THE BOOMの歴史を振り返る
Title:THE BOOM HISTORY ALBUM 1989-2014~25 PEACETIME BOOM~
Musician:THE BOOM
今年3月、突然の解散を発表したTHE BOOM。デビューから25年、結成から28年目にしての突然の解散は、個人的にもかなり驚いたニュースでした。というのも彼ら、結成以来28年間、オリジナルメンバーによる活動を続けており、メンバーチェンジを全く行っていないという結束力の良さが感じられるバンドだったからです。かつ、事実上、宮沢和史のワンマンライブ的な側面も強く、このタイプのワンマンバンドというのは、例えばエレカシしかりミスチルしかり、滅多なことでは解散しない・・・という勝手なイメージを持っていたからです。
解散の明確な理由は例によって明らかになっていません。公式サイト上では「THE BOOMとしてやれることをすべてやりつくしたから」となっています。ただ一方では、宮沢和史や山川浩正の病気が解散の大きな理由ではないか、とネット上では噂されています。
ただ正直言って、確かにここ最近のアルバムを聴くと、THE BOOMとしてやりつくしたという感覚はなんとなくわかるような気がします。事実上のラストアルバムとなってしまった前作「世界でいちばん美しい島」は沖縄音楽をテーマとしながらも中途半端に沖縄民謡に手を出したような作品になっていましたし、その前作「よっちゃばれ」も日本民謡とロックの融合を目指していながらも、非常に中途半端な作品に終わってしまっていました。さらにその前の作品「四重奏」も決して良い出来の作品ではなく、ここ最近のTHE BOOMはどうもスランプ気味といった印象を強く持っていました。
だから、THE BOOMの解散というニュースは、非常に驚きだった反面、ここ最近の彼らのアルバムの内容を考え、冷静に振り返ると、さもありなんだったかな、という印象も受けます。それでもやはりTHE BOOMの解散はとても残念なニュースでした。それは彼らが、ワールドミュージックの要素を取り込みつつ、きちんとJ-POPという土俵で戦うことが出来るポップスを発表することが出来る、貴重なバンドだからです。
もともとデビュー当初の彼らは、このアルバムに収録されている「星のラブレター」のような軽快なスカを楽曲に取り入れていました。その後は「からたち野道」のような和太鼓も入れた和風な楽曲もあったり、「島唄」ではおなじみの沖縄民謡ですし、「風になりたい」のサンバ、「Call my name」ではレゲエなどなど、基本的に中南米、ブラジルあたりのラテンミュージックがメインなのですが、ワールドミュージック的な要素を楽曲に強く取り込んでいます。
そんなともすればマニアックになりがちな音楽性ながらも、一方では「島唄」がご存じの通り150万枚を超える大ヒットを記録。その後もこれほどの大ヒットはなかったものの、コンスタントにヒットを続け、一定以上の人気を保ってきました。その楽曲の作風は垢抜けており、J-POPという土俵の中で戦えるポピュラリティーを持ち合わせています。ワールドミュージック的な要素を楽曲に取り入れるミュージシャンは少なくありませんが、その中でJ-POPで枠組みで勝負できるミュージシャンといったらTHE BOOMくらいではないでしょうか。それだけに、彼らの解散というニュースは非常に残念に感じました。
本作は、そんな彼らの歴史を振り返ることが出来るベストアルバム。彼らの代表曲が並んでおり、いまさらながらTHE BOOMというバンドを知りたい、という方にはうってつけのアルバムでしょう。あらためて彼らの曲を聴くと、そのワールドミュージックという枠組みにとらわれなくても、例えば「中央線」や「故郷になってください」などなど、本当に名曲が多いよなぁ、とあらためて感じます。以前のベスト盤のレビューでも書いたのですが、もっともっと売れてもいいバンドだと思うんですけどね。いや、もっともっと売れるべきバンドだったと思うんですけどね。あらためて、彼らの解散は非常に残念です。これからのメンバーそれぞれの活躍を切に願います。
評価:★★★★★
THE BOOM 過去の作品
89-09 THE BOOM COLLECTION 1989-2009
四重奏
よっちゃばれ
世界でいちばん美しい島
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