚にアップしている程度でしょうか。また、前述のオリコンのニュースでも触れている、サザンとともに紅白の大きな目玉だった中森明菜「オールタイム・ベスト-オリジナル-」が64位から30位にアップしています。

今週のシングルチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年1月 6日 (火)

チャート上位には紅白出場組

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

ただしこちらも紅白の影響は来週以降。

今週1位を獲得したのはいきものがかり。ニューアルバム「FUN!FUN!FANFARE!」が見事1位獲得となりました。これでオリジナルアルバムは5作連続1位。初動売上は10万1千枚と前作「I」の11万1千枚(1位)よりダウン。ただ、前々作「NEWTRAL」と前作「I」とでは初動売上が19万2千枚から11万1千枚と大きくダウンしていただけに、今回は下げ止まった感があります。次回作もなんとか初動10万レベルをキープできるでしょうか?直近のシングル「GOLDEN GIRL」ではベスト10入りを逃しており、ここ最近大きなヒットもなく、今後の動向が気になります。

2位はEXILEの妹分アイドルグループE-girls「E.G.TIME」がランクイン。1月1日リリースなのですが、フライング販売で今週のチャートインとなった模様。初動6万4千枚は前作「COLORFUL POP」の8万9千枚(1位)よりダウン。

3位は韓国の男性アイドルグループ防弾少年団の日本デビューアルバム「WAKE UP」。初動売上は2万1千枚。シングルの直近作「Danger」の初動4万9千枚(5位)からは半減以下の初動ですが、まあアイドルグループのアルバムなのでこんなものでしょう・・・。

続いて4位以下の初登場ですが、まず4位に頭は狼、身体は人間というスタイルの5人組ロックバンドMAN WITH A MISSION「5 Years 5 Wolves 5 Souls」。タイトル通りデビュー5周年を迎えた彼らの初となるベストアルバムです。こちらも1月1日リリースで、フライング販売分でのランクイン。ただ、初動1万4千枚は直近のオリジナル「Tales of Purefly」の6万1千枚(3位)から大幅減。昨年2月、全米デビューに向けて英語詞で録りなおしたベスト盤的なコンピレーションアルバム「Beef Chicken Pork」をリリースしたばかりですし、浮動層からの上積みがほとんどなかった模様。

7位には女性シンガーMay J.「May J. W BEST -Original & Covers-」がランクイン。タイトル通り、カバー曲とオリジナルをそれぞれCD1枚ずつにおさめたベスト盤。こちらも1月1日リリースでフライング販売分のみでのベスト10入り。初動売上1万枚は直近のオリジナルアルバム「Imperfection」の1万6千枚(3位)よりダウン。

初登場最後は9位。「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Passion jewelries! 002」。先週ランクインした「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Cool jewelries! 002」と同じくゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」に登場する架空のアイドルの曲を、楽曲のタイプ別にまとめたアルバム。初動9千枚は、先週の「Cool」と同水準(8位)。また、「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Passion jewelries! 001」の初動8千枚(7位)よりは若干のアップ。

今週はまた返り咲き組が1枚。アメリカの女性シンガーTaylor Swift「1989」が先週の14位から10位にランクアップ。4週ぶりのベスト10返り咲きとなり、根強い人気を見せつけました。

今週のチャート評は以上。それではまた!

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2015年1月 5日 (月)

紅白の影響はまだ

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

2015年最初のヒットチャート・・・なのですが、集計期間が12月22日から28日なので、どちらかというと2014年最後のチャートといった感じ。紅白の影響がチャートに反映されるのは来週になりそうです。

まず1位はジャニーズ系。Kis-My-Ft2「Thank youじゃん!」がランクイン。「壁ドン」なんていうネットでの流行言葉をいれつつ、楽曲自体はシンプルなアイドルポップ。初動売上43万5千枚は前作「Another Future」の21万4千枚(1位)から大幅増。年明けのイベントへの応募券がついており、これが売上増の要因になった模様。

2位はBiBi「冬がくれた予感」がランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!」のキャラクターによるユニット。初動売上5万8千枚は前作「Cutie Panther」の1万6千枚(8位)から大幅増。楽曲はこの手のキャラソンらしく、実にアイドルソングの王道を行くような楽曲。

3位は韓国の男性アイドルグループINFINITE「Dilemma」が入ってきました。布袋寅泰が楽曲提供を行ったことでも話題となった新曲。楽曲は思いっきりギターサウンドが入っている点が布袋らしいものの、基本的にはK-POPらしい曲で、布袋っぽさはあまり感じませんでした(が、ファンが聴けば違うのかも・・・)。初動5万1千枚は前作「Last Romeo~君がいればいい~」の4万7千枚(2位)よりアップ。

以下、4位からの初登場曲です。まずは4位初登場。渡辺美優紀「やさしくするよりキスをして」。NMB48のメンバーによるソロシングル。9月に行われた「じゃんけん大会」で勝ったごほうび。ジャケットがそのまま80年代アイドル風なのですが、楽曲も80年代アイドルソングを強く意識したつくりになっています。

5位には浜崎あゆみ「Zutto...」が入ってきました。初動売上は2万8千枚。アルバムからのリカットシングルとはいえ、ベスト10入りを逃して大きな話題となった前作「Terminal」の3千枚(24位)より大きくアップ。ただし、前々作「Feel the love」の3万枚(6位)を下回る厳しい結果となっています。

6位初登場は女性アイドルグループアイドリング!!!「ユキウサギ」。初動売上2万5千枚は前作「キュピ」の2万7千枚(6位)から若干のダウン。

7位は同じく女性アイドルグループももいろクローバーZ「一粒の笑顔で...」。ここ何年か恒例となっているクリスマスライブ&通販限定でのシングル。初動売上は2万3千枚。昨年の「ももクリ2013」は初動3万6千枚(2位)だったのでこちらよりはダウン。なお、シングルでの前作は「MOON PRIDE」で初動5万枚(3位)。

初登場最後は8位の人気声優田村ゆかり「あのねLove me Do」。正統派J-POPといった感じのアップテンポナンバーなのですが、いかにもなアニメ声には正直抵抗感が。初動売上2万2千枚は前作「秘密の扉から会いにきて」1万5千枚(6位)よりアップ。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートは明日に!

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2015年1月 4日 (日)

ポップな作風に

Title:フェイクワールドワンダーランド
Musician:きのこ帝国

今、期待の新人バンドの一組、きのこ帝国の約1年8か月ぶりとなるニューアルバム。彼らの音楽の特徴は、シューゲイザーからの影響をモロに受けたその曲調。甘美なホワイトノイズが楽曲全体に埋めつくされている曲調は、シューゲイザー好きの私にとっては、壺にはまりまくりな楽曲となっていました。

そんな彼女たちのニューアルバムは、ビックリするほどポップな作品にまとまっていました。佐藤の耳触りのよいボーカルに、端整なメロディーが特徴的。本人たちも明確に「より多くのリスナーに届ける」ことを意識したそうですが、確かにいままでの作品と比べて断然に聴きやすいアルバムになっています。

その試みはある程度は成功しているように感じます。例えば「東京」にしろ「ヴァージン・スーサイド」にしろ、ノイジーなサウンドにポップなメロがほどよく乗っている構成になっていますし、「You outside my window」などは爽やかなギターポップからスタートしつつ、後半はホワイトノイズが展開する構成は、ポップな路線といままでのきのこ帝国の路線をほどよくマッチさせているように感じました。

純粋にギターロックのアルバムとしては実によく出来ているように感じます。ただ・・・・・・一言でいうと「これじゃない」感が否めないんですよね。きのこ帝国に求める音楽とは、ちょっと違ってしまったような感じが否めません。確かにノイジーなギターサウンドは展開しています。「ラストディ」なんかも、メロディーにしても歌詞にしてもとてもシンプルなラブソングになっていて、これはこれで名曲だと思うのですが、きのこ帝国の曲としては普通のギターロックになりすぎている印象はしてしまいます。

確かにより広いリスナー層を意識したバンドの方向性はわかるのですが、その結果がギターサウンドをちょっと後ろに下げた端整なポップソングとしたら、ちょっと安直じゃないかなぁ、という印象も受けます。もっとギターノイズを前面に押し出しつつも、それでいてポップにまとめあげる手法もあったのでは?まあ外部の素人の勝手な意見であることは重々承知なのですが・・・。ただ、1曲1曲の出来は決して悪くないだけに、確かにきのこ帝国の最初のアルバムとしては最適であるのは間違いないのですが。

評価:★★★★

きのこ帝国 過去の作品
渦になる
eureka
ロンググッドバイ

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2015年1月 3日 (土)

25年目の余裕

Title:Do Sing
Musician:真心ブラザーズ

昨年、デビュー25周年を迎えた真心ブラザーズ。その記念すべき年に、レコード会社を徳間ジャパンコミュニケーションズに移籍。さらに、自らのレーベル「Do Thing Recordings」を立ち上げ、新たな一歩に踏み出した彼ら。このアルバムは、そんな彼らの新しい第一歩となる作品です。

そんな彼らの新作についてまず感じた特徴は、ルーツ志向の作品である、という点でした。70年代のアメリカンロックらしいジャケット写真からしてそんな音楽性を志向していると言えるのですが、タイトル通りのブルースロックナンバー「ヒナタのブルース」や、フォーキーな「君がそばにいるだけで」、軽快なニューオリンズ風の「あいつが夢所からやってくる」、軽快なロックンロールナンバー「I'M SO GREAT!」などなど、彼らのルーツ志向が強く感じられる作風になっています。

ただ、そうとはいってもバリバリのブルースを奏でたり、ゴリゴリのロックンロールを奏でたりしているわけではありません。基本的にはどの曲もシンプルなポップソングという出来になっています。どの曲もサウンドにしてもメロディーにしても至ってシンプル。また、決して派手さはありません。ただどの曲も、聴き終わった後、どこか心にひっかかるような、そんなちょっとしたインパクトと、そして暖かさを持った曲ばかりでした。

また歌詞にしても、ほっこりとして暖かい歌詞がメイン。例えば「グライダー」では少年時代、はじめて自転車に乗った時のことを思い起こしたノスタルジックな歌詞が心に響きますし、「君がそばにいるだけで」も非常にシンプルながらも暖かいラブソングに仕上がっています。

そんな歌詞にしてもメロにしてもそうなのですが、自己主張があまり強くなく、非常に肩の力が抜けた作風が特徴的。でもそれって、デビュー25周年を迎えた彼らだからこそ出来る、ベテランとしての余裕のあらわれのように感じます。そんな肩の力が抜けた作風ながらもどこかユーモラスを感じさせるものおもしろいところ。また、ロックンロール志向が強いYO-KINGの作品と、ソウル志向のある桜井秀俊の作品が上手くバランスを取って交互に構成されているところも、真心ならでは。ただ今回のアルバムについては、アルバム全体的にシンプルなポップソングが多かっただけに、両者の違いはあまり目立たなかったようにも思いましたが・・・。

25周年の彼らにふさわしい、また25年目の彼らだからこそ出来るそんなアルバムだったように感じます。新レーベルに移籍し新たな一歩を踏み出した彼ら。まだまだその活躍は続きそうです。

評価:★★★★★

真心ブラザーズ 過去の作品
DAZZLING SOUND
俺たちは真心だ!
タンデムダンデイ20
GOODDEST

Keep on traveling

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2015年1月 2日 (金)

相変わらずの彼ら

Title:LOVE GAMES
Musician:SEX MACHINEGUNS

新年2日目、今年最初の通常更新です。で、新年1発目で紹介するのがこのアルバム(笑)。単なる巡りあわせなだけで、特にこれを1年で最初に取り上げた意味はありません(^^;;メンバーチェンジがあり、またメンバーが変わったメタルバンドSEX MACHINEGUNSの3年ぶりとなる新作です。

正直言ってしまえば、相変わらずの路線。日常のささいな出来事などをユーモラスに捉え、ことさら仰々しくメタルのサウンドののせてコミカルに歌い上げるスタンスは相変わらず。デビューから17年目になる彼らですが、そのスタンスはデビュー当初から一歩もずれません。

今回のアルバムでもフルサービスのガソリンスタンド店員のぼやきを歌った「GS BOY」、タイトル通りダッチワイフをテーマとした「ダッチの奥さん」など、どうしようもないささいなテーマをネタに、メタルのサウンドにのせて歌い上げています。さらに彼ららしいのが「エグイ食い込み」。ただ単にパンツが食い込んだということだけをネタにした曲で、それ以上でもそれ以下でもない点が、実にSEX MACHINEGUNSらしいテーマ設定になっています(笑)。

メタリックなサウンドも相変わらずで、昔と比べたら若干重低音を強調するような音になって、今風になったのかな?と思う点がある程度。Amazonのレビューを見ると、音の悪さを指摘する点が多く、ここらへんは活動の中心がインディーズになった現在では仕方ないのかなぁ、と思いつつ、正直言って聴いていて、個人的にはそこまで気になるほどではなかったような。私自身がメタラーではないことが影響しているのかもしれませんが。

そんな訳でぶっちゃけていってしまうと「大いなるマンネリ」な訳ですが、彼らの場合、間違いなく変に違う路線に色気を出すよりも今の路線を続けていくのが間違いない感じがします。特に、このどうしようもないささいなネタ+仰々しいメタルサウンドという組み合わせは、彼ら独特の個性となっていて、このネタだけで十分にアルバム1枚楽しめるだけの内容になっていて、そういう意味ではこの「大いなるマンネリ」という路線が非常に上手く機能しているように感じました。

聴いていてある種安心できるアルバム。今後もまだまだネタはつきそうにありませんので、まだまだ楽しませてくれそう。インディーズに戻ってしまった彼らですが、またメジャーシーンに戻ってきてほしいなぁ。

評価:★★★★

SEX MACHINEGUNS 過去の作品
キャメロン
SMG

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2015年1月 1日 (木)

謹賀新年

新年、あけましておめでとうございます。

昨年は当「ゆういちの音楽研究所」をご愛顧くださり、まことにありがとうございました。本年も当サイトをよろしくお願いします。

昨日も夜は家でゴロゴロしながら紅白を見ていました。例年、元日の更新は紅白の感想をつらつらと書いているのですが、それは正月一発目から通常営業はなんだかなぁ、という気持ちから紅白の感想を書いているという消極的な理由が大きかったりします。ただ昨日の紅白については見どころが多く、それに伴い「語りどころ」が多く、積極的に感想を述べたくなるような内容だったように思います。

昨日の紅白の見どころ語りどころといえば間違いなくサプライズ出演のサザンであり中森明菜でしょう。中森明菜については、登場した時のあまりにか細い声に、いつもの彼女のスタイルとはいえ不安になったのですが、いざ歌がはじまると見事な明菜節。予想以上に声もしっかり出ていて、ボーカリストとしての格の違いを見せつける素晴らしい歌声を聴くことが出来ました。彼女の直後にAKB48という構成はどう考えても嫌がらせにしか思えません。ひょっとしたら本当にスタッフ側の意図的な並びだったのかもしれませんが(苦笑)。

ただ、そこで歌われた新曲については正直言えば駄作だと思います。特にエレクトロサウンドが前面に出てしまい、せっかくの彼女の声を邪魔していたサウンドのバランスは最悪。浅倉大介作曲ということでしたが、どうせなら「愛撫」の評価が高かった小室哲哉に依頼した方がよかったのでは?その一方、4年ぶりの活動にもかかわらず、今流行のEDMにかかんに取り組むなど、挑戦的なスタイルに彼女の音楽に対するスタンスも強く感じる新曲だったと思います。

サザンに関しては、明確に彼らのメッセージを感じることが出来るステージ。ロックバンドとしての反骨精神を強く感じられたステージでした。もともと活動開始後一発目のシングルが「ピースとハイライト」というわかりやすいメッセージソングだったことからして、サザンとしての今の日本に対する強い懸念を感じたのですが、今回の紅白での「ピースとハイライト」という選曲といい、新年一発目に公表されたニューアルバムリリース告知の際、先行公開として歌詞がアップされた曲が平和に対するメッセージソングである「平和の鐘が鳴る」であったという事実といい、サザンが強く伝えたい内容は明らか。紅白に登場した桑田佳祐がチョビ髭姿だったのはチャップリンの映画「独裁者」の中のヒトラーをイメージして、という指摘があったのですが、確かにそれは事実かもしれないなぁ、ということも感じさせます。

また、中森明菜にしろサザンにしろ共通しているのはヒット曲をたくさん持っているベテランでありながら、どちらもあえて新曲を歌っているという点。これは今年新譜をリリースしていながらも20年近く前の曲を持ち出した松田聖子や、過去のヒット曲のメドレーだったSMAPや嵐とは対照的。ただこれはどちらが良い悪いという問題ではなく、音楽に対するスタンスの違い。あくまでも「アーティスト性」を重視するサザンや中森明菜に対して松田聖子やSMAP、嵐が重視するのは「エンタテイメント性」。そんな両者の違いも強く感じました。

サザンのステージに対して一部で対極的と指摘されているのが椎名林檎ですが、ただ、日の丸をモチーフにしながらも赤と白を反転させた旗だったり、日本を意識しながらも「和風」であることを回避したバックダンサーの服装といい、変なイデオロギーで語られることを意識的に避けたステージのように感じました。普遍的な反戦歌であり、「お隣の国と仲良くしよう」という、ある意味当たり前のメッセージソングを歌うサザンが「左」と言われたり、単なる日本へのエールである椎名林檎が「右」と言われたりするあたり、どちらも今の日本における余裕のなさも感じます。

中島みゆきのステージも素晴らしかったし、「Let It Go」をオリジナル歌手イディナ・メンゼルに歌わせたのも見どころ。ゴールデンボンバーも期待にそぐわないステージで、思いっきり笑えました。本来、それなりの見どころになりそうな薬師丸ひろ子や長渕剛が完全にかすんじゃったなぁ。美輪明宏も今回は単なる声量自慢に終わってしまっていたし。個人的に結構よかったと思ったのがTOKIOで、同じジャニーズ系のSMAPや嵐があくまでも「アイドルのリサイタル」になっていたのに対し、TOKIOは会場を盛り上げ、バンドとしての「ライブ」をちゃんと見せてくれていました。昨年、ジャニーズ系としてはじめて夏フェスに出演して話題となった彼らでしたが、今回の紅白のステージは、アウェイである夏フェスに出演した成果のようにも思えました。

紅白って、毎年いろいろと言われるのですが、ジャニーズ系やAKBがらみ、EXILEがらみを大量に出演させなくてはいけなくて、ろくなヒット曲もないという今の音楽シーンという制約条件の中、確かに「昔のスター」頼みの部分は否定できないとはいえ、これだけ楽しませる内容にもってくるあたり、紅白スタッフの意地を感じましたし、素直に拍手を送りたい内容だったと思います。TOKIOや、なんだかんだいってもSMAPに嵐がそれなりにみせてくれたジャニーズ系はともかく、番組が終わった頃にはAKB関係やEXILE関係のステージは忘却のかなたにいってしまっていました(笑)。いや正直昨日の紅白は全く期待していなかったのですが楽しかったです。ただ来年は、ゴールデンボンバー以外にも素晴らしいステージをみせてくれる若手勢の登場を期待したいところなのですが。

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