結成25周年のベスト盤
Title:The R~The Best of RHYMESTER 2009-2014~
Musician:Rhymester
日本のHIP HOPシーンで黎明期からトップを走り続けるHIP HOPユニット、Rhymesterのベスト盤。今年、結成25周年を迎える彼ら。本作では2007年に活動を一時休止した後の2009年活動再開後から現在までの楽曲を収録したベスト盤。2007年にリリースしたベスト盤「メイドインジャパン」に続く形でのリリースとなりました。
今回のベスト盤に収録されている曲に関しては、基本的に一度は聴いたことある曲ばかりなのですが、あらためて聴いてみて強く感じます。うん、やはりRhymesterはカッコいい、と。
エレクトロやファンク、ロックやジャズなどを自在に取り込んだトラックに、ポップでインパクトあるメロディーライン。さらにMummy-Dと宇多丸の2MCのバランスが絶妙。その高いラップスキルももちろんですが、声が個性的なMummy-Dは楽曲の中のインパクトのあるフレーズをラップし、一方、宇多丸は力強いラップで、その強い主張をラップの中で織り込んでいます。この両者の絶妙なバランスが、楽曲のカッコよさを産みだしています。
そしてRhymesterのベスト盤を聴いてあらためて感じたこと、それは彼らって本当に頭いいよな、ということでした。要するに、彼らの書く歌詞が非常にウィットに富んでクレバーさを感じるということ。彼ら自身、早稲田出身というインテリということもあるのでしょうが、歌詞の内容から頭の良さを感じられるようなミュージシャンって、数少ないように思います。
例えば子育てにおわれる母親の孤独を歌った名曲「hands」の
「かつてあった気がする理想的ユニティ 懐かしがる前にまず目の前のコミュニティ
の閉めたままのあの窓の向こうの手つかずの不幸 そう、オレたちにもよく似たあの子に」
(「hands」より 作詞 Mummy-D、宇多丸)
なんて歌詞はライムを踏みながらも短いフレーズの中で子育てに変な理想論を押しつける一部の人たちに対する強烈な皮肉を見事に読み込んでいますし
「この世界はそんな単純じゃないんだ ラスボスはどこにもいないんだ」
(「The Choise Is Yours」より 作詞 Mummy-D、宇多丸)
という「The Choise Is Yours」のフレーズも印象的。この曲自体、民主主義の本質をある意味見事に読み込んでいる社会派な歌詞が実に見事。「hands」にしてもそうなのですが、こういうともすればお堅くなりそうな社会派な内容を、ユーモラスをまじえつつちゃんとエンタテイメントに仕立てあげている点、彼らの頭の良さを強く感じます。
ちょっと残念なのは、わずか5年の間の発表した曲を収録したベスト盤、という点。どうせなら、オールタイムベストで聴きたかったかも。その点はちょっと物足りなさを感じた点でした。一方で今回のベスト盤では「ちょうどいい」のピアノバージョンを収録しているのですが、これはジャジーな雰囲気が曲にもピッタリあって、タイトル通り「ちょうどいい」アレンジに(笑)。また、未発表曲「This Y'all That Y'all session with SCOOBIE DO」もSCOOBIE DOのファンキーな演奏がカッコよく、こちらも満足度の高い楽曲になっていました。
そんな訳でRhymesterというユニットのカッコよさを存分に感じることの出来るベスト盤。彼らの入門盤としてもピッタリの内容かと思います。結成から25年、すっかり日本のHIP HOPシーンの中では「重鎮」的な地位にいる彼らですが、悪い意味での「重鎮」らしさはなく、勢いは止まっていません。これからもまだまだ名曲を世に送り出してくれそうです。
評価:★★★★★
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