踊れるロック
Title:SONGS FOR THE STARLIGHT
Musician:TRICERATOPS
TRICERATOPSというバンドには大きく3つの特徴があります。ひとつはポップなメロディーライン。ポップス指向の和田唱が書くメロディーはいい意味でわかりやすく、耳に残るメロディーが大きな特徴となっています。ふたつめはロックという音楽に忠実という点。そのものずばり「ROCK MUSIC」という曲もありますが、ギターリフ中心の3ピースというロックの基本に忠実というのも彼らの大きな特徴です。そして、このふたつめと大きくかかわる部分があるのですが、彼らの音楽は「踊れる」という点、これが3つめの特徴でしょう。
もともとロックンロールという音楽は、ダンスミュージック的な側面を強く持った音楽です。初期のロックンロールは、後のプログレやらみたいなスピーカーの前で腕を組んで聴く音楽ではなく、あくまでもみんなで楽しく踊るための音楽。TRICERATOPSの奏でるロックは初期の作品から、この「踊れる」という点が大きな特徴となっていましたが、ロックという音楽に忠実という彼らの特徴から考えると、踊れる音楽を奏でる彼らの方向性は至極当然の結果なのかもしれません。
そして約4年ぶりとなる彼らのニューアルバムは、この「踊れる」という側面をかなり強調したアルバムになっていました。ミラーボールをデザインしたジャケット写真からして、このアルバムが「踊れる」ことをテーマとしたのは明確なのですが、予想以上にダンスミュージックというものを意識したアルバムになっています。特にダンスミュージック全開なのは「GRRR!GRRR!GRRR!」から「ポスターフレーム」へと続く前半戦。いつものリズミカルなロックンロール、というよりは、むしろエレクトロテイストのディスコソングに近い雰囲気の楽曲に。基本的にスリーピースバンドとして、ギター、ベース、ドラムスのみで奏でるアンサンブルを重要視している彼らですが、今回はシンセも導入し、ロックというよりもダンスミュージックであることに重点を置いた楽曲になっていました。
もちろん基本的にポップであることはいつものトライセラと同様ですし、そんな中でもちゃんとギターリフを前に押し出していたり、バンドサウンドが奏でられているなど、ロックであることは間違いなく保っています。ただ、いつもの彼らのようにロック色全開を期待すると、ちょっと肩すかしをくらってしまう印象もあるかもしれません。
とはいえ、彼らの奏でるポップなダンスナンバーの気持ちいいこと気持ちいいこと。もちろん、和田唱の書くポップなメロディーがこの心地よさの大きな理由のひとつでしょう。また、打ち込みだけではなく、ちょうどよい具合にバンドの生音が入っている点も彼らの奏でるダンスミュージックが心地よく感じる大きな理由のように思います。トライセラ流ダンスミュージックが見事に決まったアルバムになっていたと思います。
もちろん、そんなダンスミュージックだけではなく、「僕はゴースト」のようなぶっといギターリフをゴリゴリ聴かせるハードなナンバーや、「虹色のレコード」のような、こちらもトライセラ流といえるメロウなミディアムチューンも健在。特に後半は、このようなバラエティーのある曲が並んでおり、ディスコサウンド一辺倒にならないようなバランスのとれた構成になっています。
そんな訳でダンスミュージック寄りながらもちゃんとTRICERATOPSというバンドの魅力を感じられたアルバムになっていました。なによりもライブ映えしそうな今回のアルバム。そろそろ久しぶりにトライセラのライブにも行ってみたい・・・。
評価:★★★★★
TRICERATOPS 過去の作品
SHAKE YOUR HIP!!!
MADE IN LOVE
WE ARE THE ONE
WE ARE ONE-CERTIFICATE-
LOVE IS LIVE
DINOSOUL -BEST OF TRICERATOPS-
連載・おとといミーティング TRICERATOPS“12-Bar“
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)
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