ロック入門...的な
Title:BEST
Musician:SPYAIR
アニメ「銀魂」のタイアップ曲となった「サクラミツツキ」や「現状ディストラクション」のヒットで一躍ブレイクした4人組バンドの初となるベスト盤。今年5月にいきなりボーカルIKEがTwitter上で脱退宣言をするなど騒ぎがあったものの、なんとか長期の療養という事態におちつき、その活動休止期間中にリリースされたのがこのベストアルバムです。
SPYAIRというバンドのイメージは、個人的には今時のJ-POPバンド。いわばGLAYあたりからの潮流となるような「ロックを歌謡曲的に解釈したポップスバンド」というイメージ。ロックバンドという体をなしているものの基本的に楽曲の中心となるのは「歌」。バンドの演奏はあくまでも歌の添え物的な「アレンジ」になってしまっているのが「J-POPバンド」と感じる大きな要因だったりします。
例えば今回のベスト盤にしても「JUST ONE LIFE」のノイジーなギターサウンドとか、「ジャパニケーション」のハードコア風のサウンドとかロックバンドとしてのカッコいい音もそれなりに出しています。ただ一方でそんな曲にしても楽曲のバランスとしては歌を前に持ってきてバンドサウンドは後ろに持っていくような構成になっていて、ロックバンドとしてのダイナミズムという面では物足りなさは否めません。
またバンドサウンドにしてもハードコアやオルタナ、ハードロックなどの要素を取り込みつつ、それなりにバリエーションありながらもリズムがスクエアで平凡なものが多いだけに、楽曲全体として「似たような」という印象を受けてしまうのもマイナス。ここらへんも正直、ロックバンドとしての力不足は感じてしまいます。
そんな彼らを「今風」と表現しているのはそのバンドサウンドに今時さを感じるから。ハードコア路線の楽曲が多く、重低音を強調したようなへヴィーな音作りは、ここ最近の流行を感じさせるようなもの。冒頭でGLAYからの潮流を感じさせる、と書いたのですが、さしずめ2010年代のビートロックバンドという呼び方が出来るかもしれません。
・・・とまあ、かなりネガティブな物言いが続きましたがもちろん彼らについてポジティブに感じた面もいろいろあります。その一番大きな点が中高生あたりがロックのカッコよさに触れるにはちょうどいいバンドだな、という点。ポップでわかりやすいメロディーながらも一方ではロックバンドらしいハードなサウンドもきちんと聴かせてくれているため、バンドサウンドのカッコよさ、というものに触れるにはちょうどよいバンドのように感じます。ロック入門...的な、というタイトルは、わかりやすいポップバンドだけどバンドサウンドもちゃんと聴かせるSPYAIRというバンドのスタイルがまさに「ロック入門」と言えるように感じたからです。
もちろんポップなメロも彼らの大きな魅力といえば魅力・・・なのですが、個人的にはもう一歩のインパクトが欲しかったかも。確かに既にシングルやアルバムでベスト10ヒットを記録しているように、それなりのインパクトはメロディーから感じられます。ただ今後もコンスタントに人気を確保できるだけの訴求力はちょっと弱かったように感じました。今は結構タイアップに助けられている部分もあるだけに、もう一歩がんばらないと、徐々に尻つぼみになっていく危険性も・・・。
そんな訳で個人的にはこのベスト盤、最初はそれなりに楽しんでいたのですが、後半になってくると正直飽きてしまった・・・(^^;;ただ、こういう「ポピュラーミュージック」をいろいろと聴き始めたような中高生にはうってつけのバンドなようにも感じました。来年は本格的に活動を再開するのでしょうか。今後の動向に注目のバンドです。
評価:★★★
SPYAIR 過去の作品
MILLION
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