社会派三部作完結編
Title:最近のぼくら
Musician:アナログフィッシュ
途中、ボーカル佐々木健太郎のソロを挟みながらも1年7ヶ月ぶりとなるアナログフィッシュのニューアルバム。今回のアルバムは前々作「荒野/On the Wild Side」、前作「NECLEAR」に続く社会派三部作の完結編、という位置づけだそうです。
ただ今回のアルバム、「社会派」という側面よりもまず耳を惹いたのが、そのサウンドでした。音を絞った非常にタイトなサウンドが強く耳に残ります。タイトル曲にもなっている「最近のぼくら」はベースとドラムのみという非常にシンプルかつ大胆な構成。「Nightfever」もピアノとドラムのみのシンプルながらも美しいサウンドが耳を惹きます。
その他のナンバーも、シンセを取り入れたダンスナンバーの「There She Goes(La La La)」にしろ、どこか幻想的な雰囲気を感じさせる「公平なWorld」にしろ、サウンドを最小限にまで絞り、その上で、その最小限の音のアンサンブルを聴かせる構成になっています。いわば坂本慎太郎やOGRE YOU ASSHOLEに通じるようなサウンドの世界が、実に魅力的なアルバムになっていました。
一方メロディーラインについては、若干インパクトが弱めだった点は否めないかもしれません。ただ、どちらかというとボーカルがサウンドの一部になったような楽曲も多く、そういう意味ではメロディーのインパクトの弱さは本作に関してはさほど気になりませんでした。また「Kids」や「Tonight」のようなシティポップ路線のメロディアスな楽曲もちゃんと収録されており、ちゃんとメロディーラインの良さを感じさせる楽曲も収録されていました。
さて、本作は「社会派3部作」と称されているようですが、ただ「社会派」といっても歌詞に関しては、決して大上段から社会問題について論じるような内容ではありません。「Hey kids! 胸の中で抗うように歌え Riot」と歌う「Kids」のように、物申す人たちへの応援歌を歌っていたりする訳ですが、そんな中で一番印象的だったのが、アルバム「ROCK IS HARMONY」に収録された曲の再録でもある「公平なWorld」。
「僕らが寝ている間に何が起きてるか知ってる?
地球の向うに朝が来てる事知ってる?」
「このワールドは 公平なワールドかい?」
(作詞 下岡晃 「公平なワールド」より)
と、かなりストレートなメッセージソングながらも、あくまでも私たちに考えさせる内容になっているのが印象的。このアルバムの中でも特に印象に残る作品になっていました。
アナログフィッシュのアルバムは、前々作「荒野/On the Wild Side」が傑作だった反面、前作「NECLEAR」がいまひとつだったりと、アルバムによって少々バラつきがあるのは事実。そんな中、今回のアルバムは間違いなく傑作のアルバムに仕上がっていました。ただ一方で確かにメロディーラインの弱さとか、ひとつひとつのパーツが上手くはまらないと凡作になってしまいそうな要素が多いのもわかるんだよなぁ。そんな気になる側面を感じつつも、今回のアルバムは素直にお勧めしたいアルバムなのは間違いありません。彼らの手持ちのパーツが見事にはまった、アナログフィッシュの実力をきちんと詰め込むことのできたアルバムです。
評価:★★★★★
アナログフィッシュ 過去の作品
荒野/On the Wild Side
NEWCLEAR
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