郷愁誘うメロディーが魅力
Title:beside
Musician:荒井岳史
the band apartのギターボーカル、荒井岳史のソロデビューアルバム。the band apartは個人的に大好きなバンドなのですが、最近はちょっとマンネリも感じ、一時期ほどははまっていない状況になっていました。そんな中リリースされたソロアルバム。それだけにさほど期待していなかったのが正直なところなのですが・・・しかし、このアルバムが予想外に素晴らしい出来になっておりビックリしてしまいました。
このアルバム、まず印象に残ったのは郷愁を誘うメロディーと歌詞。特に歌詞ではどこか懐かしさを感じる風景描写が印象的。ジャケットもどこか郷愁をさそう図柄ですが、まさにこのイメージがアルバムの大きな特徴となっていました。
例えば典型的なのはアルバムの1曲目を飾る「次の朝」。メロディーも非常に郷愁を誘うものなのですが、歌詞もまた印象的。
空の色かすむ頃
誰かが呼んでいる声が聞こえる
夕焼け小焼けの日は落ちて
次の朝まではさようなら
(「次の朝」より 作詞 荒井岳史)
と、小学生の頃、太陽が沈むまで友達と遊んだあの日の事を思い起こさせます。他にも「マボロシ」や「街のどこかで」など郷愁を誘うメロディーと歌詞の曲が並んでいて、聴いていてとても暖かく、懐かしい気分になります。
そんな楽曲を彩るサウンドも、アコースティックテイストの暖かいもの。□□□のベース、村田シゲ、ASPARAGUS/the HIATUSの一瀬正和がドラムで参加していますが、基本的にはアコースティックベースのサウンドが郷愁感をかりたてます。そんな中、「マボロシ」のようなエレクトロサウンドを取り入れた楽曲が入ってくるのもユニークなのですが、そんな電子音ですら、どこか暖かみを帯びたサウンドとなっているのが印象的でした。
楽曲のジャンル的にはジャズやファンクの要素を取り入れたポップスで基本的にはthe band apartの楽曲と同じ要素を取り込んだ楽曲になっています。そういう意味では間違いなくthe band apartファンなら気に入るアルバムでしょう。ただエッジの効いたバンドサウンドが主眼だったバンアパと比べ、こちらは暖かいメロディーが主体。the band apartとは一風変わった荒井岳史ワールドを楽しむことが出来ます。
ここ最近、ちょっとマンネリ気味を感じるthe band apartよりもむしろこちらの方がいいのでは?とすら思うアルバム。決して強いインパクトがあるわけではないのですが、そっと心に入ってくるようなやさしさと暖かさを感じる傑作でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
rain falls/畠山美由紀
畠山美由紀のニューアルバムは「雨」をテーマとした作品。ブルースロックやジャズ、フォーク、あるいはクラシカルな曲まで様々なタイプのジャンルをうまく取り込みつつ、全体的には彼女の優しく包容力ある歌声を聴かせるような曲がメイン。「雨」というテーマらしい、しっとりとして聴かせるナンバーが並んでいました。
評価:★★★★
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