最後までNIRGILISらしく?
Title:チュクリ
Musician:NIRGILIS
今年8月、メンバー全員の脱退という形をもって、事実上の解散となったバンドNIRGILISのラストアルバム。2005年にリリースした「コモンガール」が、渡辺美里の「My Revolution」をマッシュアップした曲ということで話題になったり、「sakura」がアニメ「交響詩篇エウレカセブン」のテーマ曲となりスマッシュヒットを記録したりもしましたが、その後はすっかり活動が停滞気味になってしまった彼女たち。オリジナルアルバムの前作も2009年。ちょっと寂しい最期になったかもしれません。
そんな彼女たちのラストアルバムは2枚組。1枚目は様々なミュージシャンとのコラボ曲を収録した新作コラボレーションアルバム。2枚目はインディーズ時代の曲も含む彼女たちのシングル曲をリリース順に収録したシングルコレクションです。
今回、事実上の解散を「全員の脱退」という形をとった理由としてインタビュー等で、NIRGILISには既にオリジナルメンバーは誰もおらず、誰のものでもないため、とメンバーは語っています。そしてこのNIRGILISは誰のものでもない、という感覚、良くも悪くもこのバンドの音楽性に反映しているように感じます。
それはシングルコレクションを聴いて強く感じるのですが、NIRGILIS全体を通じて一本通ったような音楽性は感じることが出来ません。インディーズ時代はポストロックあるいはサイケ風の路線を強く感じますし、初期の作品にはブラックミュージック的な要素も感じます。それが「コモンガール」ではマッシュアップという手法を取り入れたかと思えば、アニメタイアップもついた「sakura」や「SNOW KISS」では一気にポップの要素が強くなり、悪くいってしまえば「売れ線」路線に感じます。
そして「kiseki」やラストシングルになった「SHINY SHINY」ではエレクトロ路線に走り、それが最後のコラボアルバムにも大きく反映しています。良く言えばその時々にメンバーがいいと思ったジャンルを柔軟に取り入れて音楽性を変化させるバンド。でも悪く言ってしまえば、バンドとしての核がない、とも感じてしまいます。NIRGILISはDefSTAR RECORDS移籍後、一気に売れ線ポップバンド路線に走り、それが一部で話題にもなりました。インディーズ時代の楽曲から、メロディーが意外とポップという点に目をつけられたための路線変更だったのかもしれませんが、バンドとしての核のなさゆえに「売れ線ポップバンドとして売っていける」とレコード会社側に感じさせてしまったようにも思われます。
これでメロディーに圧倒的なポピュラリティーがあったらよかったのかもしれませんが、残念ながらポップなメロディーはそれなりに耳を惹くのですが、一度聴いたら忘れられないようなインパクトは薄く、結果、アニメタイアップの影響もありそれなりのヒットとはなりましたが、ブレイクには至りませんでした。そしてその理由が、今回のシングルコレクションでは痛いほどよくわかったように思います。
新作コラボアルバムの方は、全編、今風のEDM路線がさく裂しているアルバム。ここらへんも今の彼女たちの興味のありかということでしょう。「SHINY SHINY」はエレクトロ路線よりでしたが、さらにEDM路線に走ったラスト作でまたしても音楽性を変貌させた彼女たち。最後の最後までNIRGILISらしいといった感じでしょうか。トラック重視の作風はメロディーなしでも十分成り立ちそうな曲ばかりで、ライブで聴いたら楽しそう。ただ正直なところ、ちょっと新鮮味はなかったかな、という感じも否めませんが・・・。
まあ、最後の最後もNIRGILISらしく終わったのかな?社交辞令的に言えば、「これで最後というのはとても残念です」ということになるのでしょうが、ただNIRGILISとしての活動ももう限界が来ていたのかなぁ、という感じも。メンバーそれぞれのこれからの活躍に期待したいところです。
評価:★★★★
NIRGILIS 過去の作品
RGB
ほかに聴いたアルバム
MANTLE/Czecho No Republic
最近、その名前をよく聴く新人バンドの一組、Czecho No Republic。これで「チェコノーリパブリック」と読むそうで、その名前もインパクトがあります。こちらの作品はメジャー2枚目となる作品。男性4人+女性1人という布陣で、楽曲のジャンルはロックというよりもむしろポップといった印象。シンセを積極的に使用したサウンドは祝祭色の強い雰囲気を出しており、また唯一の女性メンバータカハシマイのボーカルもうまく使用しており、素直に楽しいポップソングを聴かせてくれます。シンセ主体のサウンドにはちょっとチープさを感じてしまう部分もあるのですが、これからの活躍にも期待したいところ。
評価:★★★★
Big Wave (30th Anniversary Edition)/山下達郎
1984年にリリースされた山下達郎のアルバムの30周年記念盤。ウォルター・マルコネリー監督のドキュメンタリー映画のサントラとして作成されたそうですが、前半(A面)は書下ろし、後半(B面)はビーチボーイズのカバーを中心とした構成。全英語詞によるアルバムで、サントラ盤とはいえ、かなり挑戦的なアルバムになっています。原盤を持っていないので、オリジナルとの聴きくらべはしていないのですが、重厚なアカペラの音が実に気持ちよさを感じるアルバムに。リマスナーの内容について熱心なファンには賛否両論のようですが、個人的には素直に気持ちよく楽しむことが出来たアルバムでした。
評価:★★★★★
山下達郎 過去の作品
Ray of Hope
OPUS~ALL TIME BEST 1975-2012~
MELODIES(30th Anniversary Edition)
SEASON'S GREETINGS(20th Anniversary Edition)
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