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2014年10月24日 (金)

「良質な大人のポップアルバム」だけれども

Title:TRAD
Musician:竹内まりや

約7年ぶりとなる竹内まりやのニューアルバムが売れています。2週連続ヒットチャートで1位を獲得し、その後もチャート上位をキープしてロングヒットを記録。その根強い人気のほどをうかがわせます。

彼女のアルバムが大ヒットする理由、それは非常に良くわかるように思います。それは彼女が良質な大人のポップソングを歌い続けているから。極端に若者志向が進んだ今の音楽シーンの中で、例えば40代や50代くらいの世代、若いころはロックやポップスを聴いていたけど、最近は疎遠になっているような世代にとって、彼女の曲というのは久々に聴いてみるポップスとしては実に手に取りやすい作品。曲に、必要以上に変な癖もない一方、ほどよく洋楽的な要素が入っていてスタイリッシュな雰囲気もあり、幅広いリスナー層を魅了できる作品になっています。

今回のアルバムも間違いなくそんな良質なポップス揃い。聴いていて安心できるようなポップスソングが並んでいる、という書き方をすると非常に保守的な印象を受けていますが、そのポップスセンスと、ほどよくちりばめられた洋楽からの影響がマンネリに陥らないエバーグリーンな輝きを与えています

・・・・・・と言いたいところなのですが・・・確かに良質な大人のポップアルバムなのは間違いないとは思いますが、正直本作、7年ぶり、あの竹内まりやの待望のニューアルバムとしては期待していたほどの出来じゃなかったなぁ、という感想を抱いてしまいました。

まず多くの方が指摘されているようですが、その収録曲のラインナップ。ほとんどがシングルとしての既発表曲と他のミュージシャンに楽曲提供した曲のセルフカバーばかりで純粋な新曲が1曲のみ。これは7年ぶりのオリジナルアルバムとしては少々厳しいラインナップだな、と思いました。新曲をつくるだけの時間がないのならば、無理に「オリジナルアルバム」の形態でリリースしなくてもよかったのでは?

そのシングル曲にしても、歌謡曲と洋楽というバランスの中で、ちょっと歌謡曲テイストが強すぎるように思います。歌謡曲なら歌謡曲で悪くはないのですが、竹内まりやの曲にしてはちょっともっさりしているような印象を受けました。シングル曲だから仕方ないのかもしれないけれど、ちょっと売れることを狙いすぎな感じもします。そんな曲が並んでいただけに、竹内まりやのオリジナルアルバムとしてはバランスが悪いようにも思います。

そんな訳で、7年ぶりのオリジナルとしてはちょっと残念な内容だったようにも思います。もっとも、とはいっても決して悪いアルバムではありませんし、後半、特にアメリカンロック風のスケール感のある「静かな伝説」、洋楽テイストの強いポップ「Your Eyes」、そしてバラードナンバー「いのちの歌」の並びは非常に素晴らしかったと思いますし、少なくともアルバムの代金分の満足はできる内容だったとは思います。もろ手をあげてお勧めできる傑作ではないけれど、最近聴くアルバムがない・・・と思っている40代50代あたりの方は聴いてみて損のないアルバムだと思います。でも次回作はもっと新曲を聴きたいなぁ。

評価:★★★★

竹内まりや 過去の作品
Expressions

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