« 25周年の記念の年に | トップページ | 志磨遼平よ、どこへ行く »

2014年11月16日 (日)

ブルース入門に最適!

Title:永井“ホトケ”隆のブルースパワー・ラジオ・アワー

"The Blues Is The Roots,Everything Else Is The Fruits."(「ブルースこそが根っこだ。他のすべてのものはそこになる果実だ)という名言を残したのは、ブルースを代表する数多くのヒット作を手掛けたシカゴ・ブルース界の裏番長ことウィリー・ディクソンですが、その言葉の通り、アメリカ黒人音楽の「根っこ」であり、ロックを中心に数多くの音楽に強い影響を与えているブルースという音楽。ただ、その影響力と反して、どこか難しく、取っつきにくい音楽ではないか、という印象を持っていて、「興味はあるけど聴いたことはない」という方も多いのではないでしょうか。

そんな「興味はあるけど・・・」という方にとって絶好のコンピレーションが発売されました。それが今回紹介する本作。日本を代表するブルースミュージシャン、永井"ホトケ"隆が青森県弘前市のコミュニティーFM局、FMアップルウェーブをキー局に、東北6県+奄美大島で放送されているブルースを紹介する日本で唯一のラジオ番組「ブルースパワー」の放送7周年を記念してリリースされたコンピレーションアルバムです。

ブルースの代表曲を永井"ホトケ"隆が選曲して収録したこのアルバム。それだけでも注目の内容なのですが、このアルバムがなによりもユニークなのは、曲の合間にラジオ番組さながらに永井"ホトケ"隆の曲紹介のMCが入る部分。その楽曲が、ブルースという音楽にとってどのような位置づけなのか、ミュージシャンの紹介や特徴、歌詞の内容の紹介など、ブルースを聴く上で「壺」となるようなポイントを上手く解説し、親しみにくそうなブルースという音楽が、実は今の私たちにとっても実に親しみやすい音楽だ、ということを上手く紹介しています。

収録されているミュージシャンにしても、ブルースの代表的なミュージシャンを上手く網羅的に収録されています。ある意味、ブルースミュージシャンの中でもっとも「ブルース」らしいLIGHTNIN' HOPKINSの、これまた「ブルース」らしい「MOJO HAND」からスタート。さらにこちらも「ブルース」という音楽のイメージにピッタリ来ながらも、しゃがれ声のボーカルが強いインパクトを受けるHOWLIN' WOLFと、ある種一般的なイメージの「ブルース」らしいナンバーからスタートします。

その後もT-BONE WALKERSのような数多くのギタリストに影響を与えたミュージシャンや、B.B. KING、MAGIC SAMのようなモダン・ブルースの代表的なミュージシャン、さらにはBLIND LEMON JEFFERSONのような戦前ブルースの代表格までも収録しており、まさにブルースの歴史を網羅的に把握できるような選曲になっています。

途中、軽快なMCを入れつつの構成であるため、おそらくブルース初心者にとっても非常に聴きやすいアルバム構成になっています。1時間を超える内容ながらも、途中、まったくダレルことなく楽しむことが出来るのは、楽曲が名曲揃いということもさることながらも、永井"ホトケ"隆のMCによるところも大きいのではないでしょうか。

ただ、ブルースの代表的なミュージシャンを紹介していながらも、残念ながらロバート・ジョンソンとマディー・ウォーターズという、ブルースというジャンルを紹介する時に真っ先に名前が出てくるようなミュージシャンが未収録なのがちょっと残念。おそらくロバート・ジョンソンはこの手のコンピに楽曲を収録することを許していないんだろうなぁ、という感じはするのですが、マディー・ウォーターズはなぜ?

そんな点は気になりつつも、ブルース入門としては文句なしに最適なコンピレーションアルバムなのは間違いありません。このアルバムを聴けば、ブルースという音楽の魅力、聴く時の壺がどこにあるのかがよくわかり、決して「親しみにくい音楽」ではないことがわかると思います。ブルースには興味があるけど・・・という方はもちろん、ブルースが大きな影響を与えたロックミュージックを愛する音楽ファンにも、そのルーツを知るためにもお勧めしたいアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Wise Up Ghost/Elvis Costello&The Roots

John Legend、 Betty Wrightに続くアメリカのHIP HOPバンドTHE ROOTSのコラボアルバム第3弾。ただし本作はTHE ROOTSの作品というよりはコステロの新作にTHE ROOTSがバンクバンドをつとめた、的な印象の強い作品。そのため、ラップはほとんど登場せず、基本的にメロディーはコステロらしいポップなメロが聴けます。一方でサウンドは、THE ROOTSらしい、シンプルなサウンドでどす黒いビートを奏でるソウルフルなもの。そのため、ロックンロールなコステロを求める方には物足りないかもしれませんが、コステロの良さとTHE ROOTSの良さがほどよく楽しめるコラボとなっていました。

評価:★★★★★

Elvis Costello 過去の作品
Momofuku(Elvis Costello&the Imposters)
Secret,Profane&Sugarcane
National Ransom

THE ROOTS 過去の作品
WAKE UP!(John Legend&The Roots)
undun
Betty Wright:The Movie(Betty Wright&The Roots)
...and then you shoot your cousin

|

« 25周年の記念の年に | トップページ | 志磨遼平よ、どこへ行く »

アルバムレビュー(洋楽)2014年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ブルース入門に最適!:

« 25周年の記念の年に | トップページ | 志磨遼平よ、どこへ行く »