心暖まる祖父と孫の物語
ご存じローリングストーンズのギタリスト、キース・リチャーズが、絵本を発売した、ということで大きな話題となっています。さらにその絵本についてくるCDにはキース本人による絵本の朗読が聴けるとか・・・これは買うしかないでしょ!と思い、買ってきました。
タイトルは「Gus & Me: The Story of My Granddad and My First Guitar」。彼の祖父のガスじいさんとキース本人の思い出、そしてキースとギターのはじめての出会いを綴った絵本です。さらに作画を担当したのがキースの愛娘セオドラ・リチャーズ。まさにキースとそのおじいしゃん、そしてキース親子の愛情あふれる絵本となっています。
付属の朗読CDにはキース本人のギタープレイも収録・・・ということでも話題になっていますが、ただ正直言って、キースのギターも絵本のお話自体も、過度な期待感は禁物かもしれません。ギターは朗読にあわせて「ポロリン」とアコギを軽く奏でる程度で「1曲を奏でる」といった感じではありませんし、絵本にしても基本的にはキースの思い出話で、決して凝ったような話ではありません。
ただ、それでもやはりキースとガスじいさんの思い出話は、熱心なファンではなくても心暖まるものを感じますし、キース少年とギターとの出会いの話についても、こちらもファンでなくても(少なくともキースリチャーズがどういうギタリストか知っていれば)ワクワクするようなお話ではないでしょうか。
なにより暖かい雰囲気の水彩画ベースの作画を手掛けているのが、キース本人の愛娘という事実とあわせて、その祖父と孫の愛情、親子の愛情を絵本から感じられてどこかうれしくなってきてしまいます。なによりも、あのストーンズの、あのキースリチャーズが、少年の日を思い出すかのように一言一言語っていく朗読には、祖父への深い愛情が感じられ、胸のおくがジーンとなってくるのを感じます。
この本の最後のページにはガスじいさんとキースの写真、キースの若い頃の写真。さらにはキースと彼の孫と一緒にうつっている写真などが載っていて、こちらもファンならば必見。特に孫娘を抱いたキースの写真なんかは、孫をみつめる彼の眼が、いかにもいいおじいちゃんといった感じで、見ていてこちらまでニヤニヤしてしまう写真になっています(笑)。
ちなみに和訳版も発売されており、こちらはあの奥田民生が翻訳を手掛けています。私は原書を買ったので和訳版については詳しくはわかりません。ただ、基本的には子供向けの体裁をとった絵本なので、原書でも難しくなく、ほとんど辞書なしで読めてしまうレベル。和訳の程度はわからないので正確な話はできませんが、やはりキースの朗読を聴きながら絵本を読み進めたいところですし、そういう意味では原書がお勧めだと思います。
そんな訳で、とても心暖まる1冊となったこの絵本。確かに、過度な期待は禁物ですし、どちらかというとファン向けのアイテム的な要素は強いと思いますが、逆にキースが好きならば文句なしにお勧めできそうな1冊。キース本人の朗読を聴きつつ、その暖かい絵と物語を楽しみながら、キース少年とガスじいさんに思いをはせる・・・素敵なひと時が過ごせること間違いなしです。
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