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2014年11月 2日 (日)

キャラ立ち5人による個性的な作品

Title:死んだらどうなる
Musician:stillichimiya

先日のTOYOTA ROCK FESTIVALではじめて見たstillichimiyaのステージ。予想以上にエンタテイメント性が楽しいステージにはまってしまい、その勢いで買ったstillichimiyaの最新アルバム・・・というと正確に言うと違っていて、その間にワンクッション。家に帰りネットで見てみたのが、このアルバムに収録されている「ズンドコ節」のPV。

「笑点」と「ドリフ」を足して2で割ったような内容に思わず笑ってしまう作品で、ついつい繰り返し見てしまうほどはまってしまいました。そして、その勢いで買ったのがこの最新アルバム。その内容もまた、トヨロックのステージやこのPVで感じられた、非常にエンタテイメント性あふれる個性豊かなものでした。

まず感じるのはstillichimiyaメンバー5人も、アルバムに収録された個々の楽曲も、それぞれとても「キャラ立ち」していて個性的だ、ということ。「キャラ立ち」という言葉はHIP HOPグループで良く使われていますが、キャラが立っているといっても結局メンバー全員、いかにもなラッパー風情だったりするのですが、stillichimiyaの「ズンドコ節」のPVを見ていると、いかにもラッパーな田我流をはじめ、気のいいあんちゃん風情のBIG BEN、ラッパーというよりも役者っぽいMr.麿、さらにはYoung-GにMMMといずれも個性的なキャラが揃っていて、そんなメンバーだからこそ、PVもアルバムもとても楽しい内容になっているように感じます。

そしてアルバムに収録している楽曲がどれも実に個性的。その「ズンドコ節」をはじめ、へヴィーなトラックながらもエロ歌詞がユーモラスな「生でどう?」、1995年に山梨のローカルCMで流れた方言ラップが地元でヒットした甲州弁ラッパー原田喜照をフューチャーした「だっちもねぇ」(トラックは懐かしのMCハマー風)、ファンキーでムーディーなダンスチューン「シャドウダンス」に、彼らの地元一宮町で多く発掘されて観光名物となった土偶を読み込んだラテン調の「土偶サンバ」など、個性的でなおかつユーモラスあふれる楽曲の連続がとても楽しい展開に。まさに5人の大人のラッパーがそのスキルをフルに活用し思いっきり楽しんだアルバム、といった印象を受けました。

さらに本作の根底にひとつ貫かれているのが地元山梨県一宮町への深い愛情。もともと「stillichimiya」というミュージシャン名が示唆するように、彼らは地元一宮町が、他町村との合併により消えることに反対する若者たちのムーブメントから産まれたグループ。その地元愛はこのアルバムでもまた、ひとつの大きなテーマとなっています。1曲目「うぇるかむ」はまさにリスナーを地元に迎え入れるために歌ったような歌ですし、途中でCM仕立てで紹介される「おねり」「土偶」はそれぞれ地元の郷土料理に(上にも書いた通り)一宮町の観光名物。最後には、これまた地元のことを自虐的(?)に歌った「陸の孤島」なる歌で締めくくられています。

もともと田我流のソロアルバムのイメージで、比較的硬派な内容を想像していたのですが、それがいい意味で裏切られた、非常にエンタテイメント性あふれる作品を、時には思わず笑いながら、時には身体を動かしながら楽しめたアルバムでした。しかし一方では、地元への愛情というコアな部分をしっかりと抱え込んだ筋の通った作品にもなっていました。そういう意味でも硬軟バランスの取れた傑作だったと思います。stillichimiya、今回はじめてアルバムを聴きましたが、すっかりはまってしまいました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

赤盤だぜ!/ウルフルズ

ウルフルズのEMI所属時代の楽曲を集めたベスト盤。レコード会社移籍直後に、移籍前のレコード会社がベスト盤をリリースする、というよくあるケースですが、今回は本人たち選曲になっており、公式サイトにも紹介されているあたり、よくある「勝手に出された」というケースではなさそう。ちなみにもちろん「青盤だぜ!」もリリースされており、こちらはPV集のようです。

さて、2014年に活動再開を果たした彼ら。その直後にリリースされたアルバム「ONE MIND」にも初回盤でベスト盤が収録されていたのでそれとも完全にかぶってしまうのですが・・・ウルフルズというバンド、私自身、「ガッツだぜ!」で知った時はそれほどのファンでもなかったのですが、その後、いろいろな音楽を聴けば聴くほど、その良さを再認識して好きになってきたバンドです。ルーツ志向のロックンロールやソウル、ファンクなどの要素を色濃く入れつつ、ユーモラスあふれ、かつ暖かさも感じられる歌詞も実に魅力的。このベスト盤で彼らの代表曲をあらためて聴いて、その魅力を、さらに強く感じることが出来ました。

評価:★★★★★

ウルフルズ 過去の作品
KEEP ON,MOVING ON
ONE MIND

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