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2014年12月29日 (月)

まだまだ「実」だけど

Title:
Musician:FLOWER FLOWER

「芸能界というレールの上に乗せられて『歌わされてきた』シンガー」。YUIというミュージシャンに対して端的に言ってしまうと私はこういう印象を抱いていました。芸能界で操り人形のように歌わされるということに関して、必ずしも完全に否定できることでもありません。ただYUIというシンガーの場合、歌っている歌のイメージが、「若者の本音」というイメージづくりをしていたため、その向こうに垣間見える操り人形的な側面とのギャップが余計気になった、という側面は強く感じられました。

それだけにYUIとしての活動を休止して新たにバンドをはじめた、というニュースに関して個人的にかなりの納得感がありました。彼女が本当にやりたかったことをようやく出来るようになった、ということなのでしょう。そんな彼女がスタートさせたバンドがFLOWER FLOWERというバンド。昨年初頭からシークレットという形で活動を開始し、その後、配信限定でシングル4枚をリリース。その後、yui(名前を大文字から改名)本人のパニック障害発症などもあり活動を休止していましたが、このたび待望のニューアルバムのリリースとなりました。

そんな経緯でリリースされたアルバムなだけに、YUIとしての楽曲とどう異なるか、注目の内容だった訳ですが、その差は2曲目「神様」から明確にあらわれました。ハードロックテイストなギターのイントロからスタートするこの曲は、ハードなバンドサウンドが終始鳴り響くロックなナンバー。荒々しいそのサウンドはYUIとしての楽曲とは明確に異なる雰囲気を持っていました。

その後もノイジーなバンドサウンドの楽曲が続くのですが、その中で気が付いたのは、サウンドこそ良くも悪くも毒っ気のなかったYUI時代の作品から大きく異なるのですが、メロディーに関しては意外とYUI時代の楽曲の延長線上にあるようなポップなメロが多いことに気が付かされます。歌詞にしても自らの本音をストレートに歌うような、ただそれでいてどこか優等生的な部分が否めないような歌詞もまたYUI時代の延長線上。そういう意味ではYUIの曲をロックなサウンドでデコレートしたアルバムのように感じました。

ただ一方で後半には、へヴィーなロックだけではない様々な作風への挑戦が目立ちます。エレポップ風の「素晴らしい世界」、ノイジーなサウンドがどこかシューゲイザー風な「ひかり」、さらには最後を飾る「バイバイ」にはポストロック的な実験性も感じさせます。そういう意味ではYUI時代にできなかった様々な作風への挑戦をうかがうことが出来ます。

しかしそれだけにこのバリエーションの多さは、逆にFLOWER FLOWERとして本当にやりたいことがぼやけてしまった印象も否めませんでした。また中途半端に様々な作風に手を出した、という印象もあり、個人的にはもうちょっと吹っ切れた方がおもしろかったのに、とも思ってしまいました。ポップなメロに関しても、やはりいままでの曲とは異なりインパクト的にはいまひとつ。バンドサウンドを押し出すために、あえていままでのようなメロディーのインパクト重視の方向性をやめたのかもしれませんが。

とはいうものの、YUI時代の曲と比べてyuiが自分のやりたいことをやっている、ということは感じることが出来ますし、バンドとしてもいろいろ挑戦した結果、その方向性を定めていければおもしろいことになりそうな予感もします。そういう意味でもこのアルバムはそのタイトル通り、まだ芽が出る前の「実」のアルバムといえるかもしれません。これから芽が出て葉が伸びてどのような花を咲かせるのか、楽しみです。

評価:★★★★

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コメント

こんばんわ。いつも拝見しております。
彼女の場合人気が出てから、1人で作詞・作曲を行う割にリリース間隔は異様に短いと思ってましたし、
そこから見える「操り人形」的側面は確かに「若者の本音」とちょっとした矛盾はあるように感じていました。

活動休止と聴いたとき最初に思ったのは、色々なしがらみに対して本人が嫌になったのかなぁと。
まぁこれは推測の域を出ないのですが・・・(笑)。色々な面で川本真琴さんに被ってるような気がします。レコード会社も同じですし。

今回のアルバムはまだバンドとしての方向性を模索している手探りな内容ではありましたが、本当に目指したい方向へ定まった時の期待感は感じさせてくれるアルバムだったと思います。

投稿: 亮 | 2014年12月30日 (火) 23時13分

>亮さん
そう、そうなんです。私も亮さんと全く同じように感じていました。いろんなしがらみが嫌になっちゃったんだろうなぁ、と。事実、インタビューでもそれらしきことはほのめかしていますしね。新作、まだ粗削りな部分は大きいし、そういう意味でまだまだな部分も大きいのですが、今後への期待は感じられます。次回作がなにげに楽しみです。

投稿: ゆういち | 2015年1月 2日 (金) 00時30分

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