まさかの13年ぶりの新作
Title:Syro
Musician:Aphex Twin
ついに出た!2001年のアルバム「drukqs」以降13年ぶりとなるAphex Twin名義のアルバムがリリースされました。かなり長いスパンの上、突然のリリースとなったので驚いた方も多いのではないでしょうか。リリース前には、Aphex Twinのロゴの入った飛行船が空を飛んだり、ロゴのステッカーが街角で貼られたりというゲリラ的な、ある意味彼らしい広告宣伝手法も話題となりました。
そんな久しぶりの新譜となった本作。聴いてみてまず感じるのは、非常に聴きやすいという印象でした。アルバムの冒頭を飾る「minipops67」「XMAS_EVET10」と、彼にしてはシンプルなテンポよいリズムの聴きやすいナンバーが並んでおり、13年ぶりの新作として、まずこれがはじめてのAphex Twinというリスナーの耳もギュッとつかむような、そんな作品からスタートしています。
そんな中、いかにもAphex Twinらしいと感じるナンバーが「CIRCLONT6A」や「CIRCLONT14」あたりでしょうか。複雑にからみあう強烈で硬度の高いビートが印象的なナンバー。ただ、Aphex Twinらしい楽曲とはいえ、次々と展開していく音の世界と、その根底に実は感じられるある種のメロディーセンスに思わず聴き入ってしまう曲になっています。決して「目新しさ」はないかもしれませんが、いまなお凡百のエレクトロミュージシャンとの格の違いを見せつける、非常に惹きこまれる楽曲に仕上がっています。
さて今回、Aphex Twinのアルバムリリースとともに話題となったのが、この13年間のAphex TwinことRichard D. Jamesのプライベイト。なんと彼、この間に結婚し、子供が2人も誕生したとか。「aisatsana」は妻に捧げた曲らしいのですが、とても優しい雰囲気のピアノ曲になっており、「PAPAT4」もAphex Twinらしい複雑なビートの中に優しいメロディーを感じられるなど、アルバム全体として攻撃性みたいな部分が薄れ、やさしさすら感じられる内容になっています。それはやはりRichard D. Jamesが良き夫であり良き父親となったから、でしょうか?
また今回のアルバム、目新しさを感じる曲はないのですが、それが逆に、変に革新的な曲をつくってやろう、という気負いを感じさせず、素直なAphex Twinらしさが出た、という意味でとてもプラスに働いたように感じられます。ある種の余裕すら感じられた、といってもいいかもしれません。
そんな訳で、斬新さを求めるとちょっと肩すかしをくらうかもしれないAphex Twin13年ぶりの新作。実に彼らしい作品でしたし、それが決してアルバム評価のマイナスとなっていない部分に、彼の才能のすごさをあらためて感じます。この13年間、様々なエレクトロのミュージシャンが登場し話題となりましたが、その中でも今なお彼が孤高の存在であることを知らしめたアルバムでした。
評価:★★★★★
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