「Coccoエキス」あふれる作品
Title:プランC
Musician:Cocco
ここ最近、マイペースな活動を続ける彼女の、フルアルバムとしては4年2ヶ月ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバム、インパクトという面ではちょっと薄めだったように感じます(ただ、この点は、ここ数作に共通する印象ですが・・・)。が、一方でCoccoを聴いた、という満足感を覚えた作品になっていました。
インパクトはちょっと薄いというのは要するに、初期の彼女のように、どこか焦燥感のあるボーカルだったり、大ヒットした「強く儚い者たち」のような、やさしくもどこか毒を帯びて印象に残るようなメロディーの曲がなかったという点。「売上」という面では2006年の活動再開以降、活動再開以前と比べてあまり芳しい状況ではありませんが、今回も正直、売上を大きく伸ばすのは厳しそうです。
今回のアルバムでひとつ話題になったのは、今はやりのEDMサウンドを取り入れたという点。PVもつくられ、アルバムの顔ともいえる「パンダとバナナ」や「3D」がそれ。ただ正直なところ、このEDMサウンドの導入に関してはあまり成功しているとは思えません。どちらもサウンドは目新しさもありませんし、むしろ非常にチープな印象をして、「いまさらこのサウンド?」とすら思ってしまいました。
ただ、そういったマイナス面がありつつも、一方で非常にCoccoらしさを感じるアルバムになっていたのが今回のアルバム。まず前半はどこかエロチシズムを感じる歌詞に、彼女らしさを感じます。
例えばそのEDMサウンドが話題の「パンダにバナナ」も
「そこには入れてみたい
入り方がわからない
Hotな所までどうだい」
(「パンダにバナナ」より 作詞 Cocco)
という歌詞はエロチックな隠喩のように感じますし(そもそも「バナナ」というタイトルも・・・)、彼女が主演して話題となった劇「ジルゼの事情」の劇中歌「ドロリーナ・ジルゼ」も
「ドロリ
私の内に
堕ちたあなた
愛されない」
(「ドロリーナ・ジルゼ」より 作詞 Cocco)
なんて歌詞もまたエロチックなものを感じます。
一方では後半、彼女の社交ダンスの先生に送ったという「Snowing」や、友人の結婚式のためにレコーディングされた「ハミングバードと星の砂」みたいな、とても広い心の無償のやさしさを感じさせる曲もあったり、「スティンガーZ」のようにどこか突き抜けちゃっているような歌詞の曲もあったりと、Coccoでしか書けないような曲の世界が続いていきます。
楽曲自体の雰囲気については、上にも書いたEDM調の曲のほかに、ちょっと歌謡曲っぽい曲やらハードロック調の曲やらかわいらしいポップチューンやらいろいろと揃っているのですが、こちらはそんなにアルバムの中で強い主張はされていません。あくまでも主体はCoccoの歌と歌詞。そんな内容になっています。
こういう、ミュージシャン本人の特徴がつまったアルバムのことを、例えばCoccoの場合「Cocco節」みたいな感じで表現したりもします。ただ彼女の作品の場合、「~節」という表現はピッタリ来ません。女性に対してちょっと失礼な表現かもしれませんが、濃厚なCoccoエキスがつまったアルバム、そう感じました。
アルバム全体として、Coccoらしい作品だった反面、あまり「売り」を意識していないようにも感じた作品でした。それだけに、余計にCoccoらしさという部分がアルバムに反映されたのかもしれません。インパクトの薄さから、聴き始めた頃はどうかな?と思ったのですが、アルバムを聴き終えて、そしてあらためて振り返ると、その満足感から、間違いなく傑作だ、と思った作品でした。やはりCoccoは唯一無二のミュージシャンなんだと再確認もできたアルバムでした。
評価:★★★★★
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