アルバムレビュー(邦楽)2014年

2014年12月29日 (月)

まだまだ「実」だけど

Title:
Musician:FLOWER FLOWER

「芸能界というレールの上に乗せられて『歌わされてきた』シンガー」。YUIというミュージシャンに対して端的に言ってしまうと私はこういう印象を抱いていました。芸能界で操り人形のように歌わされるということに関して、必ずしも完全に否定できることでもありません。ただYUIというシンガーの場合、歌っている歌のイメージが、「若者の本音」というイメージづくりをしていたため、その向こうに垣間見える操り人形的な側面とのギャップが余計気になった、という側面は強く感じられました。

それだけにYUIとしての活動を休止して新たにバンドをはじめた、というニュースに関して個人的にかなりの納得感がありました。彼女が本当にやりたかったことをようやく出来るようになった、ということなのでしょう。そんな彼女がスタートさせたバンドがFLOWER FLOWERというバンド。昨年初頭からシークレットという形で活動を開始し、その後、配信限定でシングル4枚をリリース。その後、yui(名前を大文字から改名)本人のパニック障害発症などもあり活動を休止していましたが、このたび待望のニューアルバムのリリースとなりました。

そんな経緯でリリースされたアルバムなだけに、YUIとしての楽曲とどう異なるか、注目の内容だった訳ですが、その差は2曲目「神様」から明確にあらわれました。ハードロックテイストなギターのイントロからスタートするこの曲は、ハードなバンドサウンドが終始鳴り響くロックなナンバー。荒々しいそのサウンドはYUIとしての楽曲とは明確に異なる雰囲気を持っていました。

その後もノイジーなバンドサウンドの楽曲が続くのですが、その中で気が付いたのは、サウンドこそ良くも悪くも毒っ気のなかったYUI時代の作品から大きく異なるのですが、メロディーに関しては意外とYUI時代の楽曲の延長線上にあるようなポップなメロが多いことに気が付かされます。歌詞にしても自らの本音をストレートに歌うような、ただそれでいてどこか優等生的な部分が否めないような歌詞もまたYUI時代の延長線上。そういう意味ではYUIの曲をロックなサウンドでデコレートしたアルバムのように感じました。

ただ一方で後半には、へヴィーなロックだけではない様々な作風への挑戦が目立ちます。エレポップ風の「素晴らしい世界」、ノイジーなサウンドがどこかシューゲイザー風な「ひかり」、さらには最後を飾る「バイバイ」にはポストロック的な実験性も感じさせます。そういう意味ではYUI時代にできなかった様々な作風への挑戦をうかがうことが出来ます。

しかしそれだけにこのバリエーションの多さは、逆にFLOWER FLOWERとして本当にやりたいことがぼやけてしまった印象も否めませんでした。また中途半端に様々な作風に手を出した、という印象もあり、個人的にはもうちょっと吹っ切れた方がおもしろかったのに、とも思ってしまいました。ポップなメロに関しても、やはりいままでの曲とは異なりインパクト的にはいまひとつ。バンドサウンドを押し出すために、あえていままでのようなメロディーのインパクト重視の方向性をやめたのかもしれませんが。

とはいうものの、YUI時代の曲と比べてyuiが自分のやりたいことをやっている、ということは感じることが出来ますし、バンドとしてもいろいろ挑戦した結果、その方向性を定めていければおもしろいことになりそうな予感もします。そういう意味でもこのアルバムはそのタイトル通り、まだ芽が出る前の「実」のアルバムといえるかもしれません。これから芽が出て葉が伸びてどのような花を咲かせるのか、楽しみです。

評価:★★★★

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2014年12月28日 (日)

ロック入門...的な

Title:BEST
Musician:SPYAIR

アニメ「銀魂」のタイアップ曲となった「サクラミツツキ」「現状ディストラクション」のヒットで一躍ブレイクした4人組バンドの初となるベスト盤。今年5月にいきなりボーカルIKEがTwitter上で脱退宣言をするなど騒ぎがあったものの、なんとか長期の療養という事態におちつき、その活動休止期間中にリリースされたのがこのベストアルバムです。

SPYAIRというバンドのイメージは、個人的には今時のJ-POPバンド。いわばGLAYあたりからの潮流となるような「ロックを歌謡曲的に解釈したポップスバンド」というイメージ。ロックバンドという体をなしているものの基本的に楽曲の中心となるのは「歌」。バンドの演奏はあくまでも歌の添え物的な「アレンジ」になってしまっているのが「J-POPバンド」と感じる大きな要因だったりします。

例えば今回のベスト盤にしても「JUST ONE LIFE」のノイジーなギターサウンドとか、「ジャパニケーション」のハードコア風のサウンドとかロックバンドとしてのカッコいい音もそれなりに出しています。ただ一方でそんな曲にしても楽曲のバランスとしては歌を前に持ってきてバンドサウンドは後ろに持っていくような構成になっていて、ロックバンドとしてのダイナミズムという面では物足りなさは否めません。

またバンドサウンドにしてもハードコアやオルタナ、ハードロックなどの要素を取り込みつつ、それなりにバリエーションありながらもリズムがスクエアで平凡なものが多いだけに、楽曲全体として「似たような」という印象を受けてしまうのもマイナス。ここらへんも正直、ロックバンドとしての力不足は感じてしまいます。

そんな彼らを「今風」と表現しているのはそのバンドサウンドに今時さを感じるから。ハードコア路線の楽曲が多く、重低音を強調したようなへヴィーな音作りは、ここ最近の流行を感じさせるようなもの。冒頭でGLAYからの潮流を感じさせる、と書いたのですが、さしずめ2010年代のビートロックバンドという呼び方が出来るかもしれません。

・・・とまあ、かなりネガティブな物言いが続きましたがもちろん彼らについてポジティブに感じた面もいろいろあります。その一番大きな点が中高生あたりがロックのカッコよさに触れるにはちょうどいいバンドだな、という点。ポップでわかりやすいメロディーながらも一方ではロックバンドらしいハードなサウンドもきちんと聴かせてくれているため、バンドサウンドのカッコよさ、というものに触れるにはちょうどよいバンドのように感じます。ロック入門...的な、というタイトルは、わかりやすいポップバンドだけどバンドサウンドもちゃんと聴かせるSPYAIRというバンドのスタイルがまさに「ロック入門」と言えるように感じたからです。

もちろんポップなメロも彼らの大きな魅力といえば魅力・・・なのですが、個人的にはもう一歩のインパクトが欲しかったかも。確かに既にシングルやアルバムでベスト10ヒットを記録しているように、それなりのインパクトはメロディーから感じられます。ただ今後もコンスタントに人気を確保できるだけの訴求力はちょっと弱かったように感じました。今は結構タイアップに助けられている部分もあるだけに、もう一歩がんばらないと、徐々に尻つぼみになっていく危険性も・・・。

そんな訳で個人的にはこのベスト盤、最初はそれなりに楽しんでいたのですが、後半になってくると正直飽きてしまった・・・(^^;;ただ、こういう「ポピュラーミュージック」をいろいろと聴き始めたような中高生にはうってつけのバンドなようにも感じました。来年は本格的に活動を再開するのでしょうか。今後の動向に注目のバンドです。

評価:★★★

SPYAIR 過去の作品
MILLION

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2014年12月27日 (土)

踊れるロック

Title:SONGS FOR THE STARLIGHT
Musician:TRICERATOPS

TRICERATOPSというバンドには大きく3つの特徴があります。ひとつはポップなメロディーライン。ポップス指向の和田唱が書くメロディーはいい意味でわかりやすく、耳に残るメロディーが大きな特徴となっています。ふたつめはロックという音楽に忠実という点。そのものずばり「ROCK MUSIC」という曲もありますが、ギターリフ中心の3ピースというロックの基本に忠実というのも彼らの大きな特徴です。そして、このふたつめと大きくかかわる部分があるのですが、彼らの音楽は「踊れる」という点、これが3つめの特徴でしょう。

もともとロックンロールという音楽は、ダンスミュージック的な側面を強く持った音楽です。初期のロックンロールは、後のプログレやらみたいなスピーカーの前で腕を組んで聴く音楽ではなく、あくまでもみんなで楽しく踊るための音楽。TRICERATOPSの奏でるロックは初期の作品から、この「踊れる」という点が大きな特徴となっていましたが、ロックという音楽に忠実という彼らの特徴から考えると、踊れる音楽を奏でる彼らの方向性は至極当然の結果なのかもしれません。

そして約4年ぶりとなる彼らのニューアルバムは、この「踊れる」という側面をかなり強調したアルバムになっていました。ミラーボールをデザインしたジャケット写真からして、このアルバムが「踊れる」ことをテーマとしたのは明確なのですが、予想以上にダンスミュージックというものを意識したアルバムになっています。特にダンスミュージック全開なのは「GRRR!GRRR!GRRR!」から「ポスターフレーム」へと続く前半戦。いつものリズミカルなロックンロール、というよりは、むしろエレクトロテイストのディスコソングに近い雰囲気の楽曲に。基本的にスリーピースバンドとして、ギター、ベース、ドラムスのみで奏でるアンサンブルを重要視している彼らですが、今回はシンセも導入し、ロックというよりもダンスミュージックであることに重点を置いた楽曲になっていました。

もちろん基本的にポップであることはいつものトライセラと同様ですし、そんな中でもちゃんとギターリフを前に押し出していたり、バンドサウンドが奏でられているなど、ロックであることは間違いなく保っています。ただ、いつもの彼らのようにロック色全開を期待すると、ちょっと肩すかしをくらってしまう印象もあるかもしれません。

とはいえ、彼らの奏でるポップなダンスナンバーの気持ちいいこと気持ちいいこと。もちろん、和田唱の書くポップなメロディーがこの心地よさの大きな理由のひとつでしょう。また、打ち込みだけではなく、ちょうどよい具合にバンドの生音が入っている点も彼らの奏でるダンスミュージックが心地よく感じる大きな理由のように思います。トライセラ流ダンスミュージックが見事に決まったアルバムになっていたと思います。

もちろん、そんなダンスミュージックだけではなく、「僕はゴースト」のようなぶっといギターリフをゴリゴリ聴かせるハードなナンバーや、「虹色のレコード」のような、こちらもトライセラ流といえるメロウなミディアムチューンも健在。特に後半は、このようなバラエティーのある曲が並んでおり、ディスコサウンド一辺倒にならないようなバランスのとれた構成になっています。

そんな訳でダンスミュージック寄りながらもちゃんとTRICERATOPSというバンドの魅力を感じられたアルバムになっていました。なによりもライブ映えしそうな今回のアルバム。そろそろ久しぶりにトライセラのライブにも行ってみたい・・・。

評価:★★★★★

TRICERATOPS 過去の作品
SHAKE YOUR HIP!!!
MADE IN LOVE
WE ARE THE ONE
WE ARE ONE-CERTIFICATE-
LOVE IS LIVE
DINOSOUL -BEST OF TRICERATOPS-
連載・おとといミーティング TRICERATOPS“12-Bar“
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)

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2014年12月26日 (金)

レトロなガレージサウンドが心地よい

Title:路上
Musician:小島麻由美

「ドン! ドン! ドンガラガッシャン! どこか~」10秒です。
断言します。このアルバムは、10秒でユーをノックアウトする!

そんなうたい文句で紹介される小島麻由美4年8か月ぶりのオリジナルフルアルバム。7月にはミニアルバムをリリースし、久々のコジマユ節を披露した彼女でしたが、続く本作では、前作以上に「これぞ、小島麻由美!」と言えるような王道のコジマユ節を披露。待ちに待ったファンにはうれしくなってくるアルバムに仕上がっていました。

個人的には、その「うたい文句」の題材となっている、冒頭を飾る「モビー・ディック」は、「ドン! ドン! ドンガラガッシャン! 」以上に、それに続くソウルなギターリフにノックアウトされました(笑)。ソウルテイストのレトロなガレージサウンドがとても心地よいナンバーで、小島麻由美好きにはたまらない楽曲ではないでしょうか。

そんなコジマユらしいレトロポップな楽曲が並んでいるのですが、今回の作品はそんな中でも本人曰く「砂っぽい」サウンドと表現しているようです。彼女自身がそう称するのはやはり今回のアルバム、いままでの彼女の作品の中では比較的カラッとした感触に仕上がっているからではないでしょうか。特に今回のアルバムでは、ガレージサウンドを前に出したような楽曲が多く、そんな乾いたギターサウンドが、「砂っぽい」と表現される大きな理由のようにも思います。

例えば「素敵なロックンロール」などもタイトル通りのロックンロール風のガレージサウンドが耳を惹きますし、「あなたはミー・私はユー」などもとても乾いたサウンドがひとつのインパクトになっています。

また一方では、ピアノとリコーダーだけで構成された「水曜日の朝」のようにシンプルでメロディーだけを聴かせるような曲もあったり、「メリーさんの羊」のようなキュートなポップソングも非常に魅力的。懐かしさと新しさが同居したような、甘いレトロポップもアルバムの中の大きなインパクトとなっています。

そんなガレージサウンドを表に出しつつも、基本的にはレトロな雰囲気の独特の楽曲が非常に心地よい、小島麻由美の魅力がしっかりと表に出た彼女らしい作品になっています。10曲入りのフルアルバムながらも35分というあっさりとした長さもまたひとつの魅力のようにも感じます。最初から最後まで耳の離せない傑作のポップスアルバム。やはり小島麻由美というミュージシャンは素晴らしいなぁ、とあらためて感じさせてくれた作品でした。

評価:★★★★★

小島麻由美 過去の作品
a musical biography KOJIMA MAYUMI 2001-2007
ブルーロンド
渚にて

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2014年12月23日 (火)

社会派三部作完結編

Title:最近のぼくら
Musician:アナログフィッシュ

途中、ボーカル佐々木健太郎のソロを挟みながらも1年7ヶ月ぶりとなるアナログフィッシュのニューアルバム。今回のアルバムは前々作「荒野/On the Wild Side」、前作「NECLEAR」に続く社会派三部作の完結編、という位置づけだそうです。

ただ今回のアルバム、「社会派」という側面よりもまず耳を惹いたのが、そのサウンドでした。音を絞った非常にタイトなサウンドが強く耳に残ります。タイトル曲にもなっている「最近のぼくら」はベースとドラムのみという非常にシンプルかつ大胆な構成。「Nightfever」もピアノとドラムのみのシンプルながらも美しいサウンドが耳を惹きます。

その他のナンバーも、シンセを取り入れたダンスナンバーの「There She Goes(La La La)」にしろ、どこか幻想的な雰囲気を感じさせる「公平なWorld」にしろ、サウンドを最小限にまで絞り、その上で、その最小限の音のアンサンブルを聴かせる構成になっています。いわば坂本慎太郎やOGRE YOU ASSHOLEに通じるようなサウンドの世界が、実に魅力的なアルバムになっていました。

一方メロディーラインについては、若干インパクトが弱めだった点は否めないかもしれません。ただ、どちらかというとボーカルがサウンドの一部になったような楽曲も多く、そういう意味ではメロディーのインパクトの弱さは本作に関してはさほど気になりませんでした。また「Kids」「Tonight」のようなシティポップ路線のメロディアスな楽曲もちゃんと収録されており、ちゃんとメロディーラインの良さを感じさせる楽曲も収録されていました。

さて、本作は「社会派3部作」と称されているようですが、ただ「社会派」といっても歌詞に関しては、決して大上段から社会問題について論じるような内容ではありません。「Hey kids! 胸の中で抗うように歌え Riot」と歌う「Kids」のように、物申す人たちへの応援歌を歌っていたりする訳ですが、そんな中で一番印象的だったのが、アルバム「ROCK IS HARMONY」に収録された曲の再録でもある「公平なWorld」。

「僕らが寝ている間に何が起きてるか知ってる?
地球の向うに朝が来てる事知ってる?」
「このワールドは 公平なワールドかい?」

(作詞 下岡晃 「公平なワールド」より)

と、かなりストレートなメッセージソングながらも、あくまでも私たちに考えさせる内容になっているのが印象的。このアルバムの中でも特に印象に残る作品になっていました。

アナログフィッシュのアルバムは、前々作「荒野/On the Wild Side」が傑作だった反面、前作「NECLEAR」がいまひとつだったりと、アルバムによって少々バラつきがあるのは事実。そんな中、今回のアルバムは間違いなく傑作のアルバムに仕上がっていました。ただ一方で確かにメロディーラインの弱さとか、ひとつひとつのパーツが上手くはまらないと凡作になってしまいそうな要素が多いのもわかるんだよなぁ。そんな気になる側面を感じつつも、今回のアルバムは素直にお勧めしたいアルバムなのは間違いありません。彼らの手持ちのパーツが見事にはまった、アナログフィッシュの実力をきちんと詰め込むことのできたアルバムです。

評価:★★★★★

アナログフィッシュ 過去の作品
荒野/On the Wild Side
NEWCLEAR

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2014年12月22日 (月)

tofubeatsの良さがきちんと表れたデビュー作

Title:First Album
Musician:tofubeats

ももクロの楽曲のリミックスやWIREへの出演などで急激に注目を集めた平成生まれの若きトラックメイカーとして話題のtofubeats。いままで、メジャーから2枚のEPをリリースしてきましたが、フルアルバムとしてはメジャー初となる、タイトル通りの「ファーストアルバム」になります。

個人的にtofubeatsに対して抱いていたイメージというと、楽曲は卒ないというイメージのある優等生的なもの。どこか醒めた、良くも悪くもこだわりのないイメージが、「いまどきのミュージシャン」という印象を受けていました。

今回のメジャーデビューフルアルバムでは、「ディスコの神様」「Don't Stop The Music」など、いままでの2枚のEPに収録された曲も収録されています。そういうこともあり、基本的にはいままでのEPの延長線上にあるアルバム。そのため、当初の彼に対して抱いていたイメージは、基本的にはこのアルバムでも大きくは変わりありません。

ただその一方、tofubeatsというミュージシャンのプラスの側面がより表に強く出ていたような印象を受けました。まず彼の持つ「こだわりのなさ」が「音楽的な幅の広さ」というプラスの側面で強くあらわれていたように感じました。例えば「CAND\\\LAND」では序盤はユーロビート的なサウンドからスタートしつつ、エレクトロナンバーにシフトしていく構成がユニークですし、「Her Favorite」ではファンキーなサウンドを、「ひとり」ではラテン調のサウンドを取り入れたりしています。

正直言うと、今回のアルバムで、彼がこんなに音楽的な素養の深いミュージシャンだったんだ、ということをあらためて感じさせられました。音楽に対するある種のこだわりのなさが、いままでのEPではどうも音楽に対してどこか一歩引いた醒めたものを感じたのですが、今回のアルバムでは、こだわりのなさゆえの自由な幅広い音楽性というプラスの要素がより強く出ていたように感じます。

また、tofubeatsのプラスの側面としては、あくまでもポップにまとめあげる手法が上手く出ていたように感じます。特に今回のアルバムでは「framed moments」のように、エレクトロトラックでも少々複雑でユニークな作風の曲も目立ち、これがまたアルバムの中で大きなインパクトとなっていたのですが、そんな楽曲でもあくまでもポップにまとめあげてきており、彼の持つポップスセンスが今回のアルバムでは大きなプラスとなっていたように感じます。

こういう言い方をするとちょっと偉そうなのですが、tofubeatsというミュージシャンはこんないいミュージシャンだったんだ、と見直したアルバムでした。確かに彼に対してマイナスな評価をしてしまう「ひっかかる」部分は本作でも残っていたものの、それを十分におぎなうだけの魅力を感じられるアルバムだったと思います。平成生まれの若き才能のこれからが楽しみになってくるような1枚でした。

評価:★★★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様

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2014年12月21日 (日)

ヒダカトオルの次の一歩

Title:VANISHING CITY
Musician:THE STARBEMS

ご存じ、BEAT CRUSADERSのボーカリストとしてその名を知らしめたヒダカトオル。ビークル解散後はまさかのMONOBRIGHT加入し、さらに脱退。その間にもFed MUSICとユニットを結成したり、ソロ活動を行ったりと、ビークル解散後も積極的な活動を続けていましたが、そんな彼がソロでも他のバンドとのコラボでもなく自らのバンドとしてその活動を本格的に始動させたのがTHE STARBEMS。本作は、そんな注目のバンドの、2作目となるフルアルバムです。

全編英語詞となる本作は、BEAT CRUSADERSのイメージで聴くと、かなりハードコア路線にその音楽性をシフトしています。ビークル解散後は、MONOBRIGHTにしてもFed MUSICにしても、基本、ギターロック路線とはいえ、比較的ポップ寄りのバンドと組むことが多かっただけに、ビークルよりもハード寄りにシフトしたバンドをスタートさせた、ということはちょっと意外に感じる方もいるかもしれません。

ただ、よくよく聴くとデス声まで取り入れたハードコア路線の向うになっているメロディーラインはかなりポップなもの。へヴィーなサウンドが続きつつ、サビの前にそのハードなサウンドがスッと引いてポップなメロディーがあらわれるスタイルは、聴いていてとても快感さすら覚えました。

でもこのハードなバンドサウンドとポップなメロディーの対比って、よくよく考えるとBEAT CRUSADERSの魅力と基本的には一緒なんですよね。基本、全英語詞で歌詞の意味をあえてぼやかしている、という点もまたBEAT CRUSADERSと同じ方向性ですし。そういう意味では、間違いなくヒダカトオルのバンドだ、と感じますし、楽曲的にかなりハードコアにシフトしたとはいえ、BEAT CRUSADERSの延長線上にいるバンドだ、ということも感じます。

デビューアルバムとなった前作「SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD」ではビークルらしさを避けるためか、ヒダカトオルらしさを感じさせるメロディーラインは控えめ。そういう意味ではちょっと物足りなさを感じました。しかし本作では、ヒダカトオルらしいメロディーラインが目立ってきたように思います。「Sweet Nothing Blues」のノイジーで分厚いサウンドにはビークルらしい面影を感じますし、「Evening Star/Morning Star」もどこかビークルを彷彿とさせるような側面が見て取れます。

全体的にはもちろん、ビークルとは異なるTHE STARBEMSとしてのサウンドを模索していますが、そんな中流れるポップなメロディーには、やはりヒダカトオルの色は隠しきれません。ただその結果、ハードコアな路線とポップなメロディーの対比がより強まり、THE STARBEMSとしての魅力がより強まったように感じました。ハードコアなサウンドに身をゆだねながらもポップなメロディーをワクワクしながら楽しむことが出来る、聴いていてとても心地よいアルバムになっていたと思います。間違いなくヒダカトオルの新たな一歩を感じさせるアルバム。これからの彼の活動も楽しみです。

評価:★★★★★

THE STARBEMS 過去の作品
SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD

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2014年12月20日 (土)

グループ魂のこだわり

Title:グループ魂のGOLDEN BETTER~ベスト盤じゃないです、そんないいもんじゃないです、でも、ぜんぶ録り直しましたがいかがですか?~
Musician:グループ魂

タイトルは「GOLDEN BEST」ならぬ「GOLDEN BETTER」ながらも、グループ魂初のベスト盤。その副題通り、すべて録り直しを行っているらしく、楽曲によってはアレンジも大幅に変化。歌詞まで変わっている曲もあります。原曲とは異なる曲も少なくないため、素直にオリジナルバージョンを聴きたかった、という方には物足りなさも感じるかもしれません。

ただ今回、全曲録り直しを行ったというのは、いままでのアルバムをすべて持っているファンに対するサービス的な意味合いもあるのかもしれませんが、それ以上にグループ魂のこだわりのようなものを感じました。それは一種のライブ感を重視するというこだわり。過去の楽曲もあくまで新鮮な状態でファンに届けたい。もともとは劇団のメンバーによるロックバンドである彼らだからこそ、演劇と同じライブ感を音楽に対しても重視しているように感じました。

そしてその「ライブ感」という意味合いで言えば今回のアルバム、コントがほとんどなかったのもその「ライブ感」ゆえだったのではないでしょうか。コントというのはどうしてもその時期の新鮮な題材を取り上げる笑いが多く、ライブ感が重要になってきます。また、やはり常に新鮮なネタの方がより大きな笑いを得られたりします。ライブ感を重視する彼らだからこそ、過去のネタをわざわざ引っ張り出すことなく、あえてベスト盤は音楽だけにする、そんなこだわりを感じてしまいました。

さらに今回、この録り直しを通じて感じたもうひとつのこだわりがロックバンドとしてのこだわりでした。新しいアレンジでもバンドサウンドを前面に押し出したようなアレンジが多く見受けられましたし、いままでのオリジナルアルバムでは曲の合間に挟まれていたコントがほとんどなくなったことによって、よりロックバンドとしての側面が強く出たアルバムになっていました。

さて、そんなグループ魂のこだわりを強く感じられた今回のベスト盤。あらためて彼らの代表曲を聴くと、聴いていてとにかく楽しいなぁ~ということを感じます。正直、彼らのネタは毒があって、かつ癖もあるため(下ネタも多いため)、好き嫌いはわかれるかもしれません。ただ、小市民の悲哀的な感情を上手く取り込んだネタは、かなりユニークな題材とは裏腹に、どこか共感できてしまう歌詞になっています。特に「嫁とロックbetter」(原曲は「嫁とロック」)や、「Over 30 better 魂」(原曲は「Over 30 do The 魂」)などは、30代既婚者にとっては、かなり共感できてしまう内容になっているのではないでしょうか。

楽曲的には目新しいことをやっているわけではないのですが、パンクロックやハードロックなどの様式を教科書的に取り入れていて、そういう意味ではバンドとしてもある種安心して聴けるのようなしっかりした土台が出来上がっています。なにげにメジャーデビューから10年強の、そろそろベテランの域に入るバンドなのですが、そのバンドとしてのキャリアは伊達じゃないことを感じさせる演奏を聴かせてくれます。

「GOLDEN BEST」ならぬ「GOLDEN BETTER」というタイトルのつけ方も、小市民的なネタの多い彼ららしいタイトルだな、ということを感じつつ、そこらへんのネタも含めて非常に楽しめた、間違いなく「ベスト盤」でした。個人的に、彼らのワンマンライブも一度見てみたいのですが、メンバーそれぞれ、本業が忙しそうなのでなかなかライブツアーも難しいのかなぁ。

評価:★★★★★

グループ魂 過去の作品
ぱつんぱつん
1!2!3!4!
実録!グループ魂全国ツアー「客vs俺!どっちがスケベか競争して来たど!15番勝負」

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2014年12月19日 (金)

天才的SSWなのは間違いないのですが・・・

Title:BEST
Musician:清竜人

ここ最近、なにかと話題になることも多い男性シンガーソングライター清竜人。アルバム「MUSIC」では声優も参加したミュージカル風な作品が話題となり、その世界を再現したライブも一部で大きな評判を集めました。さらに最近では清竜人25と名乗るアイドルグループを結成し、その奇抜なアイディアで話題となっています。

ただし、清竜人というミュージシャンがもともとそういう奇抜さを売りにしたミュージシャンだった訳ではありません。今回、はじめてリリースされたベスト盤では彼の楽曲が発表順に並んでいます。特にこのアルバムの前半に収録されている作品については、ファルセットボイスを多用したシンプルながらも実に美しいメロディーラインが絶品。彼の代表曲の1曲「痛いよ」も歌詞を含めて素晴らしい傑作なのですが、「プリーズリピートアフターミー」も美メロという表現がピッタリ来る、素晴らしい名曲に仕上がっています。

しかしその後のアルバム「MUSIC」からの作品は、劇じみた奇抜な作風な曲が並んでおり、さらにそれに続くアルバム「KIYOSHI RYUJIN」からの作品は「ぼくはロリータ・コンプレックス」「ぼくはバイセクシャル」など、メロディーやアレンジは非常にシンプルながらも、その歌詞の題材がタイトル通りのかなり奇抜な作品となっています。

個人的に以前から、題材が奇抜だったり構成が複雑だったりする電波ソングと言われるようなものが妙に高く評価されたりするのが非常に疑問に感じていたりすることも大きな理由かもしれませんが、正直、清竜人に関してもこれらの曲に面白味を感じられませんでした。

いや正確に言うとインパクトもあって確かにおもしろいっちゃあおもしろいんですが、感想として「ふ~ん、で?」といった感じ。一度聴けば十分といった感じでしょうか。そう感じてしまう最大の理由は、こういう曲を彼が歌う意味があるの?と感じてしまう点。もし彼が実際にロリコンでバイセクシャルなら曲の題材として取り上げる意味は非常に大きいと思います。また、たとえ奇抜な題材を用いても、その向こうに普遍性あるテーマを取り上げるのならば、それはそれで興味深く感じます。でも正直言って彼の曲からはそういう普遍性は感じられません。ただ曲の題材としておもしろそうだから取り上げているだけと感じてしまいます。そういう方向性は別に否定はしませんが、個人的には共感はできません。

彼が、こういう奇抜な素材をつかわないとインパクトを出せないレベルのミュージシャンなら、こういう方向性は仕方ないといえば仕方ないのかもしれません。ただ、上でも書いたとおり、普通に書いた楽曲が、非常に絶品で間違いなくシンガーソングライターとしては「天才」と称しても間違いないくらいの実力はあるんだよなぁ・・・。でも、こういう奇抜な方向性に向かう前の「WORLD」から、いろいろなタイプの曲に手を出しすぎて、少々方向性がぼやている部分を感じただけに、こういういろいろな素材に手を出しておもしろがるというのは、彼の大きな特性なのかもしれません。個人的には「WORLD」のようなシンプルなポップソングを熱望するのですが、今後も奇抜な素材の曲を作り続けるんだろうなぁ・・・。

評価:★★★★

清竜人 過去の作品
WORLD
MUSIC
WORK

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2014年12月16日 (火)

GLAY vs ラルク

まあ、いまさらGLAYとラルクを対比させていろいろと語るのも時代遅れな感は否めないのですが・・・ただちょうど同時期にGLAYのアルバムとラルクのhydeのバンド、VAMPSのアルバムを聴いて、ある意味対照的な内容が印象的だったので、今回はまとめて紹介しようと思います。

Title:MUSIC LIFE
Musician:GLAY

まずはGLAYのニューアルバム。先行シングルにもなった「百花繚乱」が、「ヤバイ」新曲として話題になりました。ただこの曲、社会派っぽい内容になっているのですが、「反体制的なこと歌っちゃう俺たちってロックだろ?」なんていう主張が垣間見れちゃう、ヤバイというよりもイタイ感じの曲。でも、こういうベタなわかりやすさってのが、ある意味GLAYらしいっちゃあGLAYらしいんだよなぁ・・・。

今回のアルバムは、そのへヴィーなバンドサウンドが特徴的だった「百花繚乱」を除くと、実にGLAYらしさを押さえたアルバムになっていたように感じます。「Only Yesterday」は軽快なメロがいかにもJ-POPといった感じですし、「DARK RIVER」もいかにも歌謡曲テイストのメロにGLAYらしい歌謡ロック路線を感じます。

そういう意味では新しさみたいなものはないのですが、一方ではポップなメロをきちんと聴かせる、安心して聴いていられるアルバムになっていて、ここらへんの「無難さ」が決して悪い意味ではなく彼らの持ち味のように感じます。

ちなみに今回、バラードベスト「BALLADE BEST☆MELODIES」をつけた2CDヴァージョンも発売。こちらのバラードベストでは、大ヒットした「BELOVED」「However」も収録。久しぶりに聴いたのですが、大ヒットしただけあって、素直にいい曲だなぁ~と思いました。聴きなれただけ、ということもあるのかもしれませんが、やはり楽曲から勢いを感じさせます。やはり売れた曲にはそれなりに理由があるよな、ということを強く感じました。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

Title:Bloodsuckers
Musician:VAMPS

で、こちらはラルクのhydeによるサイドユニット、VAMPSのニューアルバム。ベタなJ-POPで、歌謡曲テイストも強いGLAYとは対照的に、あきらかに洋楽志向が強いアルバム。英語詞の曲が多く、日本語詞も英語の中に軽く紛れ込ませる程度。ロックサウンドを前に押し出した作風もまた、J-POPとは違うんだ、ということを意識しているように感じます。

基本的にメタル、へヴィーコア的な作風に、楽曲によってはインダストリアル的な要素も入れた作品も。VAMPSのいままでの作風を引き継ぎつつ、今回はエレクトロサウンドやニューウェーヴを取り入れた作風が特徴的になっています。

とはいいつつも、雰囲気的にはいままでのVAMPSの作品からは大きく変わりませんし、バンドサウンドを押し出しつつ、そこに流れるメロディーは意外とベタなポップ。洋楽テイストが強いサウンドながらも、普段洋楽を聴かないリスナー層でも無理なく楽しめる作品のように思われます。

また、hydeのあの歌い方をすると、どんな曲でもhydeらしい雰囲気が出ちゃうし、そういう意味ではラルクでもよくない?とも思うのですが、まあ、2人組のVAMPSの方がいろいろな意味で小回りが利くんでしょうね。ラルクよりもhydeが好き勝手やっているようにも感じられる、そんなアルバムでした。

評価:★★★★

VAMPS 過去の作品
VAMPS
BEAST
SEX BLOOD ROCK N'ROLL


ほかに聴いたアルバム

空から降る一億の星/plenty

新ドラマー中村一太加入により、再び3ピースバンドとなったplentyの新作は、7曲入りのミニアルバム。基本的にはノイジーなギターを聴かせるメロディアスなロックが主軸なのはいままでのplentyと同様。公式サイトでわざわざ歌詞をアップしている通り、その歌詞が彼らの大きな聴きどころなのですが、もうひとつ聴いていて「おっ」と思わせるような部分がないのが相変わらず。メロにしても歌詞にしてももうひとひねりあればおもしろいバンドになると思うのですが・・・。

評価:★★★★

plenty 過去の作品
拝啓。皆さま
理想的なボクの世界
plenty
this
re(construction)

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