グループ魂のこだわり
Title:グループ魂のGOLDEN BETTER~ベスト盤じゃないです、そんないいもんじゃないです、でも、ぜんぶ録り直しましたがいかがですか?~
Musician:グループ魂
タイトルは「GOLDEN BEST」ならぬ「GOLDEN BETTER」ながらも、グループ魂初のベスト盤。その副題通り、すべて録り直しを行っているらしく、楽曲によってはアレンジも大幅に変化。歌詞まで変わっている曲もあります。原曲とは異なる曲も少なくないため、素直にオリジナルバージョンを聴きたかった、という方には物足りなさも感じるかもしれません。
ただ今回、全曲録り直しを行ったというのは、いままでのアルバムをすべて持っているファンに対するサービス的な意味合いもあるのかもしれませんが、それ以上にグループ魂のこだわりのようなものを感じました。それは一種のライブ感を重視するというこだわり。過去の楽曲もあくまで新鮮な状態でファンに届けたい。もともとは劇団のメンバーによるロックバンドである彼らだからこそ、演劇と同じライブ感を音楽に対しても重視しているように感じました。
そしてその「ライブ感」という意味合いで言えば今回のアルバム、コントがほとんどなかったのもその「ライブ感」ゆえだったのではないでしょうか。コントというのはどうしてもその時期の新鮮な題材を取り上げる笑いが多く、ライブ感が重要になってきます。また、やはり常に新鮮なネタの方がより大きな笑いを得られたりします。ライブ感を重視する彼らだからこそ、過去のネタをわざわざ引っ張り出すことなく、あえてベスト盤は音楽だけにする、そんなこだわりを感じてしまいました。
さらに今回、この録り直しを通じて感じたもうひとつのこだわりがロックバンドとしてのこだわりでした。新しいアレンジでもバンドサウンドを前面に押し出したようなアレンジが多く見受けられましたし、いままでのオリジナルアルバムでは曲の合間に挟まれていたコントがほとんどなくなったことによって、よりロックバンドとしての側面が強く出たアルバムになっていました。
さて、そんなグループ魂のこだわりを強く感じられた今回のベスト盤。あらためて彼らの代表曲を聴くと、聴いていてとにかく楽しいなぁ~ということを感じます。正直、彼らのネタは毒があって、かつ癖もあるため(下ネタも多いため)、好き嫌いはわかれるかもしれません。ただ、小市民の悲哀的な感情を上手く取り込んだネタは、かなりユニークな題材とは裏腹に、どこか共感できてしまう歌詞になっています。特に「嫁とロックbetter」(原曲は「嫁とロック」)や、「Over 30 better 魂」(原曲は「Over 30 do The 魂」)などは、30代既婚者にとっては、かなり共感できてしまう内容になっているのではないでしょうか。
楽曲的には目新しいことをやっているわけではないのですが、パンクロックやハードロックなどの様式を教科書的に取り入れていて、そういう意味ではバンドとしてもある種安心して聴けるのようなしっかりした土台が出来上がっています。なにげにメジャーデビューから10年強の、そろそろベテランの域に入るバンドなのですが、そのバンドとしてのキャリアは伊達じゃないことを感じさせる演奏を聴かせてくれます。
「GOLDEN BEST」ならぬ「GOLDEN BETTER」というタイトルのつけ方も、小市民的なネタの多い彼ららしいタイトルだな、ということを感じつつ、そこらへんのネタも含めて非常に楽しめた、間違いなく「ベスト盤」でした。個人的に、彼らのワンマンライブも一度見てみたいのですが、メンバーそれぞれ、本業が忙しそうなのでなかなかライブツアーも難しいのかなぁ。
評価:★★★★★
グループ魂 過去の作品
ぱつんぱつん
1!2!3!4!
実録!グループ魂全国ツアー「客vs俺!どっちがスケベか競争して来たど!15番勝負」
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