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2014年12月

2014年12月31日 (水)

2014年ベストアルバム(暫定版)

早いもので今年も残すところ1時間弱。みなさま、年の瀬のこの時間、どうお過ごしでしょうか。今年最後の更新は恒例の2014年ベストアルバム(暫定版)。まだ、2014年発売のアルバムで聴いていないものがあるので、正式版は1月下旬公表予定です。

邦楽編

まずは上半期のベスト5を・・・

1位 ナマで踊ろう/坂本慎太郎
2位 Page 2:Mind Over Matter/SIMI LAB
3位 RAY/BUMP OF CHICKEN
4位 踊ってばかりの国/踊ってばかりの国
5位 SPICE/ZEPPET STORE

これに続く下期のベスト10候補は

ぞめき伍 個性派 徳島 高円寺 阿波おどり個性派
THE PIER/くるり
11/KIRINJI
Hurt/Syrup16g
アンダーグラウンド・レイルロード/ソウル・フラワー・ユニオン
Stramge Tomorrow/TAM TAM
死んだらどうなる/stillichimiya
ペーパークラフト/OGRE YOU ASSHOLE
日出処/椎名林檎
Boys!/THE BAWDIES
路上/小島麻由美

うん。上期もかなり充実した邦楽シーンでしたが、下期も下手したら上期以上に充実したアルバムが並んだ1年でした。全体的に不作だった昨年とはうってかわって、といった感じでしょうか。もっとも、ヒットシーン全体は、あいかわらず「いかにファンに複数枚の同じCDを買わせるか」という不毛な競争が続いていますが・・・。

洋楽編

1位 Days Of Abandon/The Pains of Being Pure at Heart
2位 Into The Lime/The New Mendicants
3位 Lazaretto/Jack White

これに続く下期のベスト5候補は

LOST IN ALPHAVILLE/THE RENTALS
Everything Will Be Alright in the End/WEEZER
You're Dead!/Flying Lotus

洋楽シーンは邦楽シーンとは全く逆。名盤揃いだった昨年と比べて、今年はかなり不作な印象があります。もっとも、洋楽シーンは今年話題になったアルバムで聞き逃していたアルバムがいくつもあったので、1月にそこらへんのアルバムをチェックしていこうと思うのですが・・・それでこの順位がガラッと変わればおもしろいのですが。

そんな訳で邦楽シーンと洋楽シーンの雰囲気が真逆だった今年(昨年もそうでしたが・・・)。それでもたくさんの素晴らしいアルバムに出会うことが出来ました。音楽シーン、特に日本のヒットシーンは絶望的な状況が続いて久しいのですが、音楽好きとしては少しでもそんなシーンの中で「まともな」アルバムを紹介していければと思います。

それではみなさん、よいお年を!

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2014年12月30日 (火)

2014年ライブまとめ

年の瀬も押し迫ってきました。毎年恒例のライブのまとめです。

2/7(金) TEDESCHI TRUCKS BAND ライブ(ダイアモンドホール)
2/20(木) KAN BAND LIVE TOUR 2014【Think Your Cool Kick Yell Come On!】(Zepp Nagoya)
3/15(土) 宇宙まおインストアライブ(名古屋パルコ1階イベントスペース)
4/5(土) ZIP SPRING SQUARE(鶴舞公園特設ステージ)
4/8(火) ユニコーンツアー2014 イーガジャケジョロ(名古屋国際会議場センチュリーホール)
4/12(土) Johnny Winter Japan Tour 2014(名古屋ボトムライン)
5/10(土) 栄ミナミ音楽祭'14(矢場公園特設会場) その2
5/17(土) 橋の下世界音楽祭~SOULBEAT ASIA 2014(豊田大橋下千石公園特設ステージ) その2
6/1(日) NAGOYA HAWAII FESTIVAL 2014(名古屋テレビ塔下特設会場)
6/7(土)8(日) SAKAE SP-RING2014(DIAMOND HALL、APPOLO BASE 他) その2 
6/8(日) 名古屋ブラジルフェスタ2014(久屋大通公園久屋広場)
6/22(日) Charisma.com 「DIStopping」発売記念インストアイベント(名古屋パルコ西館1Fイベントスペース)
8/2(土) ソウル・フラワー・モノノケ・サミット BON-DANCE TOUR 2014 ~Summer of Queen mosquito Tour!(名古屋TOKUZO)
8/23(土)24(日) スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド(富山県南砺市ヘリオス/フローラルパーク) その2  
9/27(土) 中津川THE SOLAR BUDOKAN 2014(中津川公園内特設ステージ) その2 
10/11(土) TOYOTA ROCK FESTIVAL 2014(豊田スタジアム/西・東イベント広場) その2
11/9(日) RHYMESTER King Of Stage Vol.11 The R Relese Tour 2014(Zepp Nagoya)
11/26(水) くるりワンマンライブツアー2014「金の玉、ふたつ」(Zepp Nagoya)
12/5(金) ソウル・フラワー・ユニオン 年末ソウルフラワー祭2014(名古屋CLUB QUATTRO)

今年もまた、いろいろな素晴らしいステージに出会うことが出来ました。その中で、今年のベスト3は・・・

3位 RHYMESTER@King Of Stage Vol.11

お金を払っていくワンマンライブでは初体験となるRHYMESTERのステージ。直前に過去のアルバムを聴きながら、あらためてRHYMESTERにはまっていく自分がいたのですが、さらにライブを見て決定的にはまってしまいました。彼らの楽曲の良さ自体もさることながら、エンターテイメント性あふれる考えられたステージで、最後の最後まで盛り上がりまくってきました。特にオーラスの「余計なお世話だバカヤロウ」は気持ちよかったなぁ。King Of Stageの異名は伊達じゃない、と実感したステージでした。

2位 JUPITER & OKWESS INTERNATIONAL@スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド

今年で3回目の参戦となった、富山県南砺市で行われるワールド・ミュージックのフェスティバル、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド。2日目に開催される野外ライブ、フローラル・ステージは、毎年アグレッシブなライブを楽しむことが出来るのですが、今年も素晴らしいステージを体験することが出来ました。ハイテンションなトライバルビートは事前に聴いたCDでも楽しむことが出来ましたが、ライブはCDで予想していた以上!気持ち良い夏の夜空の下、思いっきり踊りまくった素晴らしいステージでした。

1位 BONGEZIWE & SUKIYAKI FRIENDS@スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド

で、1位もやはりスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドのステージ。それもこのイベントのために組まれたスペシャルセッションで、南アフリカのボンゲジウエ、モザンビークのマチュメ、韓国のチャン・ジェヒョ、日本のサカキマンゴーとキウイとパパイヤ、マンゴーズを率いる廣瀬拓音の5人からなるステージ。これがそれぞれ音楽的バックボーンはバラバラで、アフリカ音楽、ラテン、レゲエ、韓国音楽、日本の音楽が、それぞれの個性を発揮しながらも見事に融合。スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドらしい、まさに世界をまたにかけた独自の音楽の世界を作り上げていました。こういう、様々な国の文化を尊重しつつ、お互いの文化の良いところを取り入れて融合するスタイルってのが、本当の意味でも「グローバリズム」って言うんだろうなぁ・・・ということも考えさせられたステージ。素晴らしかったです!

 

他にもテデスキ・トラックス、KAN、ジョニーウィンター(最後の来日になってしまいました。R.I.P.)、T字路's、OKI、井乃頭蓄音団、怒髪天、ソウルフラワー&モノノケ、マイラ・アンドーラ、スグナシ、くるりなど、素晴らしいライブをたくさん楽しめた1年でした。また、来年もたくさんの素晴らいライブが見れるといいなぁ!

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2014年12月29日 (月)

まだまだ「実」だけど

Title:
Musician:FLOWER FLOWER

「芸能界というレールの上に乗せられて『歌わされてきた』シンガー」。YUIというミュージシャンに対して端的に言ってしまうと私はこういう印象を抱いていました。芸能界で操り人形のように歌わされるということに関して、必ずしも完全に否定できることでもありません。ただYUIというシンガーの場合、歌っている歌のイメージが、「若者の本音」というイメージづくりをしていたため、その向こうに垣間見える操り人形的な側面とのギャップが余計気になった、という側面は強く感じられました。

それだけにYUIとしての活動を休止して新たにバンドをはじめた、というニュースに関して個人的にかなりの納得感がありました。彼女が本当にやりたかったことをようやく出来るようになった、ということなのでしょう。そんな彼女がスタートさせたバンドがFLOWER FLOWERというバンド。昨年初頭からシークレットという形で活動を開始し、その後、配信限定でシングル4枚をリリース。その後、yui(名前を大文字から改名)本人のパニック障害発症などもあり活動を休止していましたが、このたび待望のニューアルバムのリリースとなりました。

そんな経緯でリリースされたアルバムなだけに、YUIとしての楽曲とどう異なるか、注目の内容だった訳ですが、その差は2曲目「神様」から明確にあらわれました。ハードロックテイストなギターのイントロからスタートするこの曲は、ハードなバンドサウンドが終始鳴り響くロックなナンバー。荒々しいそのサウンドはYUIとしての楽曲とは明確に異なる雰囲気を持っていました。

その後もノイジーなバンドサウンドの楽曲が続くのですが、その中で気が付いたのは、サウンドこそ良くも悪くも毒っ気のなかったYUI時代の作品から大きく異なるのですが、メロディーに関しては意外とYUI時代の楽曲の延長線上にあるようなポップなメロが多いことに気が付かされます。歌詞にしても自らの本音をストレートに歌うような、ただそれでいてどこか優等生的な部分が否めないような歌詞もまたYUI時代の延長線上。そういう意味ではYUIの曲をロックなサウンドでデコレートしたアルバムのように感じました。

ただ一方で後半には、へヴィーなロックだけではない様々な作風への挑戦が目立ちます。エレポップ風の「素晴らしい世界」、ノイジーなサウンドがどこかシューゲイザー風な「ひかり」、さらには最後を飾る「バイバイ」にはポストロック的な実験性も感じさせます。そういう意味ではYUI時代にできなかった様々な作風への挑戦をうかがうことが出来ます。

しかしそれだけにこのバリエーションの多さは、逆にFLOWER FLOWERとして本当にやりたいことがぼやけてしまった印象も否めませんでした。また中途半端に様々な作風に手を出した、という印象もあり、個人的にはもうちょっと吹っ切れた方がおもしろかったのに、とも思ってしまいました。ポップなメロに関しても、やはりいままでの曲とは異なりインパクト的にはいまひとつ。バンドサウンドを押し出すために、あえていままでのようなメロディーのインパクト重視の方向性をやめたのかもしれませんが。

とはいうものの、YUI時代の曲と比べてyuiが自分のやりたいことをやっている、ということは感じることが出来ますし、バンドとしてもいろいろ挑戦した結果、その方向性を定めていければおもしろいことになりそうな予感もします。そういう意味でもこのアルバムはそのタイトル通り、まだ芽が出る前の「実」のアルバムといえるかもしれません。これから芽が出て葉が伸びてどのような花を咲かせるのか、楽しみです。

評価:★★★★

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2014年12月28日 (日)

ロック入門...的な

Title:BEST
Musician:SPYAIR

アニメ「銀魂」のタイアップ曲となった「サクラミツツキ」「現状ディストラクション」のヒットで一躍ブレイクした4人組バンドの初となるベスト盤。今年5月にいきなりボーカルIKEがTwitter上で脱退宣言をするなど騒ぎがあったものの、なんとか長期の療養という事態におちつき、その活動休止期間中にリリースされたのがこのベストアルバムです。

SPYAIRというバンドのイメージは、個人的には今時のJ-POPバンド。いわばGLAYあたりからの潮流となるような「ロックを歌謡曲的に解釈したポップスバンド」というイメージ。ロックバンドという体をなしているものの基本的に楽曲の中心となるのは「歌」。バンドの演奏はあくまでも歌の添え物的な「アレンジ」になってしまっているのが「J-POPバンド」と感じる大きな要因だったりします。

例えば今回のベスト盤にしても「JUST ONE LIFE」のノイジーなギターサウンドとか、「ジャパニケーション」のハードコア風のサウンドとかロックバンドとしてのカッコいい音もそれなりに出しています。ただ一方でそんな曲にしても楽曲のバランスとしては歌を前に持ってきてバンドサウンドは後ろに持っていくような構成になっていて、ロックバンドとしてのダイナミズムという面では物足りなさは否めません。

またバンドサウンドにしてもハードコアやオルタナ、ハードロックなどの要素を取り込みつつ、それなりにバリエーションありながらもリズムがスクエアで平凡なものが多いだけに、楽曲全体として「似たような」という印象を受けてしまうのもマイナス。ここらへんも正直、ロックバンドとしての力不足は感じてしまいます。

そんな彼らを「今風」と表現しているのはそのバンドサウンドに今時さを感じるから。ハードコア路線の楽曲が多く、重低音を強調したようなへヴィーな音作りは、ここ最近の流行を感じさせるようなもの。冒頭でGLAYからの潮流を感じさせる、と書いたのですが、さしずめ2010年代のビートロックバンドという呼び方が出来るかもしれません。

・・・とまあ、かなりネガティブな物言いが続きましたがもちろん彼らについてポジティブに感じた面もいろいろあります。その一番大きな点が中高生あたりがロックのカッコよさに触れるにはちょうどいいバンドだな、という点。ポップでわかりやすいメロディーながらも一方ではロックバンドらしいハードなサウンドもきちんと聴かせてくれているため、バンドサウンドのカッコよさ、というものに触れるにはちょうどよいバンドのように感じます。ロック入門...的な、というタイトルは、わかりやすいポップバンドだけどバンドサウンドもちゃんと聴かせるSPYAIRというバンドのスタイルがまさに「ロック入門」と言えるように感じたからです。

もちろんポップなメロも彼らの大きな魅力といえば魅力・・・なのですが、個人的にはもう一歩のインパクトが欲しかったかも。確かに既にシングルやアルバムでベスト10ヒットを記録しているように、それなりのインパクトはメロディーから感じられます。ただ今後もコンスタントに人気を確保できるだけの訴求力はちょっと弱かったように感じました。今は結構タイアップに助けられている部分もあるだけに、もう一歩がんばらないと、徐々に尻つぼみになっていく危険性も・・・。

そんな訳で個人的にはこのベスト盤、最初はそれなりに楽しんでいたのですが、後半になってくると正直飽きてしまった・・・(^^;;ただ、こういう「ポピュラーミュージック」をいろいろと聴き始めたような中高生にはうってつけのバンドなようにも感じました。来年は本格的に活動を再開するのでしょうか。今後の動向に注目のバンドです。

評価:★★★

SPYAIR 過去の作品
MILLION

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2014年12月27日 (土)

踊れるロック

Title:SONGS FOR THE STARLIGHT
Musician:TRICERATOPS

TRICERATOPSというバンドには大きく3つの特徴があります。ひとつはポップなメロディーライン。ポップス指向の和田唱が書くメロディーはいい意味でわかりやすく、耳に残るメロディーが大きな特徴となっています。ふたつめはロックという音楽に忠実という点。そのものずばり「ROCK MUSIC」という曲もありますが、ギターリフ中心の3ピースというロックの基本に忠実というのも彼らの大きな特徴です。そして、このふたつめと大きくかかわる部分があるのですが、彼らの音楽は「踊れる」という点、これが3つめの特徴でしょう。

もともとロックンロールという音楽は、ダンスミュージック的な側面を強く持った音楽です。初期のロックンロールは、後のプログレやらみたいなスピーカーの前で腕を組んで聴く音楽ではなく、あくまでもみんなで楽しく踊るための音楽。TRICERATOPSの奏でるロックは初期の作品から、この「踊れる」という点が大きな特徴となっていましたが、ロックという音楽に忠実という彼らの特徴から考えると、踊れる音楽を奏でる彼らの方向性は至極当然の結果なのかもしれません。

そして約4年ぶりとなる彼らのニューアルバムは、この「踊れる」という側面をかなり強調したアルバムになっていました。ミラーボールをデザインしたジャケット写真からして、このアルバムが「踊れる」ことをテーマとしたのは明確なのですが、予想以上にダンスミュージックというものを意識したアルバムになっています。特にダンスミュージック全開なのは「GRRR!GRRR!GRRR!」から「ポスターフレーム」へと続く前半戦。いつものリズミカルなロックンロール、というよりは、むしろエレクトロテイストのディスコソングに近い雰囲気の楽曲に。基本的にスリーピースバンドとして、ギター、ベース、ドラムスのみで奏でるアンサンブルを重要視している彼らですが、今回はシンセも導入し、ロックというよりもダンスミュージックであることに重点を置いた楽曲になっていました。

もちろん基本的にポップであることはいつものトライセラと同様ですし、そんな中でもちゃんとギターリフを前に押し出していたり、バンドサウンドが奏でられているなど、ロックであることは間違いなく保っています。ただ、いつもの彼らのようにロック色全開を期待すると、ちょっと肩すかしをくらってしまう印象もあるかもしれません。

とはいえ、彼らの奏でるポップなダンスナンバーの気持ちいいこと気持ちいいこと。もちろん、和田唱の書くポップなメロディーがこの心地よさの大きな理由のひとつでしょう。また、打ち込みだけではなく、ちょうどよい具合にバンドの生音が入っている点も彼らの奏でるダンスミュージックが心地よく感じる大きな理由のように思います。トライセラ流ダンスミュージックが見事に決まったアルバムになっていたと思います。

もちろん、そんなダンスミュージックだけではなく、「僕はゴースト」のようなぶっといギターリフをゴリゴリ聴かせるハードなナンバーや、「虹色のレコード」のような、こちらもトライセラ流といえるメロウなミディアムチューンも健在。特に後半は、このようなバラエティーのある曲が並んでおり、ディスコサウンド一辺倒にならないようなバランスのとれた構成になっています。

そんな訳でダンスミュージック寄りながらもちゃんとTRICERATOPSというバンドの魅力を感じられたアルバムになっていました。なによりもライブ映えしそうな今回のアルバム。そろそろ久しぶりにトライセラのライブにも行ってみたい・・・。

評価:★★★★★

TRICERATOPS 過去の作品
SHAKE YOUR HIP!!!
MADE IN LOVE
WE ARE THE ONE
WE ARE ONE-CERTIFICATE-
LOVE IS LIVE
DINOSOUL -BEST OF TRICERATOPS-
連載・おとといミーティング TRICERATOPS“12-Bar“
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)

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2014年12月26日 (金)

レトロなガレージサウンドが心地よい

Title:路上
Musician:小島麻由美

「ドン! ドン! ドンガラガッシャン! どこか~」10秒です。
断言します。このアルバムは、10秒でユーをノックアウトする!

そんなうたい文句で紹介される小島麻由美4年8か月ぶりのオリジナルフルアルバム。7月にはミニアルバムをリリースし、久々のコジマユ節を披露した彼女でしたが、続く本作では、前作以上に「これぞ、小島麻由美!」と言えるような王道のコジマユ節を披露。待ちに待ったファンにはうれしくなってくるアルバムに仕上がっていました。

個人的には、その「うたい文句」の題材となっている、冒頭を飾る「モビー・ディック」は、「ドン! ドン! ドンガラガッシャン! 」以上に、それに続くソウルなギターリフにノックアウトされました(笑)。ソウルテイストのレトロなガレージサウンドがとても心地よいナンバーで、小島麻由美好きにはたまらない楽曲ではないでしょうか。

そんなコジマユらしいレトロポップな楽曲が並んでいるのですが、今回の作品はそんな中でも本人曰く「砂っぽい」サウンドと表現しているようです。彼女自身がそう称するのはやはり今回のアルバム、いままでの彼女の作品の中では比較的カラッとした感触に仕上がっているからではないでしょうか。特に今回のアルバムでは、ガレージサウンドを前に出したような楽曲が多く、そんな乾いたギターサウンドが、「砂っぽい」と表現される大きな理由のようにも思います。

例えば「素敵なロックンロール」などもタイトル通りのロックンロール風のガレージサウンドが耳を惹きますし、「あなたはミー・私はユー」などもとても乾いたサウンドがひとつのインパクトになっています。

また一方では、ピアノとリコーダーだけで構成された「水曜日の朝」のようにシンプルでメロディーだけを聴かせるような曲もあったり、「メリーさんの羊」のようなキュートなポップソングも非常に魅力的。懐かしさと新しさが同居したような、甘いレトロポップもアルバムの中の大きなインパクトとなっています。

そんなガレージサウンドを表に出しつつも、基本的にはレトロな雰囲気の独特の楽曲が非常に心地よい、小島麻由美の魅力がしっかりと表に出た彼女らしい作品になっています。10曲入りのフルアルバムながらも35分というあっさりとした長さもまたひとつの魅力のようにも感じます。最初から最後まで耳の離せない傑作のポップスアルバム。やはり小島麻由美というミュージシャンは素晴らしいなぁ、とあらためて感じさせてくれた作品でした。

評価:★★★★★

小島麻由美 過去の作品
a musical biography KOJIMA MAYUMI 2001-2007
ブルーロンド
渚にて

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2014年12月25日 (木)

こちらも韓流で締めくくり

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今年最後のアルバムチャートはシングルチャートと同様、韓流勢が1位を獲得し、今年を締めくくっています。

1位獲得は東方神起「WITH」。約9ヵ月ぶり、今年2作目となる新作です。初動売上は23万3千枚。前作「TREE」は初動売上22万4千枚(1位)で、前々作「TIME」の24万3千枚は下回りましたが、根強い人気を見せつけました。ここ数作、23万枚前後で初動売上が安定しています。

続く2位初登場はゴスペラーズ「G20」。デビュー20周年を記念したオールタイムベストアルバム。ファン投票によって選ばれた2枚組全32曲からなるベストアルバムになっています。初動売上は1万8千枚。直近作はオリジナルアルバム「The Gospellers Now」で、こちらの初動1万6千枚(6位)よりは若干ですがアップしています。ちなみにちょうど10年前、10周年の時もベスト盤「G10」をリリース。最高位は同じ2位でしたが、初動売上は19万4千枚と10分の1以下に。まあ、10年前とはCD市場全体の規模が異なりますが・・・。

3位はJUJUのカバーアルバム「RequetsII」がなんと先週から同順位をキープ。売上枚数こそ2万4千枚から1万5千枚とダウンしていますが、根強い人気からロングヒットを続けています。これから年末年始とアルバム売上点数が極端に減る時期になりますので、ロングヒットはさらに続きそうな予感が。

続いて4位以下の初登場。4位にはなんとふなっしー「うき うき ふなっしー♪~ふなっしー公式アルバム 梨汁ブシャー!~」がランクイン。もうすっかりおなじみの船橋市非公認ゆるきゃらふなっしーによるアルバム。以前、デビューシングル「ふな ふな ふなっしー♪」がベスト10ヒットを記録しましたが、それに続きアルバムもベスト10入りしてきています。ちなみに初動売上は1万2千枚で、直近の2ndシングル「ぶぎ ぶぎ ふなっしー♪~ふなっしー公式テーマソング第二弾~」の1万3千枚(12位)よりダウンながらも、この手のキャラソンはシングルの売上が先行するだけに、アルバム単位でこれだけ売れたというのは少々驚きも。

6位初登場は木村カエラ「MIETA」。今年、ミュージシャンデビュー10周年を迎える彼女の2年ぶりとなる新作です。ただ初動売上は1万1千枚と前作「Sync」の2万1千枚と半減以下。前作でも前々作「8EIGHT8」の4万2千枚から初動売上が半減しており、かなり厳しい結果となっています。

初登場はもう1枚。8位に「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Cool jewelries! 002」がランクイン。ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」に登場する架空のアイドルの曲を、楽曲のタイプ別にまとめたアルバムだそうです。初動売上は9千枚。ちなみに同シリーズの前作「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Cool Jewlries! 001」は初動1万枚(11位)でしたので、こちらからは若干の減少となっています。

今週のアルバムチャートは以上。次回のチャートは来年1月5日公表予定ということなので、おそらく、1月5日または6日に更新する予定です。

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2014年12月24日 (水)

今年最後のチャートは韓流が席巻

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

早いもので今年最後の更新となるシングルチャート。最後を締めくくるのは、なんとすっかりブームも終わってしまったはずの韓流勢が1位2位を独占しました。

まず1位は男性アイドルグループSUPER JUNIOR「MAMACITA-AYAYA-」。今年は派生グループSUPER JUNIOR DONGHAE & EUNHYUKとしての活動はあったものの、SUPER JUNIORとしてのシングルは約1年ぶり。久々のシングルが見事1位を飾りました。ただし初動売上6万5千枚は前作「Blue World」の6万8千枚(3位)からダウンです。

そしてそれに続く2位も同じく韓流の男性アイドルグループU-KISS「Sweetie」。よくありがちな典型的なウィンターバラード。2位は自己最高位で初のベスト3ヒット。初動売上3万2千枚も前作「LOVE ON U」の2万枚(7位)よりアップ。ただしMUSIC CARD6種というドーピング仕様となっております(苦笑)。

韓流アイドルはもう1組。同じく男性アイドルグループF.CUZ「もう一度だけ~Remind~」が7位にランクイン。こちらも冬の季節らしいバラードナンバー。初動売上1万2千枚は前作「Feeling My Soul」から横バイ(9位)で、これが2作目のベスト10ヒットとなります。

ブームはすっかり去って行ったのですが、一定層の固定ファンは残ったみたいで、そういう意味では韓流もある程度「定着した」という見方もできるかもしれません。ただ最近のシングルチャートはすっかり「アイドルグループのプロモーションの場」以外の意味がなくなりつつありますので、シングルチャートでのヒットだけで、どれだけシーンとして定着した、とみるかはかなり疑問はありますが・・・。

さてベスト3に戻ります。3位には女性アイドルグループpredia「美しき孤独たち」がランクイン。ベスト10入りは2作目にして初のベスト3入り。ただし初動売上1万9千枚は前作「壊れた愛の果てに」の2万2千枚(6位)よりダウン。

もういっちょ女性アイドルグループ。5位にavexグループによる女性アイドルグループGEM「Star Shine Story」がランクイン。初動売上1万8千枚は前作「Do You Believe?」の1万1千枚(9位)よりアップ。ただしMUSIC CARD13種という大ドーピング付です。

女性アイドル勢はもう1枚。6位に元AKB48板野友美「COME PARTY!」がランクイン。初動売上は1万5千枚で前作「little」の3万4千枚(3位)から半減以下という結果に。ここ数作7万2千枚→4万4千枚→3万4千枚→1万5千枚と順調に下落を続けています。

今週、初登場はあと2枚。9位にAimer「broKen NIGHT」がランクイン。Aimerはアニメソングなどを中心に活躍する女性シンガー。本作はゲーム「Fate/hollow ataraxia」オープニング・テーマ。初動売上9千枚は前作「StarRingChild EP」の1万8千枚(3位)からダウン。前作は機動戦士ガンダムのタイアップによる影響から売上を伸ばしていました。タイアップにより売上が上下する傾向にある模様です。

最後10位にはロックバンドBACK-ON「セルリアン」が入ってきています。テレビ東京系アニメ「ガンダムビルドファイターズトライ」オープニング・テーマと今回はこちらはガンダムタイアップ。初動売上7千枚は前作「Departure」のベスト100圏外から大きくアップし初のベスト10ヒット。完全にタイアップのみによるヒットになっています。

今回のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2014年12月23日 (火)

社会派三部作完結編

Title:最近のぼくら
Musician:アナログフィッシュ

途中、ボーカル佐々木健太郎のソロを挟みながらも1年7ヶ月ぶりとなるアナログフィッシュのニューアルバム。今回のアルバムは前々作「荒野/On the Wild Side」、前作「NECLEAR」に続く社会派三部作の完結編、という位置づけだそうです。

ただ今回のアルバム、「社会派」という側面よりもまず耳を惹いたのが、そのサウンドでした。音を絞った非常にタイトなサウンドが強く耳に残ります。タイトル曲にもなっている「最近のぼくら」はベースとドラムのみという非常にシンプルかつ大胆な構成。「Nightfever」もピアノとドラムのみのシンプルながらも美しいサウンドが耳を惹きます。

その他のナンバーも、シンセを取り入れたダンスナンバーの「There She Goes(La La La)」にしろ、どこか幻想的な雰囲気を感じさせる「公平なWorld」にしろ、サウンドを最小限にまで絞り、その上で、その最小限の音のアンサンブルを聴かせる構成になっています。いわば坂本慎太郎やOGRE YOU ASSHOLEに通じるようなサウンドの世界が、実に魅力的なアルバムになっていました。

一方メロディーラインについては、若干インパクトが弱めだった点は否めないかもしれません。ただ、どちらかというとボーカルがサウンドの一部になったような楽曲も多く、そういう意味ではメロディーのインパクトの弱さは本作に関してはさほど気になりませんでした。また「Kids」「Tonight」のようなシティポップ路線のメロディアスな楽曲もちゃんと収録されており、ちゃんとメロディーラインの良さを感じさせる楽曲も収録されていました。

さて、本作は「社会派3部作」と称されているようですが、ただ「社会派」といっても歌詞に関しては、決して大上段から社会問題について論じるような内容ではありません。「Hey kids! 胸の中で抗うように歌え Riot」と歌う「Kids」のように、物申す人たちへの応援歌を歌っていたりする訳ですが、そんな中で一番印象的だったのが、アルバム「ROCK IS HARMONY」に収録された曲の再録でもある「公平なWorld」。

「僕らが寝ている間に何が起きてるか知ってる?
地球の向うに朝が来てる事知ってる?」
「このワールドは 公平なワールドかい?」

(作詞 下岡晃 「公平なワールド」より)

と、かなりストレートなメッセージソングながらも、あくまでも私たちに考えさせる内容になっているのが印象的。このアルバムの中でも特に印象に残る作品になっていました。

アナログフィッシュのアルバムは、前々作「荒野/On the Wild Side」が傑作だった反面、前作「NECLEAR」がいまひとつだったりと、アルバムによって少々バラつきがあるのは事実。そんな中、今回のアルバムは間違いなく傑作のアルバムに仕上がっていました。ただ一方で確かにメロディーラインの弱さとか、ひとつひとつのパーツが上手くはまらないと凡作になってしまいそうな要素が多いのもわかるんだよなぁ。そんな気になる側面を感じつつも、今回のアルバムは素直にお勧めしたいアルバムなのは間違いありません。彼らの手持ちのパーツが見事にはまった、アナログフィッシュの実力をきちんと詰め込むことのできたアルバムです。

評価:★★★★★

アナログフィッシュ 過去の作品
荒野/On the Wild Side
NEWCLEAR

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2014年12月22日 (月)

tofubeatsの良さがきちんと表れたデビュー作

Title:First Album
Musician:tofubeats

ももクロの楽曲のリミックスやWIREへの出演などで急激に注目を集めた平成生まれの若きトラックメイカーとして話題のtofubeats。いままで、メジャーから2枚のEPをリリースしてきましたが、フルアルバムとしてはメジャー初となる、タイトル通りの「ファーストアルバム」になります。

個人的にtofubeatsに対して抱いていたイメージというと、楽曲は卒ないというイメージのある優等生的なもの。どこか醒めた、良くも悪くもこだわりのないイメージが、「いまどきのミュージシャン」という印象を受けていました。

今回のメジャーデビューフルアルバムでは、「ディスコの神様」「Don't Stop The Music」など、いままでの2枚のEPに収録された曲も収録されています。そういうこともあり、基本的にはいままでのEPの延長線上にあるアルバム。そのため、当初の彼に対して抱いていたイメージは、基本的にはこのアルバムでも大きくは変わりありません。

ただその一方、tofubeatsというミュージシャンのプラスの側面がより表に強く出ていたような印象を受けました。まず彼の持つ「こだわりのなさ」が「音楽的な幅の広さ」というプラスの側面で強くあらわれていたように感じました。例えば「CAND\\\LAND」では序盤はユーロビート的なサウンドからスタートしつつ、エレクトロナンバーにシフトしていく構成がユニークですし、「Her Favorite」ではファンキーなサウンドを、「ひとり」ではラテン調のサウンドを取り入れたりしています。

正直言うと、今回のアルバムで、彼がこんなに音楽的な素養の深いミュージシャンだったんだ、ということをあらためて感じさせられました。音楽に対するある種のこだわりのなさが、いままでのEPではどうも音楽に対してどこか一歩引いた醒めたものを感じたのですが、今回のアルバムでは、こだわりのなさゆえの自由な幅広い音楽性というプラスの要素がより強く出ていたように感じます。

また、tofubeatsのプラスの側面としては、あくまでもポップにまとめあげる手法が上手く出ていたように感じます。特に今回のアルバムでは「framed moments」のように、エレクトロトラックでも少々複雑でユニークな作風の曲も目立ち、これがまたアルバムの中で大きなインパクトとなっていたのですが、そんな楽曲でもあくまでもポップにまとめあげてきており、彼の持つポップスセンスが今回のアルバムでは大きなプラスとなっていたように感じます。

こういう言い方をするとちょっと偉そうなのですが、tofubeatsというミュージシャンはこんないいミュージシャンだったんだ、と見直したアルバムでした。確かに彼に対してマイナスな評価をしてしまう「ひっかかる」部分は本作でも残っていたものの、それを十分におぎなうだけの魅力を感じられるアルバムだったと思います。平成生まれの若き才能のこれからが楽しみになってくるような1枚でした。

評価:★★★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様

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2014年12月21日 (日)

ヒダカトオルの次の一歩

Title:VANISHING CITY
Musician:THE STARBEMS

ご存じ、BEAT CRUSADERSのボーカリストとしてその名を知らしめたヒダカトオル。ビークル解散後はまさかのMONOBRIGHT加入し、さらに脱退。その間にもFed MUSICとユニットを結成したり、ソロ活動を行ったりと、ビークル解散後も積極的な活動を続けていましたが、そんな彼がソロでも他のバンドとのコラボでもなく自らのバンドとしてその活動を本格的に始動させたのがTHE STARBEMS。本作は、そんな注目のバンドの、2作目となるフルアルバムです。

全編英語詞となる本作は、BEAT CRUSADERSのイメージで聴くと、かなりハードコア路線にその音楽性をシフトしています。ビークル解散後は、MONOBRIGHTにしてもFed MUSICにしても、基本、ギターロック路線とはいえ、比較的ポップ寄りのバンドと組むことが多かっただけに、ビークルよりもハード寄りにシフトしたバンドをスタートさせた、ということはちょっと意外に感じる方もいるかもしれません。

ただ、よくよく聴くとデス声まで取り入れたハードコア路線の向うになっているメロディーラインはかなりポップなもの。へヴィーなサウンドが続きつつ、サビの前にそのハードなサウンドがスッと引いてポップなメロディーがあらわれるスタイルは、聴いていてとても快感さすら覚えました。

でもこのハードなバンドサウンドとポップなメロディーの対比って、よくよく考えるとBEAT CRUSADERSの魅力と基本的には一緒なんですよね。基本、全英語詞で歌詞の意味をあえてぼやかしている、という点もまたBEAT CRUSADERSと同じ方向性ですし。そういう意味では、間違いなくヒダカトオルのバンドだ、と感じますし、楽曲的にかなりハードコアにシフトしたとはいえ、BEAT CRUSADERSの延長線上にいるバンドだ、ということも感じます。

デビューアルバムとなった前作「SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD」ではビークルらしさを避けるためか、ヒダカトオルらしさを感じさせるメロディーラインは控えめ。そういう意味ではちょっと物足りなさを感じました。しかし本作では、ヒダカトオルらしいメロディーラインが目立ってきたように思います。「Sweet Nothing Blues」のノイジーで分厚いサウンドにはビークルらしい面影を感じますし、「Evening Star/Morning Star」もどこかビークルを彷彿とさせるような側面が見て取れます。

全体的にはもちろん、ビークルとは異なるTHE STARBEMSとしてのサウンドを模索していますが、そんな中流れるポップなメロディーには、やはりヒダカトオルの色は隠しきれません。ただその結果、ハードコアな路線とポップなメロディーの対比がより強まり、THE STARBEMSとしての魅力がより強まったように感じました。ハードコアなサウンドに身をゆだねながらもポップなメロディーをワクワクしながら楽しむことが出来る、聴いていてとても心地よいアルバムになっていたと思います。間違いなくヒダカトオルの新たな一歩を感じさせるアルバム。これからの彼の活動も楽しみです。

評価:★★★★★

THE STARBEMS 過去の作品
SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD

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2014年12月20日 (土)

グループ魂のこだわり

Title:グループ魂のGOLDEN BETTER~ベスト盤じゃないです、そんないいもんじゃないです、でも、ぜんぶ録り直しましたがいかがですか?~
Musician:グループ魂

タイトルは「GOLDEN BEST」ならぬ「GOLDEN BETTER」ながらも、グループ魂初のベスト盤。その副題通り、すべて録り直しを行っているらしく、楽曲によってはアレンジも大幅に変化。歌詞まで変わっている曲もあります。原曲とは異なる曲も少なくないため、素直にオリジナルバージョンを聴きたかった、という方には物足りなさも感じるかもしれません。

ただ今回、全曲録り直しを行ったというのは、いままでのアルバムをすべて持っているファンに対するサービス的な意味合いもあるのかもしれませんが、それ以上にグループ魂のこだわりのようなものを感じました。それは一種のライブ感を重視するというこだわり。過去の楽曲もあくまで新鮮な状態でファンに届けたい。もともとは劇団のメンバーによるロックバンドである彼らだからこそ、演劇と同じライブ感を音楽に対しても重視しているように感じました。

そしてその「ライブ感」という意味合いで言えば今回のアルバム、コントがほとんどなかったのもその「ライブ感」ゆえだったのではないでしょうか。コントというのはどうしてもその時期の新鮮な題材を取り上げる笑いが多く、ライブ感が重要になってきます。また、やはり常に新鮮なネタの方がより大きな笑いを得られたりします。ライブ感を重視する彼らだからこそ、過去のネタをわざわざ引っ張り出すことなく、あえてベスト盤は音楽だけにする、そんなこだわりを感じてしまいました。

さらに今回、この録り直しを通じて感じたもうひとつのこだわりがロックバンドとしてのこだわりでした。新しいアレンジでもバンドサウンドを前面に押し出したようなアレンジが多く見受けられましたし、いままでのオリジナルアルバムでは曲の合間に挟まれていたコントがほとんどなくなったことによって、よりロックバンドとしての側面が強く出たアルバムになっていました。

さて、そんなグループ魂のこだわりを強く感じられた今回のベスト盤。あらためて彼らの代表曲を聴くと、聴いていてとにかく楽しいなぁ~ということを感じます。正直、彼らのネタは毒があって、かつ癖もあるため(下ネタも多いため)、好き嫌いはわかれるかもしれません。ただ、小市民の悲哀的な感情を上手く取り込んだネタは、かなりユニークな題材とは裏腹に、どこか共感できてしまう歌詞になっています。特に「嫁とロックbetter」(原曲は「嫁とロック」)や、「Over 30 better 魂」(原曲は「Over 30 do The 魂」)などは、30代既婚者にとっては、かなり共感できてしまう内容になっているのではないでしょうか。

楽曲的には目新しいことをやっているわけではないのですが、パンクロックやハードロックなどの様式を教科書的に取り入れていて、そういう意味ではバンドとしてもある種安心して聴けるのようなしっかりした土台が出来上がっています。なにげにメジャーデビューから10年強の、そろそろベテランの域に入るバンドなのですが、そのバンドとしてのキャリアは伊達じゃないことを感じさせる演奏を聴かせてくれます。

「GOLDEN BEST」ならぬ「GOLDEN BETTER」というタイトルのつけ方も、小市民的なネタの多い彼ららしいタイトルだな、ということを感じつつ、そこらへんのネタも含めて非常に楽しめた、間違いなく「ベスト盤」でした。個人的に、彼らのワンマンライブも一度見てみたいのですが、メンバーそれぞれ、本業が忙しそうなのでなかなかライブツアーも難しいのかなぁ。

評価:★★★★★

グループ魂 過去の作品
ぱつんぱつん
1!2!3!4!
実録!グループ魂全国ツアー「客vs俺!どっちがスケベか競争して来たど!15番勝負」

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2014年12月19日 (金)

天才的SSWなのは間違いないのですが・・・

Title:BEST
Musician:清竜人

ここ最近、なにかと話題になることも多い男性シンガーソングライター清竜人。アルバム「MUSIC」では声優も参加したミュージカル風な作品が話題となり、その世界を再現したライブも一部で大きな評判を集めました。さらに最近では清竜人25と名乗るアイドルグループを結成し、その奇抜なアイディアで話題となっています。

ただし、清竜人というミュージシャンがもともとそういう奇抜さを売りにしたミュージシャンだった訳ではありません。今回、はじめてリリースされたベスト盤では彼の楽曲が発表順に並んでいます。特にこのアルバムの前半に収録されている作品については、ファルセットボイスを多用したシンプルながらも実に美しいメロディーラインが絶品。彼の代表曲の1曲「痛いよ」も歌詞を含めて素晴らしい傑作なのですが、「プリーズリピートアフターミー」も美メロという表現がピッタリ来る、素晴らしい名曲に仕上がっています。

しかしその後のアルバム「MUSIC」からの作品は、劇じみた奇抜な作風な曲が並んでおり、さらにそれに続くアルバム「KIYOSHI RYUJIN」からの作品は「ぼくはロリータ・コンプレックス」「ぼくはバイセクシャル」など、メロディーやアレンジは非常にシンプルながらも、その歌詞の題材がタイトル通りのかなり奇抜な作品となっています。

個人的に以前から、題材が奇抜だったり構成が複雑だったりする電波ソングと言われるようなものが妙に高く評価されたりするのが非常に疑問に感じていたりすることも大きな理由かもしれませんが、正直、清竜人に関してもこれらの曲に面白味を感じられませんでした。

いや正確に言うとインパクトもあって確かにおもしろいっちゃあおもしろいんですが、感想として「ふ~ん、で?」といった感じ。一度聴けば十分といった感じでしょうか。そう感じてしまう最大の理由は、こういう曲を彼が歌う意味があるの?と感じてしまう点。もし彼が実際にロリコンでバイセクシャルなら曲の題材として取り上げる意味は非常に大きいと思います。また、たとえ奇抜な題材を用いても、その向こうに普遍性あるテーマを取り上げるのならば、それはそれで興味深く感じます。でも正直言って彼の曲からはそういう普遍性は感じられません。ただ曲の題材としておもしろそうだから取り上げているだけと感じてしまいます。そういう方向性は別に否定はしませんが、個人的には共感はできません。

彼が、こういう奇抜な素材をつかわないとインパクトを出せないレベルのミュージシャンなら、こういう方向性は仕方ないといえば仕方ないのかもしれません。ただ、上でも書いたとおり、普通に書いた楽曲が、非常に絶品で間違いなくシンガーソングライターとしては「天才」と称しても間違いないくらいの実力はあるんだよなぁ・・・。でも、こういう奇抜な方向性に向かう前の「WORLD」から、いろいろなタイプの曲に手を出しすぎて、少々方向性がぼやている部分を感じただけに、こういういろいろな素材に手を出しておもしろがるというのは、彼の大きな特性なのかもしれません。個人的には「WORLD」のようなシンプルなポップソングを熱望するのですが、今後も奇抜な素材の曲を作り続けるんだろうなぁ・・・。

評価:★★★★

清竜人 過去の作品
WORLD
MUSIC
WORK

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2014年12月18日 (木)

まさかの新作がランクイン

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

まず1位は手堅くジャニーズ系。Kinki Kids「M Album」が1位にランクインしてきています。相変わらずアルファベット1文字+「Album」というタイトル名。初動売上13万3千枚は前作「L Album」の13万6千枚から若干のダウン。ここ数作、19万枚→17万枚→15万枚→13万6千枚とほぼ2万人づつファンが離れていっていましたが、とりあえずは下げ止まった感じです。

さて今週の2位には「まさかの新作」と言えるアルバムがランクイン。それがhideのニューアルバム「子 ギャル」。ご存じ1998年に急逝したX JAPANのギタリスト。ラストアルバム「Ja,Zoo」に収録予定だったものの、デモ音源のみ残して急逝してしまったため収録されなかった幻の楽曲。そのデモ音源をボーカロイドの技術を用いて見事ボーカルを再現させ、今回のリリースとなりました。わざわざ未完成のデモ音源を引っ張り出したり、いつまでもアイテムをリリースし続けることに対しては賛否両論ありそうですが。ちなみに2曲以降は彼の代表曲が収録されたベスト盤的内容になっています。

初動売上は3万4千枚。前作はファン投票によるベストアルバム「We Love hide ~The Best in The World~」で初動売上は1万2千枚(7位)なので、こちらよりは見事アップ。なんだかんだいっても新曲目当てのファンが多かったようで、死後15年以上が経過しても、根強い人気を保ち続けていることを感じます。

3位には、先週4位のJUJU「RequestII」がワンランクアップで2週目にして見事ベスト3入り。売上は3万4千枚から2万4千枚にダウンさせているものの、ロングヒットをうかがう根強い人気を見せつけた結果となっています。

続いて4位以下の初登場ですが、4位には海外でも一部で高い人気を誇るヴィジュアル系バンドDIR EN GREY「ARCHE」がランクイン。初動売上2万3千枚は前作「THE UNRAVELING」の2万1千枚(3位)から若干のアップとなりました。

5位には「宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-」が入ってきました。タイトル通り、宇多田ヒカルの楽曲を13組のミュージシャンがカバーしたアルバム。椎名林檎のような、同じ時期にブレイクしたミュージシャンや、井上陽水のようなベテラン勢、他にもハナレグミ、KIRINJIなどなどが参加。さらにはなんと浜崎あゆみも参加。宇多田ヒカルと浜崎あゆみといえば2001年に、宇多田ヒカルのアルバム「Distance」の発売日に、浜崎あゆみがベスト盤の「A BEST」をぶつけてきて話題となった、ある意味因縁の組み合わせ。それだけに浜崎あゆみが参加してきたのは意外でした。これで倉木麻衣が参加していればもっとおもしろかったのに(苦笑)。

7位にはやなぎなぎ「ポリオミノ」がランクイン。やなぎなぎは主にゲームソングやアニメソングを中心に歌う女性シンガーソングライター。初動売上1万3千枚は、デビュー作でシングルアルバム通じて初のベスト10ヒットとなった前作「エウアル」の2万枚(4位)からダウン。

初登場最後は9位に女性アイドルグループPASSPO☆「TRACKS」がランクインです。メジャーデビュー以降の全シングルに代表曲を収録したベスト盤。シングルでは何度かベスト10入りしていますが、アルバムでのベスト10入りはこれがはじめて。シングルはベスト10入りしてくるけどアルバムの売上はいまひとつというのは、ここ最近のアイドルの典型例。初動売上1万1千枚。直近作は、昨年12月にリリースしたオリジナルアルバム「JEJEJEJET!!」で、こちらの初動6千枚(19位)よりアップ。ただし、シングルの直近作「向日葵」の初動2万4千枚の半分以下という、かなり寂しい結果となっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2014年12月17日 (水)

また女性アイドルグループが・・・

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

先週は男性アイドルグループが目立ったチャートでしたが、今週は再び女性アイドルグループの目立つチャートとなりました。

まず1位にはSKE48「12月のカンガルー」。初動38万6千枚は前作「不器用太陽」の32万4千枚(1位)からアップ。ここ最近、51万枚→44万1千枚→39万7千枚→32万4千枚と下落傾向が続いていましたが、ここに来て回復。ただし、前々作「未来とは?」の水準には至りませんでした。

他にも女性アイドルグループが目立ったのですが、先々週のAKB48の時と同様、SKE48のおこぼれ狙いでしょうか?4位初登場スターダストプロモーション所属のアイドルグループチームしゃちほこ「シャンプーハット」はそんな感じだなぁ。同じ名古屋在住のメンバーで構成されているし。初動売上2万6千枚は前作「いいくらし」の3万4千枚(2位)からダウン。

さらに5位にはpalet「SNOW DISTANCE」、8位に東京女子流「Say long goodbye」という2組の女性アイドルグループがそれぞれランクイン。paletは初動2万5千枚で、前作「VICTORY」の2万1千枚(9位)からアップで、5位は自己最高位。東京女子流は初動1万2千枚で、前作「十字架」の8千枚(11位)よりアップで、前々作「Partition Love」以来、2作ぶりのベスト10入りとなりました。

さて、ベスト3に戻ります。2位初登場は三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「O.R.I.O.N.」。K-POP風のアップテンポなエレクトロポップ。初動売上19万枚は前作「C.O.S.M.O.S.~秋桜~」の12万枚(3位)よりアップ。EXILE系御用達のサマンサタバサジャパンリミテッド「サマンサティアラ ジュエリー」CMソング。これで4作連続、英単語の合間に「.」がつくスタイルのタイトル。こういうタイトルのつけ方がカッコいいと思うあたり、ちょっとイタタな感じが。

3位には、主にアニソンを中心に活動している女性ボーカリストLiSA「シルシ」がランクイン。本作はアニメ「ソードアート・オンラインII マザーズ・ロザリオ編」エンディング・テーマ。伸びやかなバラードナンバーは王道J-POPながらも典型的なアニソンっぽさは薄め。初動売上2万9千枚は前作「BRiGHT FLiGHT」の1万枚(9位)よりアップで初のベスト3入り。前作はノンタイアップでのリリースだったので、タイアップ効果が大きい模様。

以下、4位からの初登場曲ですが、6位にVIXX「Error」がランクイン。韓流の男性アイドルグループで、日本でのデビュー作でいきなりのベスト10ヒット。楽曲はいかにもK-POPらしいエレクトロポップで特にどうってことない感じなのですが、いまだに一定層の熱狂的なファンがいるんですよね、韓流は。どこにいるんだろうって感じですが。

初登場最後はヴィジュアル系。7位にシド「White Tree」が入ってきています。タイトルから想像できる通り、クリスマス向けのバラードナンバー。初動1万6千枚は、前作「ENAMEL」の2万5千枚(7位)よりダウン。発売形態が4種から3種に減少したのと、前作はアニメタイアップがついていた影響で初動売上を伸ばしていた点が、今回の減少の大きな要因の模様。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2014年12月16日 (火)

GLAY vs ラルク

まあ、いまさらGLAYとラルクを対比させていろいろと語るのも時代遅れな感は否めないのですが・・・ただちょうど同時期にGLAYのアルバムとラルクのhydeのバンド、VAMPSのアルバムを聴いて、ある意味対照的な内容が印象的だったので、今回はまとめて紹介しようと思います。

Title:MUSIC LIFE
Musician:GLAY

まずはGLAYのニューアルバム。先行シングルにもなった「百花繚乱」が、「ヤバイ」新曲として話題になりました。ただこの曲、社会派っぽい内容になっているのですが、「反体制的なこと歌っちゃう俺たちってロックだろ?」なんていう主張が垣間見れちゃう、ヤバイというよりもイタイ感じの曲。でも、こういうベタなわかりやすさってのが、ある意味GLAYらしいっちゃあGLAYらしいんだよなぁ・・・。

今回のアルバムは、そのへヴィーなバンドサウンドが特徴的だった「百花繚乱」を除くと、実にGLAYらしさを押さえたアルバムになっていたように感じます。「Only Yesterday」は軽快なメロがいかにもJ-POPといった感じですし、「DARK RIVER」もいかにも歌謡曲テイストのメロにGLAYらしい歌謡ロック路線を感じます。

そういう意味では新しさみたいなものはないのですが、一方ではポップなメロをきちんと聴かせる、安心して聴いていられるアルバムになっていて、ここらへんの「無難さ」が決して悪い意味ではなく彼らの持ち味のように感じます。

ちなみに今回、バラードベスト「BALLADE BEST☆MELODIES」をつけた2CDヴァージョンも発売。こちらのバラードベストでは、大ヒットした「BELOVED」「However」も収録。久しぶりに聴いたのですが、大ヒットしただけあって、素直にいい曲だなぁ~と思いました。聴きなれただけ、ということもあるのかもしれませんが、やはり楽曲から勢いを感じさせます。やはり売れた曲にはそれなりに理由があるよな、ということを強く感じました。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

Title:Bloodsuckers
Musician:VAMPS

で、こちらはラルクのhydeによるサイドユニット、VAMPSのニューアルバム。ベタなJ-POPで、歌謡曲テイストも強いGLAYとは対照的に、あきらかに洋楽志向が強いアルバム。英語詞の曲が多く、日本語詞も英語の中に軽く紛れ込ませる程度。ロックサウンドを前に押し出した作風もまた、J-POPとは違うんだ、ということを意識しているように感じます。

基本的にメタル、へヴィーコア的な作風に、楽曲によってはインダストリアル的な要素も入れた作品も。VAMPSのいままでの作風を引き継ぎつつ、今回はエレクトロサウンドやニューウェーヴを取り入れた作風が特徴的になっています。

とはいいつつも、雰囲気的にはいままでのVAMPSの作品からは大きく変わりませんし、バンドサウンドを押し出しつつ、そこに流れるメロディーは意外とベタなポップ。洋楽テイストが強いサウンドながらも、普段洋楽を聴かないリスナー層でも無理なく楽しめる作品のように思われます。

また、hydeのあの歌い方をすると、どんな曲でもhydeらしい雰囲気が出ちゃうし、そういう意味ではラルクでもよくない?とも思うのですが、まあ、2人組のVAMPSの方がいろいろな意味で小回りが利くんでしょうね。ラルクよりもhydeが好き勝手やっているようにも感じられる、そんなアルバムでした。

評価:★★★★

VAMPS 過去の作品
VAMPS
BEAST
SEX BLOOD ROCK N'ROLL


ほかに聴いたアルバム

空から降る一億の星/plenty

新ドラマー中村一太加入により、再び3ピースバンドとなったplentyの新作は、7曲入りのミニアルバム。基本的にはノイジーなギターを聴かせるメロディアスなロックが主軸なのはいままでのplentyと同様。公式サイトでわざわざ歌詞をアップしている通り、その歌詞が彼らの大きな聴きどころなのですが、もうひとつ聴いていて「おっ」と思わせるような部分がないのが相変わらず。メロにしても歌詞にしてももうひとひねりあればおもしろいバンドになると思うのですが・・・。

評価:★★★★

plenty 過去の作品
拝啓。皆さま
理想的なボクの世界
plenty
this
re(construction)

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2014年12月15日 (月)

あえて「渋谷系」

Title:実況録音盤!「野宮真貴、渋谷系を歌う。~Miss Maki Nomiya Sings Shibuya-kei Standards~」
Musician:野宮真貴

「渋谷系」。90年代に主に渋谷界隈の外資系CDショップで売れた一連のポップソングを称されたジャンル。90年代は、様々なジャンルを「○○系」と括ってカテゴライズされることが多く、渋谷系はそんな「○○系」の走りともいえるかもしれません。ただ、音楽性の異なるグループを、イメージだけで「渋谷系」と称したり、時として揶揄をこめて呼ばれた表現であるため、自分たちの音楽を「渋谷系」と言われることを嫌うミュージシャンも少なくありません。

今回のアルバムは、そんな渋谷系の代表格、ピチカート・ファイブのボーカリスト野宮真貴が「渋谷系スタンダード化計画」を掲げ、昨年11月に東京と大阪のBillboard Liveで行ったライブの模様を収録したライブアルバム。MCや、観客のたてる皿の鳴る音までそのまま収録された臨場感ある本作は、彼女が「渋谷系」と言われた代表的な楽曲や、その「渋谷系」のルーツとさせるような音楽をカバーしています。実際、上に書いた通り、ミュージシャンのサイドからは決してポジティブな表現ではない「渋谷系」をあえて標榜しカバーしている点に、非常に興味深いものを感じます。

特にユニークな解釈なのが、彼女が渋谷系のルーツとしてカバーしている楽曲のセレクト。一般的に洋楽からの影響を強調される渋谷系の中、ルーツとしてあえて邦楽のみを選曲しているところが興味深いところ。それも、邦楽の中で「渋谷系」への影響がよく言及される大滝詠一はじめナイヤガラ近辺ではなく、トワ・エ・モアの「或る日突然」や尾崎亜美の「マイ・ピュア・レディ」などを取り上げているのがおもしろく感じます。確かにソフトロック路線にちょっと今で言うところのJ-POP的要素を加えたような楽曲は渋谷系に通じる部分を感じます。「洋楽的」と捉えられがちな渋谷系というジャンルが、実は邦楽からの影響も強く受けていた点を、とてもおもしろく感じながら聴いていました。

一方で、肝心の「渋谷系」のカバーについては、元フリッパーズのメンバー2人の曲とピチカートとオリジナル・ラヴと、かなりストレートな選曲であまりひねりはありません・・・。個人的には、あれだけ様々なミュージシャンがいた「渋谷系」というジャンルだけに、幅広い選曲を聴きたかったのですが・・・。ただ今回は1回目ということで、あえてスタンダードな路線から選んだのでしょうか。

そんな野宮真貴によるカバーは、もともと彼女はクリアな声色で、あまり癖のない歌い方をするだけに、どんな楽曲にもピッタリとマッチしています。彼女自身、もちろん渋谷系の中心人物として「渋谷系スタンダード化計画」を推進するのにうってつけな人物ですが、それ以上に、様々なタイプのナンバーを無理なくカバーできるシンガーという意味でも、こういう渋谷系を総括するイベントにはピッタリなボーカリストと言えるかもしれません。ただ、ピチカートの曲を聴くと、やはり彼女の声はピチカートの曲が一番ピッタリ来るなぁ、と思ってしまいます。まあ、聴きなれているだけ、かもしれませんが。

そんな訳で、渋谷系という音楽の魅力にふれるにはうってつけのライブアルバム。ただ今回、野宮真貴があえて渋谷系と言われる楽曲を歌うのは、渋谷系のど真ん中にいた彼女が、あらためて自分の原点を見つめなおした、という意味が大きいのかもしれません。そういう意味でも今回の「渋谷系を歌う」というライブ企画は、彼女にとって大きな意味のある企画だったのかも。今年の11月にも第2回が開催された「渋谷系を歌う」。今後の彼女のライフワークになっていくのでしょうか?CDでも第2弾がリリースされるとうれしいのですが。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

問題集/中島みゆき

NHK連続テレビ小説「マッサン」主題歌としてヒットを記録した「麦の唄」も収録した中島みゆきのニューアルバム。新曲に、「夜会」で使用した曲を収録したアルバムで、基本的にはいつものみゆき節といった感じ。良くも悪くも目新しさはないのですが、メロにしても歌詞にしても要所要所に「はっ」とさせられるような瞬間があるのがさすがといった感じ。

評価:★★★★

中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~

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2014年12月14日 (日)

原点回帰の次は

Title:Boys!
Musician:THE BAWIDES

今年、カバーアルバム「GOING BACK HOME」をリリースしたTHE BAWDIES。もともとルーツ志向が強く、かつ、そのルーツに対して深い造詣を持っている彼らなだけに、ちゃんとルーツミュージックの素晴らしさを踏まえたうえで、とても愛情あふれるカバーアルバムに仕上がっていました。また、このアルバムは結成10年を迎えた彼らにとって、あらためて原点を振り返る意味でも重要な作品となっていました。

そんな彼らの約2年ぶりとなるニューアルバムは、いわばそんな彼らにとっての原点を踏まえた上で、THE BAWDIESとしての新たな一歩を模索したようなアルバムになっていました。そんな新たな一歩を感じられるのは、昨年リリースされたシングルで本作にも収録された「THE SEVEN SEAS」。いままでの彼らの曲とは異なるミディアムテンポなナンバーでロックンロール色は薄め。むしろちょっとフォーキーな雰囲気すら感じられる、彼らにとっては少々異色なナンバーになっていました(もっとも本作がリリースされたのは、カバーアルバムがリリースされる前なのですが)。

この「THE SEVEN SEAS」がアルバムの中で意外とピッタリはまっているという構成も上手くいっているのですが、なによりもアルバム全体として比較的バリエーションが多かったのも、この異色のシングルがピッタリはまった大きな理由のように思います。「LOVER BOY」ではTAXMANがボーカルを担い、独特のボーカルが特徴となっているROYとは異なる爽快感が楽曲から流れていますし、「KICKS!」ではツインボーカルを取り入れてきている、様々なバリエーションが楽曲から感じられます。

ただ、とはいうものの、アルバムの基本路線はいままでとほとんど変わりありません。シンプルなバンドサウンドとポップなメロディーが楽しい、ルーツ志向のロックンロールナンバー。「NO WAY」はシンプルなロックンロールながらもゴリゴリのギターリフがワクワクしてきますし、最後を締めくくる「TWISTIN' ANNIE」はROYのシャウトがカッコイイ、ソウルフルなナンバー。THE BAWDIESとしては基本的に「いつも通り」であるので、そこらへんはご安心を(笑)。

まあこの「いつも通り」というのは、言い方を変えると「大いなるマンネリ」に近い部分があるのは事実。でも個人的に彼らみたいなシンプルなロックンロールバンドは、こういう「大いなるマンネリ」でいいんじゃないのかなぁ、ということを強く感じます。マンネリといってもサウンドもメロもシンプルなだけに聴いていて飽きは来ませんし、なによりも彼らの原点がシンプルなロックンロールである以上、変にそこの軸足を思いっきり変えるような曲を展開した方が、むしろかなり不自然になってしまいそう。そういう意味では、それなりに新基軸を入れつつも、基本的にはいままでどおりという彼らのスタンスは大正解なように思います。

もちろんそんな本作も、THE BAWDIESらしさはしっかり決まった、シンプルでルーツ志向のご機嫌なロックンロールアルバムに仕上がっているのは間違いありません。聴いていて、ロックンロールの楽しさを存分に感じられることができる傑作。まだまだこれからも、彼らのカッコイイロックンロールナンバーが楽しめそうです。

評価:★★★★★

THE BAWDIES 過去の作品
THIS IS MY STORY
THERE'S NO TURNING BACK
LIVE THE LIFE I LOVE
1-2-3
GOING BACK HOME

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2014年12月13日 (土)

バリエーションの多さが仇に

Title:Behind The Scene
Musician:ストレイテナー

途中にベスト盤やらアコースティックアルバムやらのリリースがあったためちょっと意外に感じたのですが、フルアルバムとしては約3年2ヶ月ぶりとなるストレイテナーの新作。オリコンのアルバムチャートでは4位を記録。相変わらずの安定した人気を見せてくれています。

ただ、昨年リリースされたベスト盤を聴いて感じたのですが、正直言って、デビュー当初と比べると、最近のストレイテナーは少々勢いが落ちています。一番目立ったのはメロディーのインパクトで、デビュー当初のポップでインパクトのあるメロディーに比べると、ここ最近の曲はバンドサウンドだったり勢いで(言葉は悪いのですが)少々ごまかしている感のある曲が目立つように思いました。

しかし、今回のアルバムを聴き始めると、そんなここ最近の彼らに対して感じていた不満点が一気に解消されるような曲が並んでいました。それが1曲目の「Asshole New World」「The World Record」。とにかく勢いあるサウンドにポップなメロがインパクトあって、カッコよく、聴いていて気持ちいいロックな曲が続いており、お、ストレイテナー、やっぱカッコいいじゃん、と思うような序盤になっていました。

ところが残念ながらその後に続くメロディーを聴かせるミディアムテンポの曲が少々いまひとつ。確かにそれなりに聴かせるメロディーは書いているのですが、序盤のアップテンポな曲と比べると、これといったインパクトがありません。ちょっとダレながらアルバムを聴いていると、中盤の「Super Magical Illusion」は、これまたインパクトあるパンクロックの曲でカッコイイナンバーにグッと惹きつけられ、続く「Breaking Ground」も同じくアップテンポでインパクトあるナンバー。盛り返してきたか?と思いきや、その後もミディアムテンポなナンバーが続き、やはり少々ダレてきてしまいました。

ここ最近のストレイテナーの曲の印象としては、英語詞の曲はカッコいいけど、日本語詞の曲はイマイチ、という印象を抱いていました。ただ、今回のアルバムでは日本語詞の「Super Magical Illusion」も十分カッコよく、そういう意味では、日本語詞の曲がいまひとつというここ最近のストレイテナーの問題点は解消していたように思います。

しかし、その代わり、今回のアルバム、あきらかにミディアムテンポのメロディアスな曲の出来がイマイチ・・・。正直、メロディーにいまひとつ魅力がなく、アルバムを聴いていてダレてきてしまいます。基本的に彼ら、ギターロックバンドですが、その中でいろいろと楽曲にバリエーションをつけてきています。ただ、このバリエーションの多さが、今回のアルバムでは仇となったように感じます。

アップテンポでパンキッシュなギターロックのナンバーをメインにつけ、その他のナンバーはその合間に1、2曲くらい、という構成ならおそらく文句なしの傑作になっていたんだろうなぁ、と思います。そういう意味では惜しいアルバムなのかもしれませんが・・・。最初聴き始めた時は「これは!」と思っただけに、ちょっと残念に感じた1枚でした。

評価:★★★★

ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND
Resplendent

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2014年12月12日 (金)

今年のライブ締め

ソウル・フラワー・ユニオン 年末ソウルフラワー祭2014

会場 名古屋CLUB QUATTRO 日時 2014年12月5日(金)19:00~

Sfu2014

ここ数年、1年に1度はソウルフラワーユニオンのライブに足を運んでいるのですが、今年も行ってきました!毎年恒例年末のソウルフラワー祭に!会場はクラブクワトロ。キャパ500の会場で、直前に買ったチケットの整理番号が131番。ということで予想はしていたのですが、正直言ってガラガラ・・・(^^;;うーん、素晴らしいライブを見せてくれるバンドなのになぁ。(上の写真は毎年恒例。会場の壁にかけられた大きなフラッグ)

さて、やがて時間をまわりライブがスタート。この日は内海洋子がライブに参加。メンバー5名+内海洋子の6名でのステージとなりました(・・・っていつの間に上村美保子って脱退したの???)。ライブは「キセキの渚」からスタート。いきなりハイテンションなスタートは彼ららしいところ。さらに続いては内海洋子がボーカルを取り、序盤からいきなりのメスカリン・ドライブのナンバー「笑いっぱなしの島」へと続き、さらに「死ぬまで生きろ!」とアップテンポなナンバーが続いていきます。

続くMCでは、Small Facesのイアン・マクレガン、ボビー・キーズ、そして菅原文太の名前をあげて、「最近、子供のころのヒーローがどんどんと亡くなっていく」というコメントが。それに続いてイアン・マクレガンに捧げるSmall Facesのカバーを。その後は「宇宙フーテン・スイング」「踊れ!踊らされる前に」「うたは自由をめざす!」と続きましたが、いずれもちょっとタビーな雰囲気を取り入れいるなど、ミディアムでグルーヴィーなアレンジになっていたのが印象的でした。

その後は最新アルバム「アンダーグラウンド・レイルロード」から「地下鉄道の少年」「燃やされた詩集」とミディアムテンポのナンバーが続きます。「ダンスは機会均等」「ホライズン・マーチ」とアップテンポなナンバーで再びテンションはあがりますが、全体的にはゆっくりめの楽曲を聴かせる構成が主軸になっているように感じました。

さらにまた亡くなったボビー・キーズに捧げるストーンズのカバーと、菅原文太の楽曲のカバーを挟んで、こちらも最新アルバムから「グラウンド・ゼロ」「風狂番外地」。こちらはアルバム以上にへヴィーなグルーヴ感が印象的で、やはりソウルフラワーの曲はライブで聴いてこそだなぁ、ということをあらためて感じました。

「アップセッティング・リズム」「残響の横丁」と最新アルバムからのナンバーが続き、中盤で再び盛り上がったのは「月光ファンファーレ」。ドラムスの伊藤孝喜の腕がつって演奏が一度止まるというちょっとしたハプニングがありつつも、会場のテンションは一気に上がりました。

ここからライブは終盤へ。続く最新アルバムの中で一番盛り上がりそうな「バクテリア・ロック」へ。内海洋子が歌詞の書かれたプラカードを捧げて、会場は大合唱となります。さらにちょっと懐かしいナンバー「雑種天国」、さらにもっと懐かしいメスカリン・ドライブの「ジミジミ」と続き、会場はちょっと懐かしさに浸る雰囲気に。その後もおそらくメスカリン・ドライブの曲と思われる曲を披露するのですが、タイトルがわかりません(^^;;そして本編ラストは「海行かば山行かば踊るかばね」で盛り上がりつつ、一度ステージは幕を下ろします。

もちろんその後は盛大なアンコールに。再びメンバーが登場すると、中川敬は「声が出ないからみんなで歌ってくれ」というMCに続いて、「満月の夕」へ。来年の1月で阪神淡路大震災から20年になるそうで、私も思いっきりこの曲を歌いながら、20年前のあの日のことを思い出していました・・・。その後は「荒れ地にて」へ続き、ここで今月2日に誕生日を迎えたばかりの奥野真哉へのバースディケーキが登場。ケーキに刺さったろうそくの火を吹き消して、会場は祝福の雰囲気に。そしてラストは「風の市」。もちろんハイテンションのまま、アンコールは終了します。

そして予想通り、会場は明るくならず、ダブルアンコールへ。最後は内海洋子ボーカルで、おそらくメスカリン・ドライブの曲なのですが、こちらもタイトルはわからず。ただ、ガレージパンクのナンバーで、ソウルフラワーの曲とは違ったカッコよさがあって、初耳の曲ながらテンションがあがりました。

そんな訳でダブルアンコール込みでピッタリ3時間のステージ。相変わらずの濃いライブで十分楽しめました。ただ、全体的にはこの日は、比較的ミディアムテンポなナンバーが多い落ち着いた構成。また昔の曲やメスカリン・ドライブの曲も多く、個人的には「エエジャナイカ」とか「ブルー・マンデー・パレード」とか、もっとハイテンションな曲も聴きたかったなぁ、というのと、最新アルバムから「マレビトこぞりて」や「必要なことはカラダに書いてある」など、もっとライブ映えしそうな曲も収録されていただけに、こちらも聴きたかったなぁ、ということも感じてしまいました。

会場はちょっと客数が寂しく、ガラガラに近かったのは非常に残念。本当に、これだけいいステージを見せてくれるバンドなのになぁ。ただその一方、観客数は少なくても、妙に子供の数が多く、また車いすのお客さんや、老若男女、実にバラエティーに富んだ客層が楽しんでいることが印象的。こういう観客層の「多様性」がソウルフラワーの大きな魅力に感じます。(ただ正直、幼稚園にも満たない子供をこの爆音の環境につれてくるのはちょっと疑問。イヤーマフくらいつかってあげないと、子供の耳に悪いと思うんですが・・・)

今年のライブ収めとなったこの日のステージ。やはりソウルフラワーは楽しいなぁ、という気持ちになり、会場を離れました。本当に、もうちょっとお客さんが入るといいんですけどね。客層的に社会人がメインだから平日だと厳しいのかなぁ。また来年の彼らのライブにも足を是非運びたいのですが。

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2014年12月11日 (木)

新譜ラッシュ

今週のアルバムチャート

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今週のアルバムチャートは新譜ラッシュ。1位から7位まで新譜がズラリと並んでいます。

まず1位はEXILE ATSUSHIのソロアルバム「Love Ballads」が獲得。タイトル通りのバラードアルバム。ソロのみの単独リリースでは2作目にして初の1位獲得。ただし、初動売上は8万1千枚で、前作「MUSIC」の17万3千枚(2位)から半減以下というかなり厳しい結果となりました。

2位には大滝詠一「Best Always」がランクイン。昨年12月に急逝した彼の、初となるオールタイムベストアルバム。はっぴいえんど時代の曲や、ナイヤガラトライアングル名義での曲まで収録されています。初動売上は3万7千枚。大滝詠一名義での直近のアルバムは、今年3月にリリースされた「EACH TIME 30th Edition」(84年リリースのアルバムの30周年記念盤)で、初動1万枚(12位)。

3位にはガールズバンドSCANDAL「HELLO WORLD」が入ってきました。初動売上3万5千枚は前作「STANDARD」の4万3千枚(3位)よりダウン。

4位以下も新譜が並んでいます。4位には女性シンガーJUJU「RequestII」が初登場。大ヒットを記録した「Request」に続くカバーアルバム。今回は、竹内まりや「シングル・アゲイン」や古内東子「誰より好きなのに」など12曲をカバー。その12曲すべてに小林武史や冨田恵一など別々のプロデューサーがついています。初動売上は3万4千枚。直近のオリジナルアルバム「DOOR」の3万9千枚(2位)よりダウン。カバーアルバムの前作「Request」の12万8千枚(1位)より大きくダウンしてしまいました。

5位にはタッキー&翼「Two Tops Treasure」がランクイン。初動売上は2万3千枚で、前作「TEN」の4万9千枚(5位)から急落。ここ最近、7万3千枚→1万9千枚→4万9千枚→2万3千枚と、アルバム毎に大きく変動を続けているのが気になるところ。

6位初登場はスキマスイッチ「スキマスイッチ」。3年2ヶ月ぶり、久しぶりとなるオリジナルアルバム。初動売上2万2千枚は、前作「musium」の2万3千枚(7位)から微減。久々のアルバムとしてはかなり健闘した印象。特に、前作以前は17万3千枚→4万6千枚→2万3千枚と急落傾向が続いていただけに、本作でようやく下げ止まった感が。

7位にはスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ超特急「RING」がランクイン。シングルは既に8枚もリリースしていますが、アルバムはこれが初。初動売上1万8千枚は、シングルとしての直近作「Star Gear」の3万7千枚から半減しているあたり、アイドルらしい売上傾向になっています。

ここまでズラリと新譜が並んだ今週のチャート。8位西野カナ「with LOVE」を挟んで新譜はもう1枚。クリープハイプ「一つになれないなら、せめて二つだけでいよう」が9位に入ってきています。うーん、若干意味不明なタイトル(^^;;初動売上は1万4千枚。アルバムでは初のベスト10入りを記録した前作「吹き零れる程のI、哀、愛」の2万4千枚(6位)からは大きくダウンしてしまいました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2014年12月10日 (水)

今週は男性アイドルグループで1位2位

今週のシングルチャート

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先週と打って変わって今週は男性アイドルグループが上位を占めました。

まず1位はお決まりのジャニーズ系。関ジャニ∞「がむしゃら行進曲」。日テレ系ドラマ「地獄先生ぬ~べ~」主題歌。初動売上20万1千枚は前作「言ったじゃないか」の27万1千枚(1位)より大きくダウン。前々作のエイトレンジャー名義での「ER2」初動20万8千枚よりもダウンという少々厳しい結果になりました。

2位はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループDISH//「変顔でバイバイ」。作詞綾小路翔、作曲星グランマニエという氣志團のコンビによる作品。結果、楽曲は氣志團がそのまま歌ってそうな90年代初頭あたりの雰囲気を醸し出しているJ-POPに。初動3万1千枚は前作「サイショの恋~モテたくて~」の3万9千枚(2位)からダウン。

3位は先週1位のAKB48「希望的リフレイン」が2ランクダウンでこの位置。

続いて4位以下の初登場です。まずは4位。人気女性声優戸松遥「courage」がランクイン。初動2万3千枚は前作「Fantastic Soda!!」の5千枚(19位)から大きくアップ。所属している声優ユニットスフィアでのベスト10入りは何度もあるものの、ソロ名義のシングルでのベスト10入りは2008年の「motto☆派手にね!」以来約6年ぶりという好セールスに。アニメ「ソードアート・オンラインII」オープニングというタイアップ効果が大きい模様。

5位には新潟を拠点に活動する女性アイドルグループNegicco「光のシュプール」が入ってきました。初動売上2万枚は前作「サンシャイン日本海」の9千枚(11位)からアップして初のベスト10入り。編曲がオリジナル・ラヴの田島貴男ということでも話題になっていますが、MUSIC CARD複数枚買いでイベントに参加できるなどの戦略を打ち出して、一気に売上を伸ばしてきた模様。こうやって達成したヒットに何の意味があるんでしょうか・・・。

6位初登場は三浦大知「ふれあうだけで~Always with you~」。定評あるそのボーカルを思う存分聴かせるバラードナンバー。初動1万6千枚は前作「Anchor」の1万5千枚(7位)から微増。

7位にはEXILEの弟分のボーカルグループ、DEEP「ラスト・グッバイ」がランクイン。こちらも冬の季節らしいバラードナンバー。初動売上1万6千枚は前作「Just The Way You Are」の1万4千枚(9位)から若干のアップ。MUSIC CARD5種リリースというアイドル並のドーピング仕様。

8位初登場はMitsuru Matsuoka EARNEST DRIVE「SURPRISE-DRIVE」。テレビ朝日系「仮面ライダードライブ」主題歌。ぱっと聴いて思いっきりSOPHIAじゃん、と思ったんですが、SOPHIAの松岡充のユニットなんですね(^^;;この「仮面ライダードライブ」のためだけに結成されたユニットだそうです。初動売上1万4千枚。SOPHIAの直近のシングル「月光」が初動6千枚(16位)でしたから、タイアップ効果がかなり効いた結果になっています。

9位にはメンバーの橋本環奈が大きな話題のRev.from DVL「REAL-リアル-」が入ってきています。初動売上1万4千枚は前作「Do my best!!」の1万6千枚(11位)より若干ダウンしていながらも、前々作「LOVE-arigatou-」以来2作目のベスト10入り。ただ、橋本環奈の話題性の割には、本体の人気は伸び悩んでいる感が。

最後10位には、読者モデルを中心に結成されたガールズバンドSilent Siren「恋い雪」がランクインしています。一応バンド形式なのですが、楽曲のタイトルといい、楽曲自体といい、どちらかというとアイドルソングといった雰囲気。初動1万3千枚は、前作「BANG!BANG!BANG!」の1万6千枚(10位)よりダウンしています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2014年12月 9日 (火)

クソな国がほらあるよ

Title:サイケデリアレディ
Musician:踊ってばかりの国

今回紹介するのは、踊ってばかりの国の最新ミニアルバム。今回のアルバムは3,000枚限定リリースとなる作品なのですが、どちらというと企画盤的な意味合いの強いアルバムで、もともとは8月にHMV渋谷限定でリリースされた3曲入りのアナログ盤「サイケデリアレディ」に2月に500枚限定でリリースされたアナログ「踊ってはいけない国EP」の2曲を加え、さらに新曲の1曲を加えた6曲入りの内容となっています。

ただ、このうち表題曲「サイケデリアレディ」と、「踊ってはいけないの国」は1月にリリースされたアルバム「踊ってばかりの国」に収録された曲。そういう意味ではちょっと目新しさは薄いかもしれません。

とはいえ今回のアルバム、わずか6曲入りとはいえ、強烈に踊ってばかりの国の主張が感じられるようなラインナップ。初のCD化となる「夕日」「僕の海」や新曲「達者な野郎」もなかなかの名曲なのですが、やはりインパクトが強烈なのは、「踊ってばかりの国」にも収録された「踊ってはいけない国」でしょう。これはご存じ、ダンスを規制しているとして問題となった風営法を強烈に皮肉った歌。

「踊ってはいけない 言葉より先に産まれたのに
踊ってはいけない そんな国がほらあるよ
踊ってはいけない あなたより先に産まれたのに
踊ってはいけない そんな法律があるよ」

(「踊ってはいけない国」より 作詞 下津光史)

と、かなりストレートな批判を繰り広げています。風営法といえば、改正案が提示されたものの衆議院解散により廃案となり、改正が先送りされてしまいました。そんなタイミングでこのアルバムがリリースされたというのも、狙ったわけではないでしょうが絶妙。残念ながらまだまだ踊ってはいけない「クソな国」が続いていきそうです。

そしてなによりこのアルバムで最大のインパクトとなるのが12分に及ぶ大作「アンセム」でしょう。世界にまだ広がる地域格差の問題や反戦をテーマとした大作で、こちらもかなりストレートでインパクトのある歌詞が胸をうつ作品になっています。こちらもこれが初のCD化。正直、この1曲を聴くためだけにでもチェックする価値のある作品だと思います。

収録曲はフォークやブルースロック、あるいはサイケやらモータウンやら様々な作風を取り込んでいるのはいつも通りなのですが、その中で本作は比較的シンプルな作風の曲が並んでいました。逆にだからこそ、「踊ってはいけない国」や「アンセム」のような強烈なメッセージが、よりインパクトを持っていたようにも思います。

6曲入りでうち2曲が既存のアルバムのリテイク。そういう意味では万人にはお勧めしがたい点も持ったアルバムかもしれません。ただ、このアルバムではじめてCD化された4曲は文句なしの名曲揃い。そのうち「アンセム」はタイトル通り、踊ってばかりの国の代表曲となりそうな作品です。そんな訳で、このアルバムももちろん要チェックの傑作。次のフルアルバムもますます楽しみになってくる作品でした。

評価:★★★★★

踊ってばかりの国 過去の作品
グッバイ、ガールフレンド
世界が見たい
SEBULBA
FLOWER
踊ってばかりの国

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2014年12月 8日 (月)

よりポップに

Title:Do You Like Rock'n Roll!?
Musician:N'夙川BOYS

N'夙川BOYSの、フルアルバムとしてはメジャー3作目となる新作。前作「Timeless Melody」ではポップなメロを前面に押し出した作風が、N'夙川BOYSとしてのひとつの完成形と感じさせるような作品でした。そして予想通り、その次の作品となる本作もその方向性の延長。もっといえば、前作以上にポップになったアルバムになっていました。

特に今回のアルバムは、明確に「売りに来た」という印象も受けます。なんといっても先行シングル「ジーザスフレンド」はフジテレビ系ドラマの主題歌という好タイアップ。楽曲も90年代初頭のポップスロックバンドを彷彿とさせるようなかなりポップな作風になっています。ただ、残念ながらヒットには程遠い結果となってしまいましたが・・・。

他にもPVがつくられ、このアルバムのリードトラック的な存在となった「BANDがしたい!」もかなりキュートでキャッチーな作品に仕上がっており、ポップという路線が明確となっています。

そのため印象としては前作「Timeless Melody」と似たような感想。ポップなロックアルバムとして安定感はある反面、マイナスポイントとしては初期のはちゃめちゃ感が薄らいじゃっており、いい意味での予測不能さがなくなってきたところはちょっと残念に思います。

ただ一方でポップなメロディーゆえに感じるワクワク感は、このアルバムではこの上ないほど高まっています。正直メロディーには、ちょっとベタな部分も感じて最初気になったのですが、ポップなメロがとにかく純粋に楽しく、ついつい最後まで聴き入ってしまう魅力があります。

彼らの持ち味であるシンプルなガレージサウンドも、前半の「BANDがしたい!」や「ジーザスフレンド」ではあまり活かされていないなぁ、と感じたのですが、後半「RUN RA RA RA RUN」「未来はONLY LONELY」ではうまくポップなメロとシンプルなガレージサウンドがかみ合った作風に仕上がっていました。

N'夙川BOYSといえば、先日リリースされた、90年代に活躍したポップスロックバンドLINDBERGへのトリビュートアルバムに参加し、「DESTINATION」で素晴らしいカバーを聴かせてくれていましたが、今の彼らの楽曲を聴くと、ちょうどLINDBERGの「VI」や「EXTRA FLIGHT」のあたりを彷彿とさせられます。ようするにメロディーはちょっとベタさも感じるヒット曲路線ながらも、サウンド的にはロックを指向しているスタイルが、ちょうどあの頃のLINDBERGと重なるような印象を受けました。

ともかく、前作以上にポップなメロが無条件でワクワクしてくる作品。「売り」を狙った割には残念ながら売上という側面はあまり芳しくないようですが・・・この気持ち良いポップなロックは、より広い層に聴いてほしいなぁ。とにかく楽しいアルバムです!

評価:★★★★★

N'夙川BOYS 過去の作品
PLANET MAGIC
24HOURS DREAMERS ONLY!
THANK YOU!!!
Timeless Melody

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2014年12月 7日 (日)

歌謡ディスコの世界・・・

いろいろと音楽を聴いていて、時々妙に聴きたくなるのが「B級歌謡曲」。微妙なチープさと、どこか感じるエロチシズムが大きな魅力だったりするのですが、そんなB級歌謡曲のオムニバスアルバムを今回は聴いてみました。

Title:ディスコ歌謡夜の番外地~抱いて、火をつけて~

Title:ディスコ歌謡夜の番外地~卑弥呼~

「やさぐれ歌謡最前線」や「歌謡曲番外地」といった人気コンピを企画してきたプロデューサー、高護氏が手掛けたあらたなオムニバスシリーズ。今回は「歌謡ディスコ」をテーマに、70年代後半のディスコブームの中に日本に登場した和製ディスコチューンを揃えたオムニバスになっています。

ズラリと並んだ曲は、まさに知る人ぞ知る的なB級感満載のラインナップ。曲名でGoogle検索をかけても上位に来るのがこのオムニバス、なんていうマイナー楽曲も少なくありません。ただ・・・正直言ってしまえば、予想していたよりもB級感は薄かったかも(^^;;

今回のオムニバスで特徴的なのは、同時代の洋楽カバーが多いという点。ビージーズの「スティン・アライブ」や洋楽カバーの定番中の定番「君の瞳に恋してる」「ゴー ウエスト」や「I Will Survive」のカバー「恋のサバイバル2」などが並んでいます。どれも原曲そのもののカバーではなく日本語でカバーしているなど、微妙にチープさを醸し出している点がB級っぽいといえばB級っぽいのですが、全体的には意外と卒なくカバーしており、「B級歌謡曲」的に一周回ったおもしろさ、ではなく純粋に悪くありません。

思えばディスコサウンドというスクエアなリズムは、リズム感が悪いと言われる日本人にとっても素直にカバーすることが出来、そのため、和製ディスコでも、洋楽勢と比べてもさほど遜色ない水準になっているように感じます。それはもちろん悪いことではないのですが、「B級っぽさ」という観点からすると、「卒なく出来すぎている」といて普通の歌謡曲になってしまっている、という感じもしました。

もちろん、そんな中でも強烈な独特の匂いを放つB級歌謡曲も並んでいます。「スカーレット・ドリーマー」はあの美川憲一がディスコナンバーに挑戦した曲。微妙な妖艶さがB級的な雰囲気を醸し出していますし、「ソウル・もうやめてェ」は、ただ合間に「もうやめてェ」という女性の声が入っているだけのユニークでエロチックなインストナンバー。「I'm Jesse,Smou-Man」はあの高見山関がボーカルをとったナンバーと、一度聴いただけでインパクト十分な楽曲が並んでいます。

その一方、B級という枠組みではなく、意外とカッコいいナンバーも。「『ヒデ』のテーマ」は、おそらく「オリーブの首飾り」と並んで、宴会の出し物で日本人がもっとも口ずさんでいるインスト曲としておなじみすぎるナンバーですが、あらためて聴くと、これがメチャクチャ黒いサウンドでカッコイイ!もともとテディ・ペンダーグラスの「Do Me」という元ネタがあるので当たり前かもしれませんが、この日本人にはおなじみのナンバーの意外な魅力を感じました。

「卑弥呼」の方のラストを飾る「サヨナラは出発の言葉」もカッコいいなぁ。日本語でJBバリのファンクを奏でるスタイルは、どこか在日ファンクを彷彿とさせる部分も。これを歌う安田明とビート・フォークは知る人ぞ知る的なグループのようですが、今聴いても十分すぎるほどの魅力を感じます。

そんな訳で、予想していたほどではなかったとはいえ、そのB級歌謡曲の世界と、その合間に顔をのぞかせるカッコいいファンキーな曲たちを楽しめたオムニバスでした。比較的聴きやすい内容なので、B級的な文脈ではなく、素直にポップスリスナーにお勧めできるアルバムかもしれません。興味はある方は、是非。

評価:どちらも★★★★

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2014年12月 6日 (土)

amazarashiらしさ

Title:夕日信仰ヒガシズム
Musician:amazarashi

amazarashiのニューアルバムは、まずタイトルに「思いついちゃった」感を感じます(^^;;要するに、「~主義」を意味する接尾語「~イズム」と、「日が沈む」をからめたタイトル。思いついた時のメンバーのどや顔が目に浮かぶようです(笑)。

そんな彼らの新作は、フルアルバムとしては約3年ぶりとなる作品。ただ、その間にミニアルバムを多数リリースしているだけに、それほど久しぶりな感じはしません。amazarashiといえば、最近多い「中2病バンド」の一組として語られることが多いバンド。今回も、そんな「中2病」と言われそうな、膨らんだ自我を読み込んだ歌詞が多いのですが、本作ではそんな彼らの主張が、実にわかりやすい形で歌詞に読みこまれていることが大きな特徴に感じました。

今回のアルバムでamazarashiの歌詞の大きなテーマに感じたのは、この現実の中で「自分とは何か」を問いかける歌詞と、厳しい現実の向うに希望をみつけるような歌詞。いずれもよくありがちなテーマであり、かつ「中2病」と時には揶揄されることの多いテーマだったりします。

もともと歌詞がストレートでわかりやすいというのはamazarashiの大きな特徴だったのですが、その方向性が今回のアルバムではより顕著。例えば「自分とは何か」というテーマ性としては、タイトルチューンでもある「ヒガシズム」では

「瞳の色 肌の色 髪の色 互いを見ろ
僕が僕として生きてる理由を 身に纏う証明
実存 実存 実存」

(「ヒガシズム」より 作詞 秋田ひろむ)

とかなりストレートに歌われていますし、「絶望の中の希望」というテーマ性にしても「スターライト」では

「屑みたいな ゴミみたいな 小さな星を見つけたんだ
掴めはしなくても その明かりで 僕らは 前に進むよ」

(「スターライト」より 作詞 秋田ひろむ)

とこれまたストレートに歌われています。

他にも「僕は僕を諦めたぜ 生まれてすぐさま諦めたぜ」と中2病がさく裂している「穴を掘っている」や、バンドとしての決意を歌ったような「後期衝動」、若くして亡くなった友人への歌が心を打つ「ひろ」など、わかりやすい歌詞がインパクト十分の曲が並んでいます。

この歌詞のわかりやすさ、なんか一歩間違えると「小難しい歌詞の方が素晴らしい」的にいきがちなのですが、でも彼らくらいストレートなテーマ性を読み込んだ方がいいと思うんですよね。なによりも聴いていて、耳から素直に歌詞が入ってくるインパクトが素晴らしい。もちろん、わかりやすいといっても流行のJ-POP的な薄っぺらい内容ではない、という点が大前提なのですが。

わかりやすいといえばメロディーやサウンドもわかりやすくインパクトがあります。基本的にはギターロックがメイン。所々ピアノやストリングスを上手く取り混ぜポップにまとめています。それは決して目新しい感はないのですが、バンドサウンドはダイナミックな演奏を聴かせてくれて気持ちいいですし、ピアノの音色も実に心地よく響いてきます。

ここ最近のamazarashiはデビュー直後に比べると正直少々マンネリに感じていました。そんな彼らが最新作で提示したのは、そのマンネリを打破するような新たな一歩ではなく、むしろamazarashiというバンドのどこが魅力なのか、という点に立ち返り、そしてその点を押し進めたように感じます。そしてこのアルバムはその方向性に見事成功した傑作に仕上がっていたように思いました。amazarashiというバンドの魅力が実にわかりやすく体現化された作品。「中2病」的な世界観は少々好き嫌いがあるかもしれませんが、抵抗感のない方にはぜひともお勧めしたい1枚です。

評価:★★★★★

amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ラブソング
ねえママ あなたの言うとおり
あんたへ

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2014年12月 5日 (金)

音楽で旅しよう

くるりワンマンライブツアー2014「金の玉、ふたつ」

会場 Zepp Nagoya 日時 2014年11月26日(水) 19:00~

先日、傑作アルバム「THE PIER」をリリースしたばかりのくるり。そのアルバムリリースに伴うライブツアーに足を運んできました。くるりのライブは2011年の「TOWER OF MUSIC LOVER 2」の購入者限定ライブ以来。さらにお金を払って出かけたワンマンライブとなると2006年の武道館以来(!)。久々のくるりワンマンです。

ただこの日残念ながら仕事の関係で会場についたのは19時半ちょっと前。冒頭の何曲かは聴けませんでした。この日のZepp Nagoyaは、当日券も販売されていたようなのですがほぼ満員の人の入り。遅れてきたため、ちょっと窮屈な思いをしつつもライブを楽しんできました。

私が会場入りした直後に演奏されたのが、アルバム「THE PIER」から「liberty&Gravity」、さらに「しゃぼんがぼんぼん」と続きます。ステージの後ろには「THE PIER」のジャケット写真が大きく印刷された幕がかけられ、ステージ上はくるりの3人のほか、サポートメンバーが4人というにぎやかなステージ。さらにアルバムから「Loveless」「Remember me」と、アルバムの曲順通りに展開していきます。

続くMCでは、どうもこの日のライブのコンセプトが「旅」らしく、「西の方にむかいましょう」と佐藤征史がふると、いろいろな地名が出たあげく、岸田繁が「大垣?」と鉄っちゃんらしい地名をあげたのが個人的には壺でした(大垣は東京から出ているムーンライトながらの終着駅になっているなど、鉄道の要所の駅)。

そんなMCの中で旅先として出てきた地名がリスボン。ということで「遥かなるリスボン」、さらにヨーロッパを旅したという設定で「Brose&Butter」と続き、「Amamoyo」「最後のメリークリスマス」と「THE PIER」からの曲が続きます。

ここで「THE PIER」からの曲は一区切り。サポートメンバーは一度ステージから去り、くるりのメンバー3人だけがステージ上に残ります。この3人だけで「ハイウェイ」と「奇跡」を披露。ドラムレスのシンプルなアレンジが印象的。さらに3人だけで「ブレーメン」を聴かせてくれました。

その後サポートメンバーが戻ってきて、ここでメンバー紹介。一番盛り上がったのがキーボードやアコーディオンでサポートに入ったソウルフラワーユニオンの奥野真哉(!)。いろいろなミュージシャンのサポートをつとめている彼ですが、なにげにSFUのライブ以外でお目にかかったのははじめてかも。くるり岸田氏とは「はじめてつくった曲」という話で盛り上がったそうで、奥野氏のはじめてつくった曲は「寄生虫」という曲で、岸田氏曰く「カッコいい曲」だったそうです(笑)。

サポートメンバーを加えてライブは再開。「ハヴェルカ」「かごの中のジョニー」と続いた後、ライブは終盤戦へ。「WORLD'S END SUPERNOVA」「ロックンロール」とキラーチューンが続き会場は大盛り上がり。最後のMCでは、また鉄っちゃんの岸田氏らしいリニアネタ。「京都は止まらないっていっているけど、最後は止まりますよ。黒い力で」というブラックなネタを飛ばしつつ、最後は「旅の終点」ということで「東京」へ!おそらくこの日もっともロックなチューンで会場を盛り上げつつ、本編は終了となりました。

もちろんその後はアンコールへ。ここでなぜかファンファンひとりだけステージへ。彼女の曲「メェメェ」が流れる中、ツアーグッズを紹介。その後、岸田氏と佐藤氏の2人がステージにあがり、佐藤氏がファンクラブの紹介。途中からラップ調になり、軽く笑いを誘っていました。

アンコールは、またメンバー3人だけで「太陽のブルース」を。その後、再びサポートメンバーがステージに戻り、「ハローグッバイ」を聴かせてくれました。そしてさらにアンコールは続きます。こちらも彼らの代表曲「ばらの花」で会場を盛り上げた後、最後はアルバム「THE PIER」のラストチューンでもある「There Is...」で締めくくり。約2時間半に及ぶライブは幕を下ろしました。最後はメンバーと会場全体で写真撮影。今回のツアーのお決まりみたいで、すぐに彼らのネット上のオフィシャルファンクラブのブログにアップされていました。

そんな訳で久々のくるりのライブでしたが、相変わらず安定感のあるステージ。そして今回のライブはアルバム「THE PIER」からの曲がメインということもあり、多くのサポートメンバーで様々な楽器を取り入れつつ、ロックっぽさバンドっぽさは薄め。迫力あるサウンドで盛り上げるというよりも、メロディアスなポップソングを多く聴かせるような、そんなステージになっていました。

また、3人でくるり、ということを強調するような側面もちらほら。途中やアンコールで3人だけのコーナーをあえて設け、過去の彼らの曲を3人だけで演奏したあたり、この3人でくるりとしてやっていくという意思みたいなものを感じました。

「旅」が今回のライブのコンセプトということで、特に前半、MCは「旅に出ている」という設定の上での話になっていたり、旅の雰囲気をかきたてるような音が流れたりしていましたが、ここに関しては、MCはちょっとグダグダな部分もあって、コンセプトが少々生かし切れていないような部分も。まあ、「雰囲気」という程度なのでしょうが。

今回はアルバム「THE PIER」からの曲も一通り聴け、かつ彼らの代表曲も多く聴くことが出来る満足度の高い、濃い2時間半でした。あらためてくるりの魅力を感じることのできたステージ。満員の会場はちょっと窮屈だったけどやはり楽しかった~!また、今度はもっと短いスパンで、くるりのライブに足を運びたいです!

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2014年12月 4日 (木)

今週は韓流

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

先週のONE DIRECTIONに続き、2週連続、海外の男性アイドルグループが1位獲得です。

今週1位を獲得したのは、韓流の男性アイドルグループ、BIGBANG「THE BEST OF BIGBANG 2006-2014」。タイトル通りのベストアルバムです。最近はメンバーそれぞれのソロ活動が目立っており、BIGBANGとしては久々のアイテムとなりました。初動売上は12万枚で、前作「ALIVE」の5万2千枚(3位)よりアップ。また、ベスト盤はこれで早くも3枚目(!)のリリースとなりましたが、2011年にリリースされた「THE BEST OF BIG BANG」の3万枚(2位)よりもアップしています。

2位は西野カナ「with LOVE」が先週から変わらずこの位置をキープ。なにげに根強い人気を見せつけています。

3位にはロックバンドSPYAIRの初となるベスト盤「BEST」がランクイン。今年5月にボーカルのIKEの体調不良により活動休止状態だったSPYAIRでしたが、12月のライブで無事活動再開。それに先駆けてのベスト盤リリースとなりました。初動売上は2万6千枚。直近のオリジナル盤「MILLION」の2万2千枚(2位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まずは4位にHoneyWorks「僕じゃダメですか?~『告白実行委員会』キャラクターソング集~」がランクイン。HoneyWorksはメンバー4人からなるボーカロイド楽曲制作グループ。これは、そんな彼らが作成した「キャラクターソング」を人気声優が歌ったアルバム。初動売上2万6千枚は前作「ずっと前から好きでした。」の1万8千枚(4位)からアップ。

5位はFLOWER FLOWER「実」がランクイン。FLOWER FLOWERは女性シンガーソングライターのYUIが結成した新バンド。以前から配信限定でのシングルはリリースしていたものの、CDアイテムでのアルバムはこれがはじめてのリリース。初動売上は2万3千枚。ちなみにYUIとしての前作は、ベスト盤の「GREEN GARDEN POP」で、こちらは初動で11万6千枚(2位)を記録。またオリジナルとしての前作は2011年の「HOW CRAZY YOUR LOVE」で、こちらは初動13万1千枚(1位)といずれからも大きくダウンする結果となってしまいました。まあ純粋にYUIのバンドという知名度が足りない可能性も高いのですが。

8位にはジャニーズ系の男性アイドル中山優馬「Chapter1」が入ってきています。タイトル通り、本作がデビューアルバム。初動売上は1万枚。シングルの直近作は「Get Up!」で、初動売上3万4千枚(4位)を記録。シングルからは大きく売上を落としています。

最後10位に入ってきたのは「NARUTO SUPER SOUNDS」。テレビ東京系アニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」の主題歌集。ザ・クロマニヨンズの「突撃ロック」やアジカンの「それでは、また明日」から、乃木坂46の「月の大きさ」まで、ちょっと節操のないラインナップとなっています。初動売上は9千枚。「NARUTO」の主題歌集としては前作「NARUTO GREATEST HITS!!!!!」の1万6千枚(9位)からダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に。

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2014年12月 3日 (水)

女性アイドルグループがズラリ

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週は1位から女性アイドルグループがズラリと並んだチャートとなりました。

まず1位はAKB48「希望的リフレイン」。初動売上113万枚で、前作「心のプラカード」の100万5千枚(1位)よりアップ。前作がギリギリミリオンだったのですが、本作は若干回復となりました。楽曲的には・・・うーん、90年代から続くような特に特徴のないJ-POPで印象に残らず。正直、ちょっとやっつけすら感じられるのですが。

で、このAKB48に続いて、妙に女性アイドルグループが多かった今週のシングルチャート。これって要するにAKB48のおこぼれをもらおうという魂胆?それとも時節柄、握手会やらのイベントを組みやすいとかいうこともあるの??

以下、2位e-girls「Mr.Snowman」、4位東京パフォーマンスドール「DREAM TRIGGER」、5位ベイビーレイズ「虎虎タイガー!!」、5位でんぱ組.inc「でんぱーりーナイト」、8位愛乙女★DOLL 「Bargain girl」、9位アフィリア・サーガ「ジャポネスク×ロマネスク」と並びました。

ただこうやって並ぶと、相変わらずほとんどが「かわいい系」の女の子がユニゾンで歌うスタイルばかりで大差がない・・・。個人的には全く好みではないものの、e-girlsみたいなキャバ嬢みたいなグループが逆に個性的に感じてしまいます。このうちベイビーレイズとでんぱ組.incは、Winnersの玉屋2060%が作曲を手掛けています。イメージ的には第2のヒャダインといった感じ?破天荒なポップソングは正直逆に「これっておもしろいでしょ」という主張があざといようにも感じられるのですが・・・。

e-girlsはご存じEXILEの妹分的グループ。初動4万3千枚で前作「Highschool love」の6万1千枚(2位)からダウン。MUSIC CARD27種という強烈なドーピング付。東京パフォーマンスドールは90年代に活躍したアイドルグループの名前だけを引き継いだグループ。初動3万3千枚は前作「BRAND NEW STORY」の2万5千枚(7位)からアップ。ベイビーレイズはNHK朝の連ドラ「あまちゃん」挿入歌「暦の上ではディセンバー」で話題となったグループ。初動3万1千枚は前作「ぶっちゃけRock'n はっちゃけRoll」の2万1千枚(4位)よりアップ。ただしMUSIC CARD5種から13種にアップさせるドーピング技付。でんぱ組.incは初動2万8千枚で前作「ちゅるりちゅるりら」の1万9千枚(10位)からアップ。発売形態が3種から6種に大幅アップした影響が大きそう。愛乙女★DOLLは2作ぶりのベスト10入り。初動1万9千枚は前作「セツナツ、ダイバー」の1万6千枚(11位)から若干アップしています。アフィリア・サーガはメイド喫茶の店員により結成されたグループ。初動1万8千枚は前作「マジカル☆エクスプレス☆ジャーニー」の2万5千枚(3位)からダウンとなっています。

今週、初登場はあと2枚なのですが、そちらはいずれもアニメ系となりました。

まず3位にlily white「秋のあなたの空遠く」。ゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」から、ゲーム内のアニメキャラクターによるアイドルユニット。初動売上4万枚は、前作「微熱からMistery」の1万5千枚(4位)から大幅増。

そして最後10位にはFLOW×GRANRODEO「7-seven-」がランクイン。こちらは、「贈る言葉」のロックカバーがかつてヒットしたロックバンドFLOWと人気声優谷山紀章と作曲家飯塚昌明からなるユニットGRANRODEOのコラボ。GRANRODEOみたいなアニソン歌手って、「アニソン業界」から外に出てこないイメージがあっただけに、FLOWのようなロックバンドとのコラボは意外かつおもしろさを感じます。ただ、残念ながら楽曲自体は平凡なパンクロックといった感じで、イマヒトツな印象なのですが・・・。

TBSテレビ系アニメ「七つの大罪」エンディング・テーマ。初動売上は1万5千枚。GRANRODEOとしての前作「変幻自在のマジカルスター」(10位)からは横バイの結果に。一方FLOWは前作「愛愛愛に撃たれてバイバイバイ」の2千枚(44位)から大幅アップ。ベスト10入りは2010年の「Sign」以来、約4年10ヶ月ぶりとなりました。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2014年12月 2日 (火)

ラストアルバム

Title:The Endless River(邦題 永遠(TOWA))
Musician:PINK FLOYD

ピンク・フロイドの約20年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムは、その20年前の前作「対(TSUI)」の制作段階で録音された20時間にも及ぶセッションから構成された作品。もともとはメンバーのデヴィッド・ギルモアの倉庫の中に眠っていたのですが、2008年にメンバーのリチャード・ライトが急逝したことから、ライトとの作品をあらためて洗い直し、ライトへのトリビュートアルバムという意味を込めてリリースされたのが本作だそうです。

そんな立ち位置のアルバムなだけに、通常のオリジナルアルバムというにはちょっと異質な内容。最後の「Louder Than Words(邦題 ラウダー・ザン・ワーズ~終曲)を除いてすべてインスト曲。ライトへのトリビュートに余計な言葉は不要、という意味なのかもしれませんが、やはり物足りなさは否めません。また、ギルモア本人が「これが最後のアルバムになる」と明言しており、そういう意味でも注目されたアルバムです。

さて今回のアルバムは、その20年前の「対(TSUI)」以来のオリジナルアルバムで個人的にはちょっと懐かしい思い出がよみがえってきました。その「対(TSUI)」がリリースされた20年前は私は高校生の頃で、ちょうど洋楽を聴き始めた頃。その頃ヒットしていた作品ということで「対(TSUI)」は私もリアルタイムで聴いていました。

そしてこの「対(TSUI)」を聴いて軽く衝撃を受けました。非常に凝った、クリアで奥深い複雑なサウンドは当時私が主に聴いていたJ-POPとは明らかに異質。「おお!これが洋楽か!さすがに邦楽とは違うな!」と感動したことを覚えています。もっとも、これは別に洋楽だから特別なのではなく、こういうタイプの音楽だ、ということを知ったのはもうちょっと後になってから。

それだけに個人的には「対(TSUI)」にはちょっとした思い入れがあるのですが、今回のアルバムもその時のセッションから構成されたアルバムということで、楽曲の雰囲気的には「対(TSUI)」に似ているものを感じます。そういう意味ではちょっと懐かしさも感じました。

amazonなどの評価を見ている限りでは、インストメインということで決して評価は高くないようです。ただ、スケール感があり奥行があるサウンドは魅力的。ギターやストリングス、ピアノで奏でられるメロディーは、時として哀愁も感じられインパクトも十分。なによりも魅力的だったのは非常に澄んだような音質感。ひとつひとつの音色が重厚ながらもとてもクリアに聴こえるような録音になっており、耳を惹きつけられました。おそらく自分なんかが持っているよりももっといいデッキで聴いたらとんでもない音が聴こえてくるんだろうなぁ~。

全18曲入りのアルバムなのですが、「SIDE1」から「SIDE4」までの4部構成となっており、楽曲は基本的にひとつの「SIDE」の中ではつながっているため、事実上、4曲入りといった雰囲気となっています。そんな4曲の中で複雑に構成され展開されていく内容になっているため、最後まで飽きることがありません。壮大な雰囲気の作品は、「永遠」というタイトル以上に、ジャケットの写真のような、幻想的な終わらない川を渡っているようなそんな感覚を得るような内容。いろいろな意見はあるみたいですし、確かにピンク・フロイドのロック史に残るような傑作群と比べれば物足りないのは間違いないものの、ピンク・フロイドというバンドの魅力は十分すぎるほど感じられられる作品になっていたのではないでしょうか。非常に気持ちよく楽しめるアルバムなのは間違いないでしょう。

評価:★★★★★

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2014年12月 1日 (月)

筋少のライブがはじまる

Title:THE SHOW MUST GO ON
Musician:筋肉少女帯

「ショーは続いていく」と名付けられた筋少のニューアルバム。このタイトルが示すように、アルバム1枚がひとつのライブのような構成となっています。アルバムは「今日もライブようやっと始まる」という歌詞からはじまる「オーディエンス・イズ・ゴッド」からスタート。筋少らしい、ライブをメタ視点からおもしろおかしく切り取った内容がユニークな作品になっています。

その後の前半は、アップテンポな曲が並びライブを盛り上げつつ、中盤にはミディアムの聴かせる曲を配置。後半はまた盛り上がりそうなナンバーが続き、最後から2曲目の「気もそぞろ」では「さぁ、ショーはもうラスト」という歌詞からスタートするラストナンバーに。そうすると、最後のもうひと盛り上がりの「ニルヴァナ」はアンコールという位置づけでしょうか。そんなアルバム1枚でひとつのライブが構成される、ユニークな内容になっていました。

さて、そんなアルバムの構成もさることながら、今回の彼らのアルバムでひとつ特徴として感じたのは、「大人の視点からの歌詞」という点でした。ご存じの通り、筋肉少女帯というバンド、いやそのボーカルの大槻ケンジが書く歌詞は、若い世代の肥大した自己意識を描いた歌詞が特徴的。いまどきの表現を使えば「中二病」で、事実、昨年リリースしたセルフカバーアルバム「公式セルフカバー4半世紀」にも、そのものズバリ「中2病の神ドロシー」なんて新曲を収録したりしています。

しかし今回のアルバムに描かれているのは「中二病」というよりも大人としての立場から描いた歌詞が多いように感じます。ももクロに提供した曲のセルフカバーとしても話題となった「労働讃歌」(ちゃんと筋少らしい曲に仕上がっています)なんかも、大人だからこそ書ける歌詞でしょうし、「吉原炎上」なども、違った意味で大人だからこそ書ける歌詞と言えるでしょう。

そして個人的にこのアルバムのハイライトと言えるのは、このアルバムのちょうど中盤に「前編」「後編」として収録されている「月に一度の天使」。物語性のある歌詞に、主人公の心境描写が上手く歌に組み込まれていて見事。途中に挟まれている「愛の讃歌」も、この物語の主人公が歌っているように感じられるのがおもしろいところ。曲の中で主人公とこの「天使」の関係をあえてぼやかしているのでここでは詳しく言及しませんが(といっても、他の解釈が出来る余地のないような歌詞なのですが・・・)、これも50代間近のオーケンだからこそ書ける歌詞、と感じました。

ここ最近、例えばセカオワあたりが典型なのですが、「中2病」的な歌詞をバンドが増えています。そんな中、元祖「中2病」バンドである彼らが、単なる「中2病」的なネタだけではなく、大人としての視点からもちゃんと曲を書けるんだ、そう主張しているようにも感じました。また、単なる若者の妄想だけに終わらないその歌詞に、オーケンの実力を感じることが出来ました。

サウンド的には、メタルやハードコア路線を主軸に、ギターロックやパンクの要素を加えた、いわゆるいつもながらの内容。「ムツオさん」のようなディスコチューンなんかも挟みつつ、全体的には卒のない手堅い印象を受けました。ここは安心して聴ける、といった感じでしょうか。

そんな訳で、単なる「中2病バンド」ではないんだ、という主張を感じられる大人のアルバムに仕上がった本作。筋肉少女帯の実力を、もっといえば大槻ケンジのストーリーテラーとしての才能を感じることが出来たアルバムでした。

評価:★★★★★

筋肉少女帯 過去の作品
新人
大公式2
シーズン2
蔦からまるQの惑星
公式セルフカバー4半世紀


ほかに聴いたアルバム

うめ吉の唄う 童謡・唱歌 其の二/うめ吉

寄席などを中心に活動しつつ、様々なCDをリリースするなど積極的な活動と高い人気を誇る俗曲師うめ吉が、日本の童謡・唱歌を歌ったアルバム第2弾。「うれしいひなまつり」「かごめかごめ」「シャボン玉」など、誰もが知っている有名な童謡をうめ吉の澄んだボーカルで歌われるのですが、癖がない内容になっていて、あまりにも普通・・・。アレンジも、子供向けの「童謡集」みたいなCDで聴けそうな癖のないアレンジ。この内容なら無理に「うめ吉」で売ることないんじゃないの?なんてことすら感じてしまうアルバム。もちろん、癖のない内容なので、童謡・唱歌を純粋に楽しめるといえば楽しめるのですが・・・。

評価:★★★

うめ吉 過去の作品
お国めぐり 其の二
うめ吉玉手箱~寄席うた俗曲集
ALL ABOUT UMEKICHI

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