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2014年12月15日 (月)

あえて「渋谷系」

Title:実況録音盤!「野宮真貴、渋谷系を歌う。~Miss Maki Nomiya Sings Shibuya-kei Standards~」
Musician:野宮真貴

「渋谷系」。90年代に主に渋谷界隈の外資系CDショップで売れた一連のポップソングを称されたジャンル。90年代は、様々なジャンルを「○○系」と括ってカテゴライズされることが多く、渋谷系はそんな「○○系」の走りともいえるかもしれません。ただ、音楽性の異なるグループを、イメージだけで「渋谷系」と称したり、時として揶揄をこめて呼ばれた表現であるため、自分たちの音楽を「渋谷系」と言われることを嫌うミュージシャンも少なくありません。

今回のアルバムは、そんな渋谷系の代表格、ピチカート・ファイブのボーカリスト野宮真貴が「渋谷系スタンダード化計画」を掲げ、昨年11月に東京と大阪のBillboard Liveで行ったライブの模様を収録したライブアルバム。MCや、観客のたてる皿の鳴る音までそのまま収録された臨場感ある本作は、彼女が「渋谷系」と言われた代表的な楽曲や、その「渋谷系」のルーツとさせるような音楽をカバーしています。実際、上に書いた通り、ミュージシャンのサイドからは決してポジティブな表現ではない「渋谷系」をあえて標榜しカバーしている点に、非常に興味深いものを感じます。

特にユニークな解釈なのが、彼女が渋谷系のルーツとしてカバーしている楽曲のセレクト。一般的に洋楽からの影響を強調される渋谷系の中、ルーツとしてあえて邦楽のみを選曲しているところが興味深いところ。それも、邦楽の中で「渋谷系」への影響がよく言及される大滝詠一はじめナイヤガラ近辺ではなく、トワ・エ・モアの「或る日突然」や尾崎亜美の「マイ・ピュア・レディ」などを取り上げているのがおもしろく感じます。確かにソフトロック路線にちょっと今で言うところのJ-POP的要素を加えたような楽曲は渋谷系に通じる部分を感じます。「洋楽的」と捉えられがちな渋谷系というジャンルが、実は邦楽からの影響も強く受けていた点を、とてもおもしろく感じながら聴いていました。

一方で、肝心の「渋谷系」のカバーについては、元フリッパーズのメンバー2人の曲とピチカートとオリジナル・ラヴと、かなりストレートな選曲であまりひねりはありません・・・。個人的には、あれだけ様々なミュージシャンがいた「渋谷系」というジャンルだけに、幅広い選曲を聴きたかったのですが・・・。ただ今回は1回目ということで、あえてスタンダードな路線から選んだのでしょうか。

そんな野宮真貴によるカバーは、もともと彼女はクリアな声色で、あまり癖のない歌い方をするだけに、どんな楽曲にもピッタリとマッチしています。彼女自身、もちろん渋谷系の中心人物として「渋谷系スタンダード化計画」を推進するのにうってつけな人物ですが、それ以上に、様々なタイプのナンバーを無理なくカバーできるシンガーという意味でも、こういう渋谷系を総括するイベントにはピッタリなボーカリストと言えるかもしれません。ただ、ピチカートの曲を聴くと、やはり彼女の声はピチカートの曲が一番ピッタリ来るなぁ、と思ってしまいます。まあ、聴きなれているだけ、かもしれませんが。

そんな訳で、渋谷系という音楽の魅力にふれるにはうってつけのライブアルバム。ただ今回、野宮真貴があえて渋谷系と言われる楽曲を歌うのは、渋谷系のど真ん中にいた彼女が、あらためて自分の原点を見つめなおした、という意味が大きいのかもしれません。そういう意味でも今回の「渋谷系を歌う」というライブ企画は、彼女にとって大きな意味のある企画だったのかも。今年の11月にも第2回が開催された「渋谷系を歌う」。今後の彼女のライフワークになっていくのでしょうか?CDでも第2弾がリリースされるとうれしいのですが。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

問題集/中島みゆき

NHK連続テレビ小説「マッサン」主題歌としてヒットを記録した「麦の唄」も収録した中島みゆきのニューアルバム。新曲に、「夜会」で使用した曲を収録したアルバムで、基本的にはいつものみゆき節といった感じ。良くも悪くも目新しさはないのですが、メロにしても歌詞にしても要所要所に「はっ」とさせられるような瞬間があるのがさすがといった感じ。

評価:★★★★

中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~

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