筋少のライブがはじまる
Title:THE SHOW MUST GO ON
Musician:筋肉少女帯
「ショーは続いていく」と名付けられた筋少のニューアルバム。このタイトルが示すように、アルバム1枚がひとつのライブのような構成となっています。アルバムは「今日もライブようやっと始まる」という歌詞からはじまる「オーディエンス・イズ・ゴッド」からスタート。筋少らしい、ライブをメタ視点からおもしろおかしく切り取った内容がユニークな作品になっています。
その後の前半は、アップテンポな曲が並びライブを盛り上げつつ、中盤にはミディアムの聴かせる曲を配置。後半はまた盛り上がりそうなナンバーが続き、最後から2曲目の「気もそぞろ」では「さぁ、ショーはもうラスト」という歌詞からスタートするラストナンバーに。そうすると、最後のもうひと盛り上がりの「ニルヴァナ」はアンコールという位置づけでしょうか。そんなアルバム1枚でひとつのライブが構成される、ユニークな内容になっていました。
さて、そんなアルバムの構成もさることながら、今回の彼らのアルバムでひとつ特徴として感じたのは、「大人の視点からの歌詞」という点でした。ご存じの通り、筋肉少女帯というバンド、いやそのボーカルの大槻ケンジが書く歌詞は、若い世代の肥大した自己意識を描いた歌詞が特徴的。いまどきの表現を使えば「中二病」で、事実、昨年リリースしたセルフカバーアルバム「公式セルフカバー4半世紀」にも、そのものズバリ「中2病の神ドロシー」なんて新曲を収録したりしています。
しかし今回のアルバムに描かれているのは「中二病」というよりも大人としての立場から描いた歌詞が多いように感じます。ももクロに提供した曲のセルフカバーとしても話題となった「労働讃歌」(ちゃんと筋少らしい曲に仕上がっています)なんかも、大人だからこそ書ける歌詞でしょうし、「吉原炎上」なども、違った意味で大人だからこそ書ける歌詞と言えるでしょう。
そして個人的にこのアルバムのハイライトと言えるのは、このアルバムのちょうど中盤に「前編」「後編」として収録されている「月に一度の天使」。物語性のある歌詞に、主人公の心境描写が上手く歌に組み込まれていて見事。途中に挟まれている「愛の讃歌」も、この物語の主人公が歌っているように感じられるのがおもしろいところ。曲の中で主人公とこの「天使」の関係をあえてぼやかしているのでここでは詳しく言及しませんが(といっても、他の解釈が出来る余地のないような歌詞なのですが・・・)、これも50代間近のオーケンだからこそ書ける歌詞、と感じました。
ここ最近、例えばセカオワあたりが典型なのですが、「中2病」的な歌詞をバンドが増えています。そんな中、元祖「中2病」バンドである彼らが、単なる「中2病」的なネタだけではなく、大人としての視点からもちゃんと曲を書けるんだ、そう主張しているようにも感じました。また、単なる若者の妄想だけに終わらないその歌詞に、オーケンの実力を感じることが出来ました。
サウンド的には、メタルやハードコア路線を主軸に、ギターロックやパンクの要素を加えた、いわゆるいつもながらの内容。「ムツオさん」のようなディスコチューンなんかも挟みつつ、全体的には卒のない手堅い印象を受けました。ここは安心して聴ける、といった感じでしょうか。
そんな訳で、単なる「中2病バンド」ではないんだ、という主張を感じられる大人のアルバムに仕上がった本作。筋肉少女帯の実力を、もっといえば大槻ケンジのストーリーテラーとしての才能を感じることが出来たアルバムでした。
評価:★★★★★
筋肉少女帯 過去の作品
新人
大公式2
シーズン2
蔦からまるQの惑星
公式セルフカバー4半世紀
ほかに聴いたアルバム
うめ吉の唄う 童謡・唱歌 其の二/うめ吉
寄席などを中心に活動しつつ、様々なCDをリリースするなど積極的な活動と高い人気を誇る俗曲師うめ吉が、日本の童謡・唱歌を歌ったアルバム第2弾。「うれしいひなまつり」「かごめかごめ」「シャボン玉」など、誰もが知っている有名な童謡をうめ吉の澄んだボーカルで歌われるのですが、癖がない内容になっていて、あまりにも普通・・・。アレンジも、子供向けの「童謡集」みたいなCDで聴けそうな癖のないアレンジ。この内容なら無理に「うめ吉」で売ることないんじゃないの?なんてことすら感じてしまうアルバム。もちろん、癖のない内容なので、童謡・唱歌を純粋に楽しめるといえば楽しめるのですが・・・。
評価:★★★
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