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2014年11月14日 (金)

もう「ひきこもりのニート」なバンドではない

Title:英雄syndrome
Musician:神聖かまってちゃん

アルバム「友だちを殺してまで」がリリースされた頃、ボーカルの子のエキセントリックな言動や動画配信などによって大きな話題となった神聖かまってちゃん。個人的に、の子の描く歌詞の世界に共感し、エキセントリックな言動をおもしがりつつも、そのエキセントリックさゆえに飽きられるのも早いだとうと予想し、また歌詞も近いうちに「ネタ切れ」を起こすのではないだろうか、と危惧を抱いていました。

実際、彼らの人気は、アルバム「8月32日へ」でオリコンチャート9位を獲得するなどピークに達するも、一方ではやはりその言動が飽きられてきたのか徐々に話題に上ることも少なくなり、人気も下降線をたどるようになっていまいました。

そんな中リリースされた約2年ぶりとなるニューアルバム。私が彼らについて危惧していた、もうひとつの「歌詞」という側面。こちらについても、今回のアルバムでは以前、彼らが歌っていた「ひきこもりのニートの心の叫び」のようなネタからは卒業しています。ただ、その後、の子はあたらしいテーマをみつけられず、もがき苦しむような状況になるのではないか、と予想していたのですが、この予想はいい意味で大きくはずれる結果になりました。要するにの子は今回のアルバムで、特に新しいテーマを獲得するためにもがき苦しむこともなく、見事「ひきこもりのニート」という神聖かまってちゃんのイメージからの卒業を果たしていたからです。

例えば「彼女は太陽のエンジェル」では、真夏の太陽の下の女の子を好きになるという、まさに「ひきこもり」ではありえないようなテーマ設定を上手く曲にしていますし(ちなみにタイトルはやはりB'zからインスパイアされたのでしょうか?)

映画っぽい
夢みたい
背伸びした君が見てる
作られたその世界を
くだらねえ
君の笑顔が最高なんだ

(「背伸び」より 作詞 の子)

なんて歌う「背伸び」もまた、いままでの神聖かまってちゃんとは異なる、ちゃんと現実の世界を見据えて現実の恋愛を歌う歌詞になっています。

まさに「ひきこもり」な世界から外に飛び出してきた彼ら。ただその一方で、デビュー以来のの子の楽曲に共通する、「鬱屈した感情を抱いているからこその純粋さ」みたいな側面は今回のアルバムでも健在。そういう意味ではちゃんといままでのかまってちゃんらしさも本作ではちゃんと感じることが出来ました。

また、テーマ的にもエキセントリックな部分が少なくなってきたからこそさらに感じるのは、の子の作詞家やメロディーメイカーとしての実力。いままでのアルバムでももちろんその側面は感じることが出来たのですが、今回のアルバムではより、そんなの子の実力が前面に感じられたように思います。

そんな訳で2年ぶりとなった新作で新たな一歩を踏み出した彼ら。ただ、歌詞のエキセントリックさが薄れると、正直以前からちょっと気にかかっていたアレンジの過剰さが少々耳についてしまいます。確かにあのシンセのメロは彼らのサウンドを大きく特徴づいていますが、の子が書く楽曲の今の方向性とはちょっとズレが生じているようにも思えてきてしまいます。ただ、じゃあシンプルなバンドサウンドでいいのか、と言われるとそれも味気ないし・・・。そういう意味でこの「サウンド」という側面が今後の彼らの課題でしょうか。

なお、本作でははじめて外部からボーカルとして川本真琴が参加。これがまたちょうど神聖かまってちゃんの曲にマッチしているのがおもしろいところ(笑)。要注目のコラボとなっていました。

評価:★★★★

神聖かまってちゃん 過去の作品
友だちを殺してまで。
つまんね
みんな死ね

8月32日へ
楽しいね

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コメント

こんにちは。リリです。
個人的に、世界の終わりがヒットしてかまってちゃんがブレイクしきれてないところが疑問です。

ボーカルの存在感やエキセントリックなところ、出てきた時期がほとんど同じで、似たところを感じていたのですが、随分差がついてしまったなという印象で。

セカオワの方はどこかリア充ぽいところが人気の理由なんでしょうかね。

投稿: リリ | 2014年11月15日 (土) 11時24分

>リリさん
確かにセカオワとかまってちゃんは似たようなタイプのように感じましたが、差がついてしまいましたね。ただ、セカオワの方はここ最近、中2病の病的な部分を表に出すというよりもファンタジックな世界観を上手く表に出しているような曲が目立ち、それが受けているようにも思えます。個人的にはかまってちゃんの方が好きなんで、がんばってほしいんですが・・・。

投稿: ゆういち | 2014年11月16日 (日) 22時48分

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